健康保険の未加入に罰則はある?会社の加入義務と相談先

届出をしない事業主には罰則があり、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です*1*2。罰則の対象は事業主で、従業員本人への罰則は条文にありません*1*2。根拠は健康保険法第208条と厚生年金保険法第102条です。
会社は、入社した人の資格取得を事実発生から5日以内に届け出ます*3。会社が届け出ていないときは、本人が年金事務所へ資格の確認をいつでも請求できます*1*4。請求を受け付けた日から、原則2年分の期間が調査されます*4。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 罰則の対象は届出をしない事業主で、拘禁刑は6月以下、罰金は50万円以下です*1*2。従業員本人への罰則は、条文にありません*1*2。
- 会社は資格取得を事実発生から5日以内に届け出ます*3。届出がないときは、本人が年金事務所へ資格の確認をいつでも請求できます*1*4。
- 確認請求の調査は、請求書の受付日から原則2年さかのぼる範囲です*4。請求には、雇用契約書や給与明細などの証拠書類を添えます*4。
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1. 罰則の対象は届出をしない事業主で本人は対象外
届出をしない事業主には、拘禁刑(刑務所に収容される刑)が6月以下、罰金が50万円以下という罰則があります。健康保険法第208条と厚生年金保険法第102条が定めていて、どちらも事業主が正当な理由がなくて届出をせず、または事実と違う届出をしたときの罰則です*1*2。罰則の対象は事業主で、従業員本人への罰則は、この2つの条文にありません*1*2。届け出る書類は事業主が出すもので、入社した本人が出す書類ではありません*3。
届出の義務を定めているのは、健康保険法第48条と厚生年金保険法第27条です*1*2。健康保険と厚生年金保険は、会社(事業所)単位で加入する仕組みで、加入の対象になる事業所を適用事業所と呼びます*3。適用事業所の事業主は、従業員の資格の取得と喪失に関する事項を、保険者等(健康保険と厚生年金保険を運営する側)へ届け出なければなりません*1*2。あわせて、毎月の給与の額(報酬月額)と賞与の額も届け出ます*1*2。
第208条には「正当な理由がなくて」の要件があり、届出をしないことに正当な理由があれば、この罰則の対象になりません*1。代理人や使用人などの従業者が、その法人や人の業務に関して第208条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人や人にも罰金刑が科されます*1。
健康保険の届出の期限は、事実発生から5日以内で、書類の名前は「被保険者資格取得届」です*3。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です*3。入社して日数が経つのに加入の連絡が来ないときは、会社の担当者へ資格取得届を出したかどうかを聞くところから始めます。
2. 会社が届け出ていないときに本人が確認を請求する手順

資格の取得と喪失は、事業主の届出に基づいて行われ、確認によって効力が生じます*1*4。事業主が届出をしていなかったり、事実と違う届出をしていたりすると、後日、被保険者が保険給付等を受けるときに不利益を被る場合があります*4。そのため、被保険者や被保険者であった者が、自分でも資格の確認を請求できる仕組みになっています*4。健康保険法第51条第1項は、この請求を「いつでも」できると定めています*1。
請求には「厚生年金保険・健康保険被保険者資格確認請求書」を使い、証拠書類を添えます*4。証拠書類は、雇用契約書、給与明細、出勤状況がわかる書類、退職日がわかる書類などです*4。すでに退職している場合も、被保険者であった者として請求できます*1*4。給与明細や雇用契約書は、入社した時点から手元に残しておく書類です。
請求書の提出先は、請求の対象になる事業所を管轄する年金事務所です*4。自宅に近い年金事務所ではなく、働いていた会社の所在地を管轄する年金事務所になります。年金事務所は、請求者の氏名を事業所に示した上で調査を行います*4。
