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固定残業代と年俸制|年俸に残業代が含まれるときの明示

会議室の机に置いた労働条件の書面と電卓、ボールペン、革のファイル

年俸制でも法定労働時間を超えれば割増賃金は必要で、払わない合意は労働者と会社が決めても無効です*1。年俸に含めるなら、含まれることが契約で明らか・通常の賃金と区分できる・法定額以上の3つがそろう必要があります*1。賞与時に分けて払う年俸は、賞与時の支給分も含む確定した年俸額が算定基礎(割増賃金の計算の基になる金額)です*1*5。

割増賃金とは、通常の賃金に一定の率を上乗せして払う賃金です*4。年俸制の求人では、年俸額に加えて、固定残業代の時間数と金額も読みます。求人で固定残業代を示すときの3点も載せます*2*3。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事のポイント

  • 年俸制でも、法定労働時間を超えれば割増賃金は必要で、払わない合意は無効です*1。賞与の時期に分けて払う年俸では、その分も含めた確定した年俸額が算定基礎です*1*5。
  • 年俸に割増賃金を含める扱いが認められるのは、契約上の明示、賃金の区分、法定額以上の支払いの3つがそろう場合です*1。含まれる時間数を超えた分は、追加で払う必要があります*1。
  • 求人で固定残業代を示すときの3点は、基本給の額、時間数と金額の計算方法、超過分を追加で払う旨です*2*3。面接では、金額と時間数まで聞きます。

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1. 年俸制でも法定労働時間を超えた分の割増賃金は必要になる

年俸制でも、実際の労働時間が法定労働時間を超えれば、原則として割増賃金を払わなければなりません。賃金を年額で決めても、時間外・休日・深夜の労働には割増賃金が要ります*1。労働基準法第37条は、通常の労働時間の賃金の計算額に一定の率を加えた割増賃金を払うよう定めています*4。労働者と会社が「割増賃金は払わない」と申し合わせても、その申し合わせは無効です*1。

年俸制は、賃金を年額で決める制度です。年俸額を毎月に分けて払う形のほか、一部を賞与の時期にまとめて払う形があります*1。どちらの形でも、法定労働時間を超えた分には割増賃金を払います*1。

労働基準法第37条は、当事者の合意で外せない規定(強行規定)です*1。そのため、「年俸制のため残業代は出ない」という説明を受けたときは、この規定に照らして、年俸額の中に割増賃金が含まれているかどうかを聞きます。含まれていると言われた場合は、何時間分が、いくらで含まれているのかまで聞きます。

年俸額の中に割増賃金を含める扱い自体は、3つの条件がそろえば労働基準法第37条に違反しないと解されます*1。年俸制の求人で「残業代込み」と書かれているときは、この3つが書面のどこに書かれているかを読みます。

2. 年俸に割増賃金を含める扱いに必要な3つの条件

夜の机で、書面の3か所にオレンジの付箋を貼り、3枚目を押さえる手

年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていても、労働基準法第37条に違反しない場合があります*1。それは3つの条件がそろっているときで、条件がそろっていても、含まれる時間数を超えた分は追加で払う必要があります*1。

年俸に割増賃金を含められる3つの条件と、超えた時間の追加払い 契約で明らか 含む旨が契約にある 区分できる 賃金を2つに分ける 法定額以上 割増分が下回らない 超過は追加 超えた分を別に払う 含まれる条件が3つそろい、含まれる時間を超えた分は追加で払われる

1つ目は、割増賃金が年俸に含まれていることが、労働契約の内容として明らかなことです*1。固定残業代の場合は、就業規則や労働条件通知書などで明確にしておく必要があります*2。2つ目は、割増賃金にあたる部分と、通常の労働時間に対応する賃金の部分を区分できることです*1。

3つ目は、年俸の中の割増賃金分が、法定の割増賃金額以上で払われていることです*1。固定残業代の額が、労働基準法第37条などの方法で計算した割増賃金の額を下回るときは、その差額を払う必要があります*2。

3つがそろっていても、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて働かせ、その分を払わなければ違反です*1。年間の割増賃金相当額を各月均等に払う場合も、各月に払う額が、その月の時間外労働等の時間数で計算した割増賃金に満たなければ違反です*1。

