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賃金未払いの時効|給与と残業代は3年・退職金は5年

賃金未払いの時効|給与と残業代は3年・退職金は5年のイメージ写真

未払いの給与や残業代を請求できる期間は、支払日から3年です*1*2。退職金は5年で、どちらも支払日を過ぎてから数え始めます*1*3。

3年は「当分の間」の扱いで、法律の本来の期間は5年です*1。期限が近いなら、まず会社に書面で請求すると時効の完成が6か月延び、その間に労働基準監督署への申告や裁判の準備を進められます*4。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事のポイント

  • 労働基準法は賃金の請求権の時効を5年と定めていますが、当分の間は、退職手当を除く賃金を3年、退職手当を5年としています*1。
  • この期間は、令和2年4月1日以後に支払期日が来た賃金に当てはまり、数え始めるのは支払期日です*3。
  • 退職した人の未払いの給与には、退職日の翌日から年14.6%の遅延利息が付きます*5。

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1. 賃金未払いの時効は給与と残業代が3年で退職金が5年

未払いの給与や残業代は、支払日から3年で時効により請求できなくなります*1。退職金は5年です*1。3年は法律の附則にある当分の間の期間で、本来の期間は5年と定められています*1*2。

賃金の請求権の時効は、労働基準法第115条で決まっています。条文は、賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間行わない場合、時効によって消滅すると定めています*1。

ただし、附則第143条第3項により、当分の間は、退職手当の請求権は5年、退職手当を除く賃金の請求権は3年とされています*1。毎月の給与や残業代、休日出勤の手当などは、この3年に当たります。月ごとに支払日が違うので、時効も月ごとに1か月ずつずれていきます。厚生労働省のQ&Aは、3年の対象として、賃金の支払のほか、休業手当、時間外・休日労働などの割増賃金、年次有給休暇中の賃金などを挙げています*3。

厚生労働省のリーフレットも、賃金請求権の時効を5年に延ばしつつ、当分の間は3年とすると説明しており、改正の前は2年でした*2。

退職金について、リーフレットは時効の期間に変更はないとしています*2。退職金の5年は、就業規則などで支給の条件があらかじめ決まっている退職手当の話です*3。

2. 賃金未払いの時効を請求の種類ごとに並べる

請求の種類ごとに、時効の期間と数え始める日を並べました。

請求の種類と時効の期間

請求の種類時効の期間
毎月の給与・残業代・手当支払期日から3年*1
退職金(退職手当)支払期日から5年*1
付加金(裁判で命じられる上乗せ)違反の時から3年*1
年次有給休暇を使う権利2年(改正で延びていない)*3
令和2年3月31日までに支払期日が来た賃金改正前の2年*3

時効を数え始めるのは、賃金の支払期日です*3。この扱いは、改正の前から変わっていません*3。

たとえば、毎月25日払いの会社で、2026年4月分の残業代が4月25日に払われなかった場合、請求できるのは2029年4月25日ごろまでです。日付は仮の例で、正確な満了日は支払期日から数えます。

3年の期間は、令和2年4月1日以後に支払期日が来た賃金に当てはまります*3。それより前に支払期日が来た賃金は、改正の前の期間が当てはまるとされています*3。

年次有給休暇を使う権利そのものは、この改正で延びておらず、2年のままです*3。休業手当や割増賃金は3年、年休を使う権利は2年と、期間が違う点に注意しましょう。付加金は、裁判で、未払いの額と同じ額までの上乗せを会社に命じてもらえるものです。請求は違反があった時から5年以内と本則で定められていますが、当分の間は3年と読み替えられています*1。

3. 賃金未払いの時効が近いときの請求の手順

時効が近いときに、払われていない賃金を求める手順を並べました。

時効が近いときは記録を集めて会社に書面で請求し6か月の間に申告や裁判の準備をする 記録を集める 明細・勤怠・メール 書面で請求する 時効の完成が6か月延びる 申告や裁判 6か月の間に進める 催告による延長は1回だけで、重ねて請求しても延びない*4

まず、払われていない額を示す記録を集めます。給与明細、勤怠の記録、残業を命じられたメールやチャット、就業規則の賃金の条文などです。

次に、会社に払ってほしいと書面で請求します。民法第150条は、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないと定めています*4。時効の期限が近いときに、6か月の時間を作れます。

ただし、6か月の間にもう一度請求しても、さらに延びることはありません*4。この6か月の間に、裁判での請求などの手続きを始める必要があります。

裁判上の請求などの手続きをしている間は、時効は完成しません*4。判決などで権利が確定すると、時効はそこから新たに数え始められます*4。

書面には、請求する期間と金額の内訳、支払ってほしい期限を書きます。払う額と時期を会社が書面で約束した場合も、その書面は後で大切な記録になります。送るときは、いつ届いたかが後で分かる方法を選んでおきましょう。届いた日が、6か月を数え始める日になるからです。

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4. 退職した後の未払い賃金には年14.6%の遅延利息

退職した人の未払いの給与には、遅延利息が付きます。賃金の支払の確保等に関する法律第6条は、退職した労働者の賃金を退職の日までに払わなかった事業主に、遅延利息を払うよう定めています*5。期間は、退職の日の翌日から払う日までです*5。

その率は年14.6%です*5。仮に、退職後に払われていない給与が30万円あり、退職の翌日から1年後に払われたとすると、遅延利息はおよそ4万3,800円になります。在職中の未払いの給与には、この14.6%は当てはまりません。この利率が当てはまるのは、退職した後の未払いに限られるからです*5。請求の書面には、遅延利息の額も計算して書いておくと、会社と話すときに金額で示せます。

