源泉徴収票の甲欄と乙欄の違い|転職と副業での扱い

源泉徴収票を開いても、甲欄や乙欄という欄は見当たりません。甲欄と乙欄は、勤め先が給与から所得税を差し引くときに使う「給与所得の源泉徴収税額表」の欄の名前です*1。この表は「給与所得者の扶養控除等申告書」(扶養控除などを受けるために勤め先へ出す書類)の提出があるかどうかで欄が分かれます*1。
申告書の提出を受けた勤め先が支払う給与を、主たる給与と呼びます*2。それ以外の勤め先が支払うものが従たる給与です*2。主たる給与の税額は甲欄、従たる給与の税額は乙欄で求めます*2。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 甲欄と乙欄は源泉徴収票の欄ではなく、勤め先が税額を求めるときに使う税額表の欄です*1。扶養控除等申告書を提出している人へ支払う給与は甲欄、その他の人へ支払う給与は乙欄で税額を求めます*1。
- 扶養控除等申告書は同時に1か所へしか出せないため、甲欄が使われる勤め先は1つに限られます*2。年の途中で転職したときは、次の勤め先へ出せばそこが甲欄です*1*2。
- 副業の給与は従たる給与にあたるため、乙欄で税額を求めます*2。従たる給与では原則として年末調整ができないので、本人が確定申告で1年分を精算します*2。
1. 甲欄と乙欄は源泉徴収票ではなく税額表の欄
源泉徴収票そのものに、甲欄や乙欄という欄はありません。この2つは、毎月の給与から所得税を引くための税額表に置かれた欄です*1。どちらの欄で計算されたかは、勤め先が扶養控除等申告書を受け取っているかどうかで決まります*1。源泉徴収票を何度見返しても、欄の名前としては出てきません。
そのため、源泉徴収票を手に取って甲欄という文字を探しても見つかりません。手元に届くのは、勤め先が計算を終えたあとの結果です。計算に使った税額表は勤め先が持っています*1。税額表には甲欄と乙欄が並んでいて、勤め先はどちらかを選んで税額を求めます*1。
実際に分かれ目になるのは、扶養控除等申告書を出したかどうかです*1。この申告書を提出している人へ支払う給与は甲欄、その他の人へ支払う給与は乙欄で税額を求めます*1。提出の有無は勤め先が把握しているので、自分がどちらだったか分からないときは人事へ聞いてください。転職の場面にあてはめると、前の勤め先には勤めている間に申告書を提出していたので、退職までの給与は前の勤め先の甲欄で計算されます*1*2。次の勤め先にも新たに申告書を出せば、入社後の給与はそちらの甲欄で計算されます*1。
ただし、どちらで計算されたかは源泉徴収票の見た目からは読み取れません。欄の違いが表れるのは、毎月引かれる所得税の額のほうです*1。額そのものを知りたいときは、給与を計算している担当者へ聞いてください。
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2. 甲欄と乙欄を分けるのは扶養控除等申告書の提出
そのため、副業をしているときは、どちらの勤め先へ出すかを先に決めます。本業と副業の両方から給与を受けていても、甲欄が使われるのは出した1か所だけです*2。もう一方の給与は乙欄で計算されます*2。
一方、扶養控除等申告書が出ていない勤め先でも、給与からは所得税が引かれます*1。乙欄で求めた額が毎月引かれるだけで、その勤め先では1年分の精算まで進みません*2。従たる給与では年末調整が行われないためです*2。
3. 年の途中で転職すると源泉徴収票は2枚になる
年の途中で勤め先が変わると、源泉徴収票は前の勤め先と次の勤め先の両方から届きます。前の勤め先の分には退職までの給与、次の勤め先の分には入社後の給与が書かれています。2枚そろって、その年に受け取った給与の全体になります。届いたら2枚とも保管してください。
そのため、次の勤め先へ扶養控除等申告書を出せば、そこが主たる給与の勤め先になります*1*2。入社後の給与は甲欄で計算され、毎月の所得税が決まります*1。前の勤め先から届いた源泉徴収票は、次の勤め先での手続きでも必要です。封筒のまま置かずに、1か所へまとめてください。
ただし、前の勤め先の給与をどちらの欄で計算するかは、給与を支払う時点の提出状況で決まっています*1。在職中に申告書を出していた勤め先であれば、その給与は主たる給与にあたります*2。退職した後になって、この扱いが入れ替わることはありません*1。
実際、どちらの欄を使うかは勤め先ごとに別々に決まります*1。同じ年に2か所とも甲欄で計算された給与を受け取ることもあります*1。逆に、退職から入社までの間が空いていても、次の勤め先へ申告書を出せばそこが甲欄です*1。
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4. 甲欄の勤め先だけが年末調整まで進む
まず、甲欄と乙欄の違いは毎月の税額だけにとどまりません。年末調整の対象は、扶養控除等申告書を年末調整を行う日までに出している一定の人です*3。乙欄で計算される従たる給与については、原則として年末調整が行われません*2。
ただし、精算そのものが無くなるわけではありません。従たる給与を受け取っている人は、本人が確定申告で1年分をまとめて精算し*2、給与を1か所からしか受け取っていない年は、その勤め先の年末調整で終わります*3。
そのため、給与を2か所から受け取る年は、手続きの相手が2つです。本業の勤め先は年末調整まで進み、副業の勤め先は毎月の源泉徴収で終わります*2*3。残った分の精算は、本人の確定申告です*2。
実際、副業の給与が少額でも、乙欄で計算される点は変わりません*1。額の大小ではなく、申告書を出しているかどうかだけで欄が決まるためです*1。金額を見て甲欄へ切り替わることはありません*1。
