引き継ぎを受ける側の仕事|分からないを形にする

引き継ぎを受ける側の仕事は、分からないことをそのままにせず、確かめられる形に変えていくことです。前任者に直接聞ける期間は限られているため、聞く前に分からないことの一覧を作り、聞く相手と聞ける時期を揃えて考えたうえで、確かめた内容を記録として残していく進め方に絞って見ていきます。
引き継ぎを受ける側の仕事を分けているのは経験の量や担当する分野ではなく、聞ける期間のうちに、分からないことを、確かめられる形に変えられているかという一点です。
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この記事のポイント
- 引き継ぎを受ける側の仕事は、分からないことを放置せず、確かめられる形に変えることです
- 前任者に直接聞ける期間は限られているため、聞く前に分からないことの一覧を作っておくことが要になります
- 情報通信業のテレワーク実施率は56.3%です*1。エンジニアの働き方の前提として参照します
1. 引き継ぎを受ける側の仕事は、分からないを形にすることです
引き継ぎを受ける側の仕事は、分からないことを放置せず、確かめられる形に変えることです。前任者に直接聞ける期間は限られているため、聞く前に分からないことの一覧を作り、聞く相手と聞ける時期を揃えておくことが要になります。
引き継ぎを受ける側は、初めて聞く仕事の内容を、限られた期間で自分の理解に変えていく立場にあります。分からないことをそのままにしておくと、後になって困る場面が増えます。
引き継ぎを受ける側という立場は、研修を受ける立場とは異なります。決まったカリキュラムに沿って教わるのではなく、必要なことを自分で見つけて確かめていく必要があります。
分からないことは、誰にでも起きます。問題になるのは分からないこと自体ではなく、分からないままにしておくことです。
前任者に直接確かめられる期間は、多くの場合、引き継ぎの数日から数週間に限られます。この期間を過ぎると、同じ質問をする相手がいなくなることもあります。
受け取る側の仕事は、聞ける期間のうちに、分からないことを確かめられる形に変えることに絞られます。形にするとは、聞いて終わるのではなく、確かめた内容を記録として残すところまでを指します。
分からないことを一覧にする作業は、聞く前の準備であって、聞かずに済ませる目的ではありません。一覧があることで、聞く場面ごとに何を確認すればよいかが明確になります。
次の項目では、分からないことをいくつかの性質に分けたうえで、どこから手をつけるかを見ていきます。
2. 分からないことは、性質で区別できます
分からないことは、性質によって3つに分けられます。資料に書かれているが読み込めていないこと、実際に触ってみれば分かること、そして前任者に聞かなければ分からないことです。
資料に書かれていることは、時間をかければ自分で確かめられます。急いで前任者に聞く必要はなく、読み込む時間を確保すれば足ります。
資料に書かれていることを確かめる時間は、引き継ぎ期間の外でも確保できます。読み込む時間を後回しにせず、早い段階でひととおり目を通しておくと、聞くべきことと自分で調べられることの線引きがしやすくなります。
実際に触ってみれば分かることも、自分で確かめられる部類に入ります。動かしてみて、結果を見てから判断すれば済みます。
前任者に聞かなければ分からないことは、性質が異なります。資料に残らない判断の基準や、決まった手順から外れる場面の対応は、聞ける期間のうちに確かめておかないと、あとから確かめる手段がなくなります。この3つ目を優先して聞く順番に置くことが、聞ける期間を有効に使う分かれ目になります。
3つの性質を先に判別しておくと、前任者に聞く量を必要最小限に絞り込めます。資料や実際の操作で確かめられる分は、聞く前に済ませておくことが要になります。
次の項目では、前任者に聞くべき3つ目の分からないことを、聞く相手と聞ける時期に分けて表にします。
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3. 確かめることは、相手と時期を揃えて考えます
前任者に聞かなければ分からないことは、聞く相手と聞ける時期を揃えて考えると整理しやすくなります。
確かめること・聞く相手・聞ける時期の対応を、4行に分けて並べます。
確かめること・聞く相手・聞ける時期の対応
| 確かめること | 聞く相手 | 聞ける時期 |
|---|---|---|
| 業務の目的や優先順位 | 前任者 | 引き継ぎ期間の早い段階 |
| 判断に迷ったときの基準 | 前任者 | 引き継ぎ期間中 |
| 関係する他の担当者や部署 | 前任者 | 引き継ぎ期間の早い段階 |
| 手順から外れる場面の対応 | 前任者 | 引き継ぎ期間の後半 |
表の4行は、業務の目的から、手順から外れる場面の対応まで、確かめる内容を並べたものです。
表の4行を並べる基準は、確かめないまま進めたときに、どれだけ後戻りが大きくなるかです。早い段階の2行は前提に関わるため後回しにしにくく、後半の2行は実例が伴って初めて具体的に確かめられる内容です。
業務の目的や優先順位、関係する他の担当者や部署は、引き継ぎ期間の早い段階で確かめておくと、その後の判断に使えます。
早い段階に確かめる2行を後回しにすると、判断のもとになる前提がないまま作業を進めることになり、あとから確かめ直す手間が増えます。
判断に迷ったときの基準は、引き継ぎ期間を通じて確かめる機会があります。実際に判断が必要になった場面で、あわせて聞くこともできます。
手順から外れる場面の対応は、引き継ぎ期間の後半に聞いておくと、期間が終わる前に確かめきれます。前半のうちに聞こうとしても、まだ実例が出ていないため、答えにくいことがあります。
