自己都合退職を会社都合に変更できる?離職票の離職理由と異議

会社に辞めるよう勧められた、残業が続いて体を壊しそうだったなど、実際は会社の事情で辞めたのに、離職票の離職理由が「自己都合」になっていることがあります。失業給付の扱いが変わるので、会社都合に直したいと考える人もいます。
自己都合退職と書かれていても、離職票に異議があることを書き、裏づけの資料を出せば、会社都合として扱われる可能性があります。離職理由を最終的に判断するのは、事業主と離職者の両方の主張と資料を見たハローワークです*1。退職勧奨やハラスメント、長時間の残業などで辞めた人は、特定受給資格者に当たることがあります*2。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 離職理由は、事業主の記載と離職者の記載の両方を、裏づけの資料とあわせて見たうえでハローワークが判断します*1。
- 退職勧奨、ハラスメント、離職前6か月のうち連続3か月で45時間を超える残業などで辞めた人は、特定受給資格者に当たります*2。
- ハローワークの判断に不服があるときは、知った日の翌日から3か月以内に雇用保険審査官に審査請求できます*4。
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1. 自己都合退職でも会社都合と判断されることはある
離職票に自己都合と書かれていても、異議を出して資料で裏づければ、会社都合として判断されることがあります。どちらの理由で扱うかは、ハローワークが決めます*1。
離職票は、会社がハローワークに出した離職証明書をもとに作られ、離職者に渡されます*1。離職理由の欄には、まず事業主が書いた理由が載っています。離職者はそれを読んで、認識と違うなら異議があることを書き、離職票を住んでいる場所を受け持つハローワークに出します*1。
ハローワークは、事業主が書いた離職理由について、裏づけとなる客観的な資料を見ます*1。離職者が異議を出した場合は、離職者が書いた離職理由と、その裏づけの資料もあわせて見ることになっています*1。必要なら両方から改めて話を聞き、資料を吟味して離職理由を判断します*1。
つまり、会社が自己都合と書いたら必ずそのまま決まる、という仕組みではありません。会社の事情で辞めたことを示せる資料があれば、それを出すことで判断が変わる余地があります。
離職理由の欄は、失業給付の手続きの入口になる大事な欄です。会社が書いた理由に納得できないまま離職票を出すと、そのまま手続きが進みます。違うと思ったら、その場で異議を書いておくのが、あとから直すよりも手間がかかりません。
あわせて読みたい | 失業給付の自己都合と会社都合の違い|離職票のどこに書いてあるか
2. 会社都合として扱われる主な離職理由
特定受給資格者の範囲には、会社の事情で辞めた場合が具体的に並んでいます*2。自己都合と書かれやすいものの、実際は次のような事情だった人は、異議を出す前に当てはまるかを見てください。
特定受給資格者に当たる主な離職理由(ハローワークの範囲から抜粋)
| 事情 | 特定受給資格者に当たる場合 |
|---|---|
| 退職勧奨 | 事業主から直接または間接に退職するよう勧められて離職した。恒常的な早期退職優遇制度への応募は除く*2 |
| 長時間の残業 | 離職前6か月のうち、連続3か月で45時間、1か月で100時間、連続2か月以上の平均で80時間のいずれかを超えた*2 |
| 賃金の不払い | 賃金の額の3分の1を超える額が支払期日までに払われなかった*2 |
| 賃金の低下 | 賃金が85%未満に下がった(予見できなかった場合)*2 |
| ハラスメント | 上司や同僚からの故意の排斥や著しい冷遇、嫌がらせを受けた*2 |
長時間の残業は、離職の直前6か月の時間外労働で見ます*2。基準は3つあります*2。連続する3か月でいずれも45時間を超えた場合と、どこか1か月で100時間を超えた場合、連続2か月以上の平均が月80時間を超えた場合です*2。タイムカードや勤怠のシステムの写しがあれば、当てはまるかを数字で示せます。
賃金の不払いは、賃金の額の3分の1を超える額が支払期日までに払われなかった場合が対象です*2。退職勧奨は、早期退職優遇制度のように前から設けられている制度に自分で応募した場合は当たりません*2。
3. 離職理由に異議を出してから判断までの流れ
離職票を受け取ってから、ハローワークが離職理由を判断するまでは、次の順に進みます*1。資料は、離職票を出すときにそろえておくと話が早く進みます。
離職票を受け取ったら、事業主が書いた離職理由を読みます。自分の受け止めと食い違っていれば、異議があることを書き、自分の離職理由を記入して、住所を受け持つハローワークに出します*1。
異議を出したときに見られるのは、自分が書いた離職理由の裏づけです*1。勧奨の言葉が残ったメール、残業時間が分かる勤怠の記録、給与明細、嫌がらせの内容を書いたメモなど、事実を示せるものを持っていきます。
ハローワークは、必要があれば、離職理由について離職者と事業主の両方から聞き取りをします*1。そのうえで、両方の記載と資料を比べて離職理由を決めます*1。
離職票を出すときの窓口では、自分の離職理由を口頭でも説明します。資料を見せながら、いつ、何があって辞めたのかを順に話せるよう、事実を時系列で書いたメモを1枚用意しておくと伝わりやすくなります。
4. 会社都合になると変わる失業給付の扱い
正当な理由がなく自己都合で退職した場合は、給付制限(基本手当が支給されない期間)がかかります*3。受給資格の決定日から7日間の待期期間が終わったあとに始まり、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です*3。
