自己都合退職のやむを得ない事由とは?特定理由離職者の条件

親の病気で実家に戻ることになり、自分から会社を辞めた。自己都合退職でも、やむを得ない事由があれば失業給付の扱いが変わると聞いたが、自分の理由が当てはまるのかが分からない人もいます。
自己都合退職のやむを得ない事由とは、雇用保険で「正当な理由のある自己都合」と認められる理由のことです*1。体力の不足や病気、親の看護、配偶者の転勤に伴う別居の回避などで辞めた人は、特定理由離職者として扱われます*1。給付制限(基本手当を受け取れない期間)はかかりません*3。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 体力の不足、病気、けが、視力や聴力の減退などで辞めた人は、正当な理由のある離職として特定理由離職者に当たります*1。
- 雇用保険法第33条の給付制限は、正当な理由が無く自己の都合で退職した場合にかかるもので、正当な理由がある場合はかかりません*3。
- 特定理由離職者は、離職前の1年間に雇用保険に入っていた期間が6か月以上あれば、基本手当を受け取る資格を得られます*2。
1. 自己都合退職のやむを得ない事由とは正当な理由のある自己都合
雇用保険で「正当な理由のある自己都合」に当たる理由を指します。当てはまれば特定理由離職者になり、給付制限がかかりません*1*3。
自分から辞めた退職でも、辞めざるを得なかった事情があれば、雇用保険の扱いが変わります。ハローワークは、こうした離職を「正当な理由のある自己都合により離職した者」として、特定理由離職者の範囲に入れています*1。
雇用保険法第33条は、正当な理由が無いまま自分の都合で辞めた人に、一定の期間は基本手当を支給しないとしています*3。この期間が給付制限です。辞めた理由に正当な理由があれば、給付制限の対象になりません*3。
正当な理由に当たるかどうかは、ハローワークの所長が、厚生労働大臣の定める基準に従って認定します*3。特定理由離職者の範囲も、給付制限での「正当な理由」と同じ基準で判断されるとされています*1。
なお、民法第628条にも「やむを得ない事由」という言葉があります。こちらは契約期間を決めて働く人が期間の途中で辞められるかどうかの話で、雇用保険の正当な理由とは別の決まりです。
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2. 正当な理由のある自己都合に当たる理由の例
ハローワークが特定理由離職者の範囲として挙げている例を、理由の種類ごとに並べました。
正当な理由のある自己都合退職の例
| 分類 | ハローワークが挙げている理由 |
|---|---|
| 本人の体や健康 | 体力の不足、病気、けが、視力・聴力・触覚の減退など*1 |
| 妊娠・出産・育児 | 妊娠、出産、育児などで離職し、受給期間の延長の手続きをした場合*1 |
| 親や親族の事情 | 父母の死亡や病気で扶養が必要になった、親族の看護が必要になったなど*1 |
| 別居の回避 | 配偶者や扶養する親族と別居を続けるのが難しくなった*1 |
| 通勤が難しくなった | 結婚による転居、事業所の移転、交通機関の廃止、配偶者の転勤に伴う別居の回避など*1 |
| 人員整理 | 退職勧奨に当たらない人員整理で、希望退職の募集に応じた場合など*1 |
体の不調で辞める場合は、体力の不足や病気、けがのほか、視力や聴力、触覚の減退も挙げられています*1。仕事を続けられないほどの状態かどうかが問われることになるので、医師に相談した日や通院の記録を残しておくと、事情を説明しやすくなります。
通勤が難しくなった場合には、結婚に伴う住所の変更、保育所の利用や親族への保育の依頼、事業所の通勤が難しい場所への移転などが含まれます*1。鉄道やバスの廃止や運行時間の変更、自分の意思に反して住所を移さざるを得なくなった場合も同じです*1。
妊娠や出産、育児で辞めた場合は、雇用保険法第20条第1項の受給期間の延長の手続きをとった人が対象です*1。会社の人員整理で希望退職の募集に応じた場合も、退職勧奨に当たらないものなら、表の人員整理の例に入ります*1。
3. 自己都合退職がやむを得ない事由に当たるかの分かれ道
まず、なぜ辞めたのかを具体的に書き出します。体調が悪くなった、親の看護が必要になった、配偶者の転勤で一緒に引っ越したなど、辞めた事情を時期とあわせて整理しておくと、窓口で伝えやすくなります。
次に、その理由がハローワークの挙げる例に当てはまるかを照らします*1。ここで当てはまりそうな理由が見つかったら、離職票を出す手続きのときに、その事情をハローワークに伝えます。
辞めた理由が1つとは限りません。たとえば、体調を崩したうえに親の看護も必要になった場合は、両方の事情を書き出しておきましょう。どちらの理由が退職を決めたきっかけだったのかを話せるようにしておくと、窓口でのやり取りが短く済みます。
最後に、正当な理由に当たるかを決めるのはハローワークの所長です*3。会社が離職票に「自己都合」と書いていても、それだけで正当な理由の有無が決まるわけではありません。
4. 特定理由離職者になると変わる失業給付
特定理由離職者になると、まず給付制限がかかりません。正当な理由が無い自己都合で辞めた人には、2025年4月から原則1か月の給付制限があり、過去5年間に3回以上自己都合で辞めている場合は3か月です*4。正当な理由が認められれば、この期間を待たずに済みます*3。
基本手当を受け取る資格の条件もゆるくなります。特定理由離職者は、離職の前の1年間のうち、雇用保険に入っていた期間が6か月あれば受給の資格を得られます*2。転職して半年ほどで体調を崩して辞めた人でも、資格を得られる場合があるということです。
