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フルリモートで年収は下がる?出社勤務との給与の差

白い机に並べた罫線だけの給与明細の用紙2枚と、その間の電卓

フルリモートで年収が下がるかどうかは、通勤手当・在宅勤務手当・基本給の決まり方で変わります。手当は支給の形によって、割増賃金の計算や所得税の扱いが違ってきます*2*3。基本給のほうは、労働契約で決まる賃金です*1。

通勤手当は割増賃金の計算から外れる賃金に入り、在宅勤務手当は形によって計算に入る場合と入らない場合があります*2。求人票と労働条件通知書で手当の名前と形を読み、いまの年収と同じ項目に並べ直すと、差が金額で見えてきます。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事のポイント

  • 通勤手当は、割増賃金(残業や休日出勤に上乗せされる賃金)の計算に入れなくてよい賃金に入ります。在宅勤務手当は、実費を精算する形なら入れず、毎月の定額で渡切りなら入れます*2。
  • 在宅勤務手当に所得税がかかるかも、形で分かれます。実費を精算する形なら課税されず、使い残しを返さなくてよい定額の形なら給与として課税されます*3。
  • 会社が勤務場所の範囲を超えてテレワークをさせるには、本人の合意を得た契約の変更が要ります。最低賃金は、所属する事業場のある都道府県のものです*1。

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1. フルリモートで年収が下がるかは手当と基本給の決まり方で変わる

下がるかどうかを分けるのは、通勤手当・在宅勤務手当・基本給の3つが、いまの会社と転職先でどう違うかです。基本給は労働契約で決まり*1、通勤手当は計算から外れる賃金で、在宅勤務手当は支給の形で扱いが分かれます*2*3。

割増賃金とは、時間外労働や休日労働に上乗せして払われる賃金のことです。通勤手当は、この計算の基礎に入れなくてよい賃金として、住宅手当などと並んで法令に挙がっています*2。出社の日数が減るときに通勤手当をどう払うかは、会社の就業規則と労働条件通知書の記載で決まるため、面接で聞いておきます。

在宅勤務手当は、会社が在宅勤務の費用を補うために払う手当です。費用を精算して払う形と、毎月の定額を渡切りで払う形があり、割増賃金の計算に入るかどうかも、給与として課税されるかどうかも、形で分かれます*2*3。同じ月5,000円でも、形が違えば手取りと残業代の計算が変わります。

基本給を含む賃金は、労働契約で決まります。会社が勤務場所や業務遂行方法の範囲を超えてテレワークをさせるときは、本人の合意を得て労働契約を変えます*1。出社勤務から在宅勤務に変わる人も、フルリモートの会社へ転職する人も、基本給の額は契約の書面に書かれています。

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2. 年収を並べて比べる4つの手順

出社勤務の年収とフルリモートの求人を同じ項目で並べる4つの手順 1 基本給を並べる 現在の基本給と、求人票の基本給の額を同じ月額で並べる。 2 通勤手当を並べる いまの通勤手当と、求人票の通勤手当の有無・上限を並べる。 3 在宅勤務手当を読む 実費の精算か、定額の渡切りかを、求人票と就業規則で読む。 4 費用負担を聞く 通信費や電気代を会社と本人のどちらが払うかを、面接で聞く。 基本給・通勤手当・在宅勤務手当・費用負担を同じ並びで比べて年収の差を出す

この4つのうち、金額の差が出やすいのは通勤手当と在宅勤務手当の2つです。通勤手当は、出社勤務のときに会社から払われていた金額を、月額のまま書き出します。在宅勤務手当は、求人票の金額に加えて、実費を精算する形か渡切りの形かまで書いておきます。

年収は、毎月の基本給と手当の合計に、賞与や残業代を足した1年分です。賞与と残業代は、基本給・手当とは別の行に分け、いまの会社と転職先を同じ月数で並べると、差がどの項目から出ているかが分かります。出社勤務のほうが高い項目と、フルリモートのほうが高い項目が混ざっていても、行ごとに書き出せば合計で比べられます。

費用の負担は、会社と本人のどちらがどう負担するかを決めておくことが望ましいとされています*1。会社が負担する場合の限度額や、本人が会社に費用を請求する方法も、あらかじめ労使で話し合って会社ごとのルールにします*1。そのルールは就業規則に書いておくことが望ましく、面接では書面になっているかを聞けます*1。

3. 在宅勤務手当と通勤手当の扱いは支給の形で分かれる

ダイニングテーブルで、罫線だけの明細の表の1行に蛍光ペンで線を引く手

割増賃金の計算と給与としての課税は、どちらも手当の形で結論が変わります。

手当の支給の形ごとの扱い

支給の形割増賃金の計算の基礎給与としての課税
実費を精算する在宅勤務手当実費弁償と整理できれば入れなくてよい*2課税されない*3
使わなくても返さなくてよい定額の在宅勤務手当(例:毎月5,000円の渡切り)実費弁償に当たらず、入れる*2課税される*3
通勤手当入れなくてよい賃金*2―

実費弁償とは、在宅勤務で実際にかかった費用を精算して補うことです*2。実費弁償と認められるには、実際に負担した費用のうち業務のために使った金額を特定して精算する形であることが、外形上明らかでなければなりません*2。就業規則などで計算の方法を明示し、その方法が勤務時間などの在宅勤務の実態を踏まえた合理的・客観的なものであることも要ります*2。

毎月5,000円を渡切りで払う手当は、使わなくても会社に返す必要がないため、実費弁償に当たりません*2。賃金として扱われるので、割増賃金の計算の基礎に入ります*2。残業が多い月は、その分だけ割増賃金が増えます。

