退職金共済とは何か?中退共の掛金納付月数と通算のしくみ

労働条件通知書に「中退共」とだけ書かれていても、意味が分からなければ確認のしようがありません。中退共(中小企業退職金共済)は、事業主が毎月の掛金を機構へ納め、退職時に機構から本人へ直接支払う制度です。
受け取れる額は掛金納付月数で段階的に変わり、転職しても通算できる仕組みがあります。この記事では、掛金納付月数の段と、転職したときの通算だけを取り上げます。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 掛金は全額が事業主の負担です。掛金月額は16種類の区分があり、下限5000円から上限30000円まで選べます*1。
- 受け取れる額は掛金納付月数で段が変わります。11月以下では支給されず、23月までは掛金納付総額を下回ります*2。23月を超えると掛金相当額になり、43月以上は運用利息が加わるしくみです。
- 転職しても掛金納付月数を通算できる仕組みが4通りあります*4。企業間の転職も対象に含まれるため、受け取らずに引き継ぐ選択もできます。
1. 掛金は全額が事業主の負担
退職金共済は、事業主が毎月の掛金を機構へ納め、退職時に機構から本人へ直接支払われる制度です。掛金は全額が事業主の負担で、従業員に負担させることはできません。受け取れる額は掛金納付月数で段が変わり、11月以下では支給されず、43月から運用利息が加わります。転職しても通算できる仕組みが4通りあります。
掛金月額は16種類の区分があり、事業主が従業員ごとに選びます*1。下限は5000円、上限は30000円です*1。短時間労働者には特例があり、最も低い区分は2000円です*1。
求人票に「退職金あり」とだけ書かれていても、中退共のような社外積立の制度か、自社で積み立てる制度かは分かりません。労働条件通知書には制度名が明記されるため、そちらで確認できます。掛金は給与から天引きされることはなく、全額が事業主の負担と定められています*1。
掛金月額の区分は事業主が選ぶため、同じ勤続年数でも会社によって金額は変わります*1。求人票や面談で退職金制度に触れられたときは、金額そのものより、中退共に加入しているかどうかをまず確認してください。
正社員として働くITエンジニアの多くは、短時間労働者の特例ではなく、通常の16区分から掛金月額が選ばれます*1。労働条件通知書に掛金月額そのものが書かれていることは少なく、加入の有無だけが分かる場合が大半です。
掛金月額が高い区分ほど、掛金相当額も大きくなります*1*2。区分と掛金納付月数の両方が、受け取れる額を左右します。
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2. 受け取れる額は掛金納付月数で段が変わる
掛金納付月数が11月以下だと、退職金は支給されません*2。23月までは、支給されても払い込んだ掛金の総額を下回る額にとどまります*2。
23月を超えると掛金相当額になり、43月以上になると運用利息と付加退職金が加わります*2。基本退職金の予定運用利回りは1.0%です*2。この利率は在職中の実績ではなく、退職金を計算するための固定の数値です。
掛金相当額とは、それまでに事業主が払い込んだ掛金の総額とほぼ同じ額を指します*2。43月に届く前は、運用利息が付く前の金額で受け取ることになります。
予定運用利回りは1.0%という固定値で、基本退職金の計算式に組み込まれています*2。運用の巧拙によって受け取る額が増減する仕組みではありません。
3. 転職しても通算できる
転職しても、掛金納付月数を通算できる仕組みが4通りあります*4。対象は過去勤務期間、企業間の転職、特定業種退職金共済制度、特定退職金共済制度です*4。
次の職場も中退共に加入している場合は、企業間の転職として掛金納付月数を通算できます*4。退職時に受け取らず、転職先で掛金納付月数を引き継ぐ選択ができます。手続きには期限があるため、退職前に窓口へ確認してください。
通算する場合は、これまでの掛金納付月数がそのまま引き継がれます*4。退職金を一度受け取ってしまうと通算はできなくなるため、次の職場が決まってから窓口へ申し出る順番になります。
特定業種退職金共済制度や特定退職金共済制度との通算も含めて4通りあるため、業界を変える転職でも対象になる場合があります*4。対象になるかどうかは制度の種類によって変わるため、転職先の制度名を先に確認してください。
転職先を決める前に受け取りを済ませてしまうと、その後に同じ会社で中退共加入の話が出ても通算はできません*4。まず転職先が決まってから、通算するか受け取るかを選ぶ順番になります。
4. 掛金納付月数で変わる4つの段
掛金納付月数によって、受け取れる退職金の性格は次の4段階に分かれます*2。
| 掛金納付月数 | 受け取れる額 |
|---|---|
| 11月以下(退職金は支給されない) | 支給されません |
| 12月から23月(掛金納付総額を下回る額) | 掛金納付総額を下回ります |
| 24月から42月(掛金相当額) | 掛金相当額です |
| 43月以上(運用利息と付加退職金が加算される) | 運用利息と付加退職金が加わります |
23月と24月の境目、42月と43月の境目は、どちらも受け取れる額の性格が変わる区切りです。退職日を数日ずらせるかどうかで段をまたぐこともあるため、引継ぎの都合と合わせて先に月数を数えてください。
23月までに転職すると、掛金納付総額を下回る額しか受け取れません*2。この範囲にいる場合は、受け取るより通算したほうが有利になりやすくなります。
表の区切りは掛金納付月数だけで決まり、給与や役職では変わりません*2。在籍中に昇給や異動があっても、この4段階の境目自体は動きません。
退職金の額を厚くしたい場合、掛金月額を上げる判断は事業主が行います*1。従業員側から区分を選び直すことはできません。
