見積の精度を詰められるとき|幅で返す

見積の精度を詰められる場面では、一点の数字で答えようとすると、前提が変わったときに説明し直せなくなります。ここでは、早い場合・通常・遅れる場合という3段の幅で示し、その幅を決めている前提をあわせて返す考え方を見ていきます。
見積の精度は、一点の数字ではなく、幅とその前提で返せます。
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この記事のポイント
- 見積の精度を一点の数字で求められても、早い場合・通常・遅れる場合の3段の幅で返せます
- 幅を決めているのは、仕様・人の空き・相手の都合・確かめる手順という4つの前提です
- 前提が動いた時点で伝え直し、合意した内容を記録に残すと、あとで食い違いません
1. 見積の精度は、幅と前提で返します
見積の精度を一点の数字まで詰められたときは、その数字だけを絞り込むのではなく、早い場合・通常・遅れる場合という3段の幅で返します。あわせて、その幅を決めている前提を示すと、前提が変わったときにも説明し直せます。
見積の精度を詰められる場面では、求められているものを確かめずに数字を絞り込もうとすると、後から前提が変わったときに立場を失います。一点の数字は、その時点の前提のもとでしか成り立たない値だからです。
先に確かめておきたいのは、相手が求めているのが「絞り込んだ一点の数字」なのか、「判断に使える幅」なのかという点です。多くの場合、相手が本当に必要としているのは、いつまでに何が決まればよいかという見通しであり、小数点まで詰めた一点の数字ではありません。
そこで返す形を、早い場合・通常・遅れる場合という3段の幅に置き換えます。3段に分けると、相手はどの段を基準に予定を立てればよいかを自分で選べるようになります。
幅だけを示して前提を省くと、幅の広さだけが印象に残り、「なぜそんなに広いのか」という別の質問を招きます。幅と前提は、必ず組みで返します。
前提とは、いま決まっていないことを指します。仕様の細部が決まっていない、担当できる人がまだ決まっていない、確認を依頼した相手からの返事を待っている、といった状態がそれにあたります。
前提を言葉にしておくと、あとで幅が動いたときに、動いた理由をそのまま説明できます。前提を省いたまま幅だけを伝えると、幅が動いた理由を後から探すことになり、説明のたびに手間がかかります。
以下では、詰められた場面での流れを4段に分け、幅を決めている前提を4つの型に整理したうえで、伝え直すまでの手順と、記録に残す内容を見ていきます。
2. 詰められた場面の流れを4段に置きます
精度を詰められた場面は、その場で数字を絞り込む場面ではなく、次の4段を順に進める場面だと捉えると扱いやすくなります。
4段はどれも一度で終わるものではなく、担当する範囲の状況が変わるたびに繰り返す流れです。最初の段でつまずきやすいのは、確かめる前に数字を出そうとすることです。
求められているものを確かめずに一点の数字を出すと、その数字が独り歩きし、前提の話をする機会そのものを失います。確かめる段を省かないことが、後の3段を成り立たせる土台になります。
2段目の幅と前提を並べる段は、次の項目で幅を決めている前提を4つの型に整理してから、あらためて詳しく見ていきます。
3段目の伝え直す段と4段目の記録に残す段は、幅を返した後の話です。伝え直すタイミングと記録の内容についても、後の項目でそれぞれ扱います。
3. 一点の数字ではなく、幅で示します
精度を詰められると、つい一点の数字まで絞り込んで答えたくなります。しかし一点の数字は、その時点で決まっている前提のもとでしか成り立たない値であり、前提が動けば数字も動きます。動いた数字を一点のまま出し続けると、そのたびに「前と違う」という受け取られ方をされます。
幅で示すと、この受け取られ方が変わります。早い場合・通常・遅れる場合という3段を最初から示しておけば、幅の中で数字が動いても、想定の範囲内として受け取られます。
ここで、本題とは別の前提となる数字を確認しておきます。一般労働者の賃金は、25〜29歳で月額279.4千円、45〜49歳で377.9千円です*1(厚生労働省 賃金構造基本統計調査)。担う範囲が広がる年代ほど、見立てを言葉にして人に伝える場面が増えていきます。この数字は年代ごとの賃金の水準を示すもので、見積の精度を決めるものではありません。
幅で示すことは、精度を下げることではありません。むしろ、どこまでが確定していて、どこからが前提に依存しているかを分けて見せる分、一点の数字よりも詰められた情報量は多くなります。
相手が幅に納得しない場合、多くは幅そのものに納得していないのではなく、幅を決めている前提が見えていないことが原因です。前提が見えれば、幅の広さにも理由があると分かります。
幅は、時間が経てば自然に狭まっていくものでもあります。前提のうちいくつかが確定するたびに、幅の上下のどちらかが動き、残る幅は少しずつ狭くなります。狭まったタイミングで伝え直せば、幅は固定された値ではなく、動いていくものとして受け取ってもらえます。
次の項目では、幅を決めている前提を4つの型に分けて整理します。
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4. 幅を決めている前提を4つの型に分けます
幅の広さは、何となく決めているのではなく、決まっていない前提の数と種類によって決まっています。
下の表は、幅を決めている前提を4つの型に分け、その前提が動いたときに変わることを対応させたものです。
幅を決めている前提の型と、動いたときに変わること
| 前提の型 | 動いたときに変わること |
|---|---|
| 決まっていない仕様 | 確定した範囲が広いか狭いかによって、幅の上下どちらに寄るかが変わります |
| 人の空き | 対応できる人が変われば、幅の中で想定していた進み方が変わります |
