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フリーランスエンジニアが正社員に戻る判断基準5つ——後悔しない転職の動き方

フリーランスエンジニアが正社員への転職を判断するための基準と動き方を解説するイメージ図

正社員からフリーランスへ。その選択をした人はみな、自分でキャリアを選んだ証明を手にした。では、フリーランスから正社員へ戻るとしたら——それは後退だろうか。かつてはそう見えたかもしれない。でも今は、フリーランスと正社員の間を行き来できる時代になった。リモートワーク対応の求人が定着し、「正社員に戻る=出社の日々に戻る」という前提が崩れつつある。キャリアは一方通行ではない。

この記事では、フリーランスエンジニアが正社員への転職を判断するための基準と、後悔しない動き方を整理しています。

この記事のポイント

  • フリーランスエンジニアと正社員それぞれの定義と、法律上の位置づけの違いを整理します
  • 正社員に戻りたいと感じる主な理由と、判断するための5つの基準を解説します
  • 「フリーランスで得た自由」を手放さずに正社員になれる選択肢があることを紹介します
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1. フリーランスエンジニアと正社員、それぞれの意味

フリーランスエンジニアとは、特定の企業に専従せず、業務委託契約で複数の案件を手がける技術者のことです。一方、正社員は期間の定めのない雇用契約を結んだ労働者を指します。2024年11月には「フリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」が施行され、フリーランスの取引環境が法律上の整備を初めて受けました*1。正社員に戻ることを検討するためには、まず両者の違いを正確に把握することが出発点になります。

1-1. フリーランスエンジニアとは

特定の企業や組織に雇用されず、業務委託契約に基づいて複数のクライアントのプロジェクトに関わる技術者を指します。主にシステム開発・プログラミング・インフラ構築などの案件を、個人事業主または法人(一人会社)として受注します。

法律上の定義は長らく整備されていませんでしたが、2024年11月に施行されたフリーランス保護新法により、「特定受託事業者」として初めて法律上の位置づけが整理されました*1。同法では、発注者による書面の交付義務・報酬支払期日の設定・ハラスメント対策など、フリーランスが安心して働けるための取引適正化が義務化されています。

1-2. 正社員とは

労働契約法および労働基準法に基づき、期間の定めのない雇用契約を結んだ労働者のことです。厚生労働省では「正規雇用労働者」として区分しており、健康保険・厚生年金・雇用保険などの社会保険への加入が事業者に義務付けられています*2

総務省「労働力調査」(令和5年平均)によると、日本の雇用者数は約6,076万人で、そのうち正規の職員・従業員は約3,615万人を占めています*3。正規雇用は依然として日本の労働市場の主要な雇用形態であり、社会的な信用・住宅ローン審査・ライフプランニングの面でも正社員という立場が持つ意味は大きいと言えます。

以下の表は、フリーランスエンジニアと正社員エンジニアの主要な違いを7つの観点で整理したものです。

比較項目フリーランスエンジニア正社員エンジニア
雇用形態業務委託契約(雇用なし)労働契約(期間の定めなし)
収入の安定性案件ごとに変動。空白期間は無収入になる場合あり毎月固定給。賞与・昇給あり
健康保険国民健康保険に個人加入(保険料を全額負担)会社の健康保険組合に加入(保険料を会社と折半)
年金国民年金(第1号被保険者)厚生年金(保険料を会社と折半・将来の受給額が高い)
働く場所の自由原則自由(在宅・リモートが多い)会社の方針による(リモートワーク対応求人は増加傾向)
スキルアップ自己研鑽が基本研修制度・資格補助など会社が支援するケースあり
確定申告・経理個人で毎年対応が必要年末調整で会社が対応

この表でもっとも大きな違いは「雇用形態」と「社会保障」の2点です。フリーランスは業務委託のため雇用保険・厚生年金の適用外となり、社会保険料の全額を個人で負担します。一方、正社員は保険料を会社と折半できるため、実質的な手取り額は同じ年収であっても正社員のほうが有利になる場合があります。

2. なぜフリーランスエンジニアになったのか——その動機を振り返る

フリーランスを選んだ動機が時間とともに変化するキャリアの流れを示すイメージ図

「正社員に戻りたい」という気持ちを正確に理解するためには、まず「なぜフリーランスを選んだのか」を振り返ることが必要です。その動機の多くは、今も間違っていない。ただ、時間の経過とともに、何かが変わっている。

