裁量労働制で残業代請求はできる?深夜と休日の割増賃金

システムの設計を任されて、毎晩遅くまで働いている。会社は裁量労働制だから残業代は出ないと言うけれど、深夜や休日に働いた分まで本当に出ないのか、納得できずにいる人もいます。
裁量労働制で残業代請求はできるかというと、深夜と休日に働いた時間の割増賃金は、裁量労働制でも実際に働いた時間に応じて払われます*1。みなし労働時間が法定労働時間を超えている場合は、その超えた部分にも割増賃金が要ります*1。
Relasic(株式会社LASSIC運営)|リモートワーク対応の転職支援
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 専門業務型裁量労働制は、決められた20の業務について、労使協定であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です*1。
- みなし労働時間が法定労働時間を超えるときは36協定が要り、超えた部分には割増賃金を払う必要があります*1。
- 休日労働と深夜労働の決まりは裁量労働制にも適用され、みなし労働時間ではなく実際に働いた時間に応じて割増賃金が払われます*1。
リモートワーク対応の正社員求人|Relasic(株式会社LASSIC運営)
残業や働き方を見直す転職を考えるなら、リモートワーク対応の正社員求人も見てみてください。
1. 裁量労働制でも深夜と休日の残業代は請求できる
裁量労働制でも、深夜と休日に働いた分の割増賃金は出ます。協定で決めた1日の時間が8時間を超えるなら、その差の分にも割増賃金が要ります*1。
専門業務型裁量労働制は、仕事の進め方や時間の配分を働く人に大きく任せる必要があるとして定められた20の業務について使える制度です*1。会社は、対象の業務を労使協定で決め、その業務に就いた人は、協定で決めた時間を働いたものとみなされます*1。
つまり、この制度では、実際に何時間働いたかではなく、協定で決めたみなし労働時間で労働時間を数えます*1。1日の所定の時間を多少超えて働いても、ふだんの時間外労働のように1時間ごとの残業代が出るわけではありません。
それでも、すべての割増賃金がなくなるわけではありません。厚生労働省の解説は、休日労働と深夜労働の決まりはこの制度で労働時間を数える場合にも適用されるとしています*1。休日や夜間に働いた分は、協定の時間とは別に、働いた分だけ割増賃金を払う必要があります*1。
さらに、1日のみなしの時間を法定労働時間より長く決めるなら、会社は36協定を結ぶ必要があり、8時間を超える部分には割増賃金を払う必要があります*1。
あわせて読みたい | 裁量労働制の求人|時間をどこまで自分で決められるか
2. 裁量労働制で割増賃金が出る場面と率
裁量労働制で働いている人に割増賃金が出る場面と、その率を並べました。率は一般の割増賃金と同じです。
裁量労働制の割増賃金
| 場面 | 数える時間 | 割増の率 |
|---|---|---|
| 協定の時間が法定の8時間を超える | 協定の時間のうち8時間を超える分*1 | 25%以上*2 |
| 深夜(午後10時〜午前5時)に働いた | 深夜に働いた実際の時間*1 | 25%以上*2 |
| 法定休日に働いた | 休日に働いた実際の時間*1 | 35%以上*2 |
時間外や深夜に働かせた場合は1時間あたりの賃金の25%以上、法定休日に働かせた場合は35%以上の割増賃金が要ります*2。1か月に60時間を超える時間外労働の割増率は50%以上です*2。
深夜と重なると率は足し算になります。時間外労働が深夜に及んだ場合は5割以上、法定休日の労働が深夜に及んだ場合は6割以上の割増賃金が要ります*3。法定休日の夜遅くまで障害対応をした日は、この6割以上の率で計算されているかを見てください。
この制度でも、休憩と年次有給休暇は通常どおり適用されます*1。みなしの時間で働いているからといって、休憩や有給休暇が消えることはありません。
3. 裁量労働制の残業代を自分で見直すときの手順
裁量労働制で残業代が出ていないと感じたら、次の手順で自分の給与と働いた時間を照らし合わせます。
最初に、会社の労使協定で、1日のみなしの時間が何時間と決められているかを知ります*1。8時間を超えていれば、その差の分には割増賃金が要ります*1。
次に、深夜の午後10時から午前5時までに働いた時間と、法定休日に働いた時間を、日付と一緒に書き残しておきます*2。パソコンのログイン記録や、業務チャットの送信時刻など、あとから見返せるものと合わせておくと、説明しやすくなります。
