条件交渉|転職の選考で年収と勤務地を切り出す時期

転職の選考が進むと、年収や勤務地の条件をいつ伝えればよいか迷う場面が出てきます。早すぎれば意欲より条件を優先していると受け取られ、遅すぎれば選考が固まったあとに動かしにくくなります。切り出す時期と、根拠として何を示すかを先に決めておくことが、選考全体を通して条件交渉を進める土台になります。
転職で賃金が増加した人は40.5%です*1。年収だけでなく勤務地や出社頻度も、選考のどの段階で何を根拠に伝えるかによって、通りやすさが変わります。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- 転職入職者のうち賃金が増加した人は40.5%です。増えなかった人との違いは、伝える時期と根拠の示し方にあります*1。
- 年収の話では、現職の給与明細や数字にした実績に加えて、年代や勤務地ごとの賃金データのような市場の水準を示す資料が使えます*2。
- 勤務地や出社頻度は年収と切り離して考える必要があります。幅を持たせて伝えることで、選考を止めずに条件をすり合わせられます。
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1. 条件交渉は選考の中盤から動き出します
条件交渉は、応募の初期でも内定後の一度きりの場でもなく、選考が進み始めた段階から少しずつ始めます。厚生労働省の雇用動向調査(2024年)では、転職入職者のうち賃金が増加した人は40.5%でした*1。年収だけを最後にまとめて伝えるより、面接が進む過程で年収・勤務地・出社頻度のそれぞれを段階的に確認していくほうが、企業側も回答を用意しやすくなります。
書類選考の直後や一次面接では、条件よりも仕事の内容と自分の実績をすり合わせる段階です。ここで年収や勤務地を先に持ち出すと、意欲より条件を優先していると受け取られやすくなります。
二次面接以降、企業側が候補として本気で検討し始めた段階になると、勤務条件の質問に具体的に答えてもらいやすくなります。ここで初めて、希望する年収の水準や勤務地の条件を伝える余地が生まれます。
最終選考や内定の直前まで条件の話を一切しないでいると、内定が出た瞬間にまとめて交渉することになり、企業側も一度に判断材料をそろえる必要が出てきます。段階を分けて伝えるほうが、双方にとって調整の負担が小さくなります。
早い段階で具体的な金額を口にすると、その金額が基準になり、あとから上げにくくなる場合があります。二次面接の時点では、金額そのものより、条件を確認したいという意思を伝える程度に留めておくと、選考が進んでから根拠をもとに調整しやすくなります。
2. 賃金が上がった転職者は4割です
転職で年収がどう動くかを、まず全体の数字で確認します。
転職で賃金が増加した人は40.5%です*1。増えなかった人には、年収の希望を最後まで言えなかった人や、根拠を示せずに話が止まった人も含まれます。
この数字が示すのは、賃金が上がる可能性がある水準であって、自動的に上がるという意味ではありません。伝える時期と根拠の示し方が、この数字に近づくかどうかを左右します。
3. 根拠は現職の実績と市場データです
年収の話で使える根拠は、大きく3種類に分かれます。現職の給与明細、数字にした実績、そして公的な統計が示す市場の水準です。
現職の給与明細は、今の年収がどの内訳で構成されているかを示す資料になります。基本給と手当の比率が分かれば、提示された年収を同じ基準で比べられます。賞与を含めた年収なのか、月額だけの数字なのかも、あわせて伝えておくと比較のずれを防げます。
実績は、担当した業務の規模や成果を数字で表したものが使えます。担当した開発の規模、短縮できた作業時間、対応したユーザー数など、具体的な数字であるほど根拠として伝わりやすくなります。
市場の水準を示す資料として、厚生労働省の賃金構造基本統計調査があります。この調査では、女性の賃金は45〜49歳と55〜59歳でピークを迎え、月額305.7千円でした*2。年代や性別によって水準が変わることが分かる資料であり、自分の年代や経歴に近い数字を選んで示すことが大切です。
市場の水準は、全体の平均だけを示しても説得力を持ちません。自分の年代や経験年数に近い数字を選んで示すことで、初めて根拠として機能します。
実績を伝えるときは、「担当した」で止めずに、何人規模のチームで、何をどれだけ改善したかを数字で置き換えると、根拠として扱われやすくなります。あいまいな表現のまま伝えると、実績ではなく印象として受け取られてしまいます。
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4. 使える根拠を3つの数字で並べます
