年俸制と月給制の違い|残業代と賞与の扱い

年俸制と月給制の違いは、賃金を年額で決めるか月額で決めるかです。賃金を毎月1回以上、決まった期日に払う原則は、どちらも同じです(労働基準法第24条第2項)*1。年俸制でも法定労働時間(労働基準法が定める労働時間の上限)を超えれば、原則として割増賃金を払います*2。
割増賃金とは、時間外・休日・深夜の労働に上乗せして払う賃金です。年俸の一部を賞与の時期に払っても、確定した年俸額の全体が割増賃金の計算の元になります*2。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 年俸制は賃金を年額で決め、月給制は月額で決めます。どちらも賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて払うのが原則です*1。
- 年俸制でも、法定労働時間を超えれば原則として割増賃金を払います*2。賞与の時期に払う部分があっても、その部分は割増賃金の計算の元になる額(算定基礎)に入ります*2。
- 月給制には、欠勤・遅刻・早退の時間の分を基本給から引く規定例があります*3。1時間あたりの額は、基本給を、会社が定めた1か月平均の労働時間数で割って出します*3。
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1. 年俸制と月給制の違いは賃金を決める単位と賞与時払いの有無
年俸制と月給制は、賃金を決める単位が年額か月額かで分かれます。年俸制には、賞与の時期に年俸の一部を払う形があるのも違いです*2。毎月払いの原則は、年俸制にも月給制にも同じように及びます*1。年俸制でも法定労働時間を超えれば原則として割増賃金が要るので、年俸制を選ぶと残業代が出なくなるという違いはありません*2。
労働基準法第24条第2項は、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて払うよう定めています*1。例外は、臨時に払われる賃金と、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令(厚生労働大臣が定める命令)が定めるものです*1。モデル就業規則(厚生労働省が示す就業規則の規定例)の賃金の支払いの解説にも、同じ原則が書かれています*3。
払い方の型は、年俸制のほうに選択肢があります。年俸額の12分の1を月例給与として払う形が、代表的な払い方の1つです*2。もう1つは、年俸額の一部を賞与を払う時期に分けて払う形です*2。月給制は、決めた月額を毎月払います。
求人票に年俸とだけ書かれているときは、月例分と賞与時払いの配分を応募先に聞いてください。年俸額が同じでも、配分によって毎月受け取る額は変わります。配分は、あとの節で見る割増賃金の計算にも関わります。
2. 年額か月額かで割増賃金と賞与と欠勤の扱いを比べる

年俸制と月給制の差は、賃金を決める単位のほかに、割増賃金の計算の元になる額の考え方と、欠勤した時間の賃金の引き方に出ます。割増賃金そのものは、年俸制でも月給制でも払います*2。左の列が年額で決める年俸制、右の列が月額で決める月給制です。上の段が割増賃金、下の段が賞与時払いと欠勤の扱いです。
上の段の割増賃金から見ます。実際の労働時間が法定労働時間を超えれば、年俸制でも原則として割増賃金を払う必要があります*2。時間外労働、休日労働、深夜労働には、賃金が年俸制でも月給制でも割増賃金を払わなければなりません*2。
割増賃金を払わなくてよい例外は、労働基準法第41条が定める3つの類型です。農林水産業の仕事、管理監督者など、監視・断続的な労働で許可を受けた人が当たります*2。年俸制という賃金の形だけでは、この例外になりません。
下の段の左は、年俸制の賞与時払いです。賞与として払われる部分を含めた年俸額が、算定基礎になります*2。賞与時払いの部分だけを除いて計算することはできません*2。
下の段の右は、月給制の欠勤です。モデル就業規則の第45条の規定例は、働かなかった日数や時間の分を基本給から引く定めです*3。ここで見るのは規定例なので、実際の引き方は会社ごとの就業規則に書かれます。
3. 年俸制と月給制を項目ごとに並べた比較
年俸制と月給制を、賃金の単位・払い方・割増賃金の項目ごとに並べます。どちらにも同じことが言える項目は、同じと書いています。表のあとで、年俸制だけにある払い方の型と、変わらない割増賃金の項目を読みます。
年俸制と月給制の比較
| 項目 | 年俸制 | 月給制 |
|---|---|---|
| 賃金を決める単位 | 1年分の額(年俸額)で決める | 1か月分の額(月給)で決める |
| 賃金を払う原則 | 毎月1回以上、期日を決めて払う*1 | 年俸制と同じ*1*3 |
| 払い方の型 | 年俸額の12分の1を月例給与で払う形と、一部を賞与の時期に払う形がある*2 | 決めた月額を毎月払う |
| 時間外・休日・深夜の労働 | 法定労働時間を超えれば、原則として割増賃金を払う*2 | 賃金の形に関わらず、割増賃金を払う*2 |
3行目の払い方は、年俸制にだけある選択肢です*2。月給制は決めた月額をそのまま毎月払うので、月例給与と賞与時払いに分けて読む必要がありません。年俸制の求人では、この配分を読み分けることが、月給制の求人との比べ方の中心になります。
4行目は、年俸制と月給制で変わらない項目です。割増賃金は賃金の形に関わらず払うものなので、残業の分の割増賃金は、年俸制の求人でも月給制の求人でも要ります*2。残業代が出るかどうかは、年俸制か月給制かでは決まりません。
4. 年俸の一部を賞与の時期に払っても割増賃金の計算に含まれる
年俸制の代表的な払い方は2つあります。1つは年俸額を12に分けて毎月払う形で、もう1つは賞与を払う時期に年俸の一部をあてる形です*2。後者の例として、年俸の17分の1を月例給与として毎月払い、年俸の17分の5を二分して6月と12月に賞与として払う形があげられています*2。
この例では、月例給与の17分の1を12回払うと17分の12になります。残る17分の5が、6月と12月の賞与です。合わせると17分の17になり、年俸額と一致します。賞与と呼ばれている部分も、年俸額の中に最初から組み込まれた金額です。
割増賃金の計算には、割増賃金の元になる額(算定基礎)の考え方が関わります。賞与として払われている賃金は、「臨時に支払われた賃金」にも「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」にも当たりません*2。そのため、割増賃金の算定基礎から除くことができません*2。
厚生労働省の通達(行政の解釈を示す文書)には、賞与時支給部分を含めて確定した年俸額を算定の基礎として、割増賃金を払う必要があると書かれています*2。月例給与だけを元にして割増賃金を計算することは、できません。
賞与時払いを含む年俸なら、割増賃金の元になる額は月例給与より大きくなります。同じ残業時間でも、月例給与だけで計算した額と、年俸額の全体で計算した額は一致しません。求人票の年俸が賞与時払いを含む額かどうかは、割増賃金の額に関わるので、配分と合わせて聞いてください。
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5. 月給制の欠勤控除と年俸制の求人で聞く3点

