板挟みとは?職場で起きる原因と抜け出す3つの手順

板挟みとは、立場の違う2者から食い違う要求を受け、どちらも立てられない状態を指します。上司と現場、営業と開発、顧客と自社のあいだに入る人に起きます。原因は本人の性格や調整力ではなく、最終的に決める人が1人に決まっていないことです。
厚生労働省の調査では、強いストレスがある労働者のうち26.1%が「対人関係」を、20.7%が「顧客、取引先等からのクレーム」を挙げました*1。板挟みが起きる4つの場面、原因の3つ、抜け出す3つの手順、そして転職で変えられる範囲を順に説明します。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 板挟みとは、立場の違う2者から食い違う要求を受け、どちらも立てられない状態です。ITの現場では、営業と開発、顧客と自社、上司と部下、発注元と自チームのあいだで起きます。
- 原因は3つです。①最終的に決める人が1人に決まっていない ②要求の優先順位が文字になっていない ③2者が直接話す場がない。どれも本人の調整力とは関係がありません。
- 抜け出す手順も3つです。①食い違いを1枚に書き出す ②自分で決めずに決裁者へ返す ③2者が直接話す場を設定する。①は今日から着手できます。
1. 板挟みとは何か
板挟みとは、立場の違う2者から食い違う要求を同時に受け、どちらも立てられない状態を指します。板と板のあいだに挟まれて身動きが取れない様子から来た言葉です。職場では、間に入る人だけが両方の要求を受け取り、どちらを取っても一方から責められる形になります。厚生労働省の調査では、強いストレスがある労働者のうち26.1%が内容として「対人関係」を挙げ、20.7%が「顧客、取引先等からのクレーム」を挙げました*1。板挟みは、この2つが重なる場所で起きます。
重要なのは、板挟みが起きる条件です。2者の意見が違うだけでは板挟みになりません。意見が違い、かつ最終的に決める人が決まっていないときに、間の人が決定を引き受ける形になっていました。
日常語としての板挟みは、「両方の顔を立てられない」くらいの広い意味で使われます。職場で対処するときは、もう少し狭く捉えたほうが手が打てました。
たとえば営業が「来週リリースしたい」と言い、開発が「テストに2週間かかる」と言ったとします。ここで部長が「来週で行く」と決めれば、間に立つリーダーは板挟みになりません。決まらないまま両方から催促されると、板挟みになります。
つまり板挟みは、間の人の調整力の問題ではありません。決める人が空席のまま、決定の負荷だけが間の人に落ちている状態です。
この見方に切り替えると、打つ手が変わります。自分の伝え方を磨くのではなく、決める人を1人に戻す作業に手をつけることになります。
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2. ITの現場で板挟みが起きる4つの場面
エンジニアが板挟みになる場面は、だいたい4つに分かれます。誰と誰のあいだに入っているか、何が食い違っているかで整理しました。
【表1】板挟みが起きる4つの場面(当事者・食い違う要求・決める人)
| 場面 | 当事者 | 食い違う要求 | 本来の決める人 |
|---|---|---|---|
| 納期と品質 | 営業とエンジニア | 早く出したい/テストを通したい | プロジェクトの責任者(PM・部長) |
| 仕様変更 | 顧客と自社 | 追加してほしい/工数が増える | 契約上の窓口(PM・営業責任者) |
| 進め方 | 上司と部下 | この手順で/別の手順で | 上司 |
| 優先順位 | 発注元と自チーム | こちらを先に/こちらを先に | 自チームの管理者 |
4つとも、右端の「本来の決める人」が空席になった瞬間に板挟みへ変わりました。裏を返せば、右端を埋められれば板挟みは終わります。
自分がどの場面にいるかは、食い違っている要求を2つ書き出すと分かります。書き出せない場合、実は要求が食い違っていない可能性もあります。
納期と品質の場面は、リリース直前に集中しました。仕様変更の場面が長引くのは、契約書に変更管理の手順が書かれていない開発です。
4つが同時に起きることもあります。その場合は、いちばん期限が近いものから右端を埋めてください。
3. 板挟みから抜け出す3つの手順
板挟みは、次の3手順で解けます。順番が大切で、①を飛ばして③に行くと、話し合いが感情論になります。
①では、2者の要求を1枚に並べます。「営業:11月10日リリース希望」「開発:テスト完了は11月24日見込み」のように、日付と数量まで書いてください。感情を書かず、事実だけを書くのが要点です。
書き出すと、食い違いの正体が見えます。多くは日程か工数か費用のどれかでした。ここまで具体化できていれば、決める人はその場で判断できます。
②では、この1枚を持って決裁者のところへ行きます。「どちらにしますか」と聞くのではなく、「Aなら品質保証の範囲を狭めます、Bならリリースが2週間後になります。どちらを取りますか」と、結果まで添えて返します。
自分で決めないことが②の肝です。決める権限がないまま決めると、その決定は後から覆され、板挟みがもう一度起きます。
③では、2者を同席させます。①の1枚があるので、話し合いは「どちらの言い分が正しいか」ではなく「日程か範囲のどちらを動かすか」から始まりました。同席の場は15分あれば済みます。
3手順を回しても決まらない場合は、決裁者そのものが不在です。その職場では板挟みが繰り返されるので、次の見出しの判断に進んでください。
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4. 転職で変えられることと変えられないこと
