退職代行の労働組合と弁護士の違いは?会社と交渉できる範囲

退職代行を使おうと調べると、運営しているのが弁護士の場合、労働組合の場合、そのどちらでもない会社の場合があります。料金だけで選んでよいのか、何が違うのかが分からず迷う人もいます。
退職代行の労働組合と弁護士の違いは、会社と話し合える範囲です。弁護士なら、残業代や慰謝料のような法律的な問題も含めて任せられます*1。労働組合は、組合員のために使用者と交渉する権限を持ちます*2。弁護士でも労働組合でもない業者が、お金を受け取って法律的な問題を代わりに交渉することは非弁行為に当たるとされています*4。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事務を代理することを仕事にすることは、弁護士法第72条で禁じられています*1。
- 労働組合の代表者などは、組合員のために使用者と交渉する権限を持ち、使用者は正当な理由なく団体交渉を拒めません*2。
- 残業代、パワハラの慰謝料、退職金、有給休暇の取得などは法律的な問題で、業者が代わりに話し合うと非弁行為になる可能性があります*4。
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1. 退職代行の労働組合と弁護士の違いは交渉できる範囲
弁護士は、退職にからむ法律的な問題まで本人に代わって会社と交渉できます。労働組合は組合員のために団体交渉ができ、どちらでもない業者は退職の意思を伝えるところまでが目安です*1*2*4。
一般に、退職代行サービスは、業者にお金を払い、業者が本人に代わって退職の意思を会社へ伝えるサービスです*4。ところが、退職には会社との相談ごとが含まれる場合があり、その話し合いを誰がしてよいかが、運営する人によって違ってきます。
その制限を定めているのが弁護士法第72条です*1。弁護士や弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、法律事件の代理や和解などの法律事務を仕事として扱えません*1。弁護士が運営する退職代行なら、この制限はかかりません。
一方、労働組合は、労働組合法第6条により、組合員のために使用者と労働協約の締結などについて交渉する権限を持っています*2。使用者は、雇っている労働者の代表者との団体交渉を、正当な理由なく拒んではならないとされています*2。組合が交渉できるのは組合員のためなので、組合が運営する退職代行に頼むときは、その組合に入って組合員として依頼する形になります。
つまり、同じ「退職代行」という名前でも、中身は運営する人によって大きく違います。辞める意思を伝えるだけで済む人と、会社と決めたいことがある人とでは、選ぶべき相手が変わります。
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2. 運営する人ごとにできることの違い
退職代行を運営する人ごとに、法律の上でできることを並べました。料金やサービスの名前ではなく、誰が運営しているかで見てください。
退職代行の運営する人とできること
| 運営する人 | 根拠になる法律 | 会社との話し合い |
|---|---|---|
| 弁護士・弁護士法人 | 弁護士法 | 法律的な問題も本人の代理で交渉できる*1 |
| 労働組合 | 労働組合法第6条・第7条 | 組合員のために団体交渉ができる*2。ただし必ず非弁行為にならないとは限らない*4 |
| 弁護士でも労働組合でもない業者 | 弁護士法第72条の制限を受ける | 報酬を得て法律的な問題を代わりに交渉すると非弁行為になる*1*4 |
資格のない業者が、本人に代わって法律的な問題について会社と話をすることは非弁行為だとされています*4。業者ができるのは、本人の退職の意思を会社に伝えるところまでと考えておくのが安全です。
労働組合と提携している業者の場合も、注意が要ります。お金を受け取って、法律的な問題の処理を提携先の労働組合にあっせんすることは非弁行為だとされています*4。労働組合が自分で交渉する場合でも、その行為が必ず非弁行為にならないとは限らないと注意されています*4。
運営する人がどれに当たるかは、サイトの会社概要や利用規約、契約書に書かれています。弁護士なら弁護士の名前と所属する弁護士会、労働組合なら組合の名前と所在地が載っているかを見ます。
3. 退職にからむ法律的な問題の例
退職そのものは会社を辞めるだけのことに見えても、実際には会社と話し合って決めておくことがあります*4。たとえば、払われていない残業代、在職中に受けたパワハラの慰謝料、退職金、残っている有給休暇の取得などです*4。これらはいずれも法律的な問題とされています*4。
残業代は、労働基準法で認められた労働者の権利で、あるかどうかや具体的な金額の計算は法律的な問題です*4。残業代の計算は意外と難しく、支払われても、正しく計算すれば本来より少ない金額のこともありえると説明されています*4。
契約期間の途中で会社を辞めることや、パワハラの慰謝料などの損害賠償を求めることも、法律的な問題に当たります*4。こうした問題を抱えたまま退職代行を使うなら、話し合いまで頼める相手かどうかが大事になります。
ITエンジニアの場合は、貸与されたパソコンの返却や、担当していたシステムの引き継ぎのやり方を会社と決める必要が出ることもあります。こうした事務的な連絡まで退職代行に任せるのか、自分でするのかも、頼む前に決めておくと、会社とのやり取りが途中で止まりません。
4. 退職代行を使う前に考える順番
まず、会社と話し合って決めたいことを書き出します。残業代を払ってほしい、有給休暇を使い切ってから辞めたい、退職金の額に疑問がある、といったことがあれば、それは法律的な問題です*4。