月給制の欠勤の扱いは、モデル就業規則(令和7年12月版)の第45条に規定例があります*3。欠勤・遅刻・早退・私用外出の日数または時間の分を、基本給から引く定めです*3。働かなかった日と時間は賃金を払う必要がないので、その日数と時間数に応じて賃金を減らすこともできます*3。
1時間あたりの引く額は、月給の場合、基本給を1か月平均所定労働時間数で割って出します*3。所定労働時間とは、会社が就業規則などで定めた労働時間のことです。1か月平均所定労働時間数は、その所定労働時間を1か月で平均した時間数です。同じ基本給でも、この時間数が多い会社ほど、1時間あたりの引く額は小さくなります。引かれる額を知りたいときは、基本給と所定労働時間を、就業規則で見比べます。
年俸制の求人へ応募する前に、労働条件通知書か面接で次の3点を聞きます。1点目は、月例給与と賞与の時期に払う部分の配分です。毎月受け取る額が配分で変わるので、年俸額が同じ求人どうしでも、月ごとの収入には差が出ます*2。
2点目は、年俸に割増賃金が含まれているかどうかです。含まれていることが労働契約の内容として明らかで、割増賃金にあたる部分と通常の労働時間に対応する賃金の部分を区分できることが前提です*2。そのうえで、割増賃金にあたる部分が法定の額以上であれば、労働基準法第37条に違反しないと解されています*2。
年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働をさせ、その時間数の割増賃金を払っていなければ、労働基準法第37条違反です*2。3点目は、月例給与の支払日です。賃金は毎月払いが原則なので*1、支払日は労働条件通知書で聞けば分かります。
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6. よくある質問
Q1. 年俸制だと残業代は出ませんか
A. 出ます。1日または1週の法定労働時間を超えて働いた分は、原則として割増賃金の対象です*2。割増賃金が要らない場合は、農林水産業の仕事などの3つの類型に限られます*2。
Q2. 年俸制でも給与は毎月払われますか
A. 原則として毎月払いです*1。払い方は、月例給与だけの形と、賞与の時期にも払う形の2つがあります*2。
Q3. 年俸の賞与として払う部分は割増賃金の計算に入りますか
A. 入ります。元になるのは、賞与時払いの部分まで含めた年俸額です*2。
Q4. 月給制で欠勤すると給与は引かれますか
A. モデル就業規則の規定例では、欠勤した日数または時間の分を基本給から引きます*3。実際の引き方は、各社の就業規則で決まります。
Q5. 年俸に残業代が含まれている求人はありますか
A. 含める形はあります。条件は、割増賃金にあたる部分を区分でき、その部分が法定の額以上払われていることです*2。含まれる時間数を超えた残業には、別に割増賃金が要ります*2。
7. まとめ:年俸制と月給制は決める単位が違い割増賃金の原則は同じ
この記事のまとめ
- 年俸制は賃金を年額で決め、月給制は月額で決めます。毎月払いの原則は、どちらも同じです*1。
- 年俸制でも、法定労働時間を超えれば原則として割増賃金を払います*2。
- 賞与時払いの部分も、割増賃金の算定基礎に入ります*2。
- 月給制の欠勤は、モデル就業規則の規定例では基本給から引きます*3。
応募前に、月例給与と賞与時払いの配分、年俸に含まれる割増賃金の有無、月例給与の支払日の3点を、労働条件通知書か面接で聞いてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 労働基準法 第24条(e-Gov法令検索)
*2 年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。(確かめよう労働条件・厚生労働省)
*3 モデル就業規則 令和7年12月版(厚生労働省労働基準局監督課)
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