固定残業代と最低賃金|時給に直すと下回る場合

求人票の月給に固定残業代が含まれていると、時給に直した額は見た目より低くなります。固定残業代(みなし残業代)とは、実際の残業時間にかかわらず、一定の時間分の残業代を毎月同じ額で払うものです。この分は最低賃金の計算から外れます*1。
そのため、総額のまま所定労働時間(会社が決めた働く時間)で割ると、時給は実際より高く出ます。比べるときに使うのは、その分を引いたあとの額です*2。地域別最低賃金は都道府県ごとに決まっているので*3、比べる相手は自分の住む地域の時間額です。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 固定残業代は残業に対して払われる賃金なので、最低賃金の計算からは外れます*1。月給に含まれているときは、引いてから時給に直します*2。
- 総額を所定労働時間で割った時給は、先に含まれている残業代を引かないかぎり実際より高く出ます。引かずに比べると、最低賃金を上回っているように見えるのです。
- 地域別最低賃金は都道府県ごとに決まっています*3。すべて時間額で定められているので*2、比べる相手は自分の地域の時間額です。
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1. 固定残業代は最低賃金の計算から外れる賃金
固定残業代は、所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金なので、最低賃金の計算からは外れます*1。最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金だけで、残業代やボーナスは入りません*1。月給で働く人は、除かれる分を引いた額を1か月平均所定労働時間(1年の所定労働時間を12で割った時間)で割ります*2。その時給が地域別最低賃金の時間額を下回っていないかを見ます*2。
そのため、求人票の月給をそのまま割っても、最低賃金と比べた答えは出ません。この手当は毎月決まった額で払われるため、基本給と見分けがつきにくいのです。求人票に「固定残業代を含む」と書かれていたら、その内訳の額を先に引きます。
ただし、最低賃金の計算から外れる賃金はほかにもあり、所定労働日(会社が決めた出勤日)以外に働いた分の割増賃金も外れます*1。午後10時から午前5時までの労働に対する割増分も同じ扱いです*1。手取りの多さと、最低賃金を満たしているかは別の話です。
実際、求人票の書き方は1つではありません。基本給と固定残業代を分けて書く求人もあれば、月給の総額だけを出す求人もあります。分けて書かれていないときは、応募先へその額と何時間分かを聞いてください。
2. 月給を時給に直す3つの手順
まず、引く額を求人票から書き出してください。月給に含まれる残業代の分は、額と時間数が内訳として書かれていることがあります。内訳が無ければ、応募先へ聞きます。ここで出た額が、割る前に引く額です。
次に、割る相手の時間を決めます。月給で働く人の比べ方は、1か月平均所定労働時間で割った額が最低賃金額(時間額)以上かどうかです*2。月ごとに日数が違うため、年間の所定労働時間をならした平均を使います*2。この時間が分からないときは、勤め先へ聞いてください。
最後に、出た時給を地域別最低賃金と比べます。すべての地域別最低賃金は時間額で定められているため*2、比べるのは時給どうしです。額は都道府県ごとに違うので*3、住んでいる地域の一覧を見てください。
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3. 月給が高く見えるのは固定残業代を含むから
つまり、同じ月給でも内訳が違えば時給は変わります。この手当が多いほど、引いたあとに残る額は小さくなります。残った額を同じ時間で割るのですから、時給も下がるのです。
ただし、この仕組みそのものが問題というわけではありません。あらかじめ決めた時間分の残業代を先に払う形なので、残業が少ない月でも同じ額が出ます。困るのは、総額だけを見て時給を高く見積もったまま入社したときです。入ってから気づくと動きにくくなります。
実際、見るのは額だけではありません。何時間分の残業に当たる額なのかも、あわせて聞いてください。時間数が多いほど、月給に織り込まれた残業の量も多くなります。額と時間数の2つを書き出します。
一方、求人票に書かれた時間数と、実際に働く残業の時間は別のものです。この時間数は、その会社が月給に織り込んだ分を指します。働いた時間がそれを超えたときの扱いは、応募の前に聞いてください。残業の決まりは36協定にも書かれています。
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4. 毎月払われる基本的な賃金だけが最低賃金の計算に残る
そのため、2つの問いに分けると見分けがつきます。1つは毎月払われる賃金かどうか、もう1つは所定労働時間の中の労働に対する賃金かどうかです。どちらもあてはまる賃金だけが、最低賃金と比べる額に入ります*1。片方でも欠けた賃金は計算の外です*1。
ただし、この2つにあてはまっても計算から外れる賃金はあります。精皆勤手当(欠勤や遅刻がないときに払われる手当)と通勤手当、それに家族手当の3つです*1。毎月払われていても、この3つは最低賃金の計算に入りません*1。数えるときは先に外してください。
実際、求人票で迷うのは毎月定額で払われる残業代です。毎月の給与明細に同じ額で並ぶので、基本給と一緒に数えてしまいます。分けているのは、払われる回数ではなく何に対して払われるかです*1。そこを取り違えると計算がずれます。
一方、毎月ではない賃金は分かりやすい側です。賞与のように1か月を超える期間ごとに払われる賃金と、結婚手当のように臨時に払われる賃金は、どちらも計算から外れます*1。年収の総額で見たくなりますが、比べるのは月ごとに払われる賃金です*2。賞与を足して考えないでください。
5. 手当の名前ではなく何に対して払うかで分かれる
つまり、求人票の金額をそのまま並べても答えは出ません。どの賃金が計算に入り、どれが外れるかを先に分けます。計算から外す賃金は6つに分けて決められているので、当てはまるものを引きます*1。
