レポート鳥取県南部町でのワーケーション体験2泊3日

桜並木が美しい法勝寺川を中心とした、どこへ行っても町で穫れたおいしいお米が食べられる町。
気さくで親しみやすい町の人と同じように、田んぼや小さな山々の風景が、柔らかく町を包んでいました。
今回、ワーケーション体験プログラムにモニターとして参加してくれたのは木村さん(男性)と林(リン)さんの2名のWEBエンジニア。取材班が二人に随行し、2泊3日の様子をレポートいたします。

プログラム概要

日程
2023年3月22日(水)~24日(金)
参加者
2名

1日目:3月22日(水)

米子で集合し、車で南部町へ向かいます。雨予報を大きく裏切る快晴の空の中、伯耆富士(ほうきふじ)と呼ばれ山陰地方で愛される大山(だいせん)が美しく見下ろす南部町に到着。

【ランチ~緑水園】
静かな緑水湖畔の宿「緑水園」のレストランでランチ。

こちらでのおすすめは南部町で獲れた猪料理。生姜焼きや煮込みハンバーグ、鉄板焼きから選べ、脂が乗っていながら臭みのない美味しさで、ジビエが苦手な方にもおすすめできる一品でした。

【オリエンテーション&ワークタイム~VASSARY HILLS】
本日は、コワーキングスペース「VASSARY HILLS」へ。

こちらは、グラフィックデザイン会社「d-magic」さんのオフィスに併設されています。元々は養蚕場を経た倉庫だったそうですが、ご覧の通り、オーナーのセンスが隅から隅まで光るおしゃれな空間。
野山に囲まれ、車も人気もまばらで静かな場所。吹き抜ける風の音や鳥の声に癒されながら、スッと仕事のスイッチも入り、集中力も高まるのでした。

【GELATERIA pa cherry b*】
少し抜け出して、おやつタイム。本場イタリアの世界大会で入賞したほどの腕前を持つオーナーが、南部町で育った旬の食材を使って、LIVE MUSICのように、今ここでしか食べられない一期一会のジェラートを心を込めて作っています。冬季は休業期間があるので、ご注意を。

【休憩?薪割りタイム】
薪ストーブをお持ちのVASALLY HILLSオーナー吉田さん(下左写真 左)が、薪を割らせてくださるとのことで、休憩がてら挑戦!なかなか難しい!斧が重くて、普段キーボードしか叩いていない腕がすぐに悲鳴を上げてしまったのでした。都会生活だとなかなか体験できないものですが、吉田さんは仲間たちとバーベキューをしたりしながらよくやっているのだそうです。

【まなびや】
本日の宿泊先は、農家のお宅でその暮らしと家庭料理を体験できる“農家民泊”「まなびや」さん。広大な裏山で原木椎茸栽培をするかたわら、養蜂もされている藤原さんのお宅です。もともとは町役場で町づくりに貢献されていたご主人と、連れ添って50年になる農家一筋の奥様が、南部町の農家暮らしに触れてほしいと運営されています。夕食には、育てた椎茸やコシヒカリ、裏山で自生するきのこ類、昨日獲ったばかりという猪、山菜、ぼた餅など、奥様の愛情こもったおいしい手料理があふれんばかりに食卓に並び、舌鼓を打ちました。特に絶品は、いちじくの煮物。カラスに取られる前のまだ実が硬い時期に獲っておいて、冷凍しておくのだそうです。お二人のホスピタリティあふれるおもてなしで、夜遅くまで話は尽きないのでした。

【星空観察】
快晴の上に新月と、恵まれたお天気の中、南部町自慢の星空を観察することに。都会では見ることのできないたくさんの星は本当に素晴らしく、飽きずに眺めていると、流れ星!!ラッキーな一日の締めくくりとなりました。

2日目:3月23日(木)

【朝の散歩~藤原家の裏山】
少し早起きして、まなびやさん宅の裏手にある裏山へ散歩へ出かけました。樹齢100年の杉の木も生え、藤原さん自ら枝を手打ちして手入れをしている裏山は、トレイルランでも25分かかる広さ。森の匂いに包まれ、土の感触を踏みしめながらしばらく登ると、数百の原木が並ぶ圧巻のホダ場(ホダ木と呼ばれる1m程度に切断した原木に椎茸の菌糸を植え付け、栽培する場所)が目に飛び込んできました。
椎茸栽培を始めて40年の藤原さんが使う原木は、ナラやクヌギ。ホダ場の作り方や栽培方法など詳しく教えてくださいます。帰り道では小さなガラガラヘビにも遭遇!たった20分ほどでしたが、間違いなく森の力に癒されました。

【朝ごはん】
藤原家のコシヒカリとお味噌汁に加えて、スナップエンドウやトマトなど畑で採れた野菜のサラダ、そして藤原家で採れたはちみつを塗ったトーストまで、自給自足の素晴らしさを感じます。

