退職届の効力はいつから?提出後の撤回と退職日の決まり

退職届の効力が生じて雇用が終わるのは、期間の定めのない雇用なら、申入れから2週間後です*1。退職届は辞職(会社の承諾にかかわらず退職する意思表示)にあたり、会社に届いた時点から撤回できません*4。退職願は合意退職の申込み(会社の承諾を得て契約を終わらせる申込み)で、承諾があるまでは撤回できます*2。
文書は、表題だけでなく記載内容や言動から判断されます*2。辞職か合意退職の申込みかどちらか分からないときは、後者と考えます*4。契約期間の定めがある雇用は扱いが異なるため、対象にしません。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 無期の労働契約は、会社が認めなくても、申入れから2週間で終わります*1*2。就業規則に期間を大幅に延ばす定めや許可制の定めがあっても、無効です*2。
- 退職願は合意退職の申込みで、会社が承諾するまでは撤回できます*2*4。退職届は辞職の意思表示で、会社に届くと撤回できなくなります*4。
- 就業規則に1か月前までの申出などの定めがあれば、茨城労働局はまず就業規則に沿った申出をするのがよいとしています*5。退職日は、申入れが伝わった翌日から14日が過ぎた日以降に置きます*5。
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1. 期間の定めのない雇用は申入れから2週間で終わる
期間の定めのない雇用では、退職を申し入れてから2週間がたつと雇用が終了します*1。会社が認めなくても、2週間という期間は動きません*2。退職届は辞職にあたり、届いたあとは撤回できません*4。退職願は合意退職の申込みにあたり、承諾までは撤回できます*2*4。
民法第627条第1項は、雇用の期間を定めなかったときの解約の申入れについて定めた条文です*1。各当事者はいつでも解約を申し入れることができ、雇用は申入れの日から2週間を経過することで終了します*1。契約期間を決めていない労働契約(無期労働契約)でも、労働者が退職届を提出するなど退職の申入れをすれば、原則としてその後2週間で契約が終了します*2。会社が退職を認めないと言っても、この結論は変わりません*2。
会社の就業規則に、この期間を大幅に延ばす定めや、2週間を超える場合にも会社の許可を条件とする定めがあっても、そのような定めは無効とされます*2。2週間を超える解約予告期間の設定や、退職を会社の許可制にする定めが無効とされるのは、退職の自由を制限するためです*3。ただし、就業規則には退職の手続が定められているのが一般的で、規則の内容を読んだうえで手続をとることが、トラブルの防止に重要です*2。
同じ第627条の第2項は、期間によって報酬を定めた場合の、使用者からの解約の申入れについて書かれた規定で、労働者の退職の期間を定めたものではありません*1。退職届の効力が及ぶ期間として、労働者の側に書かれているのは第1項の2週間です*1。
あわせて読みたい | 退職届はいつまでに出す?法律では退職日の2週間前まで
2. 意思を伝えた日から退職が成立する日まで

退職の意思を会社に伝えたあと、雇用が終わる時点は、会社が承諾したかどうかで分かれます*2。承諾があればその時点で、承諾がなければ申入れから2週間後に効力が生じます*2。2週間は、退職の意思が会社に伝わった次の日から数えて14日です*5。
退職届の効力が生じる時点は、厚生労働省の資料でも書き方が分かれています*2*4。厚生労働省の退職の解説は、労働者が退職を申し入れた場合について、会社が承諾すればその時点で、承諾しなければ2週間後に効力が発生すると説明しています*2。スタートアップ労働条件Q&Aの説明は、辞職は会社への意思表示が到達した段階で効力が発生し、その段階で撤回できなくなる、というものです*4。どちらの説明も、期間の定めのない労働契約で2週間の予告期間を置くことが前提です*2*4。
合意退職の申込みでは、会社が承諾したとき、正確には承諾の意思表示が労働者に届いたときに、合意が成立します*4。直接の上司に退職願を出す場合は、退職を承諾する権限のある人に届くまでの間、撤回できます*4。辞職の意思表示を郵送した場合は、会社に届くまでの間は撤回が可能です*4。承諾の権限のある人事部長が退職願を受理した事案では、受理が承諾にあたるとされた裁判例があり*3、上司に渡しただけの段階とは撤回できるかどうかが分かれます。
