競業避止義務とは?転職で確認する範囲と相談先

競業避止に関する条件は、入社時の誓約書や就業規則、退職時に渡される書面など、複数の場所に書かれることがあります。範囲がどの書面に書かれるかを整理し、書面のどこを読めば対象の範囲や期間などを確かめられるかを示します。内容の有効性の判断はせず、分からない点が残ったときに相談先をどの順番で選べるかまでを扱います。
競業避止の範囲は、入社時から退職時までの複数の書面に分けて書かれることがあります。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 競業避止の範囲は、入社時の誓約書や就業規則、退職時の書面、個別の合意など複数の場所に書かれることがあります
- 書面を読むときは、対象の範囲・期間・地域や取引先・代償の有無という4つの観点で確かめられます
- 内容が分からないときは、勤め先の人事や法務、公的な労働相談の窓口、弁護士などの専門家という順に相談先を広げられます
1. 競業避止の範囲は、書面のどこかに書かれています
競業避止の範囲は、単独の書類にまとめて書かれているとは限りません。入社時に交わす誓約書、勤め先の就業規則、退職時に渡される書面、退職の前後に個別に結ぶ合意書のいずれかに書かれることがあり、勤め先によって置かれる場所が変わります。どの書面に書かれているかを先に確かめることが、範囲を読む最初の一歩になります。
競業避止という語を目にしても、それがどの書面に書かれているかは、勤め先ごとに違います。入社時にまとめて示す会社もあれば、就業規則の一条項として置く会社、退職の場面であらためて書面を用意する会社もあります。
同じ会社であっても、役職や担当する業務によって、個別の誓約書が追加で用意される場合があります。全員に共通する就業規則とは別に、担当が重い人だけに向けた書面が存在することもあります。
入社時に受け取る書面には、競業避止の条項のほかに、業務内容や給与を示す労働条件通知書が含まれます。両者は役割が違う書面なので、区別して読む必要があります。
ここから、書面が出てくる4つの場面、読むときの4つの観点、誓約書と就業規則の違い、分からないときの流れ、相談先を広げる順番、よくある質問という順に見ていきます。
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2. 書面が出てくる場面は、入社から退職まで4つあります
書面が出てくる場面を時系列で並べると、入社時、在職中の規程の変更、退職の申し出、退職時という4つに分かれます。それぞれの場面で、示される書面の形が変わります。
入社時は、誓約書という形でまとまって示される場合が多い場面です。この段階で示された内容が、その後の基準になります。
在職中に就業規則が改定されると、条項の文言が変わることがあります。改定があった場合、変更の内容が社内で案内される形が一般的です。
退職を申し出た後や、退職時に渡される書面で、あらためて条項が示される場合があります。入社時に見た内容と同じかどうかを、この場面で確かめる進め方があります。
4つの場面のうち、どこで書面を受け取ったかによって、手元にある資料の種類も変わります。次の観点を読む前に、自分がどの場面の書面を持っているかを確かめておくと、読み違いを減らせます。
4つの場面をまとめて覚えておくと、書面を受け取るたびに、新しい内容が増えたのか、前の書面と同じ内容が繰り返されているのかを見分けやすくなります。
3. 書面を読むときは、4つの観点で読みます
競業避止の条項を読むときに、確かめる観点を4つに分けて並べます。
表を見る前に、自分が受け取っている書面がどれかを思い出しておくと、どの行から読むかが分かりやすくなります。
読む観点と、書かれることがある書面の対応
| 観点 | 確かめる内容 | 書かれることがある書面 |
|---|---|---|
| 対象の範囲 | どの業務・職種・分野を指しているか | 誓約書・就業規則 |
| 期間 | いつからいつまでの期間を指しているか | 誓約書・退職時の書面 |
| 地域や取引先 | 地域や特定の取引先を指しているか | 就業規則・個別の合意 |
| 代償の有無 | 手当や退職金などの代償が示されているか | 個別の合意・退職時の書面 |
表の4行は、対象の範囲、期間、地域や取引先、代償の有無という順に並んでいます。この順で読むと、書面のどこに何が書かれているかを見落としにくくなります。
対象の範囲は、業務内容や職種、分野の名前で示される場合があります。担当していた業務そのものではなく、書面に書かれている言葉を確認する読み方になります。
期間は、退職後の一定の期間として示される場合があります。開始の起点が退職日なのか、書面に署名した日なのかも、あわせて確かめる項目です。
地域や取引先は、書面に明記されている場合と、されていない場合があります。書かれていない場合は、その項目自体が対象外という読み方ではなく、書面に記載がないという事実として受け止める段階です。
代償の有無は、手当や退職金の加算といった形で示される場合があります。代償に関する記載は、個別の合意や退職時の書面にまとめられることが多く、誓約書だけでは分からない場合があります。
4つの観点をひとつずつ確かめると、書面のどこが埋まっていて、どこが空欄なのかが見えてきます。空欄が残った項目は、後の相談先で確かめる対象として控えておけます。
4. 誓約書と就業規則では、書かれ方の粒度が違います
誓約書は、入社する本人に向けて個別に用意される書面です。担当する業務や、扱う情報の範囲に合わせて、条項が具体的に書かれる場合があります。
就業規則は、勤め先の全員に適用される規則です。個別の誓約書より書き方が一般的になり、対象の範囲を役職や部署の単位で示す場合があります。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の月額賃金は40〜44歳で364.3千円、50〜54歳で388.8千円となっています*1。役職や担当が重くなる年代ほど、書面に書かれる範囲を確かめる意味が大きくなります。この数字は賃金の水準を示すもので、書面の内容とは別の話です。
