脆弱性診断の経験を転職でどう見せるか|評価される実績
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

脆弱性診断の経験を職務経歴書に書くとき、使ったツールの種類や検出した件数を並べる書き方では、実務での評価の分かれ目までは伝わりません。診断は、脆弱性を検出する工程と、検出した内容を報告書にまとめて改善の優先度を示す工程に分かれます。転職の場面で問われるのは、後者をどこまで担ったかです。
この記事の中心にあるのは、診断ツールを回せることではなく、検出した脆弱性に優先度をつけて報告書と改善提案までまとめられるかが、転職での評価の分かれ目になるという視点です。
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この記事のポイント
- 脆弱性診断の実績は、検出した件数ではなく、報告のしかたで伝わる範囲が変わります
- 見つけた問題に優先度をつけて示せるかどうかが、評価の分かれ目になります
- 職務経歴書に書く内容は、診断のどの工程を担当したかで変わります
1. 脆弱性診断の経験は、報告のしかたまでが実績です
脆弱性診断は、ツールや手順に沿って脆弱性を検出する工程と、検出した内容を報告書にまとめて改善の優先度を示す工程に分かれます。ウェブサイトの脆弱性に関する解説や対策は、IPAなど公的機関から公開されています*1。転職の場面で問われるのは、検出後の報告と提案をどこまで担ったかです。
「脆弱性診断の経験がある」という一文だけでは、担当した範囲が読み手に伝わりません。診断の作業には、脆弱性を見つける工程と、見つけた内容を関係者に伝わる形でまとめる工程があり、後者を担った経験のほうが、実務での評価につながりやすくなります。
使ったツールの名前や、検出した件数の多さを並べる書き方は、作業量の目安にはなりますが、それだけでは判断の中身までは伝わりません。読み手が知りたいのは、検出した後にどう扱ったかという部分です。
診断の工程を4つの段に分けたうえで、報告書と改善提案の作成という部分に絞り、職務経歴書にどう書けるかを見ていきます。
採用側が職務経歴書を読むときも、担当した工程の範囲を手がかりにします。診断ツールの操作経験だけを示す一文と、報告と改善提案まで担った一文とでは、面談で確かめたい内容が変わってきます。
2. 診断の仕事は4つの段に分かれます
4つの段のうち、「実施」はツールや手順が決まっていれば進められる部分です。一方で「報告」は、検出した内容のうちどれを先に伝えるべきかを整理する作業であり、依頼元の事情を踏まえた判断が求められます。
「改善の確認」まで担当した経験があるかどうかも、伝えておく価値があります。報告して終わりではなく、改善案が実際にどう扱われたかまで確認した経験は、診断を一度きりの作業として扱わなかった証拠になります。
職務経歴書には、4つの段のうちどこからどこまでを担当したかを書きます。「実施のみ」なのか「報告まで」なのか「改善の確認まで」なのかで、伝わる範囲が変わります。
4つの段を初めて意識する場合は、直近に担当した診断業務を思い出しながら、どの段に一番時間を使ったかを書き出してみます。書き出した段が「実施」だけに偏っているなら、次の診断で「報告」の作成に関わる機会を探す目安にもなります。
3. 同じ診断経験でも、書き方で伝わる範囲が変わります
同じ診断業務に携わった経験でも、職務経歴書での書き方によって、読み手に伝わる情報の範囲が変わります。3つの書き方を並べます。
職務経歴書の書き方と、読み手に伝わる範囲
| 職務経歴書の書き方 | 読み手が受け取る情報 | 足すと伝わること |
|---|---|---|
| 使用したツール名だけを書く | 診断の作業を担当したという情報にとどまります | 検出後にどう扱ったかが伝わりません |
| 検出件数を書く | 作業量の目安として伝わります | 件数の多さと判断の質は別だと伝わりません |
| 報告書の作成と優先度づけを書く | 検出後に何を判断したかが伝わります | 改善提案まで担った範囲が伝わります |
ツール名や検出件数は、診断の作業に携わったことを示す情報としては成立します。ただし、そこで止めてしまうと、読み手には「作業を担当した」という以上の情報が伝わりません。
報告書の作成と優先度づけまで書くと、検出した内容をどう扱ったかという判断の部分が伝わります。判断の部分こそが、ツールを操作した経験と区別される実務の実績です。
3つの書き方は排他的ではありません。ツール名や件数を書いたうえで、報告と優先度づけの部分を書き足すことで、伝わる範囲を広げられます。
書き方を選ぶ際は、実際に自分が担当した範囲を超えて書かないようにします。報告書の作成に関わっていないのであれば、関わっていないとおりに書きます。担当していない部分を大きく見せる書き方は、面談で範囲を確かめられたときに食い違いのもとになります。
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4. 優先度をつけた経験が、実務の証明になります
診断で検出できる件数は、対象範囲や診断の深さによって変わります。件数の多さそのものは、担当者の判断力を示す指標にはなりません。評価の対象になるのは、検出した内容のうち何を先に直すべきと判断したかという部分です。
優先度をつけるという作業は、脆弱性の技術的な深刻さだけでなく、影響を受けるシステムの範囲や、対応にかけられる時間との兼ね合いを踏まえて行われます。この兼ね合いを踏まえた判断こそが、ツールの操作とは別の実務の経験にあたります。
職務経歴書に書く際は、「何件検出したか」ではなく「どの基準で優先度を決めたか」を一文で添えます。基準を一文で書けること自体が、その場で判断を担っていた証拠になります。
