退職の引き止めの断り方は?言われる順に返す例文

退職を伝えた直後に返ってくるのは、たいてい「もう一度考えてほしい」という言葉です。そこで話は終わらず、日をあらためて昇給や異動の提案が出てきます。退職の引き止めは1回では終わらず、言われることの順序はおおむね決まっています。
引き止められた側は、その場で言葉を探すしかありません。礼を先に置いてから、決めた事実と退職日をもう一度伝えると、話は引き継ぎの相談に移ります。そのまま口に出せる言い方を、言われる順に置きました。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 上長から言われることは、考え直してほしいという引き止め、昇給や異動の提示、繁忙期までの引き延ばし、後任がいないという話の順に進みます。相手が代わっても、返す言葉は礼と決めた事実と退職日でそろえます。
- 口に出す情報は、退職すると決めた事実と退職日の2つだけです。応募先の社名や提示された金額を伝えると、上長は条件を組み直せます。
- 退職の申し入れから2週間で労働契約は終わります*1*2。引き止めの回数が増えても、この2週間は変わりません。
1. 退職の引き止めに返すのは礼と決めた事実だけ
引き止めを断るときは、示された提案に礼を述べたうえで、退職すると決めた事実と退職日をそのまま繰り返します。新しい事情を足すと、上長はその事情に向けた案を出せるので、やりとりは1往復増えるだけです。給与や部署への不満を口にした場合も同じで、金額や配置の提案が返ってきます。断る側が口に出す情報は、決めた事実と退職日の2つに絞ります。
そのため、最初に決めておくのは、何を言わないかです。返答が長くなるほど、上長は次の案を組み立てる手がかりを受け取ります。たとえば迷った時期があったと伝えると、その迷いを解く提案が返ってくる形です。口に出す内容を2つに固定しておけば、同じ返答を何度でも使えます。言うことは増やしません。
ただし、礼を省くと話はこじれます。引き止めは上長の評価や人員の計画にも関わるので、提案そのものを否定されると相手は引けません。考えてくれた点への礼を先に置くと、相手は次の話へ進みやすくなります。どの理由を伝えるかは切り出す前に決めておく話なので、面談の場では蒸し返しません。
実際、引き止めは同じ相手だけで終わるとは限りません。直属の上長が引いたあとに、部長や人事から時間をもらいたいと言われる場合があります。相手が代わると経緯を知らない人が出てくるので、こちらの説明も長くなりがちです。どの相手にも同じ2つだけを返すと、話はそれ以上ふくらみません。経緯は、最初に伝えた1文だけで足ります。
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2. 引き止めで言われることは4段で進む
まず来るのは、その場の慰留です。慰留とは、辞めないでほしいと引き止めることを指します。日をあらためると、次は昇給や異動といった条件の提示に変わります。それでも動かないときに出てくるのが、繁忙期が終わるまでという引き延ばしと、後任がいないという話です。
そのため、やりとりが長引くのは、段が変わるたびに新しい返答を考えるときです。昇給の提案に金額で答えれば、次は査定の時期へ話が移ります。異動の提案に部署名で答えたときも同じです。返答を変えなければ、どの段でも同じ言葉で答えられます。考える時間は、退職日の詰めだけに使います。
実際、4つの段が同じ日に並ぶとは限りません。前の面談から1週間ほど空くこともあります。間が空くと、前に何を伝えたかがあいまいになり、説明を足したくなります。伝えた内容をメモに残し、面談のたびに同じ言葉を読み上げてください。日付と決めた事実だけを毎回そろえます。
つまり、後任がいないと言われた段で返すのは、引き継ぎの予定です。ここで退職日を動かすと、次は後任が着任するまでという話に変わります。引き継ぎ書をいつ出すか、どこまで文書に残すかを先に示してください。人ではなく仕事の話に戻します。
3. 否定せずに受けてから決めた事実を繰り返す
実際に口に出すときの原則は3つです。第一に、示された提案を否定せず、礼で受けます。第二に、新しい事情は足さず、決めた事実だけを返してください。第三に、退職日を自分から出します。3つとも、言葉を増やさないためのものです。
