入社手続きは中途採用で何が変わる?初日までに出す書類

中途採用の入社手続きが新卒の一括入社と違うのは、年の途中で前の勤め先から移ってくる点です。そのため出すものには、自分でそろえられる書類と、退職した会社から受け取って次へ渡す書類が混じります。源泉徴収票や雇用保険被保険者証は後者にあたり、前の勤め先の事務が済むまで手元に届きません。
2024年4月からは、労働契約を結ぶときに就業場所と業務の「変更の範囲」も明示されます*1。変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所と業務の広がりを指します*1。面接で聞いた配属の話と合っているかは、初日までに労働条件通知書で読み合わせられます。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 中途入社で増える書類は、退職した勤め先から届きます。源泉徴収票と雇用保険被保険者証が代表で、どちらも前の勤め先の事務が終わってから郵送されます。
- 年の中途で就職して年末まで勤務していれば、12月に行う年末調整(1年分の所得税を年末に精算する手続き)の対象に含まれます*3。前の勤め先の給与も合わせて計算するため、源泉徴収票を次の勤め先へ渡します。
- 労働条件通知書には、2024年4月から就業場所と業務の「変更の範囲」も書かれます*1。求人票に載っていた勤務地と食い違っていないかを、署名の前に読めます。
1. 中途入社で増える書類は前の勤め先から届く
中途採用の入社手続きで新しく出てくるのは、前の勤め先から受け取って次の勤め先へ渡す書類です。新卒の一括入社では全員が同じ日に初めて雇われるため、書面を受け取る相手がいません。年の途中で移る中途採用では、退職した会社が発行した書面がそのまま次の会社の手続きに回ります。手元に無い書面は、自分では作れません。
そのため、入社の案内が届いたら、出すものを2つに分けてください。給与の振込口座やマイナンバーが分かる書類は、思い立った日に自分でそろえられます。源泉徴収票は退職した会社が給与の計算を締めてから作るので、こちらの都合では早まりません。分けておけば、届かないものだけを追いかけられます。
実際、退職の日から次の初日までが短いと、郵便の到着が入社日を過ぎることがあります。そのときは、いつ発行できるかを退職した会社の給与の担当へ聞き、返ってきた見込みを次の勤め先へ伝えてください。到着が遅れること自体は珍しくないので、黙って待つより先に連絡したほうが早く片づきます。連絡した日付を控えておけば、後から順を追って話せます。
2. 受け取る書類と自分でそろえる書類を分ける
まず、退職した勤め先から受け取る書面は3つです。源泉徴収票は1年間に支払われた給与と天引きされた所得税を書いた書面で、雇用保険被保険者証は雇用保険に入っていたことを示す書面です。3つ目が年金手帳または基礎年金番号通知書で、厚生年金の届出に書き写す番号が印刷されています。どれも前の勤め先の事務が終わってから手元に来ます。
ただし、雇用保険被保険者証は退職した会社が保管したままのことがあります。入社の案内に「雇用保険被保険者番号」とだけ書かれている会社もあるので、原本を出すのか番号を書くのかを先に聞いてください。手元に見当たらないときは、前の勤め先に残っていないかを問い合わせます。番号が分かれば加入は引き継げるので、証書そのものが無くても手続きは止まりません。
逆に、自分でそろえる書類は当日のうちに動かせるものです。給与を受け取る口座の情報、マイナンバーの分かる書面、住民票や本人確認の書類、そして通勤の経路と定期代の控えです。どれも役所か自宅で用意できるので、退職した会社の事務の進み具合とは関わりません。先に片づけておけば、あとは到着を待つ時間しか残りません。
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3. 書類ごとに受け取り先と使いみちが変わる
次に、書類ごとの受け取り先と使いみちを並べた表です。上の3つは退職した勤め先が発行し、下の3つは自分でそろえるものです。真ん中の年金の書面だけは、自宅の引き出しから出す人と、退職した会社から返してもらう人に分かれます。どちらかは、自宅の書類入れを先に見れば分かります。