フリーランスエンジニアを選ぶ動機として多く挙げられるのは、収入アップ・場所と時間の自由・スキルの市場価値の確認・組織のしがらみからの解放・技術の幅を広げるという5つの軸です。以下の表は、選択時の動機が時間の経過によってどのように変化しやすいかを整理したものです。

フリーランスを選んだ動機時間が経つと起きやすい変化
収入を上げたい(正社員の給与体系に限界を感じた)年収は増えたが、年金・退職金のない将来設計に不安が生じてきた
場所・時間の自由が欲しかった自由は得たが、チームの一体感や「どこかに属している」感覚が薄れてきた
自分のスキルの市場価値を確かめたい市場では評価されるが、組織の中で深く成長する機会が減ってきた
組織のしがらみ(評価制度・社内政治)から離れたい縛りはなくなったが、「誰かのために成果を積み上げる充実感」が恋しくなってきた
多様な案件で技術の幅を広げたい幅は広がったが、ひとつのプロダクトを長期で育てる経験がしたくなってきた

注目してほしいのは、「動機が間違っていた」のではないという点です。自由を求めてフリーランスになったことは正しかった。ただ、人間の欲求は変化します。「自由」を手に入れた後、次は「安定」「所属感」「深い貢献」を求めるようになるのはキャリアとして自然な変化です。正社員に戻りたいという感覚は後退ではなく、自分の欲求が次のステージへ移行したサインと捉えることができます。

3. フリーランスエンジニアが正社員に戻りたいと感じる理由

「正社員に戻りたい」と感じることは、弱さではありません。それは、自分の現状を冷静に見ている証拠です。動機の変化を受け止めた上で、具体的な理由を掘り下げます。

3-1. 社会保険・将来設計の重さ

フリーランスが個人で負担する国民健康保険料と国民年金保険料は、正社員が会社と折半する場合と比べて実質的な負担が重くなります。国民年金の保険料は月額固定ですが、将来受け取れる年金額は厚生年金より大きく下回ります。厚生年金は保険料を会社と折半できる上に将来の受給額も高くなるため、長期的な老後設計においても正社員という雇用形態は意味を持ちます*2

見落とされやすいのが、病気・怪我で働けなくなったときのリスクです。正社員には厚生労働省の傷病手当金制度(連続3日以上の休業で最長1年6か月間、標準報酬日額の3分の2を受給できる制度)が適用されますが、フリーランスには原則として適用されません*2。「今の収入は問題ないが、もし動けなくなったときが怖い」——この感覚は、フリーランスエンジニアが転職を検討する際の静かな動機になっています。

3-2. 収入の変動リスクとセーフティネットの薄さ

フリーランスは案件が続く限り高収入を得られますが、案件の空白期間や単価の下落が生じると、収入が大きく変動します。正社員であれば、やむを得ず退職した場合に雇用保険の失業給付を受けることができますが、フリーランスには雇用保険が適用されないため、案件が途切れた際のセーフティネットが実質的に存在しません*2

「収入が多い時期にしっかり貯めておけばいい」という考え方も成立しますが、育児・介護・住宅購入など、支出が集中するライフイベントと案件の空白が重なると、そのバッファはあっという間に薄くなります。「今は大丈夫」と「ずっと大丈夫」は、まったく別の話です。

3-3. チームで働く充実感・キャリアの「評価者」の不在

プロジェクト単位で動くフリーランスは、チームの一員として長期的に関わることが難しいケースがあります。「自分の書いたコードが製品としてどう成長しているかを見続けたい」「マネジメントや後輩育成の経験を積みたい」という思いは、キャリアの深い動機になります。IPA「DX白書2023」では、企業内でのデジタル人材育成と組織的なDX推進の重要性が指摘されており*5、組織の中でエンジニアが継続的に働くことへの需要は高い水準にあります。

フリーランスが感じやすい静かな課題として、キャリアの「評価者」がいないということがあります。正社員であれば、上司・人事・評価制度を通じて自分の成長が可視化されます。フリーランスでは、案件を取れているか・単価が上がっているかという市場の反応だけが指標になります。それは自由でもあり、孤独でもある。「スキルはある。でも、どこに向かっているのかがわからなくなってきた」——この感覚を持ち始めたとき、正社員という環境が再び輝いて見えることがあります。

