リファレンスチェックを断るとどうなる?同意と個人情報の決まり

内定の前に、前の会社の上司や同僚に話を聞く「リファレンスチェック」をしたいと言われることがあります。今の勤務先に転職活動を知られたくない、頼める相手がいないなどの理由で、断りたいと考える人もいます。
リファレンスチェックは、断ることができます。前の会社が退職した人の在籍状況や勤務状況について問い合わせに答えるには、原則として本人の同意が要ります*1。応募先が本人以外から個人情報を集めるときも、本人の同意の下で行うなど、適法で公正な方法によらなければなりません*2。断ったあとの選考の扱いを定めた公的な資料はないので、断る事情と代わりに出せるものを伝えるのが現実的です。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 前の会社が退職者の在籍状況や勤務状況について問い合わせに答えることは個人データの第三者提供にあたり、原則として本人の同意が要ります*1。
- 応募先が本人以外から個人情報を集めるときは、本人の同意の下で行うなど、適法で公正な方法によらなければなりません。同意は本人の自由な意思に基づくものでなければなりません*2。
- 断ったときに選考でどう扱われるかを定めた公的な資料はありません。断る事情と、代わりに出せる相手や実績を一緒に伝えます。
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1. リファレンスチェックは断ることができる
リファレンスチェックに同意しないことはできます。本人が同意しなければ、前の会社は原則として、在籍状況や勤務状況についての問い合わせに答えられません*1。
個人情報保護委員会のQ&Aは、退職した従業者の在籍確認や勤務状況について、第三者から問い合わせを受けた場合を取り上げています*1。その情報が個人データになっていれば、答えることは個人データの第三者提供にあたります*1。本人の同意があるか、法律の例外にあたる場合でなければ、前の会社は答えられません*1。
応募先の側にも決まりがあります。職業安定法に基づく指針では、求人者や職業紹介事業者などが個人情報を集める方法が決められています*2。本人から直接集めるか、本人の同意を得て本人以外の者から集めるなど、適法かつ公正な方法によることとされています*2。
つまり、リファレンスチェックは、応募者本人の同意があって初めて成り立つ仕組みです。同意するかどうかは、応募者が自分で決められます。迷ったら、すぐに答えを出さず、説明を聞いてから返事をしてかまいません。
リファレンスチェックの進め方は会社によって違います。応募者が依頼する相手を選んで応募先に伝える形もあれば、応募先から頼まれた調査会社が連絡してくる形もあります。どの形でも、前の会社が答えるには応募者の同意がなければならない点は同じです*1。
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2. リファレンスチェックにかかわる決まり
リファレンスチェックという言葉そのものは、法律や指針には出てきません。前の会社への在籍確認や勤務状況の問い合わせ、本人以外からの個人情報の収集として、次の決まりが当てはまります。どれも、応募者の情報を本人の知らないところで集めさせないための決まりです。
リファレンスチェックにかかわる公的な決まり
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| 前の会社が答えるとき | 在籍状況や勤務状況が個人データなら第三者提供にあたり、原則として本人の同意が要る*1 |
| 応募先が情報を集めるとき | 本人から直接か、本人の同意の下で本人以外から集めるなど、適法かつ公正な方法による*2 |
| 同意を求めるとき | 同意を求める事項をできるだけ具体的に示し、本人の自由な意思に基づく明確な同意を得る*2 |
| 必要な範囲を超える収集 | 必要な範囲を超えて個人情報を集めることへの同意を、募集の条件にしてはならない*2 |
| 適性や能力に関係のない調査 | 家族や生活環境などを調べることは、就職差別につながるおそれがある*3 |
指針は、同意を得るときのやり方にも決まりを置いています。同意を求める事項は、求職者が適切に判断できるよう、できるだけ具体的かつ詳しく示すことが求められます*2。業務の目的に必要な範囲を超えて個人情報を集めることへの同意を、労働者の募集の条件にしてはならないともされています*2。
同意は、求職者の自由な意思に基づき、本人がはっきり示したものでなければなりません*2。案内のメールや同意書を受け取ったら、誰に何を聞くのか、結果をどう使うのかがそこに書かれているかを読みます。書かれていなければ、返事をする前に応募先に説明を頼みます。
3. 断ったときの選考の扱いは決まっていない
応募者がリファレンスチェックを断った場合の扱いを定めた法律や公的な資料は、見当たりません。断ったことだけを理由に不採用にしてはならない、という決まりも、不採用にしてよいという決まりも、示されていません。扱いは応募先ごとに違い、別の方法で進める会社もあれば、選考を見送る会社もあり得ます。
ただ、公正な採用選考では、応募者の適性と能力に関係のない事項で採否を決めないことが基本とされています。厚生労働省の公正採用選考特設サイトは、応募者の家族や生活環境などを調べることを、就職差別につながるおそれがある事項として挙げています*3。前の上司への質問が、仕事の実績や働き方から離れて家庭の事情や私生活に及ぶようなら、その質問は外してもらうよう頼んでかまいません。
断るときは、事情をきちんと伝えます。事情が分からないまま断られると、応募先は何か隠していることがあるのではと受け取りかねません。「在職中で、上司にまだ退職の話をしていない」など、具体的に話せば、応募先も進め方を変えやすくなります。
4. 断る事情ごとに代わりに出せるもの