会社が持っている事務用品を貸す場合は、給与として課税されません。会社が事務用品を支給して所有権が本人に移る場合は、現物給与として課税されます*3。デスクや椅子が貸与か支給かは、入社後の課税を分ける点なので、求人票や面接で聞きます。

4. 基本給は労働契約で決まり最低賃金は事業場の県で決まる

テレワークでも、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法などの労働基準関係法令が適用されます*1。自宅で働く社員にだけ別の法律が当てはまるのではなく、出社勤務の社員と同じ法律が当てはまります。

最低賃金は、テレワークをする場所に関わらず、労働者の属する事業場がある都道府県のものが適用されます*1。事業場とは、その社員が所属する会社の拠点のことです。地方に住んでフルリモートで働く場合も、時給に直した基本給は事業場のある都道府県の最低賃金を下回れません。

勤務場所が変わることで基本給が変わるかどうかは、労働契約の内容で決まります。契約や就業規則で決まっている範囲を超えるテレワークは、本人の合意を得たうえで契約を変えなければなりません*1。在宅勤務への切り替えを会社から求められたときは、合意する前に、基本給と手当の変更の有無を書面で聞きます。

テレワークでの働き方を理由にした人事評価にも、決まりがあります。時間外・休日・所定外深夜のメールなどに対応しなかったことを理由として、不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえません*1。昇給や賞与の査定がある会社では、評価の基準が出社勤務と在宅勤務で同じかどうかを、求人の段階で聞いておけます。

令和7年度の国土交通省の調査では、雇用型テレワーカーの割合は全国で25.2%、直近1年間のテレワーク実施率は全国で16.8%でした*4。全国の数字で見ると、テレワークで働く人は雇用されて働く人の4人に1人ほどです。手当の名前や形は会社ごとに違うため、前の会社と同じだと考えずに求人ごとに読みます。

5. 手当の変更は不利益変更にあたる場合がある

夕方の会議室で、罫線だけの書類2部を持ち上げて見比べる手

すでに割増賃金の算定に含めている在宅勤務手当を、実費弁償に当たるものとして算定から外すと、労働者に払われる割増賃金の額が減ります*2。通達は、これを労働条件の不利益変更に当たると考えられるとして、法令等で定められた手続を守り、労使間で事前に十分な話合いをすることが必要であると示しています*2。不利益変更とは、本人にとって条件が悪くなる方向の変更のことです。

入社後に会社が手当の形を変える話が出たときに、割増賃金の額が下がっていないかを自分で計算し直せるよう、入社時に手当の名前・金額・支給の形をメモにして残します。

費用の負担には、法律上の決まりもあります。労働者に情報通信機器や作業用品などの負担をさせる定めをするときは、就業規則に規定しなければなりません(労働基準法第89条第5号)*1。通信費や自宅の電気料金が増えた場合には、実際の費用のうち業務に要した実費の金額を計算して支給することも考えられます。その計算は、在宅勤務の実態を踏まえて合理的・客観的に行うとされています*1。

入社前に聞いておくことは、3つあります。通信費と電気代の負担が就業規則に載っているか、在宅勤務手当が実費の精算か渡切りか、通勤手当が出社日数に応じて払われるのかです。求人票に書かれていなければ、面接でこの3つを聞き、答えを自分のメモに残します。

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6. よくある質問

Q1. フルリモートになると通勤手当は割増賃金の計算に入りますか

A. 通勤手当は、入れなくてよい賃金に入ります*2。ほかに、家族手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当なども、同じ扱いの賃金として挙がっています*2。

Q2. 在宅勤務手当に所得税はかかりますか

A. 実費を精算する方法で払われるなら、課税の対象外です*3。使い残しを返さなくてよい定額の手当は、給与として課税されます*3。

Q3. 地方に住んでフルリモートで働くと最低賃金は住んでいる県のものですか

A. 住んでいる県ではなく、会社の事業場がある都道府県で決まります*1。テレワークをする場所には左右されません。

Q4. 会社から在宅勤務に切り替えると言われたら断れますか

A. 契約で決まっている勤務場所や業務の進め方の範囲を超える場合は、本人が合意したうえで労働契約を変える必要があります*1。合意の前に、基本給と手当がどう変わるかを書面で聞いておきます。

Q5. 在宅勤務手当の計算方法が書かれていない会社は実費の精算と言えますか

A. 就業規則などで実費弁償分の計算方法が明示されていることが、実費の精算と認められるための条件に入っています*2。計算方法が書かれていない手当は、求人の段階で、実費の精算なのか渡切りなのかを会社に聞きます。

Q6. 会社から机や椅子をもらうと課税されますか

A. 会社の所有のまま貸してもらうなら、給与としての課税はありません。所有権が本人に移る形で支給された場合は、現物給与として課税されます*3。

7. まとめ:フルリモートの年収は手当と基本給を項目ごとに並べて比べる

この記事のまとめ

  • フルリモートで年収が下がるかは、通勤手当・在宅勤務手当・基本給の決まり方で変わります。
  • 在宅勤務手当は、実費の精算なら割増賃金の計算に入らず課税もされず、毎月の定額の渡切りなら入って課税されます*2*3。
  • 基本給は労働契約で決まり、範囲を超えるテレワークでは契約の変更に本人の合意が要ります*1。
  • 最低賃金は、テレワークをする場所に関わらず、事業場の所在地のものです*1。

求人票と就業規則から手当の名前と形を書き出し、現在の年収と項目をそろえて、差を金額で出します。

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出典・参考情報

*1 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)
*2 割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて(令和6年4月5日基発0405第6号・厚生労働省労働基準局長)
*3 在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)(国税庁)
*4 令和7年度 テレワーク人口実態調査(国土交通省)プレス

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