【養蜂体験】
まなびやさんでできる体験の目玉のひとつが、養蜂体験。
今日は巣箱を拡大する作業をお手伝いします。蜂も今か今かと待っている様子。こんなにも大量の蜜蜂を見るのも囲まれるのも初めて。周囲をぶんぶん飛び回っていますが、こちらが攻撃しなければ安全なのだそうです。とはいえ、間近まで来ると怖くて腰が引けます…。
働き蜂はすべて雌で、雄は巣箱の数万匹の中でも数匹しかおらず、ほとんど役割がない、等、蜜蜂の生態をとても詳しく教えていただきました。

最後に、採蜜した蜂蜜を瓶詰する作業を体験。自分で詰めたものをプレゼントしていただき感激!藤原家の蜂蜜は、アカシアと百花の二種類。百花といってもアカシアの割合がかなり多いとのこと、どちらも熱烈なファンがいるそう。気になる方は、ぜひまなびやさんまでお問い合わせください。(下右写真右が奥様、右から3番目が藤原さん)

【ワークタイム~キナルなんぶ】
2日目のコワーキングスペースは、町の中央にある「キナルなんぶ」。南部町役場法勝寺庁舎のすぐ近く、旧法勝寺図書館と合体する形で整備されたまちの複合施設で、「図書館エリア」「生涯学習エリア」「コワーキングスペース」「カフェエリア」「なんぶふれあい館」などがあります。木をふんだんに使用した開放的な空間は、とても居心地がよく、宿題をする子供たちや仕事をする大人たち、勉強をするお年寄りまでたくさんの人々が集っていました。

南部町に縁のある品々が集められたキナルなんぶ内の「なんぶふれあい館」はぜひ立ち寄っていただきたいエリア。必見は、国の特別天然記念物のオオサンショウウオ!南部町にはなんとオオサンショウウオが生息しているのです。まるで岩のような姿ですが、体の大きさに比べてとっても小さいつぶらな瞳を見ているうちにきっと愛着が湧いてくるはずです。
個人的には、南部町出身の人形作家・安部朱美さんの、今にも動き出しそうな生き生きとした人形たちに一目で魅了されてしまいました。

【ランチ~あっちゃん】
2日目のランチは、味とコスパで、鳥取で「好きな定食屋No. 1」に選ばれたあっちゃん。噂にたがわぬボリュームと美味しさに一同感動を隠せません。このボリュームで中心の価格帯は800円前後、高くても1,100円くらい!そして、やっぱり美味しい南部町産のごはんも大盛り無料!

【アイデアソン】
午後は「関係人口創出アイデアソン」。関係人口とは、観光する人と、移住する人の間にいる、広くその地域と関わりを持つ人たちのことを言います。以前は移住者を増やすことに力を入れてきた全国の自治体も、最近では、移住よりも先ずは関係人口を増やす試みを行っているのです。さて、今回のアイデアソンのテーマは、「WEBエンジニアが考える新しいお祭り」。実は、南部町にはコロナ以前まで「全国柿の種吹き飛ばし大会」という全国からファンが集まる人気のお祭りがあったのです。南部町特産の柿をPRしながら観光客も集客でき、町の人にも大人気のお祭りでしたが、コロナによって中止となってしまいました。アイデアソンでは、このお祭りに代わる新たなイベントを作り、関係人口を増やす施策を考えました。

役場の方や住民の方に、南部町の特産物や名所、町民の特徴などをレクチャーいただき、参加者全員でアイデアを出し合いました。
高い建物が少ない特徴を活かしたドローンレースや、緑水湖のスワンボートを使ったボートレース、特産品を集めたマルシェなどのアイデアが並び、付箋に点数付けをしていきます。
町内で「グリコプレミアム熟カレー」が製造されていることから、カレー好きの町民が全国のカレーを集めて品評会を行うアイデアや、全国の有名シェフや町に住むお母さんなどを集めて、柿やいちじく、白ネギや竹するめといった特産品を使ったオリジナル料理の腕を競うイベントなどが高評価でした。
すべてのアイデアを持ち帰って役場で検討したいとのことですが、アイデアが採用されたら嬉しいですね。

【ワークタイム】
引き続き、キナルなんぶでワークタイム。いろいろな雰囲気のスペースがあるのが使いやすいと思いました。
有料で貸し切りの和室や会議室もありますよ。

【農家民泊「清水川」】
2日目に泊めていただくのは、農家民泊「清水川」さん。

大事にしていることは、「家族の一員として温かく迎える」こと。その言葉通り、特別扱いせず、しかし気も遣わせずにあったかく接してくれます。夜は役場の人や近所の人も集まり大宴会となりました。役場の人や業種・年代を超えた交流、距離感の近さは、地方ならではだな、と感じました。(下右写真前列最左が清水川オーナーの隆さん、後列右から3番目が奥様の三保子さん)

3日目:3月24日(金)