ただし、除外に当てはまるかどうかは名前では決まりません。手当の名前が同じでも、何に対して払うのかで扱いは変わります*1。求人票に手当の名前しか書かれていないときは、何に対する手当かを応募先へ聞いてください。
賃金の種類ごとの扱いと根拠
| 賃金の種類 | 最低賃金の計算に入るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 基本給 | 入る | 毎月支払われる基本的な賃金*1 |
| 固定残業代(みなし残業代) | 入らない | 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金*1 |
| 休日に働いた分の割増賃金 | 入らない | 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金*1 |
| 深夜の割増賃金 | 入らない | 午後10時から午前5時までの労働に対する割増分*1 |
| 賞与 | 入らない | 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金*1 |
| 結婚手当 | 入らない | 臨時に支払われる賃金*1 |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 | 入らない | 名前で決められている3つの手当*1 |
そのため、求人票を見るときは月給の欄だけで止めないでください。手当の欄に通勤手当や精皆勤手当が並んでいたら、その分も月給から抜きます*1。引いたあとに残るのが、時間で割る額です。
一方、表に無い手当が求人票に書かれていることもあります。毎月払われて、残業や休日の労働に対する分でないなら、6つのどれにも当たりません*1。判断がつかないときは、勤め先か労働基準監督署へ問い合わせてください。自分で決めずに聞くほうが早道です。
6. 求人票から書き出す3つの数字
そのため、応募の前に書き出すものを3つに絞ります。どれも求人票か応募先への質問で分かる数字です。この3つがそろえば、時給に直した額を自分で出せます。
求人票から書き出す3つの数字
- 月給に含まれる固定残業代の額:内訳として書かれていなければ、応募先へ聞きます。この額を月給から引いたものが、割る前の額です*1。
- 1か月平均所定労働時間:1年ぶんの所定労働時間を12か月で割った時間です*2。勤め先か応募先に聞けば出ます。
- 住んでいる地域の最低賃金額(時間額):地域別最低賃金は都道府県ごとに決まっています*3。一覧で自分の地域の額を見ます。
ただし、3つのうち2つは求人票に書かれていないこともあります。残業代の内訳と1か月平均所定労働時間は、面接や問い合わせで聞くほうが早いはずです。聞くときは、額と時間数をあわせて質問します。1回の連絡でまとめて聞いてください。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 固定残業代を含む月給でも最低賃金は守られていますか
A. 引くのが先です。月給からその分を抜いた額を、月あたりの所定労働時間で割ります*2。出た時給が住んでいる地域の時間額を下回っていなければ、最低賃金は満たしています。
Q2. 固定残業代の額が求人票に書かれていないときはどうしますか
A. 応募先へ額と時間数を聞いてください。月給に残業代を含むとだけ書かれている求人票もあります。内訳が出れば、引き算はその場でできます。聞きにくければ、面接の質問としてまとめて出しても構いません。
Q3. 通勤手当を月給に足せば最低賃金を上回りますか
A. 足しても計算は変わらず、通勤手当と精皆勤手当、家族手当の3つは、毎月出ていても計算に入りません*1。名前で決まっている除外なので、これらを外してから割れば、手当の額が大きくても最低賃金の判定は同じです。
Q4. 時給や日給で働く場合の比べ方はどうなりますか
A. 時給の人は、時給そのものを最低賃金額(時間額)と比べます*2。日給の人は、日給を1日の所定労働時間で割った額で比べます*2。どちらも、除かれる賃金を引いたあとの額で計算するのです*1。この点は月給で働く人と同じです。
Q5. 計算したら地域の最低賃金を下回っていたときはどうしますか
A. まず勤め先へ計算の内訳を聞いてください。1か月平均所定労働時間の取り方や、引いた手当が違っていることもあります。それでも下回るなら、労働基準監督署へ相談できます。自分だけで結論を出さないでください。
8. まとめ:固定残業代を引いてから最低賃金と比べる
この記事のまとめ
- 固定残業代は残業に対する賃金なので、最低賃金の計算からは外れます*1。
- 月給で比べるときは、除かれる分を引いた額を1か月平均所定労働時間で割ります*2。
- 通勤手当と精皆勤手当、家族手当も名前で除かれます*1。賞与や臨時の手当も同じです*1。
- 地域別最低賃金は都道府県ごとに決まっているので、自分の地域の時間額を一覧で見ます*3。
そのため、求人票で見る場所は2か所です。月給の欄で止めず、含まれている残業代の額と時間数まで書き出してください。引いた額を月あたりの時間で割れば、時給が出ます*2。
ただし、出た数字だけで会社の良し悪しは決まりません。手当の分け方ひとつで、出る数字は動きます。下回って見えたときは、勤め先か応募先へ内訳を聞いてください。それでも合わないときの相談先は、労働基準監督署です。
求人票の月給は、引き算をしてから割れば、同じものさしで比べられます。応募の前に内訳を聞いておけば、入社してから驚くことはありません。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省 最低賃金特設サイト「対象となる賃金は?」(2026年確認)
*2 厚生労働省 最低賃金特設サイト(最低賃金額との比較のしかた)(2026年確認)
*3 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(2026年確認)
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