テレワークのみなし労働時間制|働いた時間と残業代の数え方

テレワークでみなしが成り立つかは、条件が2つ揃うかで決まります*2。1つは、会社が機器を常に通信できる状態にしておくよう指示していないことです。もう1つは、会社から随時、具体的な指示を受けていないことです*2。
みなす時間が法定労働時間を上回れば、上回った分は時間外労働となり、割増賃金が要ります*1。深夜に実際に働いた時間も、みなしのままでは済みません*1。求人票に「みなし」とあるときは、どの制度か、みなす時間は何時間かを面接で聞きます。
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この記事のポイント
- テレワークに使えるのは事業場外みなし労働時間制(会社の外で働く人向けの制度)で、機器の常時通信と随時の具体的な指示がないことが条件です*2。機器を持っているだけでは適用外になりません*2。
- みなした時間が法定労働時間(法律が決めた労働時間の上限)を超える部分は、割増賃金と36協定(時間外労働を認める労使協定)が必要です*1*2。深夜と法定休日に実際に働いた時間は、みなしでも割増賃金が出ます*1*3*4。
- 求人票に「みなし」とあれば、事業場外か裁量労働制か、みなす時間、深夜と休日の扱いを面接で聞きます。専門業務型裁量労働制の対象は20業務で、プログラマーは含まれません*3。
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
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1. テレワークでみなしを使える条件は2つ
テレワークに事業場外みなし労働時間制を使えるのは、2つの条件を両方満たすときだけです*2。事業場外みなし労働時間制は、会社の外で働いて労働時間を算定しにくいときに、みなした時間を働いたものとして扱う制度です*1。1つ目の条件は、情報通信機器が使用者(会社)の指示で常時通信可能な状態に置くこととされていない点にあります*2。2つ目の条件は、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことです*2。

1つ目の条件は、次の3つのどれかで満たします*2。回線を自分の判断で切れること、機器から離れていても応答の時期を自分で決められること、会社支給の携帯電話でも応答や折り返しの時期を自分で決められることです*2。機器を持っているだけでは、適用外になりません*2。
2つ目の条件は会社の指示の中身で決まり、業務の目的、目標、期限などを伝えるだけの指示であれば満たします*2。一日のスケジュールを会社が決めている場合は、随時の具体的な指示を受けているため、満たしません*2。たとえば、会社が一日の予定を決めて常に通話をつないでおくよう指示している在宅勤務では、2つの条件のどちらも満たしません。この場合は事業場外みなしを使えないので、賃金は実際に働いた時間で計算します。
ITエンジニアの在宅勤務に当てはめると、チャットツールの応答期限や常時接続の決まりが、1つ目の条件に関わります。ウェブ会議への参加時刻や進捗報告の時刻を会社が指定しているかどうかが、2つ目の条件の対象です。目的と期限だけが示され、進め方と時間配分を本人が決められる仕事であれば、2つとも満たせます。
条件を満たさないテレワークでは、事業場外みなしを使えません。テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインは、適用の条件をこの2つとして示しています*2。
2. 事業場外みなしと裁量労働制は別の制度
求人票の「みなし」が指す制度は、2系統あります*1。事業場外みなし労働時間制は労働基準法第38条の2、裁量労働制は専門業務型が第38条の3、企画業務型が第38条の4に定められています*1。事業場外みなしは、働き方が条件に合うかどうかで使えるかが決まります*2。裁量労働制は、業務の種類と、労使協定(会社と労働者の代表が書面で結ぶ約束)や決議で決まります*3*4。
裁量労働制には、専門業務型と企画業務型があります*3*4。専門業務型は法令で決められた業務だけが対象で、企画業務型は事業の運営に関する企画、立案、調査、分析の業務が対象です*3*4。
同じテレワークでも、会社の指示が細かければ事業場外みなしは使えず、業務が対象に入っていなければ専門業務型も使えません*2*3。求人票の「みなし」の一語からは、どちらの制度かが分かりません。制度が違えば、面接で聞く中身も変わります。
3. みなしでも割増賃金が出る場面
制度によって使える条件は違いますが、みなした時間と実際に働いた時間がずれても、割増賃金の決まりは外れません*1。場面ごとに、どの制度の話かをそろえます。IT職に関わる対象業務と、裁量労働制の新しい定めも、同じ表に入れています。
みなし労働時間制で割増賃金が必要になる場面と、IT職に関わる対象業務
| 場面 | 扱い | どの制度の話か |
|---|---|---|
| みなした時間が法定労働時間を超える部分 | 時間外労働になり、割増賃金と36協定が必要*1*2 | 事業場外みなし |
| 22時から5時までの深夜に実際に働いた時間 | みなしでも割増賃金が必要*1*3*4 | 事業場外みなしと裁量労働制 |
| 法定休日に実際に働いた時間 | みなしでも割増賃金が必要*1*3*4 | 事業場外みなしと裁量労働制 |
| 専門業務型の対象 | 対象は20業務で、プログラマーは含まれない*3 | 専門業務型裁量労働制 |
| 令和6年4月からの定め | 本人の同意、不利益取扱いの禁止、同意撤回の手続などを労使協定や決議に定める*3*4 | 裁量労働制 |
4. みなした時間と実際に働いた時間のずれ
みなした時間は、実際に働いた時間とは別に決まります。実際には短く働いた日でも、みなした時間が法定労働時間を超えていれば、超えた部分は時間外労働です*1*2。反対に、みなした時間が法定労働時間以内に収まっていれば、時間外の割増賃金の対象になる部分は出ません*1*2。みなす時間が何時間なのかが、残業代の有無を左右します。
深夜と法定休日は、みなしの例外です*1。深夜は22時から5時までで、法定休日は労働基準法が会社に与えることを義務づけている休日です*1。この時間帯や休日に実際に働いたときは、みなした時間とは別に、働いた時間に応じた割増賃金が要ります*1*3*4。
たとえば、みなした時間の中に収まっていても、22時を過ぎて障害対応をした時間は、深夜に実際に働いた時間として扱われます。テレワークでは終業後の対応が自宅で起きやすいので、いつ何時間働いたかを自分で記録しておくと、割増賃金の対象になる時間を自分で数えられます。
あわせて読みたい | 裁量労働制で残業代請求はできる?深夜と休日の割増賃金
5. 求人票の「みなし」から面接で聞くこと