| 依存する相手の都合 | 確認を依頼した相手の返事が遅れれば、幅は下限側から遠のきます |
| 確かめる手順の有無 | 確かめる手順そのものが決まっていなければ、幅を狭める根拠が示せません |
4つの型は、どれか1つだけが単独で幅を決めているわけではなく、同じ場面のなかで重なって働いています。
決まっていない仕様が前提であれば、範囲が確定した時点で幅の上下どちらに寄るかが決まります。範囲が広がる方向に確定すれば、幅は遅れる場合に寄ります。
人の空きが前提であれば、対応できる人が誰になるかによって、幅の中で想定していた進み方そのものが変わります。人が決まっていない段階では、幅を狭める根拠がまだありません。
依存する相手の都合が前提であれば、確認や連携の相手からの返事が幅の動きを左右します。相手の返事が遅れるほど、幅は下限側から遠のいていきます。
確かめる手順の有無が前提であれば、そもそも何を確認すれば前提が確定するのかという手順が決まっているかどうかが問われます。手順が決まっていなければ、幅を狭める見通しそのものが立ちません。
4つの型のうち、その場面でどれが強く働いているかを見分けられれば、幅を伝えるときにどの前提を添えるべきかも自然に決まります。
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5. 返答を組み立てる手順を4段に整理します
4段の手順は、詰められた場面のその場で組み立てるものです。前の項目で挙げた4つの型のうち、その場面に当てはまる前提を選んで1行にすることが、2段目の要になります。
1行で書くときは、前提の名前だけでなく、その前提が動くとどちら側に寄るかまで書きます。「仕様が未確定です」だけでは、幅が動く方向が伝わりません。
3段目の確かめ先を示す段では、前提ごとに確かめる相手を1人に決めておくと、後から確認漏れが起きにくくなります。複数の前提を同じ相手にまとめて確かめてもらう場合は、期限も1つにそろえておきます。
4段目の合意した内容を残す段については、何を残すかを次の項目で3つに分けて挙げます。
6. 記録に残す内容を3つ挙げます
合意した内容を記録に残すときは、次の3つを書いておくと、後から見返しても迷いません。
記録に残す内容・3つ
- 幅の3段:早い場合・通常・遅れる場合を、それぞれ言葉で書きます
- 幅を決めている前提:どの前提が動くと、どちら側に寄るかを1行で書きます
- 確かめる相手と期限:前提を確かめる相手と、いつまでに確かめるかを書きます
この3つは、その場で口頭だけで済ませると、時間が経つほど双方の記憶がずれていきます。特に前提を確かめる期限は、書いておかないと過ぎたことにも気づきにくくなります。
幅の3段を書くときは、数字だけでなく、どの場合に当てはまるかという言葉もあわせて残します。数字だけを書き残すと、後から見た人がどの前提のもとでの数字かを読み取れません。
幅を決めている前提を書くときは、前提の名前と、動く方向をセットで書きます。方向を書いておくと、前提が動いたときに、伝え直す内容もそこから組み立てられます。
確かめる相手と期限を書くときは、相手の名前と期限の日付をそのまま書きます。「近いうちに確認します」のような書き方では、期限として機能しません。
記録として残す形は、専用の文書である必要はありません。日々のやり取りの記録に、この3つが読み取れる形で残っていれば十分です。
記録を残す担当は、幅を返した側が持つ場合と、受け取った側が持つ場合の両方があります。どちらが持つかを先に決めておくと、前提が動いたときに、どちらから伝え直すかも自然に決まります。
この3つを残しておくと、前提が動いたときに伝え直す相手にも、記録を見せながら説明できます。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. 見積の精度を一点の数字まで詰められたら、どう答えればよいですか。
A. 一点の数字ではなく、早い場合・通常・遅れる場合という3段の幅で示し、その幅を決めている前提をあわせて答えます。前提を外すと、幅の広さだけが伝わってしまいます。
Q2. 幅をもっと狭めるよう重ねて求められたときは、どうすればよいですか。
A. 幅を決めている前提のうち、どれが確定すれば幅が狭まるかを示します。確かめる手順が決まっていない前提は、その時点では狭められない理由になります。
Q3. 前提が途中で変わった場合、いつ伝え直せばよいですか。
A. 前提が動いたと分かった時点で伝え直します。次の定例の報告まで待つと、幅の受け取り方が食い違ったまま進んでしまいます。
Q4. 前提を確かめる相手が複数いる場合、どう扱えばよいですか。
A. 前提ごとに確かめる相手と期限を分けて示します。1つの前提につき確かめる相手を1人に決めておくと、後から確認漏れが起きにくくなります。
8. まとめ:見積の精度は幅と前提で決まります
この記事の要点
- 見積の精度を一点の数字で求められても、早い場合・通常・遅れる場合の3段の幅で返せます
- 詰められた場面は、求められているものを確かめ、幅と前提を並べ、伝え直し、記録に残すという4段で進みます
- 幅を決めている前提は、決まっていない仕様・人の空き・依存する相手の都合・確かめる手順の有無という4つの型に整理できます
- 前提が動いた時点で伝え直し、幅・前提・確認先の3つを記録に残すと、あとで受け取り方が食い違いません
見積の精度を詰められる場面は、一点の数字を絞り込む場面ではなく、幅と前提を組みで返す場面だと捉え直すと、動いた前提もそのまま説明し直せます。幅の示し方や記録の残し方に迷う場合は、専任エージェントに相談しながら整理することもできます。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
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