年俸に含まれる割増賃金が何時間分なのかが書面に出ていれば、その時間を過ぎた分が追加で払われるかどうかを、面接で聞けます*3。時間数が書面に出ていない求人では、賃金を区分できるかどうかも、書面から読めません。

3. 年俸の払い方と割増賃金の扱いを場面ごとに並べる

割増賃金の扱いを、年俸の払い方と契約の内容に分けて表へ並べました。右の列は、書面で読むところです。

年俸制の払い方と契約の内容ごとの割増賃金の扱い

払い方と契約の内容割増賃金の扱い書面で読むところ
労働者と会社が「残業代は払わない」と合意している合意は無効で、時間外・休日・深夜の労働には割増賃金を払う*1労働条件通知書に、残業代を払わない旨が書かれていないか
年俸の一部を賞与の時期に払う賞与時の支給分も含めた確定した年俸額が、割増賃金の算定基礎になる*1年俸額に、賞与の時期に払う分が含まれているか
年俸に割増賃金が含まれ、3つの条件がそろっている労働基準法第37条に違反しないと解される*1含まれる旨、区分、金額の3つが書面にあるか
含まれる時間数を超えて働いたのに、追加で払わない労働基準法第37条に違反する*1超えた分を追加で払う旨が書かれているか*3
割増賃金相当額を各月均等に払い、実際の時間で計算した額に満たない月がある労働基準法第37条に違反する*1各月に払う額が、その月の時間外労働等の時間数に基づく額を下回っていないか
固定残業代の額が、法定の方法で計算した額を下回る差額を払う*2固定残業代の額と、その計算方法
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当割増賃金の基礎となる賃金に算入しない*4*5年俸額の内訳に、これらの手当が分けて書かれているか
臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに払われる賃金割増賃金の基礎となる賃金に算入しない*5賞与は、このどちらにも当たらない*1

表の2行目は、賞与の時期に分けて払う年俸です。賞与として払われる賃金は、「臨時に支払われた賃金」にも「1か月を超える期間ごとに払われる賃金」にも当たらないため、割増賃金の算定基礎から除外できません*1*5。そのため、確定した年俸額(賞与分を含む)が算定基礎になります*1。

仮の数字で、考え方だけ示します。年俸が600万円と決まり、そのうち100万円を賞与の時期に払うとします。この場合も、算定基礎になるのは、賞与の100万円を含めた600万円です*1。賞与の100万円を外した500万円では考えません。

算定基礎に入らない賃金として、法律に家族手当と通勤手当が、施行規則に別居手当・子女教育手当・住宅手当が挙がっています*4*5。年俸額の内訳にこれらの手当が出てくるときは、算入する部分としない部分が分かれて記載されているかを読みます。

あわせて読みたい | 年俸制と賞与の違い|転職時に年俸へ賞与は含まれるのか

4. 求人と契約書で固定残業代を読む箇所は3つ

固定残業代とは、一定時間分までの時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金として、定額で払われる賃金です*2。「定額残業手当」や「みなし残業代」と呼ばれることもあり、基本給に組み込むタイプと、基本給とは別の手当で払うタイプがあります*2。年俸制の求人で「残業代込み」と書かれていたら、固定残業代の表示のしかたに当てはめて読みます。

固定残業代を求人で示すときは、募集要項や求人票に、次の3つをすべて書面等で明示する必要があります*2*3。1つ目は基本給の額で、固定残業代を除いた額を書きます。2つ目は、固定残業代に関する労働時間数と、金額などの計算方法です。3つ目は、固定残業時間を超える労働に対して、割増賃金を追加で払う旨です*3。

記載例は、基本給が××円、○○手当は時間外労働の有無にかかわらず○時間分の時間外手当として△△円を払う、という形です。これに、○時間を超える分は追加で払う旨を添えます*3。固定残業代以外の手当が同じ手当に含まれるときは、固定残業代分を分けて書く必要があります*3。深夜労働や休日労働を固定残業代にする場合も、同じ記載が必要です*3。

