固定残業代のメリットはどこに出る?残業が少ない月の手取り

求人票に「時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給」と書かれていることがあります*1。固定残業代とは、名称を問わず一定時間分の時間外労働などに定額で支払われる割増賃金のことです*1。割増賃金とは、時間外や深夜の労働に上乗せして払う賃金です*3。
そのため、残業の少ない月でも定額分は手取りに入ります。一方、固定残業時間(定額の対象として決めた時間数)を超えた月は、超えた分の割増賃金が追加で支払われます*1。手取りは下へ動きにくく、上へは開いている形です。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 固定残業代は、時間外労働の有無にかかわらず定額で支払われる形で求人票に書かれます*1。残業が少なかった月も、その額はそのまま賃金として入ります。
- 固定残業時間を超えた月は、超えた時間外労働・休日労働・深夜労働に割増賃金が追加で支払われます*1。実際の残業から計算した時間外手当が定額を上回った月は、上回った分も支払われます*2。
- 求人票には、固定残業代を除いた基本給の額と、労働時間数と金額等の計算方法が書かれます*1。基本給に含める形のときは、割増賃金にあたる部分とそれ以外の賃金部分を明確に区別することが必要です*2。
1. 残業が少なかった月も定額分は賃金として入る
固定残業代は、残業の有無にかかわらず定額で支払われる形で求人票に書かれます*1。そのため、残業が少なかった月でも定額分は減りません。逆に、固定残業時間を超えた月には、超えた時間に対する割増賃金が追加で支払われます*1。
まず、厚生労働省のリーフレットには、求人票への記載例が示されています*1。手当の名前と、何時間分としていくら支払うのかを並べる形で*1、名前が違っても、中身が定額の割増賃金であれば固定残業代です*1。
実際、固定残業代のメリットとして働く側に出るのは、月ごとの手取りの上下が小さくなる点です。固定残業時間より残業が少ない月は、定額分がそのまま入るため下へは動きません*1。固定残業時間を上回った月は、上回った分だけ上へ動きます*1。
ただし、定額分の金額は求人票からしか読めません。給与欄に総額だけが並ぶ場合は、いくらが固定残業代なのかを応募の前に聞いてください。基本給と定額分が分かれていれば、残業が無かった月の手取りの下限も読めます*1。
2. 手取りが動く向きは月ごとの残業時間で決まる
そのため、月ごとの手取りは、残業時間を横に並べると動きが見えます。固定残業時間までは、残業が何時間でも受け取る額は変わりません*1。固定残業時間を超えた先では、超えた分に応じて受け取る額が増えます*1。
具体的には、残業が無かった月と忙しかった月で、手取りに差が出ます。差がつくのは固定残業時間を超えた部分だけで、そこまでは定額のまま動きません*1。下側は定額で止まり、上側は残業に応じて伸びています。
ただし、固定残業代のメリットは、目盛りの左側にいる月が続いても額が増えることではありません。定額分は決まった額なので、残業が無かった月も、固定残業時間の直前まで働いた月も同じ額です*1。額が増えるのは、固定残業時間の先だけです*1。
一方、金額を入れると上下の幅が具体的に出ます。説明のために置いた仮の数として、基本給20万円に固定残業代4万円が付く求人票を考えてみてください。残業が少ない月の支給額は24万円のまま動かず、定額の時間数を超えた月だけ、超えた分が24万円に足されます*1。仮の数なので、実際の額は求人票で読みます。
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3. 固定残業代の下限は労働基準法37条の計算額
実際、定額残業制という呼び名が法律に書かれているわけではありません*2。定額残業制とは、一定時間分の残業代をあらかじめ定額で支払う扱いのことです*2。労働基準法が定める計算方法による金額以上を支払っていれば、労働基準法37条には違反しません*2。
そのため、定額分が実際の残業に見合っているかどうかは、計算し直せば分かります*2。実際の残業時間から計算した時間外手当より定額の支給額が低い場合は、その不足額もあわせて支払うことが必要です*2。定額分を受け取ったうえで、不足額を別に受け取る形です。
ただし、基本給の中に固定残業代を含める形の求人票もあります*2。この場合は、割増賃金にあたる部分とそれ以外の賃金部分とを明確に区別することが必要です*2。区別が無いと、どこまでが定額分なのかを外から読めません。基本給に含まれていれば、定額分の金額と時間数を応募の前に聞きます。
4. 固定残業代がある月給と無い月給で変わる動き
一方、残業代を実績だけで支払う月給では、動きが変わります。残業した時間の分だけ上乗せされるので、残業が無い月に上乗せはありません*3。忙しい月の上乗せは大きく、静かな月の上乗せは小さいままです。
実際、2つを並べると、違うのは下側の動きだけです。固定残業代がある月給では、残業が少ない月も定額分が入ったまま動きません*1。残業代を実績で支払う月給では、残業の無かった月に上乗せが付きません*3。上側はどちらも残業に応じて伸びます*1。
そのため、求人票を読むときは、給与欄に定額分が書かれているかを先に見て、書かれていれば、残業が少ない月に受け取る額の下限はその場で分かります*1。書かれていなければ、下限は基本給の欄だけで決まっています*3。
ただし、どちらの形で多く受け取れるかは、金額を見ないと分かりません。基本給の額も定額分の時間数も求人ごとに違うため、形だけでは比べられません*1。比べるなら、固定残業代を除いた基本給の額を横に並べてください*1。
5. 残業の多い月と少ない月で支払われるものを並べる