求人票に「みなし」とあったら、面接では3つを聞きます。1つ目はどの制度か、つまり事業場外みなしか裁量労働制かです。2つ目はみなす時間で、3つ目は深夜と法定休日に働いたときの扱いです。
聞き方の例は、制度なら「この求人のみなし労働時間制は、事業場外みなしと裁量労働制のどちらですか」です。時間なら「みなす時間は1日何時間ですか」、割増賃金なら「深夜や休日に働いた分は、別に支払われますか」です。制度の名前と時間を口に出して聞くと、求人票の一語が何を指すのかが、答えとして返ってきます。
事業場外みなしの場合は、入社後の働き方が2つの条件に合うかを聞きます。聞く中身は、回線を自分で切れるか、返信や折り返しの時期を自分の判断で決められるか、一日の予定を会社が組んでいるか、の3つです*2。前の2つのどちらかに「はい」と答えられ、最後の1つが「いいえ」なら、2つの条件を満たす運用です*2。
裁量労働制と言われたときは、自分の担当業務が対象業務に入るかを聞きます。専門業務型の対象は20業務で、ITでは「情報処理システムの分析又は設計」は入りますが、プログラマーは含まれません*3。プログラマーとして入社する求人で専門業務型裁量労働制を適用すると言われたなら、どの業務が対象なのかを具体的に聞きます。
令和6年4月に必須になった定めの中身も、裁量労働制の求人では聞けます*3*4。同意の撤回の手続がどう定められているか、同意しなかったときに不利益な扱いを受けないかを、労使協定や決議の文面で見せてもらえるか聞きます。
みなす時間を聞くときは、法定労働時間を超える設定かどうかもあわせて聞きます*1*2。超える設定なら、超えた部分の割増賃金が給与に含まれているのか、別に支払われるのかを聞くことになります。
あわせて読みたい | 残業なしでフルリモートの正社員|固定残業代と36協定
6. よくある質問
Q1. テレワークで働くとみなし労働時間制になりますか
A. なるとは限りません。事業場外みなしを使えるのは、機器の常時通信が指示されておらず、随時の具体的な指示も受けていないときです*2。会社が一日のスケジュールを決めている働き方では、テレワークでも実際に働いた時間で賃金を計算します。
Q2. 会社支給の携帯電話があると事業場外みなしは使えませんか
A. 使えなくなるとは限りません。会社支給の携帯電話でも、折り返しの時期を自分で選べれば、1つ目の条件は満たせます*2。機器を持っているだけで適用外になることはありません*2。
Q3. みなし労働時間制だと残業代は出ませんか
A. 出ない場合もあれば、出る場合もあります。法定労働時間を上回るみなし時間の部分には割増賃金が要り、36協定も必要です*1*2。深夜や法定休日に実際に働けば、みなしのままでも割増賃金の対象です*1*3*4。
Q4. 上司から毎日の目標だけを伝えられる場合事業場外みなしは使えますか
A. 2つ目の条件は満たせます。指示が目的、目標、期限などにとどまり、一日のスケジュールまでは決めていなければ満たします*2。ただし、1つ目の条件は別に必要で、機器の常時通信を会社が指示していないことも要件です*2。
Q5. ITエンジニアなら専門業務型裁量労働制の対象ですか
A. 担当業務によります。対象の20業務のうち、ITでは「情報処理システムの分析又は設計」が入り、プログラマーは含まれません*3。
Q6. 求人票に「みなし」とあるとき最初に見るのは何ですか
A. 制度の種類です。事業場外みなしは働き方が条件に合うかで決まり、裁量労働制は担当業務が対象に入るかで決まるため、同じ「みなし」でも聞く中身が変わります*2*3。
7. まとめ:テレワークのみなしは制度と時間を先に聞く
みなし労働時間制の求人を読む3つの点
- 事業場外みなしは、機器の常時通信と随時の具体的な指示がないテレワークに使える*2
- みなした時間が法定労働時間を超える部分と、深夜や法定休日に実際に働いた時間は割増賃金が要る*1
- 面接では、制度の種類、みなす時間、深夜と法定休日の扱いを聞く
求人票に「みなし」とあるときは、この3つを聞いてから入社を決めます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 労働基準法 第37条・第38条の2〜第38条の4(e-Gov法令検索)
*2 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省・令和3年3月25日改定)
*3 専門業務型裁量労働制の解説(厚生労働省・令和6年4月施行)
*4 企画業務型裁量労働制の解説(厚生労働省・2024年3月)
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