ただし、退職日からさかのぼって5年の間に、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格の決定を受けている場合は、給付制限は3か月になります*3。会社都合として判断されれば、この給付制限はかかりません。
特定受給資格者に当たると、給付制限がないことに加えて、基本手当の所定給付日数が自己都合の場合より多くなることがあります。何日になるかは年齢と雇用保険に入っていた期間で決まるので、判断が出たらハローワークで日数を聞いてください。
給付制限が終わるのを待たずに再就職が決まることもあります。会社都合と認められるまでの間も求職活動は続けられるので、離職理由の判断を待つあいだに、次の職場探しを進めておくと空白の期間を短くできます。
あわせて読みたい | 離職票の離職理由一覧|会社都合と認められる17の場合
5. 異議を出す前にそろえる資料
会社都合と判断されるかどうかは、資料で事実を示せるかにかかっています。辞める前から記録を残しておくのが、何よりの準備です。辞めるよう勧められたなら、その日付と言われた言葉、メールやチャットのメッセージを保存しておきます。
残業が理由なら、勤怠のシステムの画面やタイムカードの写し、業務のメールを送った時刻が分かるものを集めます。賃金の不払いなら、給与明細と雇用契約書で、払われるはずの額と実際の額の違いを示します。
嫌がらせが理由なら、いつ、誰から、何をされたかを書いたメモと、相談した記録を残します。会社の相談窓口や労働局に相談していれば、その日付も資料の1つです。辞めたあとでは集めにくい資料もあるので、退職を考え始めた時点で、手元に残しておくものを決めておきます。
退職勧奨を受けて辞めた場合は、勧奨に応じて退職しても自己都合による退職とはならないとされています*5。退職届に「一身上の都合」と書いていても、勧奨を受けた経緯を資料で示せれば、その事情をハローワークに伝えられます。退職届を出したときのやり取りも、メールで残しておきます。
6. ハローワークの判断に納得できないときの審査請求
ハローワークの判断に不服があるときは、雇用保険審査官に審査請求ができます*4。審査請求は文書でも口頭でもよく、期限は処分のあったことを知った日の翌日から3か月以内です*4。ハローワークを通じて出すことも、都道府県労働局の雇用保険審査官に直接出すこともできます*4。
審査請求で棄却の決定が出たとき、または3か月を過ぎても決定がないときは、労働保険審査会に再審査請求ができます*4。再審査請求の期間は、決定書が届いた日の翌日から2か月以内です*4。
審査請求の書面には、ハローワークのどの判断に不服があるのかと、その理由を書きます。離職票を出したときに見せた資料に加えて、あとから見つかったメールや記録があれば、一緒に出すことができます。
審査請求をするかどうか迷うときは、まず判断の理由をハローワークで聞きます。どの点の裏づけがもう一歩と見られたのかが分かれば、追加で出せる資料がないかを考えられます。
7. よくある質問
Q1. 自己都合退職を会社都合に変えてもらえますか?
A. 離職票に異議を書いて資料を出せば、ハローワークが両方の主張を見て判断します*1。会社が書いた理由のままで決まるわけではありません。
Q2. どんな理由なら会社都合になりますか?
A. 退職勧奨、長時間の残業、賃金の不払い、嫌がらせなどで辞めた場合は、特定受給資格者に当たることがあります*2。
Q3. 自己都合だと失業給付はいつからもらえますか?
A. 7日間の待期期間のあと、2025年4月1日以降の退職なら原則1か月の給付制限があります*3。会社の事情による離職と認められれば、給付制限の1か月を待たず、7日間の待期期間のあとから受け取れる形になります。
Q4. 異議を出すとき何を持っていけばいいですか?
A. 事実を日付つきで示せるものです。勧奨の記録、残業の時間、払われなかった賃金の額、嫌がらせの経緯が分かる書類を選びます。
Q5. 判断に納得できないときはどうすればいいですか?
A. 雇用保険審査官への審査請求です*4。期限は3か月なので、決定を知ったら早めに動きます。
Q6. 異議を出したことは前の会社に伝わりますか?
A. 必要な場合は、会社側も離職理由について話を聞かれます*1。会社に事情を聞かれることもあると考えて、資料をそろえておきます。
8. まとめ:自己都合退職を会社都合に変えるには異議と資料
この記事のまとめ
- 離職理由は、事業主と離職者の主張と資料をもとにハローワークが判断する*1
- 離職票に異議ありと書き、自分の離職理由と資料を出す*1
- 退職勧奨や長時間の残業、賃金の不払い、嫌がらせは特定受給資格者に当たることがある*2
- 自己都合の給付制限は、2025年4月以降の退職なら原則1か月*3
- 判断に不服なら、3か月以内に雇用保険審査官に審査請求できる*4
離職票が届いたら、離職理由の欄を読み、違っていれば異議ありと書いて、勧奨のメールや勤怠の記録を持ってハローワークに行ってください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 基本手当について(離職理由の判断手続きの流れ)(ハローワークインターネットサービス)
*2 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(ハローワークインターネットサービス)
*3 令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます(厚生労働省・令和7年2月)
*4 雇用保険の審査請求制度のご案内(厚生労働省・令和7年4月)
*5 知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~(厚生労働省・令和8年4月更新版)
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