たとえば、その場で考え直してほしいと言われたときは、「考えていただけるのはありがたいです、ただ退職の意思は変わりません」と返します。提案を先に否定すると、相手はなぜかを聞き返すしかありません。礼を置いてから同じ言葉を繰り返すほうが、やりとりは短く終わります。声の大きさや速さを変える必要はありません。
ただし、聞かれてもいない事情を足すと、この形は崩れます。応募先の社名や提示された金額、迷っていた期間を口にすると、上長はそこに合わせた案を作れます。口に出すのは、決めたという事実と希望する退職日だけです。同じ言葉を2度繰り返しても問題ありません。
そのため、退職日は自分から出してください。「ご相談いただきありがとうございます、退職日は○月○日で進めさせてください」と伝えると、引き継ぎの段取りへ話が変わります。日付が出ていない間は、上長にも調整できる余地が残っています。先に日付を置くほうが、面談の回数は減ります。日付は口頭とメールの両方に残してください。
4. やりとりが長引く言い方と退職日の相談に移る言い方
一方、同じ場面でも、返した言葉によってその後のやりとりは変わります。金額や部署の話に入ると、上長は決められる案を次々に出せます。決めた事実と退職日だけを返すと、相手の側に出せる案が残りません。断る側が選べるのは、この2つのどちらかです。分かれ目は、最初の一言です。
逆に、条件の提示を断ったあとで社内の不満を口にすると、話は元へ戻ります。給与や配置は会社が動かせるので、上長はもう一度案を作れます。不満の中身が正しくても、断る場面では持ち出しません。伝えるなら、退職日と引き継ぎの案だけにしてください。返答は2つのまま動かしません。
とはいえ、引き止めがメールやチャットで来ることもあります。文字で返すときほど、事情を書き足したくなります。返信は、礼の一文と、退職日を含む1行に収めてください。送る前に一度読み返します。
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5. 上長の言葉ごとに答えを先に決めておく
具体的には、言われそうな6つに対して、返す言葉を先に決めておきます。その場で考えた言葉は、相手の言い分に引かれて長くなりがちです。書き出して1度読み上げておくと、面談でもそのまま出てきます。
言われることと返す言葉の例
| 言われること | 返す言葉の例 | 足してはいけないこと |
|---|---|---|
| 考え直してほしい | 「お時間をとっていただいてありがとうございます、退職の気持ちは固まっています」 | 迷っていた時期があったという話 |
| 昇給や賞与を見直す | 「評価していただいて恐縮です、金額の問題ではないので退職させてください」 | 提示された年収や希望する金額 |
| 異動や勤務の調整で残れないか | 「そこまで考えていただいて恐縮です、異動ではなく退職でお願いします」 | 行きたい部署や働き方の希望 |
| 繁忙期が終わるまで待ってほしい | 「繁忙期のことは承知しています、ただ退職日は○月○日でお願いします」 | 延ばせる余地があるという言い方 |
| 後任がいないと現場が回らない | 「引き継ぎ書は今週中にお出しします、後任の方が決まり次第すぐ共有します」 | 退職日を動かせるという返事 |
| 世話になったはずだ | 「お世話になった分は引き継ぎで返します、退職日は変えられません」 | 恩に応えて残るという含み |
つまり、6つとも返し方は同じです。相手の言葉に合わせるのは礼の部分だけで、意思と退職日は動かしません。足してはいけないと書いたのは、口に出すと次の提案の入り口になる事柄です。ここを黙っておくと、面談のやりとりは短くなります。
たとえば、その場で答えを出すよう求められても、日を置いて構いません。持ち帰って考えると伝えると、まだ決めていないと相手に伝わります。返すのは6つのどれかにして、日を置くのは退職日の詰めだけにしてください。言葉を増やさずに同じ返答を置いてきます。
6. 退職の手続きで決まっているのは2つ