話し合うことが何もなく、辞める意思を伝えたいだけなら、退職届を自分で出す道もあります。民法では、雇用期間の定めがない正社員は申し入れから2週間で辞められるとされているので*3、会社の同意が無くても退職はできます。手続きそのものは難しくありません。会社に直接言いにくいときは、書面を郵送で送るやり方もあります。
話し合いが要るなら、法律事務を扱える弁護士に頼むのが確かです*1。契約する前に、運営しているのが誰なのか、料金でどこまでしてもらえるのかを、書面で示してもらいます。
迷ったときは、会社とお金や日付のことで話し合う必要があるかどうかを最初の分かれ目にすると、頼む相手を選びやすくなります。未払いの残業代や退職金のように、会社と争う見込みが高いものがあるなら、はじめから弁護士に相談しておくと、途中で頼む先を変える手間がかかりません。
5. 退職代行を頼む前に読むこと
退職代行のサイトや契約書で、運営している人の名前を見ます。弁護士なら所属する弁護士会と名前、組合なら団体の名前が書かれているはずです。どちらも書かれていない場合は、資格を持たない運営者だと考えて、頼める中身の範囲を見直します。
料金にどこまでの対応が含まれるかも読みます。退職の意思を伝えるだけなのか、有給休暇の取得や退職日の調整まで話し合うのかで、頼める相手が違います*4。説明を読んでも分からないときは、契約の前に質問し、答えをメールなどで残しておくと安心です。
会社から本人に直接連絡が来た場合にどうするかも、決めておくべきことです。退職代行に頼んでも、会社が本人に連絡してくることはありえます。そのときに自分で応じるのか、代行を通してもらうのかを、事前に相談しておくと慌てずに済みます。
2025年10月には、弁護士法違反の疑いで退職代行の運営会社などに強制捜査が入ったことを受けて、東京弁護士会が改めて注意を呼びかけました*4。料金の安さだけで選ばず、誰が何をしてくれるのかを先に見ておくことが大切です。
6. 自分で退職を伝えるときの進め方
退職代行を使わずに辞めることもできます。期間の定めのない雇用なら、当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間で雇用は終わると民法第627条に定められています*3。会社の承諾を待つ必要はありません。
上司に直接言いにくいなら、退職届を書面で作り、人事の担当部署あてに郵送する方法があります。送った日と中身が後から分かるよう、写しを残し、配達の記録が残る方法で送ります。
引き止めが強くて話が進まないときや、会社に辞めさせてもらえないと感じるときは、総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談できます。退職代行を頼むかは、相談で状況を整理してから決めても間に合います。
退職届には、退職する日と、自分の名前、提出した日を書きます。民法第627条は申入れに理由を求めていないので*3、理由は「一身上の都合」と書けば足ります。担当していた仕事の資料や、貸与された機器の一覧を先にまとめておくと、退職日までの会社とのやり取りも短くなるでしょう。
退職日までに有給休暇が残っているなら、その使い方も退職届と一緒に伝えておきましょう。会社と話し合うことが出てきた時点で、自分で進めるのが難しいと感じたら、そこから弁護士に相談しても遅くはありません。
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7. よくある質問
Q1. 退職代行の労働組合と弁護士は何が違いますか?
A. 話し合える中身の広さが違います。弁護士は残業代などの法律的な問題まで扱え*1、組合は組合員の立場で会社に団体交渉を申し入れます*2。
Q2. 弁護士でない業者の退職代行は使ってはいけませんか?
A. 退職の意思を伝えてもらうだけなら使えます。弁護士会が非弁行為の例に挙げているのは、業者が残業代や慰謝料を本人に代わって交渉した場面です*4。頼む前に、伝えるだけなのか交渉までするのかを契約書で読んでおくことが大切です。
Q3. 労働組合の退職代行なら交渉まで任せて大丈夫ですか?
A. 組合が自分で話し合う場合も、やり方しだいで法律に触れるおそれがあると弁護士会は注意しています*4。
Q4. 退職代行を使わずに辞められますか?
A. 辞められます。正社員のように期間を決めずに雇われているなら、申し出た日から2週間がたてば雇用は終わります*3。
Q5. 残業代を請求したいときは誰に頼めばいいですか?
A. 残業代は法律的な問題です*4。金額の計算から会社とのやり取りまで任せるなら、弁護士に相談します*1。
Q6. 退職代行に頼むと有給休暇は使えますか?
A. 有給休暇の取得は法律的な問題に当たるとされています*4。使い切ってから辞めたいなら、交渉まで扱える相手に頼むか、自分で休暇を請求します。
8. まとめ:退職代行は運営する人で交渉できる範囲が変わる
この記事のまとめ
- 弁護士は法律的な問題も本人の代理で会社と交渉できる*1
- 労働組合は組合員のために団体交渉ができる*2
- 弁護士でも労働組合でもない業者が報酬を得て法律的な問題を交渉すると非弁行為になる*4
- 残業代・慰謝料・退職金・有給休暇の取得は法律的な問題*4
- 退職の意思を伝えるだけなら、申入れから2週間で雇用は終わる*3
退職代行を使う前に、会社と話し合いたいことを書き出し、話し合いが要るなら弁護士に、要らないなら自分で退職届を出す方法も考えてから決めてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)
*2 労働組合法 第6条・第7条(e-Gov法令検索)
*3 民法 第627条(e-Gov法令検索)
*4 退職代行サービスと弁護士法違反に関する注意喚起(東京弁護士会・2025年10月22日)
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