3-4. フリーランス保護新法施行後の市場環境の変化

2024年11月施行のフリーランス保護新法は、取引の適正化という観点で重要な前進です*1。しかし同時に、発注企業が義務を負うことへの対応から、フリーランスとの取引体制を見直す動きも生まれています。「法律ができたことで逆に案件が減った、または条件が変わった」という声も、転職市場の動向として確認されています。市場環境の変化を踏まえ、キャリア戦略を長期目線で見直すことが求められています。

4. 「正社員に戻るべきか」を判断する5つの基準

フリーランスエンジニアが正社員への転職を判断するには、感情だけでなく客観的な基準が必要です。収入の安定性・社会保険の負担感・キャリア設計・働き方の希望・ライフステージという5つの観点で自分の現状を整理することで、転職の必要性と優先度を判断できます。

次の5つの基準を、自分の現状と照らし合わせてみてください。

#判断基準当てはまる状況の目安
1収入の安定性過去1年で案件の空白期間が1か月以上あった、または今後の案件確保に不確実性を感じている
2社会保険の負担感国民健康保険料・国民年金の自己負担額に対して、継続的な重さを感じている
3将来のキャリア設計マネジメント経験・長期プロジェクトへの関与など、フリーランスのままでは積みにくい経験を望んでいる
4働き方の希望リモートワーク環境を維持したまま正社員になれる職場があれば、転職を前向きに検討できる
5ライフステージの変化結婚・子育て・住宅購入など、生活基盤の安定を優先したいタイミングにある

基準1〜3のいずれかに当てはまる場合は、転職を検討する客観的な理由があると考えられます。特に見落とされやすいのが基準4です。「正社員に戻る=リモートワークを諦める」と思い込んでいる方も少なくありませんが、現在の転職市場ではリモートワーク対応の正社員求人が一定数定着しています。総務省「令和5年通信利用動向調査」によると、テレワーク・在宅勤務を導入している企業の割合は拡大傾向にあり*6、エンジニア職種においては特にリモート対応求人が増加しています。

5. 「リモートワーク対応の正社員」という選択肢

「自由を諦める」という誤解

「正社員に戻る=東京の会社に出社する生活に戻る」。そう思っているとしたら、少し前の常識で考えているかもしれません。フリーランスをやめることは、自由を失うことではありません。次の安定を、自分で選ぶことです。

現在の転職市場では、リモートワーク対応の正社員求人が一定の割合を占めており、フリーランス時代に得た「場所の自由」を手放さずに正社員になる道があります。週5日在宅勤務のフルリモート求人から、週数日の出社を組み合わせたハイブリッド求人まで、働き方の選択肢は広がっています。

フリーランスから正社員へ転職する際の主な確認ポイント

フリーランスエンジニアが正社員転職を進める際、次の点を事前に確認することで、転職後のミスマッチを防ぐことができます。

  • リモートワークの可否と頻度:「フルリモート」「ハイブリッド」など、具体的な条件を求人票・面接で確認する
  • 雇用条件(試用期間・給与・昇給制度):フリーランス時代の年収との比較だけでなく、社会保険込みの実質手取りで比較する
  • 技術スタックとキャリアパス:入社後に積める経験が自分のキャリア目標と合致しているかを確認する
  • 企業の安定性:業績・設立年数・エンジニア組織の体制を確認する

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6. まとめ:正社員に戻ることは、選び直しだ

この記事のまとめ

  • フリーランスエンジニアは業務委託で働く技術者、正社員は期間の定めのない雇用契約を結んだ労働者です。2024年11月施行のフリーランス保護新法により、フリーランスの取引環境が初めて法律上整備されました
  • 社会保険の負担感・収入の変動リスク・チームで働く充実感・ライフステージの変化が、正社員転職を検討する主な理由として挙げられます
  • 「戻るべきか」の判断は、収入安定性・社会保険負担・キャリア設計・働き方の希望・ライフステージという5つの基準で客観的に整理できます
  • 「正社員に戻る=リモートワークを諦める」という前提は、現在の転職市場では必ずしも当てはまりません。リモートワーク対応の正社員求人は、転職市場に定着しています
  • フリーランスをやめることは後退ではありません。次の場所を、自分で選ぶことです

正社員への転職を検討し始めたなら、まずリモートワーク対応の求人から確認してみてください。「場所の自由」を維持したまま正社員になれる求人が、今は存在しています。

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出典・参考情報

*1 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(2024年11月施行)
*2 厚生労働省「社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入について」
*3 総務省「労働力調査(基本集計)」令和5年平均結果
*4 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年
*5 IPA(情報処理推進機構)「DX白書2023」
*6 総務省「令和5年通信利用動向調査」

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