ただし、引き止めが長引いても、手続きの側は先に決まっています。話し合いの回数や相手が変わっても、期間の数え方は動きません*1*2。退職したあとに請求できる書類の項目も、厚生労働省の案内に示されています*3。
手続きで決まっていること
- 期間の定めのない労働契約では、労働者が退職を申し入れてから2週間で契約が終了します*1*2。
- 退職のときは、使用期間・業務の種類・その事業での地位・賃金・退職の事由の5項目について、証明書への記載を請求できます*3。
実際、2週間という期間は、引き止めの回数では変わりません*1。面談が3回に増えても、数えるのは申し入れた日からです。退職日を先に伝えておけば、残りの日数から引き継ぎの予定を組めます。申し入れた日はカレンダーに残しておいてください。
そのため、退職日が決まったら、引き継ぐ仕事を先に文書へ落とします。担当している作業を並べ、いつ誰へ渡すかを1行ずつ書き出してください。文書が手元にあると、残った話は日程の詰めだけになります。口頭の約束は残りません。
退職したあとに証明書が要るときは、記載してほしい項目を伝えて請求します*3。請求できるのは、使用期間や賃金を含む5つです*3。引き止めの話し合いとは切り離し、退職日が決まってから会社へ申し出ます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 引き止めを断るときに退職理由を詳しく話したほうがよいですか
A. 詳しく話す必要はありません。事情を足すほど、上長は示せる案が増えるため、面談の回数が延びます。退職を決めた事実と退職日を伝えれば、返答としてはそれで十分です。理由を1つに絞る話は、切り出す前に済ませておきます。
Q2. 同じ言葉を何度も繰り返すと失礼になりませんか
A. 同じ返答を続けても問題ありません。言い方を毎回変えると、どこかに交渉の余地があると受け取られます。礼を述べる部分だけを相手の提案に合わせ、意思の部分は変えずに伝えてください。3回目でも言い方は同じです。
Q3. 退職日は会社に決めてもらってもよいですか
A. 自分から日付を出すほうが早く決まります。会社の都合に任せると、いつ決まるのか分かりません。引き継ぎの案と一緒に希望日を出すと、相手も日程を組みやすくなります。引き継ぎに要る日数は、担当している仕事から先に数えておきます。
Q4. 引き止められている間に応募先へ入社日を伝えてもよいですか
A. 退職日の見込みが立ってからにしてください。申し入れから2週間で労働契約は終わるので、そこを起点に日を置きます*1*2。前後しそうなときは、決まった時点で応募先へ連絡します。入社日を動かせる余地があるかどうかも、先に聞いておいてください。
8. まとめ:退職の引き止めには礼と退職日で答える
この記事のまとめ
- 引き止めは、考え直してほしいという慰留から始まり、条件の提示、時期の引き延ばし、後任がいないという話へ進みます。
- 返すときは、提案を否定せずに礼を述べてから、決めた事実と退職日を繰り返します。
- 応募先の社名や提示された金額、迷っていた期間は口に出しません。
- 引き止めがメールやチャットで来たときも、返信は礼の一文と退職日に収めます。
- 退職の申し入れから2週間で労働契約は終わります*1*2。
- 退職のときは、使用期間や賃金など5項目の記載を証明書へ請求できます*3。
引き止めの場で、新しいことを言う必要はありません。礼を先に置き、決めた事実と退職日を同じ言葉で返せば、やりとりは日程の相談に変わります。次の面談までに、退職日と引き継ぎの案を1枚に書き出しておいてください。
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出典・参考情報
*1 e-Gov法令検索「民法」第627条(2026年確認)
*2 厚生労働省 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(2026年確認)
*3 厚生労働省 確かめよう労働条件(自己都合の退職の際、退職時の証明書を請求できますか)(2026年確認)
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