【朝の散歩~赤猪岩神社】
今日は赤猪岩神社へ。古事記では、国づくりの神と言われる大国主命(オオクニヌシノミコト)が兄たちの謀略により、赤い猪に見せかけた真っ赤に焼ける大岩を受け止めて、落命したと言われています。その大岩が埋められ封印されているという言い伝えが残っているのが、この赤猪岩神社なのです。(写真右の大きな岩の下に埋められています。)
また、大国主命の母の願いにより遣わされた赤貝の神・キサガイヒメと、ハマグリの神・ウムギヒメの治療・看護によって蘇ったとされていることから、赤猪岩神社は医療・看護発祥の地とも呼ばれ、再生復活の神社として全国から多くの参拝者を集めているそうです。
ガイドさんの説明はとても分かりやすいのでおすすめ。観光協会で申し込むことができます。

【ワークタイム~てま里】
3日目のコワーキングスペースは、古民家をリノベし、温もりのある黄色を基調としたコミュニティスペース「てま里」。カフェも併設されていて、元個人宅とは思えない、素敵な庭園を眺めながら仕事ができます。
みんなで集まれる場所がほしい、と思っていた人たちが、それなら自分たちで運営しよう、とボランティアで運営している場所なのだそう。コワーキングスペースとしてだけでなく、子供たちの居場所にもなっており、カレー会や認知症カフェなどの町の人たちの集いや、英会話スクール、ゲストハウス機能も備えています。今後は福祉の場としても広がりを見せる構想が進んでいるそう。宿泊スペースのお手伝いをすると宿泊料金が無料になるなどフレキシブルな長期滞在プランもあるとか。コワーキングスペースとして使えるかどうかは他の予定次第のため、事前の確認・予約がおすすめ。

【ランチ~やぶ勝】
3日目は、筆者も初めて耳にする“ブータン産”のそば粉を使った自家製麵のお蕎麦屋さん「やぶ勝」へ。法勝寺温泉という温泉施設兼コミュニティスペースの中にあります。「子ども、若者、高齢者、障害のあるなし、認知症の人も、そうでない人も、日本人も外国人も分け隔てなく、みんなが互いに関りながら、“ごちゃまぜ”で過ごすことのできる空間にしたい」というコンセプトの通り、食事をする大人たちもいれば、学校帰りの中高生も勉強したり寛いでいたり、駄菓子が売られていたり、大量の漫画が置かれていたりと、居心地の良いごちゃまぜ空間になっています。お目当てのお蕎麦は、もちろん美味!蕎麦にしてはかなり太めの麺は、南部町か鳥取県の特色なのでしょうか。食感は少し硬め。

【陶芸体験~法勝寺(ほっしょうじ)焼き 松花窯(しょうかがま)】
明治36年の築窯以来、現在で五代目という松花窯へ陶芸体験へ。陶土、釉薬はすべて当時の原料で自家生産し、時には薪に至るまで自製しているそうで、伝統を受け継ぎつつ、時代に合わせて常に進化し続けることを目指していると五代 安藤愉理(ゆり)さん(下の右写真の右から二人目)は語ります。
今回は、手びねりに挑戦。マグカップ、お茶碗、お皿など、思い思いの形で作り、気に入った釉薬を選びました。4代目と5代目の作品が多数揃った売店も併設されていているので、購入したい場合も安心。

【最後に】
南部町は、2023年2月28日現在で、人口1万人強、約3,900世帯が暮らす小さな町ですが、里地里山の居心地の良さだけでなく、町民が安心して豊かに暮らせるよう、行政と町の人たちが知恵と力を合わせて町づくりをされていることを強く感じることができた3日間でした。
初日には一分二分咲きだった桜も、最終日にはほぼ満開となり、また来てねと言ってもらえたような嬉しい気持ちで、町を後にすることができました。次は今回行けなかった清水井の水を汲んで、法勝寺温泉に入りに来ようかな。

参加した方の感想

  • 木村さん・WEBエンジニア
    とても温かく迎え入れていただき良い体験が出来ました。卓を囲んで皆さんと家庭料理をいただく経験も久しぶりでとても良かったです。地域の人や自然・伝統産業と触れ合って、地域のことを知るきっかけになったし、どのアクティビティもとても面白かったです。また、メリハリつけて仕事ができたので、意外と集中できました!

  • 林さん・WEBエンジニア
    新しいことにどんどん取り組んでいるのが、街の活気というか住んでいる人達の雰囲気で伝わってきた。住んでいる人たちが南部町のこと大好きでなんとかしたいのがとても伝わった。これだけ愛してくれる住人がいるなら、きっといい形で残っていくと思うし、手伝いたいと思った。
    自分で育てた山菜を使った料理やお米、地元で採れた魚を使った料理を振る舞ってもらって、とても贅沢だった。レストランでは食べられない一般の家庭料理のご馳走を食べられる経験はとても貴重で良かった。
    また、地元の人達の話を沢山聞けて楽しかった。普通に生きていると喋る機会がないので、こういう場で地元の人と話せる経験はいいなぁと思いました。

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