懲戒解雇から再就職できる?退職証明書と失業保険の給付制限

前の会社を懲戒解雇になり、次の仕事を探さなければならない。けれど、履歴書に何を書けばよいのか、前の会社から転職先に話が伝わるのではないか、失業保険はもらえるのかが分からず、動き出せずにいる人もいます。
懲戒解雇から再就職できるかを考えるときは、まず退職証明書の決まりを知っておきましょう。前の会社は、本人が請求していない事項を書けず、就業を妨げる目的で他社と連絡することもできません*2。一方、重大な責任による解雇(重責解雇)と判断されると、失業保険の基本手当には3か月の給付制限(受け取れない期間)がかかります*4。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 懲戒が、行為の性質や態様などから見て客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になります(労働契約法第15条)*1。
- 退職証明書には労働者が請求しない事項を書いてはならず、就業を妨げる目的で証明書に秘密の記号を書くことも禁じられています(労働基準法第22条)*2。
- 自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇(重責解雇)された場合、失業保険の基本手当の給付制限は3か月です*4。
1. 懲戒解雇から再就職するときに知っておく3つの決まり
懲戒解雇のあとも、退職証明書の中身は本人が選べ、前の会社が次の就職を妨げることは禁じられています。ただし、重責解雇なら失業保険は3か月待つことになります*2*4。
懲戒解雇は、会社が規律違反などを理由に、懲戒の処分として雇用を終わらせることです。どんな処分でも許されるわけではなく、行為の性質などから見て合理的な理由と相当性を欠く懲戒は、無効になります(労働契約法第15条)*1。
再就職の場面で本人を守る決まりもあります。前の会社が出す退職証明書の中身や、前の会社と次の会社とのやり取りには、労働基準法第22条の制限がかかります*2。
失業保険の扱いは、解雇の理由で変わります。重責解雇と判断されれば待つ期間が生じ、それ以外の解雇なら特定受給資格者として扱われます*4*6。
この3つを順に読んでいくと、再就職までに何を準備すればよいかが見えてきます。それぞれの中身は、このあとの見出しで説明します。
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2. 懲戒解雇と再就職に関わる決まり
懲戒解雇のあとに次の仕事を探すときに関わる決まりを、法律と公的な資料から並べました。
懲戒解雇に関わる決まり
| 項目 | 決まり |
|---|---|
| 懲戒の有効性 | 合理的な理由と相当性を欠く懲戒は無効*1 |
| 懲戒解雇の事由 | あらかじめ就業規則に定められている必要*3 |
| 退職証明書 | 本人が請求しない事項は書けない*2 |
| 前の会社の連絡 | 就業を妨げる目的の連絡や秘密の記号は禁止*2 |
| 失業保険 | 重責解雇は給付制限3か月*4 |
表の上の2行は、懲戒解雇そのものが有効かどうかに関わる決まりです。就業規則に定めの無い理由で懲戒解雇された場合や、行為に比べて処分が重すぎる場合は、争う余地があります*1*3。
下の3行は、処分が有効だったとしても、次の仕事を探すときに働く決まりです。就業を妨げる目的の連絡や、証明書への秘密の記号は、法律で禁じられています*2。
3. 重責解雇と普通の解雇で変わる失業保険
懲戒解雇された人の失業保険は、ハローワークが重責解雇と判断するかどうかで大きく変わります。2つを並べました。
重責解雇とは、刑法の規定違反、故意か重い過失による設備や器具の破壊、事業所の信用を失わせる行為、重大な就業規則違反などで解雇された場合を指します*5。懲戒解雇という名前であっても、すべてが重責解雇に当たるとは限りません。
重責解雇とされた場合の給付制限は3か月です*4。給付制限とは、受給の手続きをしても、一定の期間は基本手当を受け取れない期間のことです。
重責解雇ではない解雇なら、ハローワークの特定受給資格者の範囲に入ります*6。特定受給資格者は、自己都合で辞めた人のような給付制限を受けずに基本手当を受け取れます。
どちらに当たるかを判断するのはハローワークです。会社が離職票に書いた離職理由に納得できないときは、離職票を出すときにその旨を伝え、解雇予告の通知書や退職証明書、就業規則などの資料を持っていきましょう*5。
失業保険の手続きは、住所を管轄するハローワークで行います。重責解雇に当たるかどうかで受け取り始める時期が変わるので、離職票が届いたら早めに窓口に行き、解雇の経緯を説明できるようにしておきましょう。
4. 懲戒解雇が有効かを就業規則で読む
再就職を考える前に、処分そのものが有効だったかを読み直しておくと、次の手続きの選び方が変わることがあります。厚生労働省の解説は、解雇に納得できない場合は、まず就業規則の解雇の事由を読み、どれに当たるとされたのかを考えることが大切だとしています*3。
懲戒解雇の事由は、前もって就業規則に書かれていなければなりません*3。就業規則のどの条文の、どの事由に当てはめられたのかを、会社に示してもらいましょう。
解雇の理由は、退職証明書で書面にしてもらえます。会社に退職証明書を請求し、解雇の理由を書いてもらうことが、事由に当たるかを知る手段として有効だとされています*3。理由を書面で残しておけば、解雇の有効性を争う場合にも使えます*3。
解雇の手続きにも決まりがあります。会社が解雇するときは、例外を除いて少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として払う必要があります(労働基準法第20条)*3。