原則2年間という調査の範囲は、請求書の受付日から数えます*4。確認された期間の保険料の半額を遡及して負担する義務が生じます*4。遡及とは、過去の期間にさかのぼって適用することです。
3. 加入義務と罰則と本人の請求を定めた条文
健康保険と厚生年金保険の加入にまつわる定めを、事業主の義務、罰則、本人の請求の順に表へまとめました。
健康保険・厚生年金保険の届出義務、罰則、本人の請求に関する定め
| 項目 | 定めの内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出の義務(健康保険) | 適用事業所の事業主は、被保険者の資格の取得と喪失、報酬月額と賞与額に関する事項を届け出る*1 | 健康保険法第48条 |
| 届出の義務(厚生年金保険) | 適用事業所の事業主は、資格の取得と喪失、報酬月額と賞与額に関する事項を厚生労働大臣へ届け出る*2 | 厚生年金保険法第27条 |
| 罰則(健康保険) | 正当な理由なく届出をしない、または事実と違う届出をした事業主は、拘禁刑6月以下か罰金50万円以下*1 | 健康保険法第208条第1号 |
| 罰則(厚生年金保険) | 正当な理由なく届出をしない、または事実と違う届出をした事業主は、拘禁刑6月以下か罰金50万円以下*2 | 厚生年金保険法第102条第1項第1号 |
| 法人への罰金刑 | 代理人や使用人などの従業者が違反行為をしたとき、行為者を罰するほか、その法人や人にも罰金刑を科す*1 | 健康保険法第214条第1項 |
| 届出の期限と窓口 | 事実発生から5日以内。提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所*3 | 日本年金機構の手続き案内 |
| 届出が必要な事業所 | すべての法人事業所と、常時5人以上の個人事業所(農林水産業やサービス業等を除く)*6 | 日本年金機構の適用事業所の案内 |
| 本人の請求 | 被保険者または被保険者であった者は、いつでも資格の確認を請求できる*1 | 健康保険法第51条第1項 |
届出が必要な事業所は、すべての法人事業所と、常時5人以上の個人事業所です*6。個人事業所のうち、農林水産業やサービス業等は対象から除かれています*6。会社として法人の形をとっている求人先であれば、従業員の人数にかかわらず、この表の義務の対象に含まれます。
加入する人の範囲も、事業所単位で決まります。その事業所に常時使用される人は、国籍や性別、賃金の額などに関係なく、すべて被保険者です*3。資格取得届が提出されていなかったことが後で分かると、さかのぼって資格取得届を提出し、事実が発生したときにさかのぼって保険料を支払うことになります*3。
第208条と第102条の罰則は、2つの法律に別々に置かれています。条文の文言はほぼ同じで、違反した届出が健康保険の届出か、厚生年金保険の届出かで条文が分かれます*1*2。
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4. 未加入の疑いがあるときは年金事務所へ連絡する

厚生年金保険に加入すべき事業所なのに加入していない、従業員を加入させていないといった相談は、年金事務所へ連絡します*5。法人登記されている事業所で、常時従業員を使用している場合は、厚生年金保険の適用事業所です*5。この場合、事業主には社会保険に加入する義務があります*5。
未加入の法人事業所が判明すると、年金事務所は社会保険へ加入するよう指導します*5。年金事務所の指導は、加入していない事業所を加入させる働きかけです。本人にできるのは、年金事務所への相談と、資格の確認の請求です。
動く順番は、次の3つです。最初に会社の担当者へ資格取得届を提出したかどうかを聞き、答えが得られないときや届出が出ていないと分かったときは、年金事務所へ相談します。相談のあとは、雇用契約書や給与明細を添えて、資格の確認を請求します*4*5。
確認請求では、年金事務所が請求者の氏名を事業所に示した上で調査を行います*4。氏名が事業所に示されることは、請求の前に頭に入れておく点です。請求まで進めるか、相談だけで止めるかは、その点を踏まえて本人が決めます。
5. 入社のときに手元に残す書類と会社に聞くこと