4行に共通しているのは、聞く内容と聞く時期を先に決めておくと、聞ける期間を使い切れるという点です。次の項目では、引き継ぎを受ける側の働き方の前提に触れます。
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4. 引き継ぎの前提として、勤務の実態を見ておきます
引き継ぎを受ける側の働き方にも触れておきます。情報通信業のテレワーク実施率は56.3%で、業種別で最も高い水準です*1。
正社員全体のテレワーク実施率は22.5%です*1。エンジニアの勤務は、在宅を含む形が比較的広がっている業種にあたります。
ここでは働き方の前提を紹介するにとどめ、引き継ぎを受ける流れそのものは次の項目から見ていきます。
5. 受け取る流れは、4つの段階で進めます
受け取る流れは、一覧を作る、動かして確かめる、記録に足す、残った問いを渡すの4段階に分けられます。順番に進めると、確かめが抜けにくくなります。
一覧を作る段階では、分からないことを、思いついた順にまず書き出します。整理は後回しにして、抜けを減らすことを優先します。
動かして確かめる段階では、実際に操作したり動かしたりして、自分で確かめられる疑問を解消します。ここで解消できた分は、前任者に聞く量から差し引けます。
例えば、操作手順が資料に書かれていても、実際の画面や挙動まで一致するとは限りません。動かして確かめる段階を挟むことで、資料と実物の差にも気づけます。
記録に足す段階では、確かめた内容を記録に追加します。聞いて分かったことも、動かして分かったことも、同じ記録に並べて残します。
記録に足す段階を省略し、口頭で確かめた内容をそのままにしておくと、あとで同じ内容をもう一度確かめることになります。
残った問いを渡す段階では、聞ける期間のうちに解消しきれなかった問いを、次に確かめられる相手に引き継ぎます。4段階のどれかを飛ばすと、飛ばした分だけ、あとで気づいたときに確かめる相手を探す手間が増えます。
6. 確かめたことは、記録の形で残します
確かめたことを記録に残しておくと、聞ける期間が終わったあとも使えます。
記録に残す3つの項目
- 確認日:確かめた日付を記録に書き添えます
- 確認相手:誰に聞いて確かめたかを記録に書き添えます
- 未解決:確かめきれなかった点を、未解決のまま記録に残します
3つの項目は、どれも記録に一言添えるだけで済む項目です。
確認日を書き添えると、いつ時点の情報かがあとから分かります。同じ内容でも、時間が経つと状況が変わっていることがあります。
確認相手を書き添えると、あとで疑問が出たときに、誰にもう一度聞けばよいかが分かります。前任者以外に確かめた場合も、同じように書き添えます。
記録を残す相手は、前任者に限りません。同じ業務に関わる別の担当者や、自分自身の後日の確認のために残しておく場合もあります。
未解決は、確かめきれなかった点を、無理に埋めずにそのまま記録に残す項目です。分からないままの状態を記録に残しておけば、聞ける期間が終わったあとも、次に確かめる手がかりになります。
3つの項目は、特別な様式を必要としません。手元の記録に一言ずつ添えるだけで、聞ける期間の内容を引き継ぎ後まで持ち越せます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 引き継ぎを受ける期間は、どのくらいが目安ですか。
A. 期間の長さは職場によって異なるため、一律には言えません。判断の分かれ目になるのは期間の長さそのものではなく、聞ける期間のうちに、分からないことを確かめきれているかどうかです。
Q2. 一覧に整理する分からないことは、どこまで細かく書けばよいですか。
A. 細かさよりも、誰に聞くかまで分かる書き方になっているかが基準です。「分からない」とだけ書くのではなく、確かめる相手が思い浮かぶところまで具体的に書くと、聞く場面で使えます。
Q3. 前任者にまとめて聞くのと、都度聞くのとでは、どちらがよいですか。
A. 聞き方は、分からないことの性質で使い分けられます。判断の基準のようにまとまった説明が必要なことはまとめて聞き、作業の途中で出てきた個別の疑問は都度聞くと、聞く場面と内容がかみ合いやすくなります。
Q4. 前任者に聞ける期間が終わったあとに分からないことが出てきたら、どうすればよいですか。
A. 期間が終わったあとは、前任者以外の担当者や、残しておいた記録を頼りに確かめることになります。聞ける期間のうちに記録を残しておくと、期間が終わったあとの確認がしやすくなります。同じ組織のなかであれば、担当者を辿って確認できることもあります。
8. まとめ:受け取る側は、分からないを形にして返せます
この記事の要点
- 引き継ぎを受ける側の仕事は、分からないことを放置せず、確かめられる形に変えることです
- 分からないことは、資料で分かること・動かせば分かること・聞かないと分からないことの3つに区別できます
- 確かめることは、聞く相手と聞ける時期を揃えて考えると整理しやすくなります
- 受け取る流れは、一覧を作る→動かして確かめる→記録に足す→残った問いを渡す、の4段階で進めます
- 確かめたことは、確認日・確認相手・未解決の3項目で記録に残せます
引き継ぎを受ける側の仕事は、分からないことを放置せず、確かめられる形に変えることに尽きます。前任者に直接聞ける期間は限られているため、一覧を作り、動かして確かめ、記録に足すという流れを守ると、聞ける期間を使い切れます。確かめきれなかった問いは、未解決のまま記録に残しておけば、期間が終わったあとの手がかりになります。引き継ぎの受け方に迷う場合は、専任エージェントに相談しながら整理することもできます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
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