年末調整で追加徴収される原因|転職した年の前職分と扶養

年末調整で追加徴収されるのは、1年間に給与から源泉徴収した所得税の合計が、1年間に納めるべき税額より少ないときです*1。転職した年は前職の給与も含めて1年分を計算するため、前職分と今の勤務先の分を合わせた額で過不足が決まります*4。扶養親族の判定が変わると、年末調整をやり直すことがあります*4。
不足額は、年末調整の月の給与から先に引かれ、残れば後の給与から順に引かれます*3。不足額が大きく手取りが下がる人には、翌年1月と2月へ回す手続きがあります*3。前職の給与を確認できないと、年末調整そのものが行われません*2。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 追加徴収が起きるのは、年末調整で徴収済みの合計が1年分の税額を下回ったときです*1。転職した年は、前職の給与と、そこで引かれた税額も集計に加わります*4。
- 扶養親族に当たるかは、年末調整をする日の状況で決まり、所得も見積額を使います*4。扶養が減ったときは、年末調整のやり直しになります*4。
- 不足額は、年末調整の月の給与から先に徴収し、残りを後の給与から順に徴収します*3。手取りが大きく下がる人には、承認を受けて徴収を翌年へ回す手続きがあります*3。
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1. 追加徴収は源泉徴収した税額が1年分の税額より少ないときに起きる
追加徴収は、源泉徴収した所得税および復興特別所得税の合計額が、その年に納めるべき額より少なかったときに起きます*1。年末調整とは、毎月の給与から引かれた税額と1年分の税額を一致させる手続きで、少なければその差額を徴収します*1。転職した年に1年分へ入るのは、前職分と今の勤務先の分の両方です*4。税額が変わるもう1つの場面は、扶養親族の判定が変わったときです*4。
毎月の給与から源泉徴収される所得税の合計は、本来納めるべき税額と必ずしも一致しません*1。そこで1年の終わりに、給与の支払者が合計と納めるべき額を突き合わせて差を精算します。この精算が年末調整です*1。
追加徴収が起きるのは、突き合わせた結果、徴収済みの合計が納めるべき額を下回ったときだけです。反対に徴収した合計のほうが多ければ、差額は本人へ戻ります。戻る側の精算は、転職した年の還付を扱った記事で書いています。
追加徴収の原因を探すときは、徴収済みの合計と納めるべき額のどちらが動いたかを見ます。転職した年に動きやすいのは、前職分の給与が1年分に加わることと、扶養親族の判定が変わることです。次の節で、この2つを場面ごとに分けて書きます。
あわせて読みたい | 転職で年末調整の還付が多い|基礎控除は1年分の全額
2. 不足が出る場面は前職分の合算と扶養の判定と扶養が減ったときの3つ
追加徴収の原因になる場面は、前職の給与を含めた計算、扶養親族の判定、扶養が減ったときのやり直しの3つです。それぞれ、年末調整のどの段階で不足が生じるかが違います。
1つ目は、前職の給与がある場合です。年の中途で就職した人のうち、前の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を出して給与を受けていた人は、前職分を含めて年末調整を行います*4。扶養控除等(異動)申告書とは、扶養親族の有無などを給与の支払者に届ける書類です。給与の支払者とは、給与を払う勤務先のことです。
前の給与の支払者から本年中に受けた給与と、その給与から徴収された税額も、集計に含めます*4。1年分の税額は前職と今の勤務先の給与を合わせて計算し、比べる相手の徴収済みの税額も、前職で引かれた分と今の勤務先で引かれた分の合計です。今の勤務先の分だけで見ると収まっている税額でも、前職分を合わせた1年分と比べると差が出ることがあります。
2つ目は、扶養親族の判定です。控除対象扶養親族(税額の計算で控除を受けられる扶養親族)や障害者に当たるかどうかは、年末調整を行う日の現況で判定します*4。判定の要素になる合計所得金額は、その日の現況で見積もった、1月1日から12月31日までの合計所得金額で見ます*4。
親族の年間の所得の見込みが、申告書を出したときから変わっていないかは、年末調整の書類を出す前に見直しておくと安心です。見込みが変わって扶養親族に当たらなくなれば、受けていた控除が外れて納める税額が増えます。
3つ目は、扶養が減った場合の年末調整のやり直しです。年末調整のあとで扶養親族に当たらなくなったことが分かると、年末調整をやり直します。やり直しができるのは翌年1月末までです*4。やり直した結果、不足している税額があれば、その税額を徴収します。
3. 転職した年の場面ごとの年末調整の扱い