実際、その月の残業がどれだけでも、固定残業代の額そのものは動きません*1。動くのは、超えた分に対する追加の支払いだけです*1。残業が無かった月から超えた月まで並べると、1か所でだけ列が変わります。
そのため、求人票では、超えた分の追加について書かれているかを見ます*1。固定残業時間を超えた時間外労働・休日労働・深夜労働に割増賃金を追加で支払う旨は、求人票に明示が必要です*1。書かれていない場合は、その場で採用の担当者に聞いてください。
その月の残業と支払われるもの
| その月の残業 | 固定残業代の扱い | 追加で支払われるもの | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 残業が無かった月 | 定額のまま支払われる | 無し | *1 |
| 固定残業時間より少ない月 | 定額のまま支払われる | 無し | *1 |
| 固定残業時間と同じだった月 | 定額のまま支払われる | 無し | *1 |
| 固定残業時間を超えた月 | 定額のまま支払われる | 超えた時間分の割増賃金 | *1 |
| 実績の計算額が定額を上回った月 | 定額のまま支払われる | 定額に対する不足額 | *2 |
ただし、表の下の2行は、同じ月を別の側から書いたものです。固定残業時間を超えて働いた月は、実績で出した時間外手当が定額を超えます*2。この場合は、超えた分の割増賃金と不足額が、あわせて支払われます*1*2。どちらの言い方でも、手元に入る額は同じです。
そのため、入社後に見るのは、超えた月の追加分が支払われているかどうかです。求人票の固定残業時間と、その月の時間外労働の時間数を突き合わせます*1。追加の支払いが無ければ、会社の担当者に計算方法を聞いてください*2。
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6. 入社前に求人票から読み取る4つの記載
まず、求人票の給与欄から読み取るものを4つに分けます*1*2。はじめの3つは、求人票に明示が必要とされているものです*1。残りの1つは、固定残業代が基本給に含まれている求人票で必要なものです*2。
求人票から読み取る4つ
- 基本給の額:固定残業代を除いた基本給がいくらかを書き写します*1
- 時間数と計算方法:固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法を読みます*1
- 超えた分の追加:固定残業時間を超えた時間外労働などに割増賃金を追加で支払う旨があるかを見ます*1
- 基本給に含める形:割増賃金にあたる部分とそれ以外の賃金部分が明確に区別されているかを見比べます*2
ただし、4つがそろっていても、定額分の時間数が自分の働き方に合うとは限りません。残業が固定残業時間に届かない月が続けば、定額分はそのまま受け取ります*1。超える月が続けば、超えた分の割増賃金が毎月加わります*1。どちらの月が多いかは、入社前には分かりません。
そのため、面接で聞くことを先に決めておきます。聞くのは、固定残業時間が何時間か、超えた月の割増賃金がいつ支払われるか、基本給と定額分が分けて書かれているかの3つです*1*2。3つとも求人票に書かれているものなので、書面と同じ答えが返るかを聞きます*1。答えが返らないものは、書面で出してもらいます。
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7. よくある質問
Q1. 残業が少ない月は固定残業代が減らされますか
A. 減りません。定額分は、その月の残業が少なくても同じ額が支払われ*1、求人票にも、残業の有無を問わずに支給する旨が書かれます*1。
Q2. 固定残業時間を超えた月は追加の支払いがありますか
A. 追加の支払いがあります。加わるのは、固定残業時間を超えた分の割増賃金です*1。実際の残業から計算した時間外手当が定額を上回った月は、その不足額も支払われます*2。
Q3. 定額残業制は法律で認められていますか
A. 法律に明文の規定はありません*2。ただし、労働基準法37条の計算方法で出した金額を下回ってはいけません*2*3。下回った月は、その差額を支払う必要が出ます*2。
Q4. 基本給に固定残業代が含まれている場合はどう読みますか
A. 定額分がいくらなのかを、基本給と分けて読み取り*2、基本給に含める形でも、割増賃金の部分とそれ以外は明確に区別されている必要があります*2。区別が書かれていなければ、採用の担当者に内訳を聞いてください。
8. まとめ:残業が少ない月の定額分と超えた月の追加分
この記事のまとめ
- 固定残業代は、残業の有無を問わず定額で支払われる形で求人票に書かれます*1。残業が少なかった月も、定額分はそのまま受け取ります。
- 固定残業時間を超えた月は、超えた時間外労働などに割増賃金が追加で支払われます*1。実際の残業から計算した額が定額を上回れば、上回った分も支払われます*2。
- 求人票には、固定残業代を除いた基本給の額と、労働時間数と金額等の計算方法と、超えた分を追加で支払う旨の3つが必要です*1。
- 基本給に含める形のときは、割増賃金にあたる部分とそれ以外の賃金部分を明確に区別することが必要です*2。
月ごとの手取りは、固定残業時間までは定額で止まり、その先は残業に応じて伸びます*1。固定残業代のメリットと言えるのは、この下側が閉じている点です。求人票から読み取るのは、基本給の額と定額分の時間数と金額です*1。入社後は、超えた月の追加の支払いを給与の明細と突き合わせてください*2。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」(2026年確認)
*2 厚生労働省 確かめよう労働条件「基本給に含めた割増賃金」(2026年確認)
*3 e-Gov法令検索「労働基準法」第37条(2026年確認)
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