求人の比較一覧の作り方|列に置く順番で結論が変わる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

複数の求人を並べて比べるとき、多くの人は年収を左の列に置きます。年収の差が最初に目に入ると、勤務地や出社の頻度のように入社後には自分で変えられない条件との違いが、見えにくくなってしまいます。列をどの順番で並べるかによって、比較から出てくる結論そのものが変わります。
厚生労働省の調査では、転職して賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%、変わらない人は28.4%でした*1。年収の差がつかない転職も3割近くあるため、比べる列の順番と埋め方を先に決めておく必要があります。
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この記事のポイント
- 年収を左端に置いて候補を並べると、年収の差だけが先に目に入り、動かせない条件の違いが後回しになります。並べる順番を変えるだけで、比較から出てくる結論が変わります。
- 転職して賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%、変わらない人は28.4%でした*1。年収の差がつかない転職も3割近くあるため、年収だけを基準に応募先を選ぶと判断を誤りやすくなります。
- 比較に使う列は7つに絞り、動かせない条件・変えられる条件・年収の順に並べます。埋まらない欄は空欄のままにせず、求人ごとに未確認と書き添えておくと、面談で確かめる項目が明確になります。
1. 応募先を比べる順番が、結論を左右します。
複数の求人を比べるときは、年収を左端に置かず、動かせない条件を先に並べる必要があります。年収の差が最初に目に入ると、出社の頻度や勤務地のように入社後には自分で変えられない条件の違いが、比較から抜け落ちてしまいます。厚生労働省の調査では、転職して賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%、変わらない人は28.4%でした*1。年収の差がつかない転職も3割近くあることを踏まえると、年収以外の条件を先に比べておく理由がはっきりします。
多くの人は、比較の一覧を作るときに年収の列を一番左に置きます。年収という分かりやすい数字が先に目に入ると、他の列の違いが「大きな差はない」ように映ってしまいます。
そこで、先に動かせない条件を左側に置きます。出社の頻度・勤務地・就業時間のように、入社後には自分で変えられない条件です。これらの条件で外れる候補は、比較の早い段階で見分けがつきます。
残った候補について、次に変えられる条件(仕事の広さや使う技術、等級など)を確認し、年収は最後に置きます。求人ごとに条件の書き方が異なるため、同じ順番の列に置き換えてから比べることが欠かせません。
比較を頭の中だけで済ませると、印象の強い列に判断が引き寄せられます。列に書き出して並べる作業そのものが、年収の印象に流されない比較を可能にします。
2. 転職しても賃金が上がらない人が、3割近くいます。
転職して賃金が増えた人は40.5%でした。一方で、減った人は29.4%、変わらない人は28.4%です*1。合わせると6割近くが「増えなかった」側に入ります。
年収の差がつくとは限らない以上、年収だけを比較の軸にすると、判断を誤りやすくなります。動かせない条件や変えられる条件も、同じ重さで並べておく必要があります。
候補となる求人のなかには、年収の差がほとんどないものも含まれます。そのときに比較の結果を決めるのは、出社の頻度や仕事の広さといった、年収以外の列です。
賃金の変化は転職の目的そのものではありません。動かせない条件や変えられる条件を含めて比較したうえで、年収がどう変わったかを結果として確認する順番のほうが、判断のずれを減らせます。
3. 年収を左端に置くと、比較の起点がずれます。
年収を一番左の列に置くと、比較を始めた瞬間に年収の差が目に入ります。差が大きければそこで安心してしまい、差が小さければ「他の条件も似ている」と思い込みやすくなります。どちらの場合も、年収以外の列を読む前に印象が決まってしまいます。
動かせない条件を左に置く場合は、そうはなりません。出社の頻度が週5日と週1日では条件そのものが違うため、その時点で候補から外れるか、比較を続けるかが決まります。年収の話に入る前に、比べる範囲そのものが絞られます。
変えられる条件は、入社後に交渉や実績によって動く余地があります。仕事の広さ・使う技術・等級のように、最初の条件が固定ではない列です。動かせない条件を通過した候補のあいだで、初めて比べる意味を持ちます。
年収を最後に置くのは、年収を軽く見るからではありません。動かせない条件と変えられる条件で候補を絞ったあとの方が、同じ求人どうしを近い条件で比べられるという理由です。
年収の列を後ろに置いても、年収を確認しないわけではありません。動かせない条件と変えられる条件を先に固めてから年収を見るほうが、条件のそろった候補どうしで比べられます。
動かせない条件から並べる方法は、比較する候補が増えるほど効果を発揮します。候補が2つのときは差が分かりやすくても、5つ、6つと増えると、年収の印象だけで絞り込みたくなる場面が増えます。
4. 比較表は、7列に絞って並べます。
比較に使う7列を、動かせない条件・変えられる条件・年収の順に並べます。列の意味と書き方の例を、表で確認します。
【表1】比較に使う7列と、並べる順番
| 順番 | 列 | 動かせるか | 書き方の例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 出社の頻度 | 動かせない | 週2日・フルリモートなど |
| 2 | 勤務地 | 動かせない | 本社最寄り・全国どこでも |
| 3 | 就業時間 | 動かせない | フレックス・固定時間 |
| 4 | 仕事の広さ | 変えられる | 入社後の実績で動く |
| 5 | 使う技術 | 変えられる | 配属によって変動あり |
| 6 | 等級 | 変えられる | 評価で見直される |
