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有給消化と次の仕事がかぶる|前の会社の就業規則と社会保険の届出

有給消化と次の仕事がかぶる|前の会社の就業規則と社会保険の届出のイメージ写真

退職前に残った年次有給休暇を使っている間に、次の会社の入社日が来てしまうことがあります。有給消化の期間中は、まだ前の会社に在籍しているので、2つの会社に同時に籍がある状態になります。

有給消化の期間に次の会社の入社日が来ても、前の会社の就業規則が他の会社で働くことを禁じていなければ、次の会社に入社することはできます。ただし、両方の会社で健康保険と厚生年金の加入条件を満たすと、本人が事実発生から10日以内に届出を出さなければなりません*1。雇用保険は、主な賃金を受ける1社でしか加入できません*3。手続きを増やしたくなければ、退職日を入社日の前日までに置くのが確実です。

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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

有給消化と次の仕事がかぶると2つの会社に籍がある この記事の要約 在籍が重なる期間 1 就業規則 他社で働けるか読む 2 社会保険 10日以内に届出 3 雇用保険 主な1社だけ加入 退職日を入社日の前日までに置けば届出は要らない 有給消化中も退職日までは前の会社の社員として扱われる *数値の出典は記事末尾「出典・参考情報」参照

この記事のポイント

  • 有給消化の期間中も、退職日までは前の会社に在籍しています。次の会社に入社すると、2つの会社に同時に籍がある状態になります。
  • 両方の会社で健康保険と厚生年金の加入条件を満たすときは、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を事実発生から10日以内に出します*1。
  • 雇用保険は、主な賃金を受ける1社でしか加入できません*3。届出を避けたいなら、退職日を入社日の前日までに置きます。

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1. 有給消化中でも次の会社に入社はできる

有給消化と次の仕事がかぶっても、入社はできます。ただし、前の会社の就業規則に兼業を制限する規定がないかを先に読み、社会保険の届出が要るかどうかを両方の会社に伝えておきます。

年次有給休暇は、働く日に休んでも賃金が支払われる休暇です。休んでいる間も労働契約は続いているので、有給消化の期間中は、退職日まで前の会社の社員のままです。その間に次の会社で働き始めると、法律の上では2つの会社に同時に雇われている状態になります。

2つの会社で同時に働くこと自体を禁じた法律はありません。労働者が労働時間以外の時間をどう使うかは、基本的には労働者の自由とされています*4。厚生労働省のモデル就業規則も、労働者は勤務時間外に他の会社の業務に従事できる、という形をとっています*4。

気をつけるのは、前の会社の就業規則と、社会保険の手続きの2点です。就業規則で他社での就業が制限されていれば、前の会社と話し合う必要があります。社会保険は、両方の会社で加入条件を満たすかどうかで、本人の届出が要るかどうかが分かれます*1。どちらも、入社日が決まった時点で動けば間に合う手続きなので、慌てて退職日を動かす必要はありません。

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2. 在籍が重なる期間に起きる手続き

2つの会社に籍がある期間には、社会保険と雇用保険でそれぞれ別の決まりが当てはまります。健康保険・厚生年金と雇用保険では、扱いが逆になる点に注意してください。

在籍が重なる期間の社会保険と雇用保険

制度在籍が重なるときの扱い
健康保険・厚生年金両方の会社で加入条件を満たすと、本人が主な事業所を選んで「二以上事業所勤務届」を出す*1
届出の期限と提出先事実発生から10日以内。選んだ事業所を管轄する事務センターか年金事務所*1
保険料両方の会社の報酬月額を合算して標準報酬月額を決め、それぞれの報酬額で按分する*1
雇用保険同時に2社で被保険者にはなれない。主な賃金を受ける1社でのみ加入する*3
労働時間事業主が違っても労働時間は通算する(労働基準法第38条)*4

健康保険と厚生年金は、両方の会社で加入することになり、本人がどちらを主な事業所にするかを選んで届け出ます*1。届出のあとは、選んだ側の所在地を受け持つ事務センターが、その人の手続きをまとめて扱います*1。届出を出すのは会社ではなく被保険者本人なので、10日の期限に注意が必要です。

雇用保険は逆で、同時に複数の会社に雇われていても、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける会社でだけ加入します*3。有給消化中の前の会社と、働き始めた次の会社のどちらで加入しているかを、両方の会社の担当者に伝えておきます。

3. 前の会社の就業規則で他社での就業を読む

前の会社の就業規則に、副業や兼業を許可制にする規定や、禁止する規定があるかを読みます。モデル就業規則では、会社が他社での就業を制限できる場合として、次の4つが挙げられています*4。労務の提供に支障がある場合、企業の秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を壊す行為がある場合、競業によって会社の利益を害する場合です*4。

有給消化中は前の会社で働く日がないので、労務の提供に支障が出ることは考えにくいでしょう。気をつけたいのは競業です。同じ業界の会社や取引先に移る場合は、前の会社が競業にあたると考えることがあります。在籍中に同業の会社で働き始めることになるので、退職の話し合いの場で、入社日と退職日の関係を前もって伝えておくと、後から問題になりにくくなります。

就業規則に許可制の規定がある場合は、入社日が退職日より前になると分かった時点で、前の会社の人事担当者に相談します。黙って働き始めると、退職日までの間に就業規則違反を指摘されるおそれがあります。

就業規則は、働く人がいつでも読めるようにしておくことが労働基準法第106条で決められています。社内のイントラネットや共有フォルダに置かれていることもあるので、退職の連絡をする前に、兼業や副業の章を読んでおくと話が早く進みます。