受け取れる日数は理由によって違います。自己都合でも正当な理由が認められた人の日数は、一般の離職者と同じ表で決まります*2。契約が更新されなかった人の日数は、次の見出しで説明する別の決まりです*2。
給付制限は、教育訓練を受けた場合にも外れます。2025年4月から、離職期間中や離職日前1年以内に、雇用の安定と就職の促進に役立つ教育訓練を自分で受けた人は、給付制限が解除されるようになりました*4。
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5. 契約社員が更新されずに辞めたときの特定理由離職者
自己都合とは少し違いますが、契約社員などの有期の契約で働く人にも、特定理由離職者に当たる場合があります。契約期間が満了して更新されなかった人のうち、本人が更新を希望したのに、更新の合意が成り立たなかった場合です*1。
ここで対象になるのは、雇用契約書に「契約の更新をする場合がある」などと書かれていて、更新があることは示されていたものの、更新の確約までは無かった場合です*1。最初から更新しないと決まっていた契約とは扱いが違います。
この理由で特定理由離職者になった人は、離職の日が2027年3月31日までなら、基本手当を受け取れる日数が特定受給資格者と同じになります*2。自分の都合で辞めた特定理由離職者より、日数が長くなることがあります。
契約の満了で辞める人は、自分が更新を希望していたかどうかが扱いを分けるので、更新の話し合いをしたときのメールや面談の記録を残しておきましょう。更新を希望していたのに断られた場合は、そのことをハローワークの窓口ではっきり伝えてください。
6. やむを得ない事由をハローワークに伝えるとき
離職票の離職理由には、会社が記入した内容が書かれています。会社が「自己都合」としか書いていなくても、辞めた事情に正当な理由があるなら、手続きのときに窓口でその事情を伝えます。
伝えるときは、いつから、どんな事情で働き続けられなくなったのかを、日付とあわせて話せるようにしておきます。体調が理由なら通院の記録、配偶者の転勤なら辞令の写しなど、事情を示す書類があれば持っていくと話が早く進みます。書類が手元に無い場合も、まずは事情だけを窓口で話してみてください。
ハローワークに伝える内容と、会社に伝えた退職の理由が食い違っていると、話がややこしくなります。退職届に「一身上の都合」と書いていても、実際の事情を窓口で説明することはできます。事情を示す書類と一緒に、退職を決めるまでの経緯を順に話せるようにしておきましょう。
必要な書類は辞めた事情によって違うので、手続きの前に住所を管轄するハローワークに問い合わせておくと安心です。持っていく書類がそろっていないと、窓口に何度も足を運ぶことになりかねません。
離職理由そのものに納得できない場合は、異議を申し立てる手続きもあります。会社が書いた理由と実際の辞め方が違うときの進め方は、下の記事で説明しています。
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7. よくある質問
Q1. 自己都合退職のやむを得ない事由とは何ですか?
A. 自分から辞めた理由に、雇用保険で正当な理由があると認められる場合のことです。病気やけが、親の看護、通勤が難しくなったことなどが例に挙がっています*1。
Q2. やむを得ない事由があれば給付制限はかかりませんか?
A. かかりません。給付制限の対象は、正当な理由の無い自己都合退職に限られています*3。
Q3. 配偶者の転勤で辞めた場合も当てはまりますか?
A. 配偶者の転勤や出向、再就職に伴う別居を避けるために辞め、通勤が難しくなった場合は当てはまります*1。
Q4. 入社して半年で辞めても失業給付を受け取れますか?
A. 特定理由離職者なら、雇用保険の加入期間が離職前の1年で半年あれば資格を得られます*2。
Q5. やむを得ない事由かどうかは誰が決めますか?
A. ハローワークの所長が、厚生労働大臣の定める基準に従って認定します*3。
Q6. 希望退職に応じて辞めたら特定理由離職者ですか?
A. 退職勧奨に当たらない人員整理で、希望退職の募集に応じて辞めた場合は、特定理由離職者の範囲に入っています*1。
Q7. 契約が更新されずに辞めた場合はどうなりますか?
A. 本人が望んだのに更新の合意ができなかった場合は、特定理由離職者に当たります*1。
8. まとめ:自己都合退職のやむを得ない事由は特定理由離職者の条件
この記事のまとめ
- やむを得ない事由は、雇用保険で自己都合の退職に正当な理由が認められる場合*1
- 体力の不足、病気、親の看護、通勤が難しくなった場合などが当たる*1
- 正当な理由があれば、雇用保険法第33条の給付制限がかからない*3
- 特定理由離職者は、雇用保険の加入期間が6か月以上で受給の資格を得られる*2
- 正当な理由が無い自己都合の給付制限は、2025年4月から原則1か月*4
自分から辞めた理由が表の例に当てはまりそうなら、事情を示す書類をそろえて、離職票の手続きのときにハローワークで伝えてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)
*2 基本手当の所定給付日数(ハローワークインターネットサービス)
*3 雇用保険法 第33条(e-Gov法令検索)
*4 改正雇用保険法(第1回)自己都合離職者の給付制限期間短縮について(J-Net21・2025年6月4日)
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