引き止められない退職理由の例文|家庭の事情と転職先

退職を切り出しても引き止めが長引かないのは、会社が代案を出せない理由を伝えたときです。給与や部署への不満を持ち出すと、上長は金額や部署を動かす提案ができるため、話はそこから続きます。同居する親の介護のような家庭の事情や、入社日まで決まった転職先は、会社の側で用意できません。
作り話を用意する必要はありません。実際にある事情のうち、会社が動かせない部分を選んで先に伝えるだけです。口頭で使える言い方を6つ、条件を提示されたあとの返し方を1つ、そのまま持っていけます。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 引き止めが長引くかどうかは、伝えた理由に会社が代案を出せるかで決まります。給与や部署への不満には代案を出せるため、上長は条件を示して話を続けられます。
- 会社が動かせないのは、同居する親の介護のような家庭の事情と、入社日まで決まった転職先です。社内の配置や金額を動かしても変わらないので、条件の提示が出てきません。
- 退職を伝えてから2週間で労働契約は終わります*1*2。引き止めが続いても、この期間が延びることはありません。
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1. 引き止められない退職理由は会社が用意できない事情
引き止められない退職理由とは、上長が代案を出せない事情のことです。給与が低い、部署が合わないといった理由には、金額の見直しや配置の変更で応じられます。上長は代案を示す立場にあるため、話し合いは条件の提示から始まり、そのまま何度も繰り返されます。引き止められない退職理由にあたるのは、同居する親の介護や、決まっている入社日です。
そのため、最初に決めるのは理由の中身ではなく、その理由を会社が動かせるかどうかです。動かせる理由を出せば、上長は部署の異動や賃金の見直しを持ち出し、返事を保留にできます。動かせない理由を出せば、提示できる条件が社内に無いため、話は退職日の相談へ移ります。選ぶのは事実の中の一部です。
ただし、並べる事実は1つに絞ります。退職を決めた人には、通院や転居、同居する親の世話、入社日の確定といった事情が重なっています。そのうち社内で解決できないものだけを口に出してください。並べる数が増えるほど、上長が返せる提案も増えます。
2. 代案が出る理由と出ない理由は4つに分かれる
理由を分けるときは、2つの見方を重ねると早く決まります。1つは社内の話か社外の話か、もう1つは会社が代案を出せるか出せないかです。この2つを掛け合わせると、退職理由は4つに分かれます。引き止めが起きにくいのは、そのうちの1つだけです。
実際、給与や部署への不満は左下に入ります。上長が返せるのは、昇給の検討や異動の打診です。退職の話はそこから条件の交渉に変わっていきます。右下の通勤時間も同じで、在宅勤務の日数を増やす提案が出てきます。会社の側に提示できる条件があるうちは話が終わりません。
一方、右上に入る事情は社内の決裁では動きません。同居する親の介護で平日の日中に家を空けられないなら、勤務地や賃金を変えても状況は変わらないためです。すでに入社日を先方と決めている場合も、社内の処遇では動かせません。上長は退職日の相談に入ります。
なお、左上のように、希望する仕事が社内に無い場合も代案は返りません。ただ、この言い方は配置の話に寄りやすく、近い業務への異動を提案されます。説明の手数は社外の事情より増えます。先に出すのは右上の事情です。
3. 上長へ口頭で伝える例文6つ
書面に書く「一身上の都合により」は、自分の側の事情という意味の定型句です。口頭で同じ言い方をすると、上長は中身を聞き返します。そこで、事実の中から1つを選び、その場で言える形にしておきます。出すのは1つだけです。
同居する親の介護は、上長が動かせない事情の代表です。「同居している母の介護で、平日の日中に付き添う必要が出てきました。勤務を続けることが難しく、退職させていただきたいと考えています」と切り出してください。業務量を減らしても日中に家を空けられないため、上長に出せる条件がありません。
ただし、通院が理由のときは、勤務時間の調整という代案が返ってきます。時間をずらしても続けられない点まで、先に言い切ってください。「通院が続いており、治療に時間を充てることにしました。勤務の時間をずらしても続けられないため、退職をお願いします」と伝えます。先回りして言えば、その提案は返ってきません。
実際、転職先が決まっている場合は、日程だけが議題に残ります。入社日を先に置くと、上長は退職日の調整に入るしかありません。「次に勤める会社が決まり、入社日も先方と合意しました。勝手を申し上げますが、〇月〇日での退職をお願いしたく、本日ご相談に伺いました」という形です。日付が入ると話の中身が変わります。
そのため、条件を示された場面の返し方も決めておきます。「ご提案をいただけるのはありがたいです。ただ、勤務地や給与の話ではなく、家庭の側で動かせない事情ですので、考えは変わりません」と答えます。ここで事情を付け足すと、その分だけ代案の入り口が開きます。断るのは提案であって、相手ではありません。
なお、切り出し方を相談ではなく報告にすると、話し合いの入り口が変わります。「相談ではなく、退職を決めたうえでのご報告として伺いました。引き継ぎと退職日について、ご都合のよい日にお時間をいただけますか」と置いてください。相談の形で入ると、上長は結論を保留にできます。決めた事実を先に出します。
一方、退職日の言い方は、日付を自分から置くと早く決まります。「本日が申し入れになりますので、〇月〇日を最終出社日にしたいと考えています。引き継ぎの手順は今週中に書き出してお渡しします」と伝えます。日付が空いていると、上長は繁忙期の後ろへ動かす提案を出せます。先に置くのは自分の日付です。
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4. 相手と日を決めてから理由を1つに絞る
切り出す前に決めることは4つあります。伝える相手、切り出す日、伝える理由、退職日の4点です。順番を変えると、理由を並べた後に人事へ話が渡り、同じ説明をもう一度求められます。相手から先に決めます。