会社にも、働いた時間を記録する義務があります。この制度でも、労働安全衛生法により労働時間の状況の把握が義務づけられています*1。方法は、タイムカードの記録やパソコンの使用時間の記録などの客観的なものである必要があります*1。自分の記録と会社の記録を見比べられるよう、会社がどの方法で時間を記録しているかも聞いておきましょう。
そのうえで、毎月の給与明細の割増賃金の欄と、書き残した時間を見比べます。深夜や休日に働いたのに割増の欄が空いている月があれば、人事の担当者に、割増賃金の計算の仕方を聞いてみてください。
会社との話し合いで解決しないときは、労働基準監督署に相談できます。相談のときは、書き残した勤務時刻の記録と給与明細、雇用契約書の写しを持っていくと、話が早く進みます。
あわせて読みたい | 通勤手当は割増賃金の基礎に入る?残業代の計算から除く手当
4. 裁量労働制の対象になるITエンジニアの業務
裁量労働制が使えるのは、決められた20の業務に限られます*1。ITエンジニアに関わるものとしては、情報処理システムの分析または設計の業務と、システムコンサルタントの業務が挙げられています*1。
システムコンサルタントの業務は、いまの情報処理システムや仕事の体制について聞き取りをして、問題点をつかむ業務です*1。そのうえで、新しいシステムの導入や改善に向けて、活用の方法を考えたり助言したりします*1。開発にかかる時間や費用も考えて、活用の方法を提案することが含まれます*1。
この業務は、ユーザーの業務を分析して最適な処理の方法や機種を決めることや、アプリケーションの設計を指します*1。システムが動き出したあとの評価や、問題点の改善も含まれます*1。
一方で、プログラムの設計や作成を行うプログラマーは、この業務に含まれないと厚生労働省は説明しています*1。ゲーム用ソフトウェアの創作の業務も対象ですが、他人の具体的な指示に従って裁量のないプログラミングをする人は含まれません*1。
自分の仕事が、設計や分析なのか、指示どおりにプログラムを書く仕事なのかで、この制度の対象になるかが変わります。対象の業務でない仕事をしているのにこの制度が使われていると感じたら、会社の労使協定と自分の仕事の中身を書き出して、相談の準備をしておきましょう。
5. 裁量労働制を使う会社が労使協定で決めること
会社がこの制度を使うには、労働者の過半数で組織する労働組合か、過半数を代表する人と書面で労使協定を結びます*1。協定は、所轄の労働基準監督署に届け出ます*1。
協定では、対象の業務と1日のみなしの時間を決めます*1。仕事の進め方や時間配分について会社が具体的な指示をしないこと、健康と福祉を守る措置、苦情を受け付ける措置も協定の項目です*1。
協定の有効期間は3年以内とするのが望ましいとされています*1。働いた時間の状況や、健康を守る措置と苦情処理の実施状況、同意と撤回の記録は、働く人ごとに有効期間中と満了後3年間保存することになっています*1。
健康を守る措置には、働いた時間が一定を超えた人に医師の面接指導を行うことや、深夜に働く回数を1か月で一定の回数以内にすることなどがあります*1。どの措置をとるかは協定で具体的に決めることになっているので、自分の会社で何が決められているかも見ておきましょう。
指示をしない点が協定の項目に入っていることは大切です。毎日の作業の順番や終わりの時刻まで上司から細かく決められているなら、仕事を本人に任せるという前提と合っていない可能性があります。その場合は、協定の中身を見せてもらいましょう。
6. 2024年4月からの裁量労働制の同意と撤回
2024年4月1日から、この制度の決まりが改正されました*1。新しく導入する会社だけでなく、続けて使う会社にも新しい手続きが求められています*1。
具体的には、制度を使うときに本人の同意を得ること、同意しなかった人を不利に扱わないことを労使協定に定めます*1。同意を撤回する手続きも協定で決める項目で、働く人は一度同意したあとでも撤回できます*1。
会社は同意を得る前に、制度の中身やみなし労働時間、同意した場合の賃金や評価の制度、同意しなかった場合の配置や処遇を示して説明することが適切だとされています*1。説明を受けないままこの制度になっていると感じたら、まずは人事の担当者に、制度の中身の説明を求めてください。
説明の仕方も大切です。十分な説明が無く、同意が本人の自由な意思によるものと認められない場合があります*1。その場合は、労働時間をみなす効果が生じないこととなる場合があると、厚生労働省は解説しています*1。たとえば、同意の前に、賃金や評価の仕組みについて誤った説明を受けていた場合がこれに当たります*1。
長く働いた人の健康を守る決まりもあります。会社は、1週間の労働時間のうち40時間を超える時間が月80時間を超えた人から申し出があれば、医師による面接指導を行わなければなりません*1。
7. よくある質問
Q1. 裁量労働制だと残業代は一切出ませんか?