就業規則は、誓約書と違って本人だけに配られるとは限りません。内容を確かめたいときは、勤め先に見せてもらえるかを聞く相談から始める進め方があります。
就業規則は改定されることがあるため、入社時に確認した内容と、在職中に確認した内容が変わっている場合もあります。誓約書は署名した時点の内容が基準になるため、改定の影響を受けにくい書面です。
誓約書と就業規則のどちらか一方だけを読んで判断するより、両方を並べて確かめたほうが、書かれている範囲を取りこぼしにくくなります。
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5. 分からないときは、書面を集めてから相談します
書面を読んでも分からない点が残ったとき、いきなり外部に相談するより、先にできることがあります。手元の書面を集める、書かれている範囲を書き出す、社内に聞く、外部に相談するという順で進める流れです。
集める段階では、誓約書、就業規則の該当条項、退職時の書面のうち、手元にあるものをすべてそろえます。ひとつしか手元になければ、その一つから始めれば構いません。
書き出す段階では、対象の範囲、期間、地域や取引先、代償の有無という4つの観点に沿って、書面に書かれている内容を書き出します。空欄になっている項目も、そのまま書き出しておきます。
社内に聞く段階では、勤め先の人事や法務に、書き出した内容を示しながら確認します。社内の担当者は、自社の書面に書かれている内容までは答えられますが、その先の判断までは担当していない場合があります。
社内で分からない点が残った場合は、公的な労働相談の窓口や、弁護士などの専門家に相談する段階に進みます。次の段落で、相談先を広げる順番を詳しく見ていきます。
6. 相談先は、社内・公的窓口・専門家の順に広げます
分からない点が残ったときに相談できる先を、広げる順番で並べます。
相談先を広げる順番
- 社内の人事・法務:書面に書かれている内容を確認できる窓口です
- 公的な労働相談の窓口:都道府県の労働局や労働基準監督署に相談窓口があります
- 弁護士などの専門家:書面を持って相談すると、内容に沿って話を進められます
相談先を広げる順番は、社内、公的な窓口、専門家という並びが基本になります。順に広げると、同じ内容を何度も説明し直す手間を減らせます。
社内の人事や法務は、自社の書面に何が書かれているかを確認できる窓口です。ただし、書かれている内容が読者にとってどう働くかという判断までは担当していない場合があります。
公的な労働相談の窓口は、都道府県の労働局や労働基準監督署に置かれています。書面の内容を伝えたうえで、次に確かめるべき点を相談できる先です。
在職中に別の勤め先で働けるかどうかは、競業避止とは別の論点として扱われる場合があります。その点は求人票と就業規則の順番で確かめる方法を別にまとめています。
最終的に内容を詳しく確かめたい場合は、弁護士などの専門家に相談する段階に進みます。口頭で説明するより、書面を持って相談したほうが、内容に沿って話を進められます。
相談先を広げる順番は、書面を集める段階から続く一連の流れです。書面を持って専門家に相談する形に着地させておくと、確認の手間を重ねずに進められます。
広げる順番を書き留めておくと、次に相談する相手にも、これまでに確認した内容をそのまま伝えられます。同じ説明を繰り返す手間も減らせます。
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7. よくある質問|範囲の書かれ方と相談先
Q1. 競業避止の範囲は、どの書面を見れば分かりますか。
A. 勤め先によって置かれる書面が異なります。入社時の誓約書、就業規則、退職時に渡される書面、個別の合意のいずれかに書かれることがあるため、まず自分がどの書面を受け取っているかを確かめる方法があります。
Q2. 誓約書と就業規則の両方に条項がある場合、どちらを優先して読みますか。
A. どちらも読む対象になります。誓約書は個別の内容、就業規則は会社全体の規則にあたるため、両方を並べて対象の範囲や期間を確かめる読み方があります。
Q3. 書面が手元にない場合、どうすればよいですか。
A. 手元にない場合は、勤め先の人事や法務に、書面を見せてもらえるかを確認する方法があります。内定後や退職の申し出の後であれば、あらためて書面が示される場合もあります。
Q4. 書面を読んでも範囲が分からない場合、どこに相談すればよいですか。
A. 社内の人事や法務に確認したうえで分からない点が残る場合は、公的な労働相談の窓口や、弁護士などの専門家に、書面を持って相談する進め方があります。
8. まとめ:競業避止の範囲は書面で確かめます
この記事の要点
- 競業避止の範囲は、入社時の誓約書や就業規則、退職時の書面、個別の合意など複数の場所に書かれることがあります
- 書面が出てくる場面は、入社時、在職中の規程の変更、退職の申し出、退職時という4つがあります
- 書面を読むときは、対象の範囲・期間・地域や取引先・代償の有無という4つの観点で確かめられます
- 誓約書は個別の内容、就業規則は会社全体の規則にあたるため、両方を並べて確かめる読み方があります
- 分からない点が残る場合は、社内の人事・法務、公的な労働相談の窓口、弁護士などの専門家という順に相談先を広げられます
競業避止の範囲は、単独の書面ではなく、入社時から退職時までの複数の書面に分けて書かれることがあります。対象の範囲・期間・地域や取引先・代償の有無という4つの観点で読み、分からない点が残るときは、書面を持って専門家に相談する進め方があります。
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