希望年収より提示が低いのはなぜ?返事の前に見る4点

リモートワーク対応の正社員求人に応募し、内定の連絡で提示された年収が、求人票に書かれていた金額の下限を下回っていることがあります。目の前の数字だけを見て即答すると、確認しておけば分かったはずの理由を、後から知ることになりかねません。返事を出す前に、確認しておきたい項目があります。
転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%、『変わらない』割合は28.4%です*1。希望年収を上回る転職ばかりが起きているわけではなく、下限に届かない提示も起こり得る出来事のひとつです。だからこそ、内訳と理由を確認してから返事を出すという順番が、判断の土台になります。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%、『変わらない』割合は28.4%です。希望年収を上回る転職だけが起こっているわけではありません*1。
- 一般労働者の賃金は全国計で月340.6千円です。求人票に書かれた金額と提示額を比べるだけでなく、内訳を確認したうえで判断することが必要です*2。
- 感情で返事を決める前に、内訳・等級と昇給の刻み・下限を下回った理由・見直しの時期という順番で確認すると、判断の材料がそろいます。
1. 希望年収と提示額の差は内訳から確認します
提示された年収が求人票の下限を下回っていたら、感情で返事を決める前に内訳と理由を確認します。厚生労働省の雇用動向調査(令和6年)では、転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%、『変わらない』割合は28.4%でした*1。希望年収を上回る転職ばかりが起きているわけではなく、下限に届かない提示も起こり得る出来事のひとつです。一般労働者の賃金は全国計で月340.6千円です*2。求人票に書かれた金額とこの全国計を比べるだけでは、提示が下限を下回った理由までは分かりません。感情で返事を決める前に、内訳・等級と昇給の刻み・下限を下回った理由・見直しの時期という順番で確認する必要があります。
求人票には給与のレンジが書かれていても、内定の連絡で伝えられる提示額は、そのレンジの下限を下回ることがあります。希望年収との差を先に感じてしまうと、確認すべき項目を飛ばしたまま返事を出すことになりかねません。
提示額が求人票の下限を下回った理由は、企業ごとに異なります。等級の当てはめが希望と違った場合もあれば、面接で伝えた経験と企業側が想定していた経験の内容がずれていた場合もあります。理由を確認しないまま辞退や承諾を決めると、分かっていれば違う判断ができたはずの情報を見落とすことになります。
このあと、内訳・等級と昇給の刻み・理由・見直しの時期という順番で、返事を出す前に確認する項目を整理します。感情で判断する前に、確かめられることから確かめるという考え方です。
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2. 返事の前に踏む4つの順番
4つの確認は、上から順に進めることに意味があります。内訳が分からなければ、等級や昇給の刻みを見ても、提示額の位置づけが分かりません。
下限を下回った理由が等級の当てはめにあるのか、想定していた経験との差にあるのかによって、確認すべき次の相手も変わります。理由を確かめる前に返事を決めると、この分かれ目を確認しないまま終わります。
見直しの時期を最後に置いているのは、内訳と理由が分かって初めて、次の見直しでどこが動く可能性があるかを判断できるためです。
3. 内訳が判断の起点になる理由
提示額という1つの数字は、固定給・みなし残業手当・賞与の想定という複数の要素を合算した金額です。求人票に書かれていた金額も同じ構成である以上、内訳を確認しないまま合計額だけを比べても、下限を下回った理由は見えてきません。
みなし残業の時間数が求人票の記載と異なる場合、合計額は変わっても固定給の水準は変わっていないことがあります。逆に、固定給そのものが希望年収を下回っている場合は、みなし残業や賞与でどれだけ埋め合わせても、翌年の賞与の水準次第で提示額全体が下がる可能性があります。
賞与の想定は、確定した金額ではなく見込みとして提示されることがあります。提示額に賞与の想定分が含まれているかどうかを確認しておかないと、実際に支払われる時期になって、想定していた年収との差に気づくことになります。
内訳を確認する相手は、人事担当者や、転職エージェントの担当者です。合計額だけでなく、固定給・みなし残業・賞与のそれぞれがいくらに設定されているかを、書面で確認しておくと後から見返せます。
内訳を先に確認しておけば、次に確認する等級や昇給の刻みも、どの数字を基準にして見ればよいかがはっきりします。合計額のまま話を進めると、等級の話をしているつもりが、賞与の想定の話になっているというずれが起こりやすくなります。
内訳を確認するときは、口頭のやり取りだけで終わらせず、固定給・みなし残業・賞与の想定をそれぞれ数字で書面に残してもらうと、後から見返すときの認識違いを防げます。メールで確認した場合も、返信の文面に金額の内訳を残しておくと、次に等級や理由を確認する段階で参照しやすくなります。
4. 下限を下回ったときの確認先一覧
内訳・等級と昇給の刻み・下限を下回った理由・見直しの時期という4つの確認項目を、何を確認するか、主にどこへ確認するかとあわせて整理します。
【表1】返事の前に確認する項目と確認先
| 確認する項目 | 何を確認するか | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 内訳 | 固定給・みなし残業・賞与の想定の内訳 | 内定通知書・オファーレター |
| 等級と昇給の刻み | 提示された等級の位置と、次の昇給までの刻み | 人事担当者 |
| 下限を下回った理由 | 等級の当てはめか、想定していた経験との差か | 人事担当者・転職エージェント |
| 見直しの時期 | 次に条件が見直されるタイミング | 人事担当者 |