| 7 | 年収 | 最後に見る | 条件をそろえたあとに比較 |
7列という数は、増やしすぎないための上限です。列を10以上に増やすと、情報が見つからない欄が増え、その欄が「条件が悪い」というふうに誤読されやすくなります。
動かせない条件(出社の頻度・勤務地・就業時間)を1〜3列目に置き、変えられる条件(仕事の広さ・使う技術・等級)を4〜6列目に置きます。年収は7列目に固定します。
表の各欄には、募集要項に書かれた文言をそのまま貼るのではなく、確認できた事実だけを短くまとめます。応募先によって書き方が違う場合があるため、列の基準をそろえてから書き込みます。
7列のうち、どれが動かせない条件でどれが変えられる条件かは、企業によって扱いが変わる場合があります。判断に迷う列があれば、面談で動かせるかどうかを直接確認します。
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5. 動かせない条件から始めて、年収は最後に見ます。
手順の1と2は準備です。条件を書き出してから列に並べるまでは、まだ何も判断していません。ここで先に判断してしまうと、あとから条件を追加しづらくなります。
手順の3で欄が埋まらない場合は、無理に想像で書き込みません。空欄をそのままにせず「未確認」と書いておくことで、次の手順で何を聞けばよいかが一覧のまま残ります。
手順の4は、面談を確認の場として使う手順です。職種名や仕事の内容があいまいな場合は、面談でその場を使って具体的な記載を確かめておくと、あとの欄が埋まります。
5つの手順は、1回で終わらせる作業ではありません。候補が増えるたびに同じ手順を繰り返し、列の基準をそろえたまま比較を更新していきます。
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6. 空欄のまま残さず、未確認と書き添えます。
7列のなかには、募集内容を読んだだけでは埋まらない欄があります。無理に想像で埋めず、未確認として残す考え方を整理します。
空欄を未確認にするときの基準
- 数字だけで判断しない:休日数や勤務時間のように、数字だけでは実態が分からない項目は、内訳を確認してから埋めます。
- 言葉の範囲を確かめる:出社の頻度や勤務地の「応相談」のような言葉は、具体的な範囲を確認するまで未確認にします。
- 埋まらない理由を書く:「未確認」だけでなく、何を確認すれば埋まるかを短く添えておくと、面談で聞く内容が明確になります。
- 空欄と未確認を区別する:空欄のまま残すと後で見た人が見落とします。未確認と書けば、確認すべき欄だと分かります。
たとえば休日数だけを見て条件を判断すると、内訳を確認しないまま埋めたことになります。数字の内訳を確認してから欄を埋めるという手順は、休日数に限らず他の列にも当てはまります。
出社の頻度についても同じです。「リモート可」という言葉だけでは、実際にどのくらいの頻度で出社するのかが分かりません。具体的な頻度を確認できるまでは、未確認のままにしておきます。
未確認を残したまま比較を進めても構いません。動かせない条件の列に未確認が多い候補は、比較の後半で面談を通じて埋めていく対象として扱います。
未確認の欄が多い候補ほど、面談で確認する項目も多くなります。面談の前に未確認の欄を一覧にしておくと、確認漏れを防げます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 比較する列は、必ず7つにする必要があるか。
A. 目安として7つを推奨します。列を増やすほど、確認できていない欄が残りやすくなり、その欄だけが条件の悪さを示しているように見えてしまいます。増やしたい項目があるときは、既存の7列のどれかに含められないかを先に確認します。
Q2. 年収を先に確認してから、動かせない条件を見てもよいか。
A. 順番を変えると、比較の結論も変わります。年収を先に見ると、その差が印象に残り、動かせない条件の違いが軽く見えてしまいます。動かせない条件を先に確認したうえで、年収は最後に見る順番を勧めます。
Q3. 未確認の欄が多い候補は、比較から外すべきか。
A. 外す必要はありません。未確認は情報が十分ではないことを示す記録であり、条件が悪いという意味ではありません。面談で確認してから、改めて欄を埋めます。
Q4. 転職して賃金が増えなかった場合、比較の作業に意味はあったか。
A. あります。転職して賃金が増えた人は40.5%、増えなかった人は合わせて6割近くいます*1。年収以外の条件を比較していれば、求人ごとの違いを踏まえたうえで、増えなかった理由も判断できます。
Q5. 比較表は面談の前に見せてもよいか。
A. 見せても問題ありません。動かせない条件のうち未確認の欄を先に伝えておくと、面談の時間を確認に充てやすくなります。ただし年収の列は、他の条件が固まってから見せるほうが判断がぶれません。
8. まとめ:比べる順番で、応募先の見え方が変わります。
この記事の要点
- 年収を左端に置くと、年収の差が最初に目に入り、動かせない条件の違いが比較から抜け落ちます。
- 動かせない条件(出社の頻度・勤務地・就業時間)を先に置き、変えられる条件、年収の順に並べると、比較の結論が安定します。
- 転職して賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%、変わらない人は28.4%でした*1。年収の差がつかない転職も3割近くあります。
- 列は7つに絞り、埋まらない欄は空欄にせず未確認と書きます。未確認は面談で埋めていく対象です。
比較の一覧は、一度作れば終わりではありません。面談で情報が増えるたびに未確認の欄を埋め、応募先ごとの求人を条件のそろった状態で見比べていきましょう。面談を重ねるたびに欄が埋まっていく一覧は、年収だけでは見えなかった条件の違いを、あとから確認する記録にもなります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
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