4. 有給消化と入社日がかぶらない日程を組む

手続きを増やさない一番の方法は、在籍を重ねないことです。残っている有給休暇の日数から逆算して、次の順に日程を組みます。

退職日を入社日の前日までに置けば在籍は重ならない 入社日を決める 次の会社と入社日を 合意する 有給の日数を数える 残りの日数を会社に聞く 最終出社日 入社日から有給の日数を 引く 退職日 入社日の前日までに置く 退職日を入社日の前日までに置けば二以上事業所勤務届は出さずに済む

まず、次の会社と入社日を合意します。そのうえで、前の会社の有給休暇が何日残っているかを人事担当者に聞き、最終出社日の翌日から有給を使い切る日を退職日にします。その退職日が入社日より後になるなら、入社日を後ろにずらすか、有給を使い切る前に退職日を置くかを選ぶしかありません。

たとえば、入社日が4月1日で、有給休暇が10日残っているなら、退職日を3月31日にします。そこから勤務日を10日さかのぼった日が有給の初日で、その前の勤務日が最終出社日です。こうすれば、有給を使い切っても在籍は入社日の前日で終わります。

入社日をずらせるかどうかは、次の会社との話し合いで決まります。内定の段階で「有給休暇が〇日残っているので、入社日を〇月〇日にしたい」と伝えれば、日程を合わせてもらえることもあります。2つの会社に同じ日付を伝えておけば、行き違いは起きません。

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5. 在籍が重なる間の保険料は2社の報酬を合わせて決まる

退職による健康保険と厚生年金の資格喪失日は、退職日の翌日です*2。たとえば3月31日に退職すると、資格喪失日は4月1日になります*2。有給を使い切るために退職日が後ろにずれると、前の会社での資格喪失日も後ろにずれ、在籍が重なる期間が長くなります。

在籍が重なっている間の保険料は、2社の報酬月額を合わせた額で標準報酬月額を決め、それぞれの会社で受ける報酬月額に応じて按分します*1。有給消化中も前の会社から賃金が支払われるので、前の会社の給与からも、按分された分の保険料が引かれます。退職日の翌日に前の会社の資格を失ってからは、加入は次の会社だけです。前の会社の最後の給与明細で、按分された保険料が引かれているかを見ておくと、引かれ方の行き違いに早く気づけます。

保険料がいつの分から次の会社で引かれるかは、退職日と入社日がどの月にあるかで変わります。給与明細で保険料が2か所から引かれていると気づいたら、両方の会社の担当者に退職日と入社日を伝えて、どちらの会社で何月分を払うかを聞いてください。

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6. かぶることが決まったら2つの会社に伝えること

在籍が重なると決まったら、前の会社と次の会社の両方に、次のことを伝えます。片方だけに伝えると、社会保険の手続きがどちらかで止まってしまいます。

在籍が重なるときに伝えること

  • 前の会社:退職日、最終出社日、次の会社の入社日
  • 前の会社:就業規則の兼業の規定にあたるかどうか
  • 次の会社:前の会社の退職日(入社日より後になること)
  • 両方の会社:雇用保険にどちらで加入するか
  • 両方の会社:二以上事業所勤務届を出す予定かどうか

次の会社は、入社の手続きで前の会社の退職日を聞くことがあります。在籍が重なる場合は、そのことを正直に伝え、雇用保険の加入をどちらにするかを相談してください*3。

二以上事業所勤務届の様式は、日本年金機構のページから手に入ります*1。届出のあと、決まった標準報酬月額と保険料額は、選んだ事業所を管轄する事務センターから両方の会社に通知されます*1。

7. よくある質問

Q1. 有給消化中に次の会社で働き始めたことは前の会社に知られますか?

A. 2社で社会保険に加入する場合は、届出の結果が両方の会社に知らされます*1。前の会社に黙って進めることはできないと考えてください。

Q2. 有給休暇を使い切る前に退職日を早めることはできますか?

A. 退職日を早めれば、残った有給休暇は使わないまま退職することになります。退職日を早めるか、入社日を遅らせるかは、退職する会社と入社する会社のそれぞれと話し合って決めます。

Q3. 雇用保険はどちらの会社で入ればいいですか?

A. 生活を主に支えている賃金を受けているほうの1社で加入します*3。どちらにするかは、両方の会社の担当者と相談してください。

Q4. 前の会社の就業規則で副業が禁止されているときはどうなりますか?

A. 許可制なら、退職する会社の人事に許可を求めます。禁止されている場合は、入社日を有給消化が終わったあとにずらしてもらえないか、次の会社に相談してください。

Q5. 次の会社から入社日を早めてほしいと言われたらどうすればいいですか?

A. 早めると前の会社の在籍と重なり、社会保険の届出が要ることがあると伝えます。そのうえで、有給休暇を何日あきらめれば早められるかを数え、受け入れるかどうかを決めてください。

8. まとめ:有給消化と次の仕事がかぶるなら就業規則と届出を先に

この記事のまとめ

  • 有給消化の期間中も、退職日までは前の会社に在籍している
  • 前の会社の就業規則が他社での就業を制限していないかを読む。制限できる場合の1つに競業がある*4
  • 両方の会社で健康保険と厚生年金の加入条件を満たすと、本人が10日以内に二以上事業所勤務届を出す*1
  • 雇用保険は主たる賃金を受ける1社でのみ加入する*3
  • 手続きを増やさないなら、退職日を入社日の前日までに置く

入社日が決まったら、前の会社に有給休暇の残りの日数を聞き、退職日が入社日の前日までに収まるかを数えてから、両方の会社に日付を伝えてください。

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※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。

出典・参考情報

*1 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き(日本年金機構・2025年12月更新)
*2 従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き(日本年金機構)
*3 雇用保険制度Q&A~事業主の皆様へ(厚生労働省)
*4 副業・兼業と労働条件(確かめよう労働条件・厚生労働省)

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