用語の統一は誰の呼び方を残すかを決める求人の仕事です
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

営業は「お客さま番号」、経理は「取引先コード」、現場は「先方の番号」と呼ぶ職場があります。指しているものは同じでも、部署によって呼び方が違います。これをそろえる仕事は、言葉の整理に見えて、実際にはどちらの部署の呼び方を残すかを決める仕事です。
DX推進人材が不足と回答した企業は85.5%です*1。人手が限られるなかでは、呼び方をそろえるような地道な仕事も、誰かがまとめて引き受けることになります。
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この記事のポイント
- DX推進人材が不足と回答した企業は85.5%です*1。人手が限られるなかで、呼び方をそろえる仕事も、誰かがまとめて引き受けることになります。
- 一般労働者の賃金は25〜29歳で279.4千円です*2。呼び方をそろえるような地道な仕事は、若手のうちから任される整備の仕事の1つになります。
- 全職業の有効求人倍率は1.26倍です*3。求人が人に対して多い状況では、地道な仕事を任せられる人材ほど、企業にとって手放しにくい存在になります。
1. 用語をそろえる仕事で決まるのは、残す呼び方です。
用語をそろえる仕事で本当に決まるのは、どちらの部署の呼び方を残すかです。DX推進人材が不足と回答した企業は85.5%です*1。人手が限られるなかでは、呼び方をそろえるような仕事も、誰かがまとめて引き受けることになります。営業は「お客さま番号」、経理は「取引先コード」、現場は「先方の番号」と呼ぶ職場があります。指しているものは同じでも、部署によって呼び方が違います。これをそろえる仕事は、一見すると言葉の整理に見えます。ところが実際に決めるのは、どの部署の呼び方を残すかです。
残らなかった側は、明日から呼び方を変えることになります。長く使ってきた言葉なので、すぐには変わりません。
そろえる仕事に要るのは辞書ではなく、通す道筋です。どの呼び方を残すかを決めたうえで、変える側がどう受け止めるかまで見通しておく必要があります。
用語を一方に決めても、過去の資料に書き込まれた記述までは自動的には変わりません。決め方そのものを、仕事の設計として考える必要があります。
同じ状況は、部署をまたぐシステムを持つ職場であれば起こり得ます。呼び方が複数あることに気づいてから実際に手を付けるまでの間も、資料や画面には新しい記述が積み重なっていきます。
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2. 呼び方は、使われている場所で数えられます。
どちらの部署の呼び方を残すかを決める最初の手がかりは、使われている場所を数えることです。
用語が置き換わる場所を画面、帳票、外に出す資料の3つに分けて数えると、多い側の呼び方が見えてきます。ただし数が多いという理由だけで一方に決めると、少ない側の使われ方を見落とすことがあります。
外に出す資料に使われている呼び方は、社外の相手が見るものです。件数が少なくても、変えたときの影響は社内より大きくなる場合があります。請求書や見積書のように、相手の手元に残る資料であればなおさらです。
数を数えることは、決める材料をそろえる最初の一歩です。決め方そのものは、次に変える側の手間をどれだけ見積もれるかに移ります。
数える対象を画面だけに絞ると、過去のログや検索の履歴に残っている呼び方を見落とします。帳票や外に出す資料まで含めて数え直すと、最初に思っていた内訳と順位が入れ替わることもあります。
3. 残らなかった呼び方には、変える手間が生まれます。
用語をそろえると決まった直後、残った側は何も変わりません。残らなかった側は、次の日から呼び方を変えることになります。
長く使ってきた呼び方は、口頭でも先に出てきます。マニュアルや引き継ぎ資料に書き込まれた文言も、そのままでは新しい呼び方と食い違います。
変える側の手間を減らす工夫として、言い換えの一覧を渡す方法があります。新旧の対応が一目で分かれば、切り替えの当日に迷う場面を減らせます。
一覧を渡すだけでは、過去に作られた資料まではさかのぼれません。用語をそろえる決定が下りても、記述のすべてが自動的に変わるわけではないことを、先に見込んでおく必要があります。
切り替えの直後は、古い呼び方と新しい呼び方が同時に問い合わせ窓口に届く時期があります。この期間をなくすことを目標にすると無理が出るため、いつまで両方の呼び方に対応するかを先に決めておくほうが現実的です。
4. 採用の背景にある数字を、表で確認します。
呼び方をそろえる仕事の背景にある数字を、出典別にまとめます。
【表1】採用の背景にある数字の一覧(出典:IPA・厚生労働省)
| 指標 | 数値 | 出典・備考 |
|---|---|---|
| DX推進人材が不足と回答した企業 | 85.5% | IPA調査*1 |
| 一般労働者の賃金(25〜29歳) | 279.4千円 | 厚生労働省*2 |
| 全職業の有効求人倍率 | 1.26倍 | 厚生労働省*3 |
DX推進人材が不足と回答した企業は85.5%です*1。人手が限られる状況では、用語をそろえるような地道な仕事も、限られた人数で引き受けることになります。
一般労働者の賃金は25〜29歳で279.4千円です*2。呼び方をそろえる仕事は、若手のうちから任される整備の仕事の1つになります。
全職業の有効求人倍率は1.26倍です*3。仕事を探す人1人に対して求人が1.26件ある計算で、企業にとって人材を確保しやすいとは言えない状況です。こうした状況では、地道な仕事を任せられる人材ほど、企業にとって手放しにくい存在になります。
3つの数字を並べると、人手が限られるなかで採用の枠を確保しづらい状況が見えてきます。呼び方をそろえるような目立たない仕事を任せられる人材は、こうした状況では代わりを探しにくい存在として扱われやすくなります。