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5. 在籍期間と転職先の制度で分かれる
掛金納付月数の段と、転職先の制度が分かるかどうかで、確認する順番が変わります。
23月を超えていて、転職先も中退共に加入している場合は、掛金相当額を受け取ってから入社するより、通算して納付月数を伸ばす方が有利になりやすくなります*2*4。43月に届けば運用利息も加わるためです*2。
転職先の制度が分からない場合は、労働条件通知書で中退共の記載を確認してから決めます。記載が無ければ、人事に直接聞いてください。
掛金納付月数が23月以下で、転職先の制度が分からない場合は、退職日を確定させる前に人事へ確認したほうが安全です。11月以下の境目をまたぐかどうかで、受け取れる額そのものが変わるためです。
境目の前後で退職日を数日ずらせるかどうかは、業務の引継ぎ状況によって変わります。焦って決める前に、まず掛金納付月数がどの段にあるかを数えてください。
どちらの区分に当てはまるか迷うときは、労働条件通知書に記載された入社日から、退職予定日までの月数を数えると分かります。
見るのは在籍期間と転職先の制度の2つだけです。求人票の細かな文言よりも、この2つを先に押さえるほうが判断が早くなります。
6. 4つの場合で何を先に見るか
掛金納付月数と転職先の制度によって、確認する順番が変わります。次の4つがよくある例です。
場合ごとに変わるところ
- 在籍が1年に届かない場合:掛金納付月数を先に数える。11月以下では支給されないため、退職日を1か月ずらせるかを引継ぎの都合と合わせて見る
- 在籍が2年前後の場合:段の境目に照らす。12月から23月は掛金納付総額を下回り、24月から掛金相当額になるため、境目の前後で受け取れる額が変わる
- 次の職場も中退共に加入している場合:通算の手続きを見る。企業間の転職でも掛金納付月数を通算できる仕組みがあるため、受け取らずに引き継ぐ選択がある
- 求人票に退職金の記載がない場合:制度の有無を面談で聞く。掛金は全額事業主の負担であるため、加入しているかどうかは会社側の制度であり、求人票に書かれていない場合は労働条件通知書で見る
求人票に退職金の欄が無い場合でも、制度が無いとは限りません*1。掛金は全額が事業主の負担と定められているため、加入の有無は会社の制度によります。記載が見当たらないときは、労働条件通知書を確認するか、面談で直接聞いてください。
在籍期間が短いほど、退職日をわずかにずらせるかどうかが受け取れる額に直結します*2。異動や引継ぎの都合で退職日を決める前に、掛金納付月数を数える習慣をつけてください。
求人票に記載が無くても、面談で「退職金制度はありますか」と聞けば、多くの場合その場で答えてもらえます。中退共という制度名が出てきたら、この記事の段と通算の仕組みがそのまま当てはまります。
退職金制度の有無だけでなく、掛金納付月数の起算日が労働条件通知書や雇用契約書の入社日と一致するかも確認しておくと安心です。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 求人票の「中退共」は何を指しますか
A. 中小企業退職金共済制度のことです。加入している会社を退職すると、会社ではなく機構から本人の口座へ直接支払われます。
Q2. 掛金は給与から引かれますか
A. 引かれません。掛金は全額が事業主の負担で、一部でも従業員に負担させることはできないと定められています。
Q3. 1年未満で辞めたら受け取れますか
A. 掛金納付月数が11月以下の場合は支給されません。12月以上になると支給されますが、23月までは掛金納付総額を下回る額です。
Q4. 転職したら掛金はどうなりますか
A. 通算できる仕組みが4通りあります。企業間の転職でも掛金納付月数を引き継げるため、受け取らずに続ける選択があります。
Q5. 分割で受け取れますか
A. 退職した日に60歳に達していることが要件です。支払期間は5年間または10年間で、退職金の額によって選べる形が変わります。
Q6. 求人票の条件について相談できますか
A. 求職者の登録と利用は無料です*5。
8. まとめ:11月以下は支給されず43月から運用利息が加わる
この記事のまとめ
- 掛金は全額が事業主の負担で、掛金月額は5000円から30000円の16区分から選ばれます*1。
- 受け取れる額は掛金納付月数で段階的に変わり、11月以下は支給されず、43月以上で運用利息が加わります*2。
- 転職しても通算できる仕組みが4通りあり、企業間の転職も対象です*4。次の職場の制度が分かれば、受け取るか通算するかを選べます。
求人票や労働条件通知書に中退共とだけ書かれていた場合も、この記事の段階と通算のしくみに照らせば、確認すべき点が絞れます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 制度について(掛金)(2026年)
*2 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 制度について(退職金)(2026年)
*3 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 Q&A(掛金の一部を国が助成してくれるそうですが、どのような制度でしょうか)(2026年)
*4 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 制度について(制度の特色)(2026年)
*5 リラシク よくあるご質問(求人票の条件の相談・在職中の登録・登録料金)(2026年)
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