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昇給の仕組みを正しく知る|定期昇給・考課昇給・ベースアップの3種類と正社員の制度を解説

昇給の仕組み(定期昇給・考課昇給・ベースアップ)を解説するイメージ図

昇給の仕組みには、定期昇給・考課昇給(査定昇給)・ベースアップの3種類があります。「会社が決めること」と受け身でいると、評価への動き方も、転職の判断もできません。この記事では、昇給制度の種類と正社員の法的位置づけ・厚生労働省データが示す実態を整理し、キャリアを主体的に設計するための視点をお伝えします。

この記事のポイント

  • 昇給には「定期昇給」「考課昇給(査定昇給)」「ベースアップ」の3種類があり、多くの企業ではこれらを組み合わせた制度が設計されています
  • 正社員の昇給は就業規則・賃金規程に基づいて制度化されており、厚生労働省の定義する「無期雇用・フルタイム・直接雇用」の3要件と深く結びついています
  • 昇給制度の透明性や評価基準に不満がある場合、評価基準の明確なリモートワーク対応の正社員への転職が、キャリアの選択肢の一つになります
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目次

1. 昇給の仕組みとは何か

昇給とは、在籍中の労働者の賃金(所定内給与)が上昇することを指します。日本では就業規則・賃金規程に基づいて制度が設計されており、「定期昇給」「考課昇給(査定昇給)」「ベースアップ」の3種類に大別されます。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」によると、定期昇給制度を採用している企業(常用労働者30人以上)は全体の84.9%にのぼります*1。昇給の種類と決まり方を理解することが、自分のキャリア設計を主体的に進めるための出発点です。

1-1. 昇給の3種類と仕組み

定期昇給(定昇)は、年1回など決まったタイミングで一定額または一定率が賃金に上乗せされる仕組みです。勤続年数や年齢に連動することが多く、制度がある企業では在籍しているだけで一定額が上昇します。安定している反面、個人の努力や成果が直接反映されにくい側面があります。

考課昇給(査定昇給)は、人事評価の結果に基づき昇給額が変動する仕組みです。評価が高ければ昇給幅が大きくなり、評価が低ければ昇給なし、または抑制される場合があります。成果主義・実力主義を掲げる企業に多く見られます。

ベースアップは、企業全体の賃金水準そのものを引き上げることです。物価上昇や市場賃金の動向を踏まえ、経営判断として実施されます。2024年の春季労使交渉(春闘)では、大手企業を中心に5%を超えるベースアップが相次ぎました。ベースアップは個人の評価とは無関係に決まる点が特徴です。

実際の企業では、これら3種類を組み合わせた制度を設計しているケースが一般的です。「定期昇給あり+考課昇給で上乗せ」「ベースアップに加えて査定で差をつける」など、企業ごとに設計が異なります。

下の表は、昇給3種類の特徴を比較したものです。自社の制度がどの種類をどの比率で採用しているかを把握することが、昇給額を予測するうえで重要な視点となります。

種類昇給の決め方安定性個人の影響度主な特徴
定期昇給(定昇)年齢・勤続年数に連動高い低い在籍するだけで一定額が上乗せされる
考課昇給(査定昇給)人事評価の結果に連動変動あり高い成果・評価が直接昇給額に反映される
ベースアップ経営判断・労使交渉変動大なし全社員の賃金水準を一律に引き上げる

昇給制度の種類を把握できたところで、正社員という雇用形態そのものについて、公式情報をもとに確認します。

2. 正社員とは何か——厚生労働省の公式定義で確認する

正社員と非正規雇用の違い・雇用形態のイメージ図

2-1. 正規雇用の3つの要件

「正社員」という言葉は日常的に使われますが、法律上の固定定義はありません。厚生労働省は、正社員(正規の職員・従業員)について、実態として次の3要件が揃う労働者を正規雇用として統計上区分しています*3

  1. 雇用期間の定めがない(無期雇用契約)
  2. 所定労働時間がフルタイム(事業所の一般労働者と同等)
  3. 直接雇用(派遣社員・請負社員は含まない)

この3要件を満たさない場合、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣社員などの「非正規雇用」に区分されます。非正規雇用と正規雇用では、昇給制度・社会保険の扱い・解雇規制など、多くの点で法的な取り扱いが異なります。

2-2. 正社員の昇給に関する法的保護

正社員には、労働基準法・労働契約法に基づくさまざまな保護があります。昇給について直接定めた法律は限定的ですが、就業規則・賃金規程に定められた昇給制度は労働契約の一部となります。制度として定められた昇給を一方的に削減・廃止する場合は、労働者との合意または就業規則の変更手続きが必要です(労働契約法第9条・10条)。

また、正社員には社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務があり、保険料の半額を企業が負担します。有給休暇(労働基準法第39条)も付与されます。これらの制度が、昇給とともに正社員のトータルの処遇を形成しています。

参考:厚生労働省「多様な正社員」ポータルサイト(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/seirou/

正社員の制度的な位置づけを確認できたところで、昇給制度の実態を厚生労働省のデータで確認します。

3. 昇給制度の実態——厚生労働省データで読む

3-1. 定期昇給制度の普及率

厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」(2023年1月公表)によると、定期昇給制度のある企業(常用労働者30人以上)の割合は84.9%でした*1。8割超の企業で定期昇給制度が設けられている一方、企業規模が小さいほど制度の整備度は低くなる傾向があります。

ただし、「定期昇給制度がある」と「昇給額が十分である」は別の問題です。制度上は定期昇給があっても、昇給額が数百円〜数千円にとどまるケースは少なくありません(編集部調べ)。制度の有無だけでなく、昇給額の実態・評価との連動度を確認することが重要です。