中途入社で出す主な書類と受け取り先
| 書類 | どこから受け取るか | 何に使うか |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 退職した勤め先 | 12月の年末調整で前の勤め先の給与と合わせて計算する |
| 雇用保険被保険者証 | 退職した勤め先 | 次の勤め先で雇用保険の加入を引き継ぐ |
| 年金手帳または基礎年金番号通知書 | 自分の手元か退職した勤め先 | 厚生年金の届出に番号を書き写す |
| マイナンバーの分かる書面 | 自分でそろえる | 税と保険の届出に番号を書く |
| 給与の振込口座が分かるもの | 自分でそろえる | 毎月の給与を振り込む先にする |
| 通勤の経路と定期代の控え | 自分で調べる | 通勤手当の金額を決めるときに使う |
そのため、入社の案内に並んだ書類名を、この3列に当てはめてから動いてください。雇用保険は、労働者を雇用する事業に原則として強制的に適用されます*2。前の勤め先で加入していれば被保険者番号が残っているので、次の勤め先はその番号で記録をつなぎます。証書か番号のどちらかは、入社の前に手元へ置いてください。
一方、健康保険と厚生年金の届出を出すのは次の勤め先です。こちらが渡すのは、基礎年金番号と扶養する人の情報だけです。保険証が手元へ届く時期や、届くまでの受診の扱いは会社ごとに違うので、入社の案内か勤め先の担当へ聞いてください。窓口の答えが先で、こちらの予想は後です。
4. 退職日から入社日までに書類が手元を通る
ただし、この4つの地点は自分の予定だけでは動きません。退職日までは自分で決められますが、その後に書面が届く時期は前の勤め先の事務に左右されます。次の勤め先へ出す期日は入社の案内に書いてあるので、届いた案内をまず読んでください。期日が読み取れないときは採用の担当者へ聞きます。
実際、退職日を迎えた時点では、源泉徴収票はまだ作られていないことがあります。給与の締め日と支払日が退職日より後にある場合、最後の給与が確定してから発行する順になるからです。受け取れないまま初日を迎えても、手続きが止まったわけではありません。届く見込みだけを聞いておいてください。
そのため、入社日が近いときは、書面が間に合わないときの出し方を先に聞いておきます。後から出してよい会社もあれば、写しを先に出す会社もあります。どちらにするかは次の勤め先が決めることなので、こちらから型を選ぶ必要はありません。聞いた答えは、日付と担当者名まで控えておきます。
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5. 年末まで勤めれば12月に前の給与と合わせて計算する
年の中途で就職して年末まで勤務している人は、12月に行う年末調整の対象に含まれます*3。年末調整を受けるには、扶養している人の有無を届け出る「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、年末調整を行う日までに勤め先へ出しておく必要があります*3。だから中途入社でも、年内のうちに所得税の精算まで終わります。
そのため、前の勤め先の源泉徴収票が要ります。1月から退職までに受け取った給与と、そこから天引きされた所得税を合算しないと、1年分の税額が出せないからです。次の勤め先は、渡された源泉徴収票の数字を自社の給与と足し合わせて12月に精算します。出すのが遅れると、この計算に間に合いません。
ただし、いつまでに出すかは会社ごとに書いてあります。入社の案内や年末調整の書類に期日が示されるので、その日付に合わせてください。期日より前に手元へ届いたら、そのまま預けてしまうほうが忘れずに済みます。年内に間に合わなかったときの手続きは、勤め先か税務署の窓口で聞いてください。
6. 労働条件通知書で変更の範囲を読み合わせる
初日に受け取る労働条件通知書は、署名する前に読み合わせる書面です。2024年4月からは、就業場所と業務について「変更の範囲」の明示も必要になりました*1。求人票や面接で聞いた話と食い違っていないかは、この4つを順に見れば分かります。
労働条件通知書で読み合わせる4つ
- 雇い入れ直後の就業場所と、将来変わり得る就業場所の広がり*1
- 雇い入れ直後の業務と、将来変わり得る業務の広がり*1