A. 出る場面があります。夜10時以降や法定休日に働いた分と、協定の時間が8時間を超える分です*1。
Q2. 深夜に働いた分はどう計算しますか?
A. 深夜に実際に働いた時間について、25%以上を上乗せした賃金で計算します*2。
Q3. プログラマーにも裁量労働制は使えますか?
A. 使えない場合があります。厚生労働省は、プログラマーは情報処理システムの分析・設計の業務に入らないとしています*1。
Q4. 裁量労働制の同意は取り消せますか?
A. 取り消せます。会社は撤回の手続きを協定で決めておかなければなりません*1。
Q5. 有給休暇は使えますか?
A. 使えます。年休と休憩の決まりはこの制度でも変わりません*1。
Q6. 長く働いた月に医師の面接は受けられますか?
A. 受けられます。週40時間を超えた時間が1か月で80時間を超えたら、本人が申し出れば会社は医師の面接指導を行う決まりです*1。
8. まとめ:裁量労働制でも深夜と休日の割増賃金は出る
この記事のまとめ
- 労働時間は協定で決めたみなしの時間で数える*1
- 協定の時間が法定の8時間を超える分は割増になる*1
- 夜10時〜朝5時と法定休日は、働いた分だけ割増が付く*1
- プログラマーは情報処理システムの分析・設計の業務に入らない*1
- 2024年4月から、本人の同意と撤回の手続きが要る*1
残業代が少ないと感じたら、協定のみなし時間と夜間・休日の勤務記録をそろえ、給与明細と照らし合わせてから人事の担当者に聞いてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 専門業務型裁量労働制の解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署・2024年3月)
*2 しっかり学ぼう!働くときの基礎知識 時間外・休日労働と割増賃金(厚生労働省 確かめよう労働条件)
*3 割増賃金の基礎となる賃金とは?(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署・2024年3月)
転職ノウハウ その他の記事
もっと読む 〉-
テレワーク実施率の業種別ランキング|IT企業の割合
令和7年度テレワーク人口実態調査で、雇用型テレワーカーの割合が最も高い業種は情報通信業の74.1%です*1。次いで学術研究、専門・技術サービス業が54.0%、最も低いのは宿泊業・飲食業の6.0%です*1。雇用型には、正社 […] -
内定の比較表|年収と休日と働き方を並べる書き方
内定の比較表は、会社ごとに同じ行で並べ、行の名前を労働条件通知書の項目にします*4。契約期間、就業場所と変更の範囲、業務と変更の範囲、始業と終業の時刻、休日、休暇、賃金、退職は、会社が書面で示す項目です*1。年収と休日と […] -
土日休みでフルリモートの正社員|年間休日と休日出勤の決まり
土日休みかどうかは、求人票の週休二日制の欄が「毎週」かどうかと、休日の欄で見分けます*4。「毎週」は完全週休2日制のことで、休みの曜日までは決まっていないため、土曜と日曜かどうかは面接で聞きます。フルリモートの正社員求人 […] -
インフラエンジニアの資格一覧|サーバーとネットワークとクラウド
インフラエンジニアの資格は、情報処理推進機構(IPA)の国家試験と、各社・各団体が認定するベンダー資格の2系統に分かれます。国家試験は基本情報技術者からITサービスマネージャまで7つ、ベンダー資格は6つです。ベンダー資格 […]