3. 退職願と退職届の違いと撤回できる間
退職願と退職届は、会社に退職を伝える文書として並べて使われますが、法律上の扱いが違います*4。次の表は、厚生労働省の資料が示す区別を、効力が生じる条件と撤回できる間で並べたものです。
退職願と退職届の違い
| 比べる点 | 退職願 | 退職届 |
|---|---|---|
| 法律上の扱い | 合意退職の申込み*4 | 辞職(退職の一方的な意思表示)*4 |
| 会社の承諾 | 承諾があって退職の効力が発生する*4 | 承諾の有無にかかわらず退職する意思表示*4 |
| 期間の定めのない雇用で退職が成立する条件 | 会社が承諾すること*4 | 2週間の予告期間を置くこと*4 |
| 撤回できる間 | 会社の承諾があるまで*2*4 | 会社に届くまで*4 |
| そのあとに撤回したいとき | 会社の同意を得る*2 | 会社が撤回を認めれば撤回できる*4 |
退職届という名称のものが辞職の意思表示にあたることが多い一方で、この2つは厳密に区別されないまま使われることもあるのが実情です*4。退職時期が実際に争いになれば、文書の表題だけでなく、文書の記載内容や当事者の言動で判断されます*2。退職願という表題でも、会社の承諾を待たずに辞めると書いていれば、辞職の意思表示と見られる余地があります。
辞職の意思表示なのか合意退職の申込みなのか区別がつかないときは、合意退職の申込みと考えられます*4。辞職は、それだけで労働契約の終了という重大な効力を持つためです*4。退職届を出したあとに撤回できるかどうかは、名称ではなく、会社に届いたあとか、承諾を受けたあとかで決まります。
4. 撤回できなくなる場面と会社の同意が要る場面
退職願を出しただけで、会社が承諾していない間は、撤回できます*2。会社が承諾したあと、または辞職の意思表示をしたあとに、どうしても撤回したいときは、会社の同意が必要です*2。会社が撤回を認めるなら、到達や承諾のあとでも撤回できます*4。
撤回によって会社に不測の損害を与える場合は、信義則(相手の信頼を裏切らないよう誠実に行動するという原則)に反するとして許されません*3。退職の意思表示は容易には撤回が認められないので、慎重に検討したうえで行うことが大切です*2。退職日を決めたあとで条件の良い求人に出会っても、申入れを引っ込められるとは限りません。
退職届を出したから撤回できない、と決まるわけでもありません。辞職の意思表示にあたる文書は、会社に届いたあとは撤回できなくなります*4。名称が退職届でも、辞職と言い切れない内容なら合意退職の申込みとして扱われ、承諾があるまで撤回できます*4。
決まった期日に退職したいなら、必要な期間を見込んでおきます。合意退職の申込みと解釈されない表現で、退職の意思を明確に書いた退職届を出すのが無難です*2。承諾を待つ形の書き方では、会社が承諾しない間は退職日が決まりません。
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5. 退職日は2週間と就業規則の両方を踏まえて決める

退職日は、申入れが会社に伝わった日の翌日から14日が経過した日以降に決めます*5。2週間より前の退職日にするには、会社の承諾が必要です*2。法律上は、退職が伝わった日の翌日から14日が経過すれば、会社の承諾がなくても退職が成立します*5。
就業規則に退職の申出期間の定めがあるときは、資料の説明が2つに分かれます。厚生労働省の解説と裁判例の紹介は、2週間を大幅に超える期間や、許可制の定めは無効と説明しています*2*3。一方、茨城労働局は、1か月前までの申出のように著しく長くない定めなら、まず就業規則に沿った申出をするのがよいとしています*5。前者は2週間より長い定めの効力を述べた説明で、後者は手続の進め方についての勧めです。
転職先の入社日が決まっているときは、その日から逆算して、申入れの日を決めます。2週間が過ぎる前は、会社が承諾しない限り退職が成立しないためです*2*5。就業規則に1か月前までの申出などの定めがあれば、その期間に沿った申出日にすると、トラブルを防げます*5。
申入れの前に済ませておくことは3つです。就業規則に退職の手続がどう書かれているかを読むこと、退職日を申入れから2週間より先に置くこと、出す文書に退職の意思を明確に書くことです*2。この順に進めれば、日付と文書の書き方が食い違って、退職時期が争いになる場面を避けられます。
6. よくある質問
Q1. 退職届を出したあと撤回できますか?