断る事情によって、代わりに出せるものが変わります。断るだけで終わらせず、応募先が知りたいことを別の形で示せると、選考を前に進めやすくなります。
在職中で今の勤務先に知られたくない場合は、その前の会社の上司や同僚に頼めないかを聞いてみます。内定が出て、退職の意向を勤務先に伝えたあとに行うよう、時期をずらしてもらう方法もあります。どちらを提案する場合も、相手の名前や実施できる月を添えれば、応募先は社内で進め方を決めやすいはずです。
頼める相手がいない場合は、ポートフォリオやコードの公開リポジトリ、担当したサービスなど、自分の仕事を示せるものを出せないかを考えます。応募先がリファレンスチェックで知りたいのは、多くの場合、職務経歴書に書いた経験が本当かどうかと、一緒に働く人としての様子です。そのどちらかを別の形で示せれば、話し合いの余地が生まれます。
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5. 断るときのメールの書き方
断る連絡は、メールで落ち着いて伝えます。お礼、断る事情、代わりに頼める相手の順に書くと、読み手に意図が伝わります。たとえば次のような文面です。
「リファレンスチェックのご案内をいただき、ありがとうございます。現在在職中のため、今の勤務先の上司への依頼は控えさせていただけないでしょうか。前職の〇〇株式会社で一緒に働いていた上司であれば、依頼することができます。」
同意するかどうか迷っているときは、断る前に、依頼先と質問の中身、選考での使い道を質問します。指針が同意を求める事項を具体的に示すよう求めている以上*2、説明を求めること自体は失礼ではありません。説明を聞いてから、同意するかどうかを決めればよいのです。
メールは、案内を受け取ってから日を空けずに返します。返事が遅れると、選考の日程そのものが後ろにずれることがあるためです。断る理由を書くときは、前の職場への不満や人間関係の話は避け、今の勤務先との関係や連絡の取りにくさなど、事情だけを短く書きます。
転職エージェントを通じて応募している場合は、まず担当者に相談します。担当者から応募先に事情を伝えてもらえることもあり、自分から直接断るより角が立ちにくくなります。
6. 同意する場合に応募先へ聞いておくこと
同意すると決めた場合も、進め方を聞いてから相手に依頼すると、行き違いが起きにくくなります。応募先に次のことを聞いておきます。
リファレンスチェックに同意する前に聞いておくこと
- 誰に依頼するのか(人数と、上司か同僚か)
- 何を聞くのか(質問の内容や項目)
- 電話か、書面やオンラインの回答か
- 結果を選考でどう使うのか
- 集めた情報をいつまで保管し、どう扱うのか
依頼する相手には、前もって自分から事情を話し、協力してもらえるかを聞いておきます。相手に断られることもあるので、候補は2人以上考えておくと安心です。回答の締め切りがあるなら、それも相手に伝えておきます。
依頼した相手にも、どんな質問が届きそうかを前もって伝えておくと、相手が答えに困りません。担当した仕事や在籍した期間など、事実を聞かれる項目は、自分の職務経歴書と食い違わないよう、写しを渡しておくと安心です。
職業安定法に基づく指針は、求人者などが集めた個人情報を、収集の目的の範囲で保管・使用するよう定めています*2。結果の扱いを聞いておけば、選考のあとに自分の情報がどうなるかが分かります。
7. よくある質問
Q1. リファレンスチェックを断ると不採用になりますか?
A. 断ったときの扱いを定めた公的な決まりはなく、応募先によって対応は違います。事情と、代わりに頼める相手や出せる実績を伝えて、応募先と話し合ってください。
Q2. 本人に知らせずに前の会社へ問い合わせることはありますか?
A. 前の会社が在籍状況や勤務状況を答えるのは個人データの第三者提供で、本人が同意していなければ原則としてできません*1。応募先も、本人以外から情報を集めるときは適法で公正な方法によることとされています*2。
Q3. 在職中で今の勤務先に知られたくない場合はどうすればいいですか?
A. その前の職場で一緒に働いた人を代わりに挙げるか、退職を伝えたあとまで実施を待ってもらえないかを相談します。今の勤務先に知られずに進める方法を、応募先と一緒に探す形になります。
Q4. 同意書に署名を求められたときは何を読めばいいですか?
A. 依頼する相手、質問の項目、回答の方法、結果の使い道、保管の期間の5つが載っているかを見ます。載っていない点は、署名の前に応募先に聞いてください。
Q5. 一度同意したあとで取りやめることはできますか?
A. 取りやめたいときは、相手に連絡が行く前に、できるだけ早く応募先に伝えます。依頼をお願いしていた相手にも、取りやめたことを知らせておきます。
8. まとめ:リファレンスチェックは断れるので事情と代わりの相手を伝える
この記事のまとめ
- 前の会社が在籍状況や勤務状況に答えるには、原則として本人の同意が要る*1
- 応募先が本人以外から情報を集めるときは、本人の同意の下で適法かつ公正に行う*2
- 同意は本人の自由な意思に基づくもの。必要な範囲を超える収集への同意を募集の条件にしてはならない*2
- 断ったときの選考上の扱いを定めた公的な決まりはない
- 同意するなら、誰に何を聞き、結果をどう使うのかを先に聞く
リファレンスチェックの案内を受けたら、まず依頼先と質問の中身を応募先に聞き、断るなら事情と代わりに頼める相手をメールで伝えてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A Q7-12(個人情報保護委員会・令和7年7月)
*2 指針(平成11年労働省告示第141号)(抄)第5 法第五条の五に関する事項(新潟労働局)
*3 採用選考時に配慮すべき事項(厚生労働省 公正採用選考特設サイト)
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