ただし、伝える相手は直属の上長だけです。人事や先輩へ先に話すと、上長が別の経路で知ることになり、順番の話が本題より先に出てきます。切り出す日は、業務時間の後にまとまった時間を取れる日を選んでください。会議の直前は避けます。
退職日の相談では、引き継ぎの段取りも一緒に出してください。担当している業務、進行中の作業、連絡先の一覧を書き出して持っていくと、話は日程だけで終わります。上長が持ち帰るのは、後任の割り当てと引き継ぎの期間です。最終出社日が決まるのは、この場です。
5. 伝え方ごとに返ってくる言葉が変わる
そのため、同じ退職の意思でも、言い方によって返ってくる言葉が変わります。社内で解決できる話には条件の提示が返り、社外の事情には日程の確認が返ってきます。左の列はそのまま口に出す形です。
伝え方と会社が出せる代案の対応
| 伝え方の例 | 会社が代案を出せるか | 続きやすいやり取り |
|---|---|---|
| 給与が上がらないので辞めます | 出せる | 昇給や評価の見直しを提案され返事を待たれる |
| いまの部署が合いません | 出せる | 異動先の候補を聞かれて再面談になる |
| 残業が多いので続けられません | 出せる | 業務量の調整を提案され保留になる |
| 同居している母の介護で日中に付き添います | 出せない | 勤務の調整では届かないため退職日の話に移る |
| 次の会社の入社日が決まりました | 出せない | 日程と引き継ぎの確認だけが残る |
| 通院が続くので治療に時間を充てます | 出せない | 時間をずらす案を断ると話が終わる |
ただし、出せないと書いた3つも、社内の話を足すと代案が返ってきます。介護の話に「業務量が多くて手が回らない」を足すと、割り振りの見直しという提案が生まれます。通院の話に「残業が多い」を足した場合も同じです。足すほど社内の話に寄ります。
一方、社内の話を1つも出さなければ、上長が使える提案は残りません。退職の意思を伝えたあと、会社の側に残る仕事は日程の確認と引き継ぎの割り当てだけです。ここまで来れば、同じ話で何度も呼ばれることはありません。出す事実を1つに絞る理由がここにあります。
6. 申し入れから2週間で労働契約は終わる
退職の意思を伝えた後に動く決まりは3つあります。1つは法律が定める期限、もう1つは会社が社内で定める働き方のきまり、つまり就業規則の期限です。残る1つは、辞めた後に請求できる証明書に書ける項目です。数字を先に知っておくと、日程の相談をこちらから出せます。
退職を申し入れた後に決まる3点
- 契約が終わる日:契約期間が決まっていない雇用、つまり期間の定めのない労働契約では、申し入れから2週間で契約が終わります*1*2。
- 届け出の期限:厚生労働省が公開している就業規則の見本(モデル就業規則)では、退職する人は少なくとも14日前までに届け出ると定めています*3。
- 請求できる証明書:退職のとき、使用期間(働いていた期間)、業務の種類、その事業での地位、賃金、退職の事由の5項目について、証明書への記載を請求できます*1。
なお、届け出を出した後に引き止めが続いても、期限そのものは動きません。上長が返事を保留にしている間も、申し入れた日から日数は進みます*1*2。ただし、期限だけで辞めると引き継ぎが途中で止まります。実際に決めるのは、合意したうえでの退職日です。
そのため、提出する書類は社内の書式に合わせてください。押印の扱いや用紙の向きは会社ごとに違うので、書類の名前と提出先を上長に聞きます。聞く順番は、書式、提出先、退職日です。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 引き止められない退職理由は作り話でもいいですか
A. 作り話は要りません。すでにある事情のうち、社内の調整で動かない部分を選んで伝えてください。介護や通院、先方と合意した入社日は、どれも事実として説明できます。事実に無いことを伝えると、後の確認で話が合わなくなります。
Q2. 条件を出されて引き止められたときはどう答えますか
A. 提案そのものへの返事を先に置きます。「ご提案はありがたいのですが、社内の条件で動く話ではありません」と伝えれば、上長は次の案を探せません。事情を言い足すと、その言葉から新しい提案が生まれます。返事は短いほど早く終わります。
Q3. 退職の申し入れから何日で辞められますか
A. 申し入れの日から2週間がたつと契約は終了します*1*2。社内の届け出には別の期限があり、就業規則の見本では14日前です*3。実際の退職日は、引き継ぎの期間を入れて上長と決めます。日付は自分から先に出してください。
Q4. 同じ理由を何度も聞かれたときはどうしますか
A. 答えは1回目と同じ文にします。言い回しを変えると、上長は事情が変わったと見て、もう一度提案を出せます。「事情は変わっていません。退職日の相談をさせてください」と返してください。同じ文で返すほど、話は日程に戻ります。
8. まとめ:会社が代案を出せない事情を1つだけ伝える
この記事のまとめ
- 伝える事実は1つだけにします。通院や介護、決まっている入社日から、社内で動かせないものを1つ選んでください。
- 切り出す順番は、直属の上長、業務時間の後の時間、理由、退職日の4つです。日付はこちらから先に出します。
- 条件を提示されたら、提案への返事だけを短く返してください。理由を足すと、その分だけ上長が出せる案が増えます。
- 退職日と引き継ぎは同じ場で決めます。書類の書式と提出先は社内で決まっているので、上長に確認してから書き始めてください。
退職の意思は、事実のうち会社が動かせない1つを選んで伝えます。相手と日を先に決め、理由はそれ以上足しません。日程の話に移れば、あとは引き継ぎの段取りだけが残ります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(2026年確認)
*2 e-Gov法令検索「民法」第627条(2026年確認)
*3 厚生労働省「モデル就業規則について」(2026年確認)
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