A. 辞職の意思表示にあたる退職届は、届く前なら撤回できます。届いたあとは、会社が認めた場合を除いて撤回できません*4。
Q2. 退職願は会社が認めなければ辞められないのですか?
A. 退職願が合意退職の申込みにとどまるなら、会社の承諾があって退職の効力が発生します*4。無期の労働契約で退職を申し入れた場合は、会社が認めなくても原則として2週間後に契約が終了します*2。
Q3. 会社が退職を認めないと言っています2週間たてば辞められますか?
A. 無期の労働契約なら、辞められます。会社が認めないと言っても、申入れから2週間がたてば雇用は終了します*1*2。
Q4. 就業規則に1か月前までの申出と書いてあります従わなくてよいのですか?
A. 厚生労働省の資料は、2週間より長い予告期間を就業規則で決めても無効と説明しています*3。一方、茨城労働局は、1か月前までの申出のように期間が著しく長期間でなければ、トラブル防止のため、まず就業規則に沿った申出をするのがよいとしています*5。
Q5. 直接の上司に退職願を出しました撤回できますか?
A. 承諾する権限のある人の手元に届く前なら、撤回できます*4。人事部長が受理した事案には、受理が承諾と認められた裁判例があります*3。
Q6. 退職日はいつにすればよいですか?
A. 退職が会社に伝わった翌日から数えて、14日が過ぎた日以降です*5。就業規則に申出期間の定めがあれば、その内容も見ておきます*2。
Q7. 退職届か退職願か書き方で区別がつかないときはどうなりますか?
A. 合意退職の申込みと考えます*4。区別をはっきりさせたいなら、退職の意思が明確に伝わるように書きます*2。
Q8. 撤回すると会社に損害が出る場合でも撤回は認められますか?
A. 認められません。会社に思わぬ損害が出るときは、信義則に反するとされます*3。
7. まとめ:退職届の効力は2週間と撤回できる間で決まる
退職届の効力と撤回のまとめ
- 期間の定めのない雇用は、申入れの2週間後に終了し、会社が認めるかどうかは関係しない*1*2
- 退職願は合意退職の申込みで承諾まで、退職届は辞職の意思表示で会社に届くまでが撤回できる間*2*4
- 表題は退職届でも、記載内容や言動で判断され、区別がつかなければ合意退職の申込みとして扱う*2*4
- 就業規則に1か月前などの定めがあれば、茨城労働局はまず就業規則に沿った申出をするのがよいとしている*5
退職届を出す前に、就業規則の退職手続の定めを読み、退職日は2週間より先の日付にしてください。出す文書には、退職の意思をはっきり書いておくと、会社の承諾を待つ申込みと解釈される余地が減ります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 民法 第627条(e-Gov法令検索)
*2 確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
*3 確かめよう労働条件「辞職」裁判例(厚生労働省)
*4 スタートアップ労働条件 Q&A「退職願を出した労働者がこれを撤回したいと言ってきた場合、撤回を認めなければならないのですか。」(厚生労働省)
*5 茨城労働局 よくあるご質問「退職させてください…」(厚生労働省)
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