- 期間の定めがあるなら、更新の上限の有無とその内容*1
- 求人票に載っていた勤務地や職種と、書かれた言葉が同じか
そのため、求人票の写しを初日に持っていってください。在宅勤務を含む求人では、就業場所に自宅と本社の両方が書かれることがあります。将来変わり得る広がりとして出社を伴う場所が並んでいれば、どんなときに出社するのかをその場で聞けます。聞いた答えは、通知書の余白に書き込んでおいてください。
実際、面接で聞いた話と通知書の言葉がずれるのは、担当者が違うからです。面接で答えたのは配属先の責任者で、通知書を作るのは人事の担当という並びになりがちです。だから食い違いを見つけても、責めるのではなく、どちらが正しいかを聞けば済みます。署名の前なら、書き直しも頼めます。
期間の定めのある労働契約では、更新の上限の有無と内容も示されます*1。上限が書かれていれば、何回まで更新できるのか、通算で何年までなのかがその欄で読めます。正社員の求人に応募したはずなのに期間の定めが書かれていたら、そこは署名の前に聞く場所です。読み飛ばすと、条件だけが後に残ります。
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7. よくある質問
Q1. 源泉徴収票が退職した会社から届かないときはどうしますか
A. 退職した会社の給与を担当する部署へ連絡し、発行できる時期を聞いてください。最後の給与が支払われてから作る順になっている場合、退職日にはまだ用意されていません。聞いた見込みは日付とあわせて書き留めておき、次の勤め先にもそのまま伝えてください。
Q2. 雇用保険被保険者証が見当たらないときはどうなりますか
A. 被保険者番号が分かれば、加入の引き継ぎは進みます。証書が手元に無いことを入社の案内の連絡先へ伝え、番号だけで足りるかを聞いてください。前の勤め先に置いたままのこともあるので、そちらへも同じ日に連絡してください。再交付が要るかどうかは、その返事で決まります。
Q3. 年の途中で入社した場合も12月の年末調整を受けられますか
A. 年末まで勤務していれば受けられます。前の勤め先の給与も合わせて、12月の給与で所得税が精算されます*3。そのためには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整を行う日までに出しておく必要があります*3。源泉徴収票を渡す期日は、勤め先の案内に書いてあります。
Q4. 就業場所の書き方が求人票と違うときは何を聞けばよいですか
A. 署名する前に、採用の担当者へ言葉の違いを伝えてください。雇い入れ直後の就業場所に加えて、将来変わり得る広がりも通知書に明示されます*1。求人票が自宅と書き、通知書に本社が並んでいるなら、出社が発生する条件を聞く場面です。答えを聞いてから署名しても遅くありません。
8. まとめ:中途入社の手続きで初日までに出す書類
初日までに手元へそろえる3つ
- 退職した勤め先から届くのは、源泉徴収票と雇用保険被保険者証と年金の番号が分かる書面です。届く時期は前の勤め先の事務に左右されるので、見込みだけを先に聞いておきます。
- 自分でそろえるのは、給与の振込口座、マイナンバーの分かる書面、住民票や本人確認の書類、通勤の経路の4つです。どれも案内が届いた日から手を付けられます。
- 年の中途で就職して年末まで勤務していれば12月の年末調整に含まれるため*3、前の勤め先の源泉徴収票を勤め先の案内にある期日までに渡します。
退職した勤め先から届く書面と、自分でそろえる書類を先に分けておけば、残る作業は到着を待つことだけです。労働条件通知書は署名の前に読み合わせ、求人票と違う言葉が混ざっていないかを見てください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」(リーフレット・2026年確認)
*2 ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」(2026年確認)
*3 国税庁 タックスアンサー No.2665「年末調整の対象となる人」(2026年確認)
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