転職した年に当たる場面を、年末調整での扱いと一緒に並べました。追加徴収になる場面と、年末調整が行われない場面が混ざっているので、右の列で区別できます。
転職した年の年末調整の場面別の扱い
| 場面 | 年末調整での扱い |
|---|---|
| 年の中途で就職し、前職の給与がある | 前職分の給与と徴収された税額を集計に含めて、年末調整を行う*4 |
| 前職分の給与を確認できない | 年末調整を行えず、本人が確定申告で精算する*2 |
| 控除対象扶養親族などの判定 | 年末調整を行う日の現況で判定し、所得は見積額で見る*4 |
| 年末調整までに扶養控除等申告書を出していない(乙欄適用者) | 年末調整の対象にならない*4 |
| 年末調整のあとで扶養親族に当たらなくなった | 年末調整をやり直す。翌年1月末までに行う*4 |
| 不足額が出た | 年末調整をする月の給与から徴収し、残れば後の給与から順次徴収する*3 |
| 手取りが平均月額の70%未満 | 承認を受けると繰延べができ、不足額は翌年1月と2月に徴収される*3 |
表のうち、年末調整の結果として追加徴収につながるのは、1行目と3行目と5行目です。前職分を確認できない行と、扶養控除等申告書を出していない行は、年末調整の対象外になる場面です。
乙欄適用者とは、給与から源泉徴収するときの税額表の乙欄を適用される人のことです*4。年末調整を受けるには、前職分の確認と、扶養控除等申告書の提出の両方が関わります。
4. 不足額は年末調整をする月の給与から引かれ残りは後の給与から順に引かれる
不足額は、年末調整をする月の給与から徴収します。それでも残るときは、その後に支払う給与から順次徴収します*3。年末調整をする月の給与だけで徴収し切れなければ、次の給与以降へ持ち越されるということです。
年末調整をする月の手取りが大きく下がる人には、繰延べの仕組みがあります。その月の税引手取給与(税金を引いたあとの手取りの給与)が、その年1月から年末調整を行った月の前月までの税引手取給与の平均月額の70%未満になる人が対象です*3。年末調整をする月だけ、手取りが大きく下がる人です。
繰延べを受けると、不足額を翌年1月と2月に繰り延べて徴収できます*3。手続きには「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を使います*3。その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに、所轄税務署長(給与の支払者を担当する税務署の署長)へ提出し、承認を受けます*3。
この申請書を作成して提出するのは、給与の支払者です*3。転職した年は、その月の手取りが前の月までと比べてどれだけ変わっているかを、給与明細で見ておきます。前の月までと近い額なら、繰延べの条件には当たりません。
5. 転職した年に年末調整へ入るには前職分の確認と申告書の提出が要る

ほかの会社などへ扶養控除等(異動)申告書を提出して支払を受けた給与がある人は、それらの給与を含めて年末調整を行う必要があります*2。前職分の給与は、前の勤務先が出す源泉徴収票で確認します*2*4。源泉徴収票とは、1年間に支払った給与の額と徴収した税額を書いた書類です。
確認ができないときは、年末調整を行えません。その人が確定申告で所得税の精算を行うことになります*2。国税庁のパンフレットも、確認ができるまでは年末調整を見合わせるよう、給与の支払者に求めています*4。この場合に起きるのは、年末調整による追加徴収ではなく、本人の確定申告による精算です。
もう1つの条件は、申告書の提出です。年末調整を行うときまでに出していない人は、乙欄適用者として年末調整の対象になりません*4。対象になるには、入社した勤務先へ申告書を出しておく必要があります。
前職の源泉徴収票は、退職したあとに前の勤務先から受け取ります。転職先から提出を求められたときに渡せるよう、受け取った時点で保管場所を決めておきます。転職の間が空く場合も同じで、年内に入社した勤務先が前職分を確認できる状態にしておくことが、年末調整を受けるための前提です。
あわせて読みたい | 転職した年の年末調整|前職の源泉徴収票をいつまでに出すか
6. よくある質問
Q1. 年末調整で追加徴収されるのはどんなときですか?
A. 納めるべき税額に対して、源泉徴収した合計が少なかったときです*1。不足があれば、その差額を徴収します*1。
Q2. 前職の源泉徴収票を出さないと追加徴収されますか?
A. 前職分を確認できないままだと、その年は年末調整を受けられません。本人が確定申告で精算するので、年末調整による追加徴収とは別の手続きです*2。
Q3. 不足額はいつの給与から引かれますか?
A. 年末調整の月の給与から引かれ、なお残る分は、そのあとに支払われる給与から順に引かれます*3。
Q4. 不足額が大きいと手取りが大きく減りますか?
A. 年末調整の月の手取りが、年初から前月までの平均月額を基準に70%未満へ下がる人は、繰延べの承認を受けられます*3。申請するのは給与の支払者で、承認後の不足額は翌年1月と2月に徴収されます*3。
Q5. 扶養親族に当たるかどうかはいつの状況で判定しますか?
A. 年末調整を行う日の状況で判定します。所得は、その年の1月から12月までの合計を見積もった額です*4。
Q6. 年末調整のあとで扶養が減ったときはいつまでにやり直しますか?
A. 翌年1月末までです*4。
Q7. 扶養控除等申告書を出していないと年末調整は受けられますか?
A. 受けられません。出していない人は対象外で、乙欄適用者と呼ばれます*4。
7. まとめ:追加徴収は徴収済みの税額が1年分の税額より少ないときに起きる
この記事のまとめ
- 追加徴収は、年末調整の突き合わせで徴収済みの合計が1年分の額を下回ったときに生じる*1
- 転職した年は、前職分の給与と徴収済みの税額を集計に入れて年末調整を行う*4
- 扶養親族の判定は年末調整を行う日の現況で行い、扶養が減れば年末調整をやり直す*4
- 不足額は年末調整の月の給与から引き、なお残れば後の給与から順に引く*3
- 手取りが大きく下がる人は、給与の支払者が承認を受ければ徴収を翌年1月と2月へ回せる*3
前職分を確認できなければ、年末調整は行われず、確定申告で精算します*2。入社した勤務先に前職の源泉徴収票と扶養控除等申告書を出してから、年末調整に入ります*4。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 No.2662 年末調整のしかた(国税庁タックスアンサー)
*2 No.2674 中途就職者の年末調整(国税庁)
*3 No.2675 年末調整の過不足額の精算(国税庁)
*4 令和8年分 年末調整のしかた(国税庁パンフレット)
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