組み込みエンジニアの在宅勤務|工程で分かれる境目

組み込みエンジニアの仕事には、実機や測定器がなければ進められない工程があります。設計やコードレビューは在宅で対応できても、基板の実機デバッグや評価だけは職場でしか完結しない場合があります。工程ごとの切り分けは会社によって違うため、求人票や面談で確認しておく必要があります。
雇用型就業者のテレワーク実施率は16.8%です*1。組み込みエンジニアの仕事も対象に含まれますが、実施できるかどうかは工程によって分かれます。どの工程が在宅で、どの工程が出社かを分けて見ていくと、会社ごとの違いが具体的に見えてきます。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 雇用型就業者のテレワーク実施率は16.8%です*1。この仕事も対象に含まれますが、設計やレビューなど在宅で完結できる工程と、実機の確認が要る工程とでは事情が異なります。
- 一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円です*2。経験を重ねた組み込みエンジニアにとって、この水準は給与欄を見るときの目安になります。
- 転職入職者のうち、賃金が「変わらない」人の割合は28.4%です*3。転職では給与だけでなく、出社が必要な工程の範囲まで確認しておくことが、働き方の見通しを誤らないための土台になります。
1. 組み込みエンジニアの仕事は、工程ごとに働く場所が分かれます。
組み込みエンジニアが働き方を確かめるには、開発の工程ごとに在宅と出社を切り分けて求人を見る方法があります。国土交通省の調査では、雇用型就業者のテレワーク実施率は16.8%でした*1。組み込みエンジニアの仕事も対象に含まれますが、実施できるかどうかは工程によって違います。設計やコードレビューは在宅で進められても、基板の実機デバッグや評価だけは、測定器や試作機が置かれた場所でなければ完結しない場合があります。
組み込み開発には、パソコンだけで完結する工程と、実機や測定器がなければ進められない工程が混在しています。設計書を書く、コードをレビューする、シミュレーターで動作を確認するといった作業は、ネットワーク環境さえ整えば在宅でも進められます。
一方で、基板に書き込んだプログラムの実機デバッグや、温度や振動を加えた環境での評価は、測定器と実機が置かれた場所でなければ確認できません。オシロスコープやロジックアナライザといった機材を家庭に持ち帰れる職場は多くありません。
在宅で完結できる工程があるからといって、仕事全体がリモートワークに向かないと決めつける必要はありません。どの工程が在宅で、どの工程が出社かを求人票や面談で確認すれば、働き方は選べる余地があります。
2. 開発の工程をたどると、在宅と出社の境目が見えてきます。
仕事を工程の流れで見ていくと、在宅で進められる部分と、機材のある場所でなければ進まない部分がはっきり分かれます。要件定義や設計は、資料と設計ツールがあれば在宅でも成立します。
コードレビューやシミュレーションも、画面共有や専用ツールを使えば在宅で完結しやすい工程です。ここまでは、パソコン1台とネットワーク環境があれば作業を進められます。
実機デバッグに入ると事情が変わります。基板に書き込んだプログラムの動作をオシロスコープなどの測定器で確認する作業は、機材が置かれた場所でしか行えません。評価工程でも、温度や振動を加える設備がある拠点への出社が必要になります。
工程のどこで境目が来るかは会社によって違います。試作機を貸与して自宅で一部のデバッグまで進められる会社もあれば、実機に関わる工程はすべて拠点でまとめている会社もあります。求人票の作業内容の欄と、面談での確認が欠かせません。
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3. 境目の位置は、機材の持ち方で会社ごとに変わります。
在宅と出社の境目がどこに来るかは、職種名だけでは決まりません。測定器や試作機を各拠点にどれだけ揃えているかによって、境目の位置は会社ごとに動きます。
測定器を人数分用意できる会社では、担当者ごとに実験室の予約枠を確保しやすく、出社が必要な日を計画的に決められます。台数が限られている会社では、順番待ちが発生しやすく、出社日が急に決まる場合もあります。
治具や専用ケーブルを個人で持ち帰れるかどうかも、境目に影響します。会社によっては、簡易的な測定キットを貸与し、自宅でも一次的な動作確認まで進められるようにしています。
同じ「実機デバッグあり」という求人票の表記でも、実際に出社が必要な頻度は会社によって異なります。機材の台数や貸与の有無を面談で確認しておくと、入社後の働き方の見通しが具体的になります。
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4. 工程と作業環境の対応を、表で整理します。
ここまでの内容を、工程ごとに在宅で進めやすいか、出社が必要になりやすいかで整理します。
【表1】開発工程と作業環境の対応
| 工程 | 在宅での進めやすさ | 出社が必要になりやすい理由 |
|---|---|---|
| 要件・設計 | 在宅で進めやすい | 資料と設計ツールで完結するため |
| コードレビュー | 在宅で進めやすい | 画面共有とチャットで完結するため |
| シミュレーション | 在宅で進めやすい | 専用ツール上で動作を検証できるため |
| 実機デバッグ | 出社が必要になりやすい | 測定器と実機が置かれた場所が要るため |
| 評価・検証 | 出社が必要になりやすい | 温度や振動を加える設備が拠点にあるため |
表のとおり、要件・設計、コードレビュー、シミュレーションまでの3つの工程は、資料やツールで完結するため在宅で進めやすい範囲に入ります。
一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円です*2。工程を分けて経験を積んだ組み込みエンジニアが、給与欄を見るときの目安になります。