例外になるのは、労働者に責任があることを理由に解雇する場合などで、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときです*3。懲戒解雇という理由だけで、認定を受けずにその場で辞めさせることは認められていません。認定が無いまま即時に解雇されたときは、解雇予告手当を請求できます*3。
懲戒の処分が、行為の性質や態様に比べて重すぎると感じる場合は、労働契約法第15条の考え方に照らして争う余地があります*1。一人で判断せずに、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、働く人の相談を受け付けている公的な窓口に話を持ち込んでみてください。
5. 再就職のときに退職証明書で示せること
転職先から前の職歴を示す書類を求められたときは、退職証明書を使えます。使用期間、業務の種類、その事業での地位、賃金、退職の事由について、本人が請求すれば会社は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条)*2。
この証明書には、請求していない事項を書き込めない決まりです*2。たとえば、使用期間と業務の種類だけを請求すれば、退職の事由は書かれません。どの事項を請求するかは本人が選べます。
また、前の会社がほかの会社と相談して、労働者の就業を邪魔するために、国籍や信条、社会的身分、労働組合の活動について連絡をすることも認められていません*2。証明書に秘密の記号を書くことも同じです*2。
解雇を予告された人は、予告の日から退職の日までの間にも、解雇の理由を書いた証明書を請求できます*2。辞める前に理由を書面で受け取っておけば、ハローワークで離職理由を相談するときにも使えます。
ただし、退職の事由を書かない退職証明書を出したからといって、転職先に事実と違う説明をしてよいわけではありません。面接で前の会社を辞めた理由を聞かれたときに、どう答えるかは、事実を踏まえて自分で準備しておく必要があります。
あわせて読みたい | 退職証明書の書き方|厚生労働省のモデル様式と退職の事由
6. 懲戒解雇のあとの履歴書と面接
履歴書については、厚生労働省が2021年に履歴書の様式例を示しています*7。この様式例の項目は、学歴・職歴、免許・資格、志望の動機や特技、本人の希望などで、賞罰を書く欄はありません*7。
厚生労働省は、この様式例は公正な採用選考を確保するために示すもので、法的な拘束力は無く、使うかどうかは企業が判断できるとしています*7。応募先が独自の様式を使っている場合は、その様式の項目に沿って書くことになります。
懲戒解雇を履歴書や面接でどう伝えるべきかを示した公的な資料は見当たりません。職歴の欄に退職の理由をどこまで書くか、面接でどう説明するかは、事実と違うことを書かないことを前提に、自分で考えることになります。
説明を準備するときは、何があったのか、そこから何を学んだのか、次の職場でどう働きたいのかを、短く順に話せるようにしておくと、面接で落ち着いて答えやすくなります。
応募の書類を出す前に、前の会社から受け取った退職証明書や離職票の写しを手元にそろえておくと、職歴の年月を正しく書けます。入社と退職の年月を取り違えると、あとで説明がしにくくなるからです。
7. よくある質問
Q1. 懲戒解雇されたら再就職できませんか?
A. 前の会社が再就職を邪魔する目的で動くことは法律で認められていません*2。退職証明書の中身も、本人が請求した項目に限られます*2。
Q2. 懲戒解雇だと失業保険はもらえませんか?
A. 重責解雇に当たると3か月待ちますが、その後は受け取れます*4。当たらなければ特定受給資格者です*6。
Q3. 退職証明書に懲戒解雇と書かれてしまいますか?
A. 退職の事由を請求しなければ書かれません*2。
Q4. 履歴書に賞罰欄はありますか?
A. 厚生労働省の履歴書の様式例には、賞罰の欄がありません*7。応募先の様式に欄があれば、その様式に沿って書きます。
Q5. 懲戒解雇に納得できないときは?
A. 当てはめられた就業規則の条文を会社に示してもらい、退職証明書に解雇の理由を書いてもらいましょう*3。
Q6. 懲戒解雇という名前なら必ず重責解雇ですか?
A. そうとは限りません。重責解雇は、刑法違反や重大な就業規則違反などで解雇された場合を指します*5。
Q7. 懲戒解雇でも解雇予告手当は出ますか?
A. 予告も監督署の認定も無くその日に辞めさせられた場合は、平均賃金30日分の手当を求められます*3。
8. まとめ:懲戒解雇から再就職するときの退職証明書と失業保険
この記事のまとめ
- 合理的な理由と相当性を欠く懲戒は無効になる*1
- 懲戒解雇の事由は、前もって就業規則に書かれている必要がある*3
- 退職証明書には、本人が請求していない項目は書かれない*2
- 前の会社が再就職を邪魔する目的で他社と連絡することはできない*2
- 重責解雇に当たると、失業保険は3か月の給付制限がかかる*4
次の仕事を探すときは、就業規則の事由と退職証明書の中身を読み、失業保険の手続きはハローワークで資料を添えて相談してから進めてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 労働契約法 第15条・第16条(厚生労働省 法令等データベース)
*2 労働基準法 第22条(厚生労働省 法令等データベース)
*3 しっかり学ぼう!働くときの基礎知識 退職、解雇、雇止めなど(厚生労働省 確かめよう労働条件)
*4 「給付制限期間」が短縮又は解除されます(群馬労働局・ハローワーク)
*5 雇用保険被保険者離職証明書についての注意(厚生労働省)
*6 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)
*7 履歴書の様式例の作成について(厚生労働省・2021年4月16日)
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