3-2. 経験年数と賃金の関係

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(2024年3月公表)*2によると、正規の職員・従業員の所定内給与額は、勤続年数が長くなるほど上昇する傾向が確認されています。下の表は、勤続年数別の月額所定内給与の目安を示したものです。業種・職種・企業規模によって実態は大きく異なります。なお、IT・情報通信業においては他業種と比較して賃金水準が高い傾向があり、リモートワーク対応求人との親和性も高い分野です。

勤続年数月額所定内給与(概算・全産業・男女計)備考
1年未満約22〜24万円入職時・第二新卒帯
5〜9年約27〜30万円中堅層・主任・リーダー相当
10〜14年約32〜35万円課長補佐・スペシャリスト相当
20年以上約38〜43万円管理職・シニアスペシャリスト相当

出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(2024年3月公表)をもとに概算整理。業種・企業規模・職種により実態は大きく異なります。*2

勤続年数とともに賃金が上昇する傾向は確認できますが、その上昇ペースは会社の制度設計に大きく依存します。昇給の仕組みが不透明な会社では、この平均的な上昇カーブを下回るケースもあります。

4. 昇給を軸にキャリアを考える3つの視点

① 評価制度の透明性を確認する

昇給の仕組みを正しく知るためには、まず自社の就業規則・賃金規程・評価制度規程を確認することを勧めます。「なぜこの金額になったのか」が説明できない会社では、社員は評価の方向を見失います。制度が文書化されているか、評価基準が明確かどうかを確認することが、昇給の仕組みを理解する出発点です。

② 昇給ペースと中長期のキャリア目標を照らし合わせる

制度として昇給は存在しても、そのペースが自分のキャリア目標に合っているかは別の問題です。定期昇給のみに依存する制度では、スキルが急成長しても賃金の上昇は緩やかになります。評価連動型・成果主義型の企業に転職することで、スキルや成果を直接収入に反映させることができます。自分の3〜5年後のキャリアと現在の昇給ペースが合致しているかを確認することが重要です。

③ リモートワーク対応の転職先という選択肢

昇給制度の評価基準が不透明な会社、または昇給ペースが市場水準を大きく下回っている場合、転職はキャリア改善の有効な手段の一つです。IT・エンジニア職においては、成果主義・フレックス制・フルリモートを採用している企業が増えており、勤務地に縛られず評価基準の明確な職場で働ける可能性があります。

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5. まとめ:昇給の仕組みを知ることがキャリアの出発点

この記事のまとめ

  • 昇給の仕組みには「定期昇給(定昇)」「考課昇給(査定昇給)」「ベースアップ」の3種類があり、多くの企業でこれらを組み合わせた制度が設計されています
  • 正社員は、厚生労働省が定義する「無期雇用・フルタイム・直接雇用」の3要件が揃う労働者であり、昇給制度・社会保険・有給休暇などの法的保護を受けます
  • 厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」によると、定期昇給制度のある企業は全体の84.9%。ただし制度の有無と昇給額の十分さは別の問題です
  • 勤続年数とともに賃金が上昇する傾向は確認できますが、その上昇ペースは会社の制度設計に依存します
  • 昇給の透明性・評価基準・ペースに不満がある場合、評価基準が明確でリモートワーク対応の正社員転職が選択肢の一つになります

昇給の仕組みを知ることは、受け身でいることをやめる第一歩です。制度の中身を把握し、自分の成長とキャリアに合った環境を能動的に選んでいく視点を持つことが、長期的な収入向上につながります。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 昇給と昇格は違うのですか?

昇給は「賃金が上がること」を指し、昇格(職位・役職が上がること)とは区別されます。ただし、昇格に伴い昇給が発生するケースは多くあります。「昇格なしでも昇給あり」の企業や、「昇格して初めて昇給する」設計の企業など、制度は会社によって異なります。自社の仕組みを就業規則・賃金規程で確認することを勧めます。

Q2. 転職で昇給を実現するには、どのように進めればよいですか?

転職で昇給を実現するには、(1)現在の市場価値を把握する、(2)評価制度・昇給制度が明確な企業を選ぶ、(3)転職先の賃金規程・評価基準を選考中に確認する、という3つの手順が有効です。リモートワーク対応の正社員求人では、成果主義・評価主義を採用している企業が増えており、スキルや実績が直接報われる環境への転職が実現しやすくなっています。

Q3. ベースアップと定期昇給は同時に実施されますか?

ベースアップと定期昇給は同時に実施されることもあります。例えば「定期昇給で+3,000円、ベースアップで+2,000円」のように重複する場合、合計5,000円の昇給となります。ただし、どちらかのみの実施や、定期昇給を「ベースアップ相当分と合算して一本化」する設計の企業もあります。各社の労使交渉・会社方針により異なるため、在籍先の人事部門に確認することが確実です。

Q4. 昇給を会社に申し入れることはできますか?

就業規則・賃金規程に定められた制度的な昇給については、申し入れよりも評価制度を活用した成果の積み上げが有効です。一方、市場価値に基づいた昇給の申し入れを行う場合は、自分のスキル・実績と業界相場を根拠に上司・人事と対話する方法があります。成果主義・評価主義を採用している企業では受け入れられるケースもあります。評価基準が不明確で改善の余地がない場合は、転職という選択肢も検討に値します。

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出典・参考情報

*1 厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」(2023年1月公表)
*2 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」(2024年3月公表)
*3 厚生労働省「多様な正社員」ポータルサイト

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