実機デバッグと評価・検証は、測定器や環境試験の設備が拠点にあることが前提になるため、出社が必要になりやすい工程です。求人票の「一部リモート可」という表記は、この2つの工程をどう扱うかで意味が変わります。
表の区分はあくまで目安です。会社によっては実機デバッグの一部を自宅でも進められるよう、簡易的な測定キットを貸与している場合もあります。工程ごとの扱いは、求人票と面談の両方で確認しておく必要があります。
5. 全体のテレワーク実施率を、数字で示します。
国土交通省の調査によると、雇用型就業者のテレワーク実施率は16.8%でした*1。これは職種を問わない全体の数字であり、組み込みエンジニアだけを対象にした調査ではありません。
この数字だけでは、この仕事にテレワークが向くかどうかは判断できません。全体の実施率が16.8%にとどまっているのは、職種を問わずさまざまな要因が絡んでいるためで、特定の職種の事情だけで説明できる数字ではないからです。
組み込みエンジニアの働き方を考えるときに意味を持つのは、全体の実施率そのものよりも、自分が担当する工程がどちらに当たるかです。設計やレビューが中心の工程を任される求人なら、実施率以上に在宅で進めやすい場合があります。
求人票に書かれた「テレワーク相談可」という表記だけでは、対象になる工程までは分かりません。面談で、担当する工程のうちどこまでが在宅で進められるかを尋ねておくと、実施率の数字よりも具体的な判断材料になります。
6. 働き方を確認する前に、見ておきたい点を洗い出します。
組み込みエンジニアが工程ごとの働き方を判断する前に、確認しておきたい点を整理します。
働き方を選ぶ前の確認点
- 担当工程の範囲:設計・レビューが中心か、実機デバッグや評価まで担うのかを確認します。
- 測定器の台数と貸与:会社に何台あるか、簡易キットを自宅に貸与できるかを確認します。
- 実験室の予約状況:出社が必要な日をどれくらい前から決められるかを確認します。
- 出社の頻度:週何日を目安にしているか、繁忙期にどう変わるかを確認します。
- 賃金の基準:転職後の給与が、経験や工程の担当範囲でどう決まるかを確認します。
転職入職者のうち、賃金が「変わらない」割合は28.4%です*3。組み込みエンジニアが転職する場合も、給与だけを見て判断すると、担当する工程の範囲まで含めた条件を見落とすことがあります。
担当工程の範囲は、求人票の「業務内容」欄に書かれていても、実機デバッグの比重までは読み取れない場合があります。面談で、直近のプロジェクトでどの工程を何割担当したかを尋ねると、実態に近い情報が得られます。
測定器の台数や実験室の予約状況は、求人票にほとんど書かれません。面談で具体的な台数や予約の仕組みを尋ねておくと、出社の頻度がどれくらい安定するかを事前に見積もれます。
5つの確認点をそろえておけば、給与の水準だけでなく、工程ごとの在宅・出社の実態まで含めて求人を比較できます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 組み込みエンジニアの仕事は、在宅では進められないか。
A. 一律に進められないわけではありません。設計やコードレビュー、シミュレーションといった工程は在宅でも進められます。出社が必要になるのは、主に実機デバッグや評価・検証の工程です。
Q2. 実機デバッグも在宅でできる場合があるか。
A. 会社によってはあります。簡易的な測定キットを貸与し、一次的な動作確認まで自宅で進められるようにしている職場もあります。求人票や面談で貸与の有無を確認する必要があります。
Q3. 出社の頻度は何で決まるか。
A. 測定器の台数や実験室の予約状況によって変わります。台数が限られている職場では、順番待ちが発生し、出社日が直前に決まる場合もあります。
Q4. 全体のテレワーク実施率の数字は、組み込みエンジニアにもそのまま当てはまるか。
A. そのまま当てはまるとは限りません。16.8%という数字は職種を問わない全体の実施率です*1。担当する工程が設計やレビュー中心であれば、実施率以上に在宅で進めやすい場合があります。
Q5. 転職で給与が上がるかどうかは、工程の担当範囲と関係あるか。
A. 直接の因果関係を示すデータはありません。ただし転職入職者のうち賃金が「変わらない」割合は28.4%です*3。給与だけでなく、担当する工程の範囲や出社の頻度まで含めて求人を比較しておくことが判断の助けになります。
8. まとめ:組み込みエンジニアの働き方は、工程で確認できます。
この記事の要点
- 組み込みエンジニアの仕事は、設計やレビューのように在宅で進めやすい工程と、実機デバッグや評価のように出社が前提になる工程に分かれます。
- 雇用型就業者のテレワーク実施率は16.8%です*1。全体の数字であり、担当する工程によって在宅の進めやすさは変わります。
- 一般労働者の賃金は50〜54歳で月388.8千円です*2。経験を重ねた組み込みエンジニアが給与欄を見るときの目安になります。
- 転職入職者のうち賃金が「変わらない」割合は28.4%です*3。給与だけでなく、工程ごとの在宅・出社の条件まで確認しておくことが、働き方の見通しを誤らないための土台になります。
組み込みエンジニアの働き方は、職種名だけでは決まりません。担当する工程の範囲、測定器の台数、出社の頻度を求人票や面談で確認し、暮らしに合う形で求人を選んでいきましょう。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 国土交通省「令和7年度テレワーク人口実態調査」(令和8年3月公表)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*3 厚生労働省「雇用動向調査」(令和6年)
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