裁量労働制とフルフレックスの違い|残業代と労働時間の数え方

裁量労働制とフルフレックスの違いは、労働時間の数え方です。フレックスタイム制は実際に働いた時間を数え、裁量労働制は決めた時間を働いたものとみなします*1*2。フルフレックスは法令の用語ではなく、コアタイムを置かないフレックスタイム制の運用を指す呼び方です*1*5。
残業代が出る基準も、この数え方の違いです。割増賃金が要るのは、フレックスタイム制なら清算期間の総枠を超えた分、裁量労働制ならみなし労働時間が法定労働時間を超える部分です*1*2。深夜と休日は、どちらの制度も実際に働いた時間で計算します*2*4。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- フレックスタイム制は、労働者が日々の始業と終業を決め、働いた実績を清算期間(労働時間を集計する期間)の総枠と比べます*1。裁量労働制では、労使協定などで事前に定めた時間を、そのまま労働時間として算定します*2*3。
- フルフレックスは、コアタイム(全員が出勤していなければならない時間帯)のない形のフレックスタイム制の通称です*1*5。コアタイムがなくても、所定休日(会社があらかじめ決める休みの日)は定めておく必要があります*1。
- ITで専門業務型の対象になるのは、システムの分析・設計とシステムコンサルタントの業務で、プログラマーは含まれません*2。深夜と休日の労働は、裁量労働制でも、働いたその時間で割増賃金を計算します*2*3。
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1. 労働時間を実際の時間で数える制度と決めた時間で数える制度
フレックスタイム制は働いた実際の時間を、裁量労働制は決めたみなし労働時間を、それぞれ労働時間として数えます*1*2。清算期間の総労働時間を決めたうえで、日々の始業と終業の時刻を労働者が決める制度が、フレックスタイム制です*1*5。裁量労働制は、労使協定(会社と労働者側が結ぶ書面の約束)などで事前に決めた時間を、働いたものとみなす制度です*2*3。時間外労働(法定労働時間を超えた労働)の基準には、前者は実際の労働時間を、後者はみなし労働時間を使います*1*2。
フルフレックスという言葉は、法令の用語ではありません。フレックスタイム制では、コアタイムは設けなくてもよく、全部をフレキシブルタイム(出社と退社の時刻を自分で決められる時間帯)とすることもできます*5。この、コアタイムを置かない運用を指して「フルフレックス」と呼びます。
コアタイムを置かなくても、出勤日まで完全に自由になるわけではありません。実質的に出勤日も労働者が自由に決められる運用でも、所定休日は決めておく必要があります*1。清算期間の総労働時間は、労働契約で働くべき時間として定められた所定労働時間にあたります*1。
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2. 残業代が出る基準は労働時間の数え方で分かれる
時間外労働になる基準は、労働時間を何で数えるかで変わります。実績の時間を使うのがフレックスタイム制、みなし労働時間を使うのが裁量労働制です。
フレックスタイム制の時間外労働は、日や週ではなく、清算期間の単位で数えます。清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間の法定労働時間(法律が定める労働時間の上限)の総枠を超えた時間数が、時間外労働です*1。1か月を清算期間とすると、総枠は日数で変わります。31日の月は177.1時間、30日の月は171.4時間、29日の月は165.7時間、28日の月は160.0時間です*1。
たとえば31日の月なら、忙しい日に長く働き、そうでない日に短く働いても、月の合計が177.1時間以内であれば、時間外労働は生じません。清算期間は3か月以内で、1か月を超えて設定するときは線がもう1つ加わります*1*4。1か月ごとに区切った期間の労働時間が週平均50時間を超えた分も、時間外労働です*1。法定休日(1週間に1日の休み)に働いた時間は、清算期間の総労働時間や時間外労働とは別に扱われ、35%以上の割増賃金で計算します*1。裁量労働制には、このような期間ごとの総枠がありません。
裁量労働制では、労使協定であらかじめ定めた時間を、労働時間として算定します*2。みなし労働時間は実際の労働時間と一致させなくてもよく、1週間単位や1か月単位の時間は協定できません*2。法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定するときは、36協定(時間外労働をさせるために会社と労働者側が結ぶ協定)が要り、超えた部分に割増賃金が必要です*2。
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3. フレックスタイム制と裁量労働制を6項目で並べた比較