一方、甲欄の勤め先で年末調整まで進んでも、全員がそこで終わるわけではありません。たとえば、1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人は、12月の年末調整の対象から除かれ*3、本人が申告して精算します*2。
5. 3つの場面で変わる甲欄の勤め先と精算のしかた
まず、自分の年がどの場面にあたるかを決めます。年の途中で移った年、副業の給与がある年、1か所だけから給与を受けた年の3つです。場面が決まれば、甲欄の勤め先と精算の相手も決まります*1*2。
ただし、右端の列は精算を進める人で分かれています。年末調整は勤め先が行い、確定申告は本人が行います*2*3。両方が並ぶ年もあるので、自分の行を1行ずつ読んでください。
場面ごとの甲欄と乙欄と精算のしかた
| 場面 | 甲欄になる勤め先 | 乙欄になる勤め先 | 精算のしかた |
|---|---|---|---|
| 年の途中で転職した年 | 申告書を出した勤め先(前と次のそれぞれ)*1 | 申告書を出さなかった勤め先*1 | 次の勤め先の年末調整で精算する*3 |
| 副業の給与がある年 | 申告書を出した本業の勤め先*2 | 申告書を出していない副業の勤め先*2 | 副業分は本人が確定申告で精算する*2 |
| 1か所だけから給与を受けた年 | その勤め先*1 | 無し | その勤め先の年末調整で精算する*3 |
実際、副業がある年は表の2行目がそのまま自分の年です。本業の勤め先で年末調整が済んでも、副業の給与の分は残ります*2。残った分は、本人の確定申告で精算します*2。
ただし、どの行でも、源泉徴収票の上に甲欄や乙欄という文字が現れるわけではありません。表で決まるのは、勤め先が毎月いくら引くかという計算のほうです*1。自分の行が分からないときは、勤め先へ問い合わせてください。
6. 副業の給与が乙欄になる年の確定申告
副業の給与を受け取っている年に、自分の側で進めることは5つです*2*3。どれも勤め先ではなく本人が動くところです*2。
副業の給与があるときに進める5つ
- 申告書の提出先:扶養控除等申告書は同時に2か所へ出せないので、本業の勤め先を1つ選びます*2
- 本業の給与:提出を受けた勤め先が支払う給与は主たる給与にあたり、甲欄で税額を求めます*1*2
- 副業の給与:提出の無い勤め先が支払う給与は従たる給与にあたり、乙欄で税額を求めます*1*2
- 年末調整の対象:年末調整を受けられるのは、扶養控除等申告書を年末調整を行う日までに出している一定の人です*3
- 確定申告での精算:従たる給与は原則として年末調整ができないため、本人が確定申告で1年分を精算します*2
まず、どちらを主たる給与にするかは本人が決めます*2。決めた勤め先へ申告書を提出し、もう一方の勤め先には出しません*2。提出を受けた勤め先の給与が甲欄、受けていない勤め先の給与が乙欄です*1。
ただし、5つ目まで進むかどうかは、年末調整の対象になるかで変わります*3。本業のほうで精算が終わっても、副業の給与はそこに含まれません*2。副業の分は自分で申告して精算します*2。
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7. よくある質問
Q1. 源泉徴収票に甲欄や乙欄という欄はありますか
A. ありません。甲欄と乙欄は「給与所得の源泉徴収税額表」に置かれた欄の名前で、勤め先が毎月の所得税を計算するときに使います*1。源泉徴収票のほうには、この2つの欄は出てきません。
Q2. どちらの欄が使われるかはどこで決まりますか
A. 「給与所得者の扶養控除等申告書」をその勤め先へ出しているかどうかで決まります*1。提出を受けていれば、その勤め先の給与は甲欄で計算されます*2。提出が無い勤め先の給与は乙欄です*2。
Q3. 副業先へも扶養控除等申告書を出せますか
A. 「従たる給与についての扶養控除等申告書」であれば、副業先へ出せます*2。この書類の提出があると、月ごとの給与に使う表の乙欄の税額から、扶養親族等(扶養控除の対象になる親族など)1人につき1,610円を差し引きます*2。日ごとに支払う給与に使う表では、1人につき50円です*2。
Q4. 年の途中で転職したときはどちらの欄になりますか
A. 次の勤め先で申告書を提出すれば、そこからの給与は甲欄です*1。年の途中で移ると、源泉徴収票は2枚になります。どちらの分も、同じ年の給与として数えます。前の勤め先の分も、捨てずに手元へ置いてください。
8. まとめ:甲欄と乙欄は申告書の提出で決まる
源泉徴収票を受け取る前に押さえること
- 甲欄と乙欄は源泉徴収票の欄ではなく、勤め先が税額を求める表の欄です*1。
- 扶養控除等申告書を提出した勤め先の給与が主たる給与で、甲欄で税額を求めます*1*2。
- 提出が無い勤め先の給与は従たる給与にあたり、乙欄で税額を求めます*2。
- 従たる給与では原則として年末調整ができないため、本人が確定申告で精算します*2。
甲欄で計算されるのは、提出先に選んだ1か所の給与だけです*2。転職した年は、前と次のそれぞれで欄が決まります*1。副業の給与が乙欄で計算される年は、本人の確定申告まで進みます*2。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 国税庁 タックスアンサー No.2511「税額表の種類と使い方」(2026年確認)
*2 国税庁 タックスアンサー No.2520「2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」(2026年確認)
*3 国税庁 タックスアンサー No.2665「年末調整の対象となる人」(2026年確認)
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