手当が固定残業代とみなされるかどうかは、契約書の記載のほか、会社の説明や実際の労働時間などで判断されます*2。そのため、求人票だけでなく、面接で聞いた説明と実際の働き方も手元に記録しておきます。

固定残業代と基本給の分かれ方は、求人票の記載例を別の記事で並べています。年俸制の求人でも、基本給にあたる部分と固定残業代にあたる部分が分かれているかを、読んでおきます。

あわせて読みたい | 固定残業代と基本給はどう分かれる?求人票の3つの記載

5. 年俸に含まれる残業の時間数を面接で聞く

午後の机で、ノートパソコンの手前に置いた質問のメモ帳と水のグラス

年俸制の求人を読むときに、書面で見つけたい数字は2つあります。1つは年俸額の中の割増賃金にあたる金額で、もう1つは、その金額が何時間分の時間外労働にあたるかです*3。この2つが書面に無ければ、追加で払われる境目の時間が分かりません。

面接や条件の話し合いでは、次の3つを聞きます。年俸額のうち割増賃金にあたる部分の金額と時間数、その時間数を過ぎたときに追加で払われるか、割増賃金にあたる部分を除いた基本の額です*3。聞くときは、「残業代は含まれていますか」の1問で終えず、金額と時間数まで聞きます。

含まれていると答えがあっても、金額と時間数が分からなければ、賃金を区分できるか、法定額以上かを、読む側で判断できません。書面と面接での説明が合わないときは、労働条件通知書の項目名を挙げて、入社の前に会社へ質問します。

割増賃金相当額を毎月均等に払う形の年俸では、時間外労働が多い月に、その月の時間数で計算した額に払う額が満たなければ違反です*1。入社後は、月ごとの実際の時間外労働の時間数を自分でも書き留めておきます。給与明細の割増賃金の欄と並べて読めるためです。

6. よくある質問

Q1. 年俸制だと残業代は出ませんか

A. 出ます。年俸制を採っている会社でも、割増賃金は必要です*1。年額で決めた賃金でも、この扱いは同じです*1。

Q2. 年俸に残業代が含まれていると何時間働いても追加で払われませんか

A. 含まれる時間数を過ぎた分の割増賃金を払わなければ、労働基準法第37条に違反します*1。含められる条件は、本文の3つで、1つでも欠ければ含めた扱いは認められません。

Q3. 賞与として払われる分は残業代の計算に入りますか

A. 入ります。賞与の分は、確定した年俸額の全体として、算定基礎に含まれます*1。賞与は、算定基礎から除外できる賃金の区分に当たりません*1*5。

Q4. 労働者と会社が「残業代は払わない」と合意したら払われませんか

A. 払わない合意は無効で、割増賃金は払われます*1。第37条は、合意で変えられない規定だからです*1。

Q5. 求人で固定残業代を示すとき何が書かれていますか

A. 基本給の額(固定残業代を除く)、時間数と金額の計算方法、超過分を追加で払う旨の3つです*2*3。固定残業代以外の手当を含むときは、固定残業代分を分けて書く必要があります*3。

7. まとめ:年俸制の残業代は含まれる条件と超過分で読む

この記事のまとめ

  • 年俸制でも、法定労働時間を超えれば原則として割増賃金は必要で、払わない合意は無効です*1。
  • 年俸に割増賃金を含める扱いは、契約上の明示、賃金の区分、法定額以上の支払いの3つがそろえば認められ、超えた時間の分は追加で払われます*1。
  • 年俸の一部を賞与の時期に払う場合は、その分も含めた確定した年俸額が算定基礎です*1*5。
  • 求人で固定残業代を示すときは、基本給の額、計算方法、超過分の追加払いの3点が書かれます*2*3。

年俸制の求人は、年俸に含まれる割増賃金の金額と時間数、追加で払う旨が書面に出ているかを読んでから応募してください。

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出典・参考情報

*1 年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。(Q&A|確かめよう労働条件|厚生労働省)
*2 固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?(スタートアップ労働条件|厚生労働省)
*3 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします(リーフレット LL040930開若04|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク。宮崎労働局掲載)
*4 労働基準法(e-Gov法令検索)
*5 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)

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