年末調整は2026年に何が変わる?国税庁が挙げる基礎控除の引上げ

国税庁によると、2026年の年末調整では基礎控除が62万円(改正前58万円)を基本に引き上げられます*1。年末調整は会社が12月に1年分の所得税を計算し直して精算する手続きです。給与所得控除(給与の収入から差し引く額)の最低保障額も65万円から74万円に増えます*1。
改正後の額は、この12月の精算から使われます*1。11月までは、給与から改正前と同じ計算で所得税が引かれています*1。そのため、11月30日までに年内最後の給与を受けた退職者は、確定申告などをしないと改正後の控除が使えません*2。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 扶養親族として申告できる人の所得の上限は、58万円以下から62万円以下に上がります*1。収入が給与だけの人なら、123万円以下が136万円以下に変わります*1。
- 年の途中で転職して12月に次の会社で年末調整を受ける人は、改正後の控除で1年分が計算されます*1。その年の最後の給与を11月30日までに受けて退職した人は、確定申告などで改正後の控除を受けます*2。
- 扶養控除等申告書の記載事項は変わりませんが、改正で新たに扶養親族に加わる人は書き加えて出します*2。改正を反映した書類は、12月1日より前に出しても差し支えありません*2。
1. 2026年の年末調整で変わる基礎控除など3つの改正
令和8年分の年末調整では、所得税の基礎控除が58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ引き上げられます*1。基礎控除の62万円には、合計所得金額(給与や事業などの所得を1年分合計した額)に応じた加算が設けられています*1。扶養親族として申告できる人の所得の上限(所得要件)も、58万円以下から62万円以下に上がりました*1。改正は原則として令和8年12月1日に施行され、12月の精算から計算が変わります*1。
3つの改正は、どれも令和8年度税制改正で行われました*1。国税庁は「令和8年分 年末調整のしかた」で、基礎控除の引上げと最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正を昨年と比べて変わった点に挙げています*1。適用されるのは、令和8年分以後の所得税です*1。申告書の書き方などは、国税庁が令和8年5月に出した「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」にも載っています*2。
実際に関わる人は、改正ごとに違います。基礎控除の引上げは、12月に精算を受ける人の1年分の計算に入ります*1。最低保障額の引上げで所得が小さく出るのは、給与の収入が少ない人です。所得要件の引上げは、扶養親族に所得がある人の申告に関わります*1。
2. 12月の年末調整で1年分を精算する
まず、11月までの給与からは、改正前の源泉徴収税額表(毎月の給与から引く所得税を決める表)で所得税が引かれています*1。12月の精算では、引上げ後の基礎控除額と改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で1年間の税額を計算します*1。そのうえで、11月までに引いてきた所得税との差額を精算します*1。
そのため、11月の給与明細に載る所得税が改正前の計算のままでも、会社の手違いではありません*1。改正で変わる分は、12月にまとめて精算されます*1。精算の計算には、会社に出した申告書の額が使われるため、申告書は改正後の額で書いてください*2。
ただし、改正後の控除が使われるのは12月の給与の分だけではありません*1。施行は原則として12月1日でも、12月の精算では年の初めから受けた給与を含む1年分を、改正後の控除で計算し直します*1。
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3. 11月30日までに最後の給与を受けた退職者は確定申告が要る
国税庁のQ&Aによると、令和8年分の最後の給与を11月30日以前に受けた人の年末調整では、改正後の基礎控除などは使われません*2。年の途中で退職した人などが、これに当たります*2。改正後の控除を受けるには、確定申告などの手続きが必要です*2。
ただし、Q&Aで分かれ目になっているのは退職日ではなく、最後の給与が支払われた日です*2。11月30日は、改正が施行される12月1日の前日にあたります*1。11月30日の前後に退職する人は、最後の給与がいつ支払われるかを会社に聞いておいてください。
一方、年の途中で転職し、12月に次の会社で年末調整を受ける人は、改正後の控除で1年分が計算されます*1。次の会社は前の会社の給与も含めて1年分を計算するので、前職の源泉徴収票をその会社へ出してください。入社が12月になる人も、その会社で12月の精算を受けるなら同じ扱いです*1。
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4. 給与だけの扶養親族は136万円以下なら所得要件を満たす
扶養親族の所得要件は「所得62万円以下」で、62万円は所得税法の基礎控除額と同じ額です*1。収入が給与だけの人の136万円以下は、この62万円に最低保障額の74万円を足した額にあたります*1。改正前も、58万円に65万円を足した123万円が給与だけの人の上限でした*1。
そのため、扶養親族に給与の収入がある人は、12月の精算の前にその扶養親族の1年分の給与が136万円以下に収まるかを見積もってください。改正前の123万円を超えていても、136万円以下なら所得要件を満たします*1。この場合は、改正で新たに扶養親族に加わる人として扶養控除等申告書に書き加えます*2。
実際に見積もるときは、12月に支払われる給与まで含めた1年分で数えてください。所得要件は令和8年分の1年間の所得で見るため、年末に近い月の給与を抜くと額が小さく出ます*1。申告したあとで1年分が136万円を超えると分かったときは、会社の担当者に伝えてください。
5. 改正前と改正後で変わる控除の額と所得要件