対象になるのは退職手当を除く賃金で、退職金には当てはまりません*5。また、天災地変などのやむを得ない事由で払えなかった期間は、この利率の対象から外れます*5。

退職した後に請求するときは、払われていない給与の額とあわせて、遅延利息も請求できることを書面に書いておきましょう。

5. 賃金未払いは労働基準監督署に申告できる

会社に請求しても払われないときは、労働基準監督署に申告できます。労働基準法第104条は、事業場に労働基準法などに違反する事実がある場合、労働者はその事実を労働基準監督署などに申告できると定めています*1。

申告したことを理由に、会社が労働者を解雇したり、不利益に扱ったりすることは禁じられています*1。在職中でも、退職した後でも、申告をためらう必要はありません。

申告の窓口は、会社の事業場の住所を受け持つ労働基準監督署です。会社とのやり取りを時系列に並べたメモを作っておくと、窓口で説明しやすくなります。申告では、いつの分の賃金がいくら払われていないかを、記録と一緒に示します。ただし、申告をしただけで時効が止まるかどうかは、資料に書かれていないので、期限が近いなら書面での請求や裁判の手続きも並行して考えましょう。

会社が倒産して給与が払われないまま退職した場合は、労働者健康安全機構の未払賃金立替払制度を使えることがあります。対象は、労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行っていた事業主に雇われ、倒産に伴い賃金が払われないまま退職した人です*6。

立替払の請求には期限があります。法律上の倒産なら裁判所の決定日などの翌日から2年以内、事実上の倒産なら労働基準監督署長の認定日の翌日から2年以内です*6。

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6. 退職の前に未払い賃金の記録を残しておく

未払いの賃金を請求するときにいちばん困るのは、退職した後に記録が手元にないことです。在職しているうちに、毎月の明細と勤怠の記録を自分でも保存しておきましょう。明細を紙で受け取っているなら写真に撮り、電子で受け取っているならPDFで保存しておきます。退職するとシステムに入れなくなる会社もあるので、退職日の前に保存を済ませておくと安心です。

残業代の未払いを請求するなら、実際に働いた時刻が分かる記録が要ります。会社の勤怠の記録のほか、業務のメールやチャットの送信時刻、パソコンのログイン時刻を控えておくと、働いた時間を示す手がかりになります。

タイムカードの写真や、上司から残業を指示されたメッセージの画面も、日付が分かる形で残しておきましょう。退職の前に、就業規則と賃金規程の写しも受け取っておきます。賃金の締め日と支払日、残業代の計算の仕方が書かれていれば、いくら払われるはずだったかを計算できます。

転職先が決まってから請求を考える人も多いですが、時効は待ってくれません。退職日と最後の給与の支払日を書き出し、どの月の分がいつ時効になるかを表にしておくと、請求の順番が決まります。

転職先を探すときは、求人票や労働条件通知書で、給与の支払日と残業代の扱いを読んでおきましょう。固定残業代がある場合は、何時間分でいくらか、超えた分は別に払われるかも聞いておくと、同じことが起きにくくなります。

7. よくある質問

Q1. 未払いの残業代は何年さかのぼって請求できますか?

A. 支払日から3年です*1。令和2年4月1日以後に支払日が来た分に当てはまります*3。

Q2. 退職金の未払いは何年で時効ですか?

A. 5年です*1。労働協約や就業規則で支給の条件が決まっている退職金が対象です*3。

Q3. 時効はいつから数えますか?

A. 賃金の支払期日から数えます*3。

Q4. 時効を止める方法はありますか?

A. 書面で請求すると6か月は時効が完成しません。その間に裁判などの手続きを始めます*4。

Q5. 退職後に払われない給与に利息は付きますか?

A. 退職の日の翌日から年14.6%の遅延利息が付きます*5。

Q6. 労働基準監督署に申告すると会社にばれて不利になりませんか?

A. 申告を理由とする解雇や不利益な扱いは禁じられています*1。

Q7. 有給休暇を使う権利は何年で消えますか?

A. 年次有給休暇を使う権利は2年で、賃金の3年とは別です*3。

Q8. 3年より前の残業代はもう請求できませんか?

A. 支払日から3年を過ぎた月の分は、時効で消えてしまいます*1。

8. まとめ:賃金未払いの時効は3年で退職金は5年

この記事のまとめ

  • 未払いの給与と残業代は、支払日から3年で時効になる*1
  • 退職金は5年*1
  • 令和2年4月1日以後に支払日が来た賃金に当てはまる*3
  • 書面で請求すると、時効の完成が6か月延びる*4
  • 退職後の未払いの給与には、年14.6%の遅延利息が付く*5

払われていない賃金があるなら、時効の近い月の分から会社に書面で請求しましょう。退職する前に明細と勤怠の記録を手元に残しておくことが、請求の出発点です。

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出典・参考情報

*1 労働基準法 第104条・第114条・第115条・附則第143条(e-Gov法令検索)
*2 未払賃金が請求できる期間などが延長されています(厚生労働省)
*3 改正労働基準法等に関するQ&A(厚生労働省労働基準局・令和2年4月1日)
*4 民法 第147条・第150条(e-Gov法令検索)
*5 賃金の支払の確保等に関する法律 第6条・同施行令 第1条(e-Gov法令検索)
*6 未払賃金立替払制度の概要(労働者健康安全機構)

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