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5. 残す呼び方を決めた後も、仕事は形を変えて残ります。
呼び方をそろえる決め方は複数あります。一覧を渡すかどうかと、呼び方を一方に絞るか両方残すかで、後に残る仕事の形が変わります。
図の右上、両方の呼び方を残しながら対応表を用意する形は、決めた直後の反発が少ない代わりに、対応表を保守する仕事がずっと残ります。
左下のように案内なく一方に統一すると、残らなかった側からの問い合わせに個別に対応する仕事が発生します。決めた時点では仕事が減ったように見えても、後から別の形で戻ってきます。
エンジニアがこの場面で見られるのは、用語をどちらかに決め切る力ではなく、決まっていない状態のままでも動く仕組みを作れるかどうかです。そろえてから作るのではなく、そろわない前提で作ることになります。
対応表を用意する形の中には、画面には片方の呼び方だけを出し、記録には両方を残すという分け方もあります。人が見る場所は迷わないように1つに絞り、後から履歴をたどる場所は両方を残しておくという考え方です。
6. 「用語集」という言葉が、求人票のヒントになります。
求人票を読むときと、面談で質問するときの、それぞれの確認点を整理します。
求人票と面談で確認できる点
- 求人票の語:「マスタ整備」「用語集」「標準化」といった言葉があるかを確認します。
- 面談での質問:「呼び方が違うものは、いまいくつありますか」と聞くと、規模感が伝わります。
- 回答の受け止め方:具体的な数字が返ってくるかどうかで、社内での把握の進み具合がわかります。
- 決まった後の仕事:対応表の保守や問い合わせへの対応が、募集要件に書かれているかを確認します。
求人票に「マスタ整備」「用語集」「標準化」といった語があれば、呼び方をそろえる仕事が業務の一部に含まれている可能性があります。
面談では、「呼び方が違うものは、いまいくつありますか」と聞くことで、規模感を確かめられます。具体的な数字が返ってくるかどうかで、社内での把握の進み具合がわかります。
数がわからないという返答であれば、そろえる仕事がこれから始まる段階だと考えられます。入社後、最初から数える作業に関わる可能性があります。
決まった後に残る仕事、たとえば対応表の保守や問い合わせへの対応が、募集要件に書かれているかどうかも確認しておくと、入社後の仕事量の見通しが立てやすくなります。
面談で聞く内容は、残す側の理由だけに偏らせないほうがよいです。残らなかった側がどう受け止めたか、問い合わせがどれくらい続いたかまで聞くと、決めた後の仕事量が具体的に見えてきます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 呼び方をそろえる仕事は、何から始めればよいか。
A. 使われている場所を数えることから始めます。画面、帳票、外に出す資料のどこに呼び方が出てくるかを数えると、残しやすい側が見えてきます。
Q2. 残す呼び方は、使われている数が多い側に決めるべきか。
A. 数の多さは目安の1つですが、それだけでは決め切れません。外に出る資料に使われている呼び方は、件数が少なくても変えたときの影響が大きくなる場合があります。
Q3. 決まった後、エンジニアには何が求められるか。
A. 用語が完全にそろっていない状態でも動くシステムを作る力が求められます。そろえ切ってから着手するのではなく、そろわない前提で仕組みを考えることになります。
Q4. 変える側の負担を減らす方法はあるか。
A. 言い換えの一覧を渡す方法があります。新旧の対応が一目でわかれば、切り替えの当日に迷う場面を減らせます。
Q5. 面接では、この仕事についてどう質問すればよいか。
A. 「呼び方が違うものは、いまいくつありますか」と聞くと、規模感がつかめます。合わせて、決まった後に対応表の保守や問い合わせ対応が誰の仕事になるのかも確認しておくと、入社後の見通しが立てやすくなります。
8. まとめ:呼び方をそろえる仕事は、残る側の設計です。
この記事の要点
- 呼び方をそろえる仕事で決まるのは、どちらの部署の呼び方を残すかです。残らなかった側は、次の日から呼び方を変えることになります。
- 使われている場所を数える、変える側の手間を見積もる、両方を残す形も考える。この3つが、残す呼び方を決める手がかりになります。
- DX推進人材が不足と回答した企業は85.5%、一般労働者の賃金は25〜29歳で279.4千円、全職業の有効求人倍率は1.26倍です*1*2*3。地道な仕事を任せられる人材ほど、企業にとって手放しにくい存在になります。
- 決めた後にエンジニアに求められるのは、用語が完全にそろっていない状態でも動く仕組みを作る力です。そろえてから作るのではなく、そろわない前提で作ることになります。
呼び方をそろえる仕事は、部署間の言葉の整理に見えて、実際には残す側と変わる側を分ける仕事です。求人票や面談でこの仕事の輪郭を確認し、決まった後にどんな仕事が残るのかまで見通しておくことが、入社後の仕事量を正しく見積もる一歩になります。決め方を1つに絞れないまま入社することもあります。そのときに動く仕組みを作れるかどうかが、次の職場での評価につながっていきます。数字だけでは測れない仕事だからこそ、面談で具体的な質問を重ねておくことが、入社後の見え方の違いを減らします。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「DX動向2026」(2025年度調査)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*3 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分)」
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