フルフレックスは、フレックスタイム制のうちコアタイムを置かない形なので、左の列にはフレックスタイム制の規定を置きました。
フレックスタイム制と裁量労働制の比較
| 項目 | フレックスタイム制(フルフレックスを含む) | 裁量労働制 |
|---|---|---|
| 労働時間の数え方 | 実際に働いた時間を集計し、清算期間の総枠と比べる*1 | 労使協定などで決めたみなし労働時間で算定する*2*3 |
| 時間外労働になる分 | 清算期間の法定労働時間の総枠を超えた時間*1 | 法定労働時間を超えるみなし労働時間の部分*2 |
| 時間の決め方 | 清算期間(3か月以内)の総労働時間を決める*1*4 | 週や月ごとのみなし労働時間は協定できない*2 |
| 深夜の割増賃金 | 労働基準法第37条の一般の規定。25%以上*4 | 実際に働いた時間で払う*2*3 |
| 法定休日の割増賃金 | 別枠で35%以上*1 | 休日に働いた実際の時間で払う*2*3 |
| 導入の条件 | コアタイムは任意。所定休日は定める*1*5 | 専門型は20業務を労使協定で指定。企画型は労使委員会の決議と届出*2*3 |
深夜の割増賃金は、労働基準法第37条に一般の規定があり、午後10時から午前5時までの労働に25%以上の率で計算します*4。深夜労働は、フレックスタイム制でもこの規定の対象です*4。
表の左の列は、求人票に「フルフレックス」とあるときの読み方でもあります。コアタイムの有無は、フレックスタイム制の中の運用の違いであり、裁量労働制との違いではありません*5。
4. ITエンジニアが対象になるのは専門業務型の2業務
裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類があります。専門業務型は、20の業務から労使協定で対象業務を定める制度です*2。企画業務型は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務に使う制度です*3。労使委員会(制度の導入を決議する委員会)で決議し、労働基準監督署長に届け出ます*3。決議は、委員の5分の4以上の多数による議決が要件です*4。
専門業務型の20業務のうち、ITに関わるのは、情報処理システムの分析または設計の業務と、システムコンサルタントの業務です*2。プログラムの設計または作成を行うプログラマーは、含まれません*2。求人票に「専門業務型」とあるときは、仕事の中身が分析・設計かシステムコンサルタントに当たるかを、面接で聞いてください。
2024年4月1日からは、専門業務型を労働者に適用するために、追加で必要になった項目があります*2。労使協定には、労働者本人の同意を得ることを定めなければなりません*2。追加項目は、本人の同意、同意しない労働者への不利益取扱いの禁止、同意の撤回の手続き、記録の保存です*2。
適用された労働者は、同意を撤回できます*2。企画業務型でも、本人の同意が必要です*3。入社後に裁量労働制の適用を求められたときは、同意を求める書面と、撤回の手続きがどう定められているかを聞いておくと、同意するかどうかを決めやすくなります。
5. 求人票に制度名があるときは面接で中身を聞く

求人票の制度名だけでは、働く時間のルールまでは分かりません。「フルフレックス」は、法律で決まった制度名ではありません。裁量労働制も、労使協定や労使委員会の決議でみなし労働時間を定める制度なので、どちらも制度名の下に会社ごとの定めがあります*1*2*3。
フルフレックスの求人では、次の3つを聞きます。清算期間が何か月か、コアタイムが実際に無いか、所定休日がどう決まっているかです*1*5。清算期間が1か月を超える場合は、1か月ごとの週平均50時間の線がどう運用されているかも聞いておきます*1。
裁量労働制の求人では、専門業務型か企画業務型かを聞きます。みなし労働時間が1日何時間なのかと、法定労働時間を超えるなら36協定があるかも、あわせて聞きます*2。超えた分には、割増賃金が必要だからです*2。
どちらの制度でも、深夜と法定休日の労働は、実際に働いた時間に応じた割増賃金の対象です*1*2*3。給与の説明で「みなし労働時間に含まれる」と言われたときは、深夜や休日に働いた分がその説明の外に出るかどうかを、面接で聞いておきます。
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6. よくある質問
Q1. フルフレックスは法律で決まっている制度ですか?
A. いいえ。コアタイムなしのフレックスタイム制を指す通称で、法律上の制度名ではありません*1*5。
Q2. フルフレックスで残業代は出ますか?
A. 出ます。総枠を超えた時間は時間外労働になり、割増賃金が必要です*1。
Q3. コアタイムがなければ出勤日も自由に決められますか?
A. 出勤日を実質的に自由にする運用でも、所定休日は事前に定めておきます*1。
Q4. 清算期間は最長でどれくらいですか?
A. 3か月以内です*1*4。
Q5. 裁量労働制で深夜に働いたときの割増賃金は出ますか?
A. 出ます。働いたその時間に応じて払われます*2*3。
Q6. プログラマーは専門業務型の対象ですか?
A. 含まれません。ITで対象なのは、分析・設計とコンサルタントの業務です*2。
Q7. 裁量労働制は本人の同意なしに適用されますか?
A. 同意なしには適用できません。専門業務型は、2024年4月1日から、本人の同意を得る旨を労使協定に定める必要があります*2。企画業務型も、本人の同意が要ります*3。
7. まとめ:残業代の基準も数え方の違いで変わる
この記事のまとめ
- 労働時間の数え方は、フレックスタイム制が実労働時間、裁量労働制がみなし労働時間*1*2
- コアタイムを設けない運用が「フルフレックス」で、法令の用語ではない*1*5
- 専門業務型のITの対象は、分析・設計とシステムコンサルタント。プログラマーは含まれない*2
- 専門業務型は2024年4月1日から本人の同意などが必要。企画業務型も本人の同意が要る*2*3
- 深夜と休日の割増賃金は、どちらの制度でも働いた時間に応じて払われる*1*2*4
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※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
*2 専門業務型裁量労働制の解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
*3 企画業務型裁量労働制の解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
*4 労働基準法 第32条の3・第37条・第38条の3・第38条の4(e-Gov法令検索)
*5 1 フレックスタイム制とは(厚生労働省)
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