確認請求の証拠書類は、雇用契約書、給与明細、出勤状況がわかる書類、退職日がわかる書類などです*4。どれも、請求するときになって初めて集めようとしても、手元に無いことがあります。入社したときに受け取った雇用契約書と、毎月の給与明細は、退職したあとも残しておきます。
転職先を選ぶ段階でも、聞いておける点があります。求人を出している会社が法人なら、事業所の規模にかかわらず、届出の義務がある適用事業所の対象です*5*6。入社前の面談では、健康保険の加入日と、資格取得届を出す時期を、会社の担当者に聞けます。届出の期限は事実発生から5日以内なので、その日数を踏まえて質問します*3。
入社した後の動きも、あらかじめ決めておくと迷いません。加入の連絡が来ない状態が続くなら会社の担当者へ聞き、納得できる答えが来ないときは年金事務所へ相談します*5。雇用保険被保険者証を会社から受け取る時期は、別の記事にまとめています。
あわせて読みたい | 雇用保険被保険者証はいつもらえる|入社手続きのあと会社から
6. よくある質問
Q1. 健康保険に入っていない会社で働いていると従業員が罰せられますか
A. 従業員本人への罰則は、健康保険法第208条にも厚生年金保険法第102条にもありません*1*2。罰則の対象は事業主です。
Q2. 健康保険の資格取得の届出は入社から何日以内に出しますか
A. 事実発生から5日以内に、事業主が「被保険者資格取得届」を提出します*3。
Q3. 会社が届出をしていないとき自分で資格を確認してもらえますか
A. 被保険者または被保険者であった者は、いつでも確認を請求できます*1。請求先は、請求の対象になる事業所を管轄する年金事務所です*4。退職したあとでも、請求できます。
Q4. 確認請求に必要な書類は何ですか
A. 「厚生年金保険・健康保険被保険者資格確認請求書」と、証拠書類です。証拠書類は、雇用契約書、給与明細、出勤状況がわかる書類、退職日がわかる書類などです*4。
Q5. 確認請求をすると会社に自分の名前が伝わりますか
A. 年金事務所は、請求者の氏名を事業所に示した上で調査を行います*4。請求の前に、この点を頭に入れておきます。
Q6. 何年前までさかのぼって調べてもらえますか
A. 受付日から原則2年間が調査の範囲です*4。
Q7. 個人が経営する事業所でも届出が必要ですか
A. 常時5人以上の個人事業所は、農林水産業やサービス業等を除いて、資格取得の届出が必要です*6。法人の事業所は、すべて届出が必要です*6。
7. まとめ:罰則は届出をしない事業主に科され本人は年金事務所に請求できる
この記事のまとめ
- 届出をしない事業主の罰則は、拘禁刑が6月以下、罰金が50万円以下です。従業員本人への罰則は条文にありません*1*2。
- 資格取得の届出は事実発生から5日以内に、事業主が事務センターまたは管轄の年金事務所へ出します*3。
- 届出がないときは、本人が年金事務所へ資格の確認をいつでも請求でき、調査は受付日から原則2年さかのぼる範囲です*1*4。
- 未加入の疑いがある相談は年金事務所へ連絡し、請求には雇用契約書や給与明細などの証拠書類を添えます*4*5。
会社の届出が出ているか分からないときは、雇用契約書と給与明細を手元に集めて、会社の担当者へ聞くところから始めてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第39条・第48条・第51条・第208条・第214条(e-Gov法令検索)
*2 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第27条・第102条(e-Gov法令検索)
*3 就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き(日本年金機構)
*4 自身の被保険者記録について確認を請求するときの手続き(日本年金機構)
*5 法人の事業所は、すべて厚生年金保険の適用事業所となるはずですが、私の周囲に未加入の事業所を見かけます。加入する義務があるのではないですか。(日本年金機構 よくある質問)
*6 適用事業所と被保険者(日本年金機構)
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