優先度の判断を、脆弱性そのものの深刻度だけで説明するか、対象システムの業務上の位置づけまで含めて説明するかで、伝わる判断の幅が変わります。後者まで一言添えられると、技術面だけでなく業務全体を見て判断していたことが伝わります。
優先度づけの経験がまだ浅い場合は、無理に断定して書く必要はありません。どの工程まで携わったかを正直に書いたうえで、次に担いたい範囲を添えるだけでも、読み手には現在地が伝わります。
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5. ツールの運用と、体制づくりの間のどこにいるか
脆弱性診断に携わった経験は、「ツールの運用が中心」から「体制づくりまで担う」までの間のどこかに位置します。自分の経験がどのあたりにあるかを確かめます。
「ツールの運用が中心」側にあるのは、決められた手順に沿って診断を実施し、結果をそのまま報告する経験です。「体制づくりまで担う」側にあるのは、報告書の様式を整えたり、優先度を判断する基準を関係者とすり合わせたりした経験です。
多くの担当者は、この2つの間のどこかに位置しています。どちらか一方だけの経験しかない、という前提で考える必要はありません。
自分の立ち位置を確かめる目安は、報告の仕組みそのものに関わったことがあるかどうかです。決められた様式に沿って報告書を書いていたのか、様式や基準を作る側にいたのかで、立ち位置は変わります。
面談では、この立ち位置を自分の言葉で説明できることが役立ちます。「体制づくりまで担っていました」と言い切れなくても、「報告の基準をすり合わせる場に加わっていました」のように、関わった範囲を具体的に言えれば十分です。
立ち位置は、経験年数の長さだけでは決まりません。年数が短くても、報告の様式づくりに関わった経験があれば、その部分は「体制づくり」側の経験として書けます。逆に年数が長くても、決められた手順の実施だけを続けてきたのであれば、その範囲を正直に書くほうが、あとの説明とずれません。
6. 職務経歴書に足せる3つの要素
診断の作業内容に加えて、次の3つを書けると、報告と改善提案まで担った範囲が伝わりやすくなります。
職務経歴書に足せる3つの要素
- 優先度をつけた基準:検出した内容のうち何を先に直すべきと判断したか、その基準を一文で書きます
- 報告書を届けた相手:報告書を誰に向けて作成し、どう受け取られたかを一文で書きます
- 改善確認まで担った範囲:改善案の提示後、対応状況をどこまで確認したかを一文で書きます
3つとも、診断ツールの操作とは別の判断が伴う部分です。書き足すことで、検出作業だけを担当したのか、報告と改善提案まで担当したのかが、読み手に伝わります。
3つを足したうえで、提示された求人条件を見比べる場面もあります。一般労働者の賃金は全国計で月340.6千円です*2。この数字は職種別の水準を示すものではなく、脆弱性診断の担当者に当てはまる相場でもありません。提示された条件がこの全国計とどう並ぶかを、判断の起点の一つとして置く程度にとどめます。
条件そのものの相場を断定するより、自分が担った範囲を具体的に言葉にできることのほうが、面談での説明には効いてきます。
3つの要素は、いずれも抽象的な言い回しで終わらせないことがポイントです。「優先度を意識して対応した」で止めず、何を基準に優先度を決めたのかまで一文で添えると、書いた内容が実際の判断に基づくものだと伝わります。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 脆弱性診断の経験を職務経歴書に書くとき、何を一番先に書くべきですか。
A. 診断のどの工程を担当したかです。実施のみか、報告まで担当したか、改善の確認まで担当したかで、伝わる範囲が変わります。ツール名や検出件数はそのあとに補足として添えます。
Q2. ツールの操作経験しかない場合、書くことがなくなりませんか。
A. なくなりません。担当した工程を正直に書いたうえで、報告や優先度づけにどの程度関わっていたかを添えます。関わりが浅い場合は、次に担いたい範囲を一文添えると、現在地が伝わります。
Q3. 検出件数は書かないほうがよいのですか。
A. 書いてかまいません。ただし件数だけでは作業量の目安にとどまり、判断の内容までは伝わりません。件数に加えて、優先度をどう判断したかを添えると、伝わる範囲が広がります。
Q4. 攻撃手法の知識をアピールしたほうが評価されますか。
A. 攻撃手法そのものの知識より、検出した内容をどう報告し、改善の優先度をどう示したかのほうが、実務では評価の対象になりやすい部分です。職務経歴書には、判断した内容を中心に書きます。
8. まとめ:診断の実績は、報告と改善で語れます
この記事の要点
- 脆弱性診断の経験は、報告のしかたまでを含めて実績になります。検出件数の多さだけでは、判断の中身までは伝わりません
- 診断の仕事は、準備・実施・報告・改善の確認という4つの段に分かれます。どこまで担当したかを職務経歴書に書きます
- 同じ診断経験でも、報告書の作成と優先度づけまで書くと、伝わる範囲が広がります
- 検出した内容のうち何を先に直すべきと判断したかが、ツールの操作とは別の実務の証明になります
- ツールの運用が中心か、体制づくりまで担ったかという立ち位置を、自分の言葉で説明できることが面談で役立ちます
職務経歴書には、検出した数ではなく、報告と改善提案までをどう担ったかを書きます。担った範囲を具体的に言葉にできれば、それ自体が実務の実績として伝わります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「安全なウェブサイトの作り方」
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
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