3手順を回しても板挟みが続く職場には、共通点があります。決裁者が決めない、または決裁者が誰か本人たちも分かっていない状態です。これは1人の努力では動きません。
転職で変えられるのは、決裁の流れです。仕様変更を誰が承認するのか、顧客との窓口が誰なのか、これらが職務分掌や契約書に書かれている会社があります。書かれていれば、間の人が決定を引き受ける場面は減ります。
一方、転職で変えられないこともあります。立場の違う相手と仕事をする以上、要求が食い違うこと自体はどこでも起きます。板挟みがゼロの職場を探すのではなく、食い違ったときに決める人がいる職場を探すことになります。
厚生労働省の調査では、強い不安・悩み・ストレスがある正社員の割合は74.6%でした*1。内容の1位は「仕事の量」で45.0%、対人関係は26.7%です。量と対人関係は別々に手当てが必要で、板挟みが消えても業務量が減るわけではありません。
面接で聞くなら、板挟みという言葉は使わないでください。「仕様変更が発生したとき、承認するのはどなたですか」と手続きで聞くほうが、答えは具体的でした。
答えが「その都度みんなで相談して決めます」であれば、決裁者が空席の職場です。合議そのものが悪いわけではありませんが、期限のある開発では間の人に負荷が寄りました。
もう1つ、転職で変えられないものがあります。要求が食い違ったときに調整を頼まれる立場そのものです。リーダーやPMを続けるかぎり、間に入る場面はなくなりません。変わるのは、その場で自分が決めさせられるかどうかでした。
5. 面接で聞く4つの質問
決裁の流れを確かめる質問を4つ挙げます。どれも板挟みという言葉を使わずに聞けます。
決裁の流れを確かめる4つの質問
- 仕様変更の承認者:「開発中に仕様変更が出たとき、追加するかどうかは誰が決めますか」と聞きます。
- 顧客との窓口:「顧客からの要望は、営業とエンジニアのどちらが最初に受けますか」と聞きます。
- 納期と品質の優先:「テストが終わらない状態でリリース日が来たとき、過去はどう判断されましたか」と実績で聞きます。
- エスカレーションの相手:「現場で判断がつかないとき、誰に上げますか」と聞きます。
4つとも、答えに人の役職名が出れば決裁者がいます。「担当者が調整します」という答えなら、決裁が現場に降りている職場でした。
3つ目の質問だけは、制度ではなく実績を聞いています。制度上は部長が決めることになっていても、実際には現場が押し切られている職場があるためです。
4つを面接で全部聞く必要はありません。1つ目と4つ目を聞けば、決裁者がいるかどうかは判断できました。
内定後に職務分掌や体制図を見せてもらえる会社もあります。そこに承認者の名前が書かれていれば、口頭の答えより確かです。
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6. よくある質問(Q&A)
Q1. 板挟みになるのは自分の調整の仕方に問題があるからですか
A. 違います。板挟みは、2者の要求が食い違い、かつ最終的に決める人が決まっていないときに起きます。決める人がいれば、同じ2者の食い違いでも板挟みにはなりません。
Q2. 板挟みで疲れたときまず何をすればよいですか
A. 食い違っている要求を1枚に書き出してください。「営業:11月10日希望」「開発:テスト完了は11月24日」のように、日付と数量まで書きます。書けた時点で、決裁者が判断できる形になります。
Q3. 上司が決めてくれない場合はどうしますか
A. 選択肢と結果をセットで示してください。「Aならテスト範囲を狭めます、Bならリリースが2週間後です」と結果まで添えると、判断が返りやすくなります。それでも決まらない職場は、決裁者が不在の状態です。
Q4. 板挟みは転職すればなくなりますか
A. 完全にはなくなりません。立場の違う相手と働く以上、要求の食い違いはどこでも起きます。変えられるのは、食い違ったときに決める人がいるかどうかです。面接では仕様変更の承認者とエスカレーション先を聞いてください。
Q5. 板挟みとサンドイッチ症候群は同じ意味ですか
A. 指している状況は近いものです。中間管理職が上と下の両方から要求を受ける状態を指す言い方で、原因の見方も同じです。決める権限が伴わないまま責任だけが集まると、この状態になります。
7. まとめ:板挟みは決める人を戻せば終わる
この記事のまとめ
- 板挟みとは、立場の違う2者から食い違う要求を受け、どちらも立てられない状態です。原因は本人の調整力ではなく、決める人が1人に決まっていないことです。
- ITの現場では、納期と品質、仕様変更、進め方、優先順位の4つの場面で起きます。表の右端「本来の決める人」が空席になると板挟みへ変わります。
- 抜け出す手順は、①食い違いを1枚に書き出す ②自分で決めずに決裁者へ返す ③2者が直接話す場を作る、の3つです。順番を守ってください。
- 厚生労働省の調査では、強いストレスがある労働者の26.1%が「対人関係」、20.7%が「顧客、取引先等からのクレーム」を内容に挙げました*1。
- 転職で変えられるのは決裁の流れです。面接では「仕様変更を誰が承認しますか」「判断がつかないとき誰に上げますか」と手続きで聞いてください。
板挟みを自分の性格の問題として抱えると、対処が「もっとうまく調整する」しかなくなります。決める人が空席だという見方に変えると、書き出す、返す、同席させるという具体的な手が出てきます。3手順を回しても決まらないなら、それはその職場の構造なので、次の職場では決裁の流れを先に聞いてください。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
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