4つの確認項目は、内定通知書やオファーレターに書かれている情報と、人事担当者や転職エージェントに確認する情報の両方にまたがります。書面だけで分かる項目と、質問しないと分からない項目を分けて整理しておくと、確認漏れを防げます。
下限を下回った理由は、書面には書かれていないことがほとんどです。等級の当てはめによるものか、面接で伝えた経験と企業側の想定に差があったのかは、人事担当者や転職エージェントに直接尋ねないと分かりません。
確認先を人事担当者だけに絞る必要はありません。転職エージェントを通じて応募している場合は、内定通知の内容をエージェントと一緒に確認し、質問の伝え方を相談してから人事担当者に連絡するという順番も選べます。
5. 下限を下回った理由で次の一手が変わります
下限を下回った理由が、等級の当てはめにあるのか、想定していた経験との差にあるのかによって、次に確認する内容が変わります。
理由が等級の当てはめにある場合は、等級の基準そのものと、今回提示された等級の位置を確認します。基準を満たしていると考えられるのに提示された等級が低い場合と、基準自体に届いていない場合とでは、次に取れる行動が変わります。
理由が経験の想定差にある場合は、面接で伝えた経験の内容と、企業側が実際に評価した経験の範囲にずれがないかを確認します。伝え方によって評価される経験の幅が変わることもあるため、どの経験をどう伝えたかを振り返っておくと、次の面談で説明しやすくなります。
どちらの理由であっても、いつの時点で見直される可能性があるかまで確認しておくと、今回の提示額だけで判断せずに済みます。理由をまたいで確認先を変える発想がないまま人事担当者だけに聞き続けると、答えられる範囲を超えた質問を重ねることにもなりかねません。
確認を進める中で、企業側の説明と自分が伝えたつもりの内容にずれが見つかることもあります。ずれに気づいた時点で、どちらの理解が実態に近いかを一方的に決めず、事実として何が確認できたかを整理してから次の相手に確認するという進め方が、話をこじらせずに済みます。
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6. 返事の前に整理するチェック項目
内訳・等級・理由・見直しの時期を確認したうえで、返事を出す前に整理しておきたい項目をまとめます。
返事の前に確認しておきたい項目
- 内訳:固定給・みなし残業・賞与の想定を、書面でそれぞれ確認したか。
- 等級:提示された等級の基準と、次の昇給までの刻みを確認したか。
- 理由:下限を下回った理由が、等級の当てはめか経験の想定差かを確認したか。
- 時期:次に条件が見直されるタイミングを確認したか。
4つの項目をすべて確認してから返事を出すと、提示額の数字だけで判断したときより、納得できる根拠が増えます。確認する相手は人事担当者だけでなく、転職エージェントに同席してもらうという方法もあります。
希望年収に届かない提示を受けたとき、その場で結論を出す必要はありません。確認したい項目があることを伝えたうえで、回答の期限を相談することも選択肢のひとつです。
確認した内容を踏まえて、承諾するか辞退するかを判断します。辞退を選ぶ場合の伝え方に迷うときは、別の記事でも取り上げています。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 提示額が求人票の下限を下回ることは珍しいか
A. 珍しいことではありません。厚生労働省の調査でも、転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%で、『変わらない』割合も28.4%です*1。希望年収を上回る転職ばかりが起きているわけではないため、下限に届かない提示も起こり得る出来事のひとつです。
Q2. 内訳を確認したいと伝えると印象が悪くなるか
A. 確認したいと伝えること自体が、印象を悪くするとは限りません。内訳や理由を尋ねることは、条件を正しく理解したうえで返事をするための情報収集であり、企業側にとっても回答の精度を高める機会になります。
Q3. 等級の当てはめに納得できない場合はどうすればよいか
A. 等級の基準そのものを確認します。基準を満たしていると考えられるのに提示された等級が低い場合は、その根拠を人事担当者に確認し、再検討を依頼できるかどうかをあわせて尋ねます。
Q4. 下限を下回った理由を教えてもらえないことはあるか
A. 詳細な理由まで説明されないこともあります。その場合は、等級の当てはめによるものか、経験の評価によるものかという大きな分類だけでも確認しておくと、次に確認すべき相手が絞れます。
Q5. 確認している間に他の候補者が決まってしまわないか
A. 選考のスケジュールは企業ごとに異なります。確認したい項目があることを伝えたうえで、回答の期限をいつまでに相談できるかを、あわせて確認しておくと見通しが立てやすくなります。
8. まとめ:内訳を見てから提示に返事をします
この記事の要点
- 転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%、『変わらない』割合は28.4%です。希望年収を上回る転職ばかりではありません*1。
- 一般労働者の賃金は全国計で月340.6千円です。提示額と求人票の金額を比べる前に、内訳を確認する必要があります*2。
- 下限を下回った理由が、等級の当てはめにあるのか経験の想定差にあるのかによって、次に確認する相手や内容が変わります。
- 内訳・等級と昇給の刻み・理由・見直しの時期という順番で確認してから返事を出すことが、判断の土台になります。
提示された年収が求人票の下限を下回っていたとしても、それだけで結論を出す必要はありません。内訳と理由を確認したうえで、希望年収との差をどう考えるかを整理していきましょう。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「雇用動向調査」(令和6年)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
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