3つの改正のほかに、年齢23歳未満の扶養親族がいる人の一般生命保険料控除も改正されました*1。令和8年分と令和9年分に限って、適用限度額が4万円から6万円に上がります*1。一般・介護医療・個人年金の3つの生命保険料控除を合わせた限度額は、改正前と同じです*1。
改正前と改正後の額
| 項目 | 改正前 | 改正後(令和8年分から) |
|---|---|---|
| 所得税法の基礎控除額 | 58万円 | 62万円(合計所得金額に応じた加算あり) |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 |
| 扶養親族などの所得要件 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 収入が給与だけの場合の所得要件 | 給与の収入123万円以下 | 給与の収入136万円以下 |
| 一般生命保険料控除の適用限度額(23歳未満の扶養親族がいる場合) | 4万円 | 6万円(令和8・9年分) |
基礎控除の行にある加算は、合計所得金額によって額が分かれます*1。収入が給与だけの人なら、給与の収入から給与所得控除を引いた額が合計所得金額です。前に挙げた国税庁の手引きには合計所得金額ごとの金額の表が載っているので、その額が当たる行を読んでください*1。読み取った額は、基礎控除申告書にそのまま書き写します*2。
6. 申告書に改正後の額を書く3つの欄
扶養控除等申告書の記載事項そのものは、改正の前後で変わりません*2。ただし、12月の精算に向けて出す申告書には、改正後の額や新しく扶養親族になる人を書き込む欄があります*2。国税庁のQ&Aでは、次の3つの書き方が示されています*2。
改正後の額で書く3つの欄
- 扶養控除等申告書:改正で新たに扶養親族などに加わる人を記入し、「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと書いて出します*2
- 基礎控除申告書:書き込むのは、合計所得金額に応じた改正後の基礎控除額です*2
- 配偶者(特別)控除の額:配偶者に給与所得があるときは、改正後の給与所得控除額で出した配偶者の合計所得金額に応じて書きます*2
たとえば収入が給与だけの配偶者なら、給与の収入から改正後の給与所得控除額を差し引いた額が、その人の合計所得金額です*2。最低保障額が上がったため、給与の収入が少ない配偶者の合計所得金額は、改正前より小さいか同じです*1。改正前の最低保障額65万円で引いたまま書くと、配偶者(特別)控除の額を誤る場合があります。
申告書は、会社から配られた様式が改正を反映したものかを見てから書いてください。様式が改正前のものだったときは、書き方を会社の担当者に聞いてください。
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7. 2026年の年末調整でよくある質問
Q1. 11月の給与から引かれる所得税も改正後の額で計算されますか
A. 計算されません。令和8年11月までの給与は、改正前の決まりのまま所得税が引かれます*1。改正で変わる分をまとめて精算するのは、12月の年末調整です*1。
Q2. 改正を反映した年末調整の書類を12月1日より前に出してもよいですか
A. 差し支えありません。国税庁はQ&Aで、12月1日からの改正を反映した書類なら、12月1日より前に出してもよいとしています*2。11月中に会社から書類を求められたときも、改正後の額で書いたものを出せます。
Q3. 年の途中で入社した会社でも改正後の控除で年末調整されますか
A. 12月に入社先で精算を受けるなら、1年分の計算に改正後の控除が使われます*1。前の会社で受け取った給与も合わせて計算するため、入社先には前職の源泉徴収票を渡してください。改正後の控除を受けるために、自分で確定申告をする必要はありません。
Q4. 改正後の控除は令和8年分だけの扱いですか
A. 令和8年分だけではありません。改正は令和8年分以後の所得税に適用されます*1。ただし、23歳未満の扶養親族を持つ人の一般生命保険料控除の上乗せは、令和8・9年分だけです*1。
Q5. 2026年の年末調整の変更点は国税庁のどの資料に載っていますか
A. 国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」と「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」の2つに載っています*1*2。1つ目の手引きには、昨年と比べて変わった点がまとめられています*1。申告書の書き方や、年の途中で退職した人の扱いは、Q&Aのほうにあります*2。
8. まとめ:2026年の年末調整は12月から改正後の控除で計算
この記事のまとめ
- 基礎控除は62万円(改正前58万円)を基本に、給与所得控除の最低保障額は74万円(改正前65万円)に上がります*1
- 改正後の額を使うのは12月の年末調整からで、11月までの給与の所得税は改正前の計算のままです*1
- 扶養親族の所得要件は62万円以下になり、給与だけの人なら136万円以下で満たします*1
- その年の最後の給与を11月30日以前に受けた退職者などは、確定申告などで改正後の控除を受けます*2
- 基礎控除申告書と配偶者(特別)控除の額は改正後の額で書き、改正で加わる扶養親族は扶養控除等申告書に書き足します*2
年内に退職や転職の予定がある人は、最後の給与の支給日と、12月に年末調整を受ける会社があるかを先に書き出してください。その2つで、改正後の控除を12月の精算で受けるのか、確定申告などで受けるのかが分かれます*2。給与の収入がある扶養親族については、1年の給与が136万円を超えないかも12月の前に見ておいてください。
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出典・参考情報
*1 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」Ⅰ 昨年と比べて変わった点(2026年確認)
*2 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月/2026年確認)
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