年収の話で示せる数字を、出典とあわせて3つ並べます。どれも厚生労働省の統計から取れる数字です。
【表1】条件交渉で示せる根拠の例(2024〜2025年)
| 指標 | 数値 | 出典 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| 転職で賃金が増えた人の割合 | 40.5% | 雇用動向調査*1 | 年収を切り出す根拠の目安 |
| 女性の賃金ピーク(45〜49歳・55〜59歳) | 305.7千円 | 賃金構造基本統計調査*2 | 年代に近い市場水準 |
| 東京都と全国計の賃金の差 | 77.7千円 | 賃金構造基本統計調査*2 | 勤務地による基準の違い |
表にある3つの数字は、それぞれ役割が異なります。全体の傾向を示す数字、年代ごとの水準を示す数字、勤務地による差を示す数字です*1*2。
3つとも同じ場面で使うわけではありません。年収の話を切り出す最初の根拠には全体の割合を、金額の目安には年代に近い水準を、勤務地の話には都道府県間の差を使うといった使い分けができます*2。
表の数字をそのまま企業に提示する必要はありません。自分の年収や勤務地の希望が、どの数字に近い位置にあるかを整理しておくための材料として使います。
5. 勤務地と出社頻度は幅を持たせて伝えます
年収とは別に、勤務地と出社頻度も選考の中で条件交渉の対象になります。
出社を前提とする求人から、勤務地を問わない求人まで、働き方には幅があります。自分がどのあたりを希望するかを最初に固定しすぎると、話し合える余地が狭くなります。
東京都の一般労働者の賃金は全国計より77.7千円高い水準です*2。勤務地によって企業側の給与の基準が変わる場合があるため、居住地を変えずに働ける求人では、どちらの基準を使うかを先に確認しておく必要があります。
出社頻度についても、週5日出社を前提にした条件と、月に数日の出社で足りる条件とでは、生活への影響が大きく変わります。希望する頻度に幅を持たせて伝えると、企業側も調整しやすくなります。
出社の頻度を伝えるときは、「週に何日」と固定するより、「月にこの日数までなら調整できる」のように幅を示すほうが、企業側の運用と噛み合いやすくなります。固定した日数だけを伝えると、少しのずれで話し合いが止まってしまう場合があります。
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6. 通らなかったときの引き下がり方を整理します
条件交渉で希望した条件がそのまま通らなかったとき、どう対応するかを整理します。
条件が通らなかったときに確認すること
- 優先順位:年収・勤務地・出社頻度のうち、譲れない条件を1つに絞ります。
- 代わりの条件:金額が難しい場合に、出社頻度や勤務地の融通で埋め合わせられないかを確認します。
- 返答の期限:企業側から示された回答の期限を守り、検討中であることを早めに伝えます。
- 選考への影響:条件を一度伝えたことが、その後の選考に不利に働いていないかを面接の反応で確認します。
- 記録の残し方:最終的に合意した条件は、口頭だけで終えず、メールなど記録に残る形でも確認します。
希望した年収や勤務地の条件がそのまま通らないことは珍しくありません。ここで大切なのは、すべての条件を一度に諦めるのではなく、譲れる条件と譲れない条件をあらかじめ分けておくことです。分けておかないと、企業側からの回答を受けて、その場で優先順位を決めることになり、判断が揺れやすくなります。
年収の希望額が届かない場合でも、出社頻度や勤務地の条件で調整できれば、実質的な負担は変わることがあります。金額だけにこだわらず、条件全体で折り合いをつけることを意識します。通勤の負担が減るだけでも、手取りの目減りをある程度は補える場合があります。
企業側から回答の期限が示された場合は、その期限内に意思を伝えます。返答を先延ばしにすると、選考そのものが止まってしまう場合があります。
条件を伝えたあとの面接で、それまでと態度が変わったと感じたら、伝え方や根拠の示し方を振り返る材料になります。無理に押し通そうとせず、次の選考にも活かせる情報として受け止めます。
条件のやり取りを口頭だけで終えると、あとで内容の記憶が食い違う場合があります。メールなど記録に残る形で最終的な条件を確認しておくと、入社後の認識のずれを防げます。
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7. よくある質問
Q1. 条件交渉を始めるのは一次面接と二次面接のどちらが適切か
A. 二次面接以降が目安です。一次面接は仕事内容と実績をすり合わせる段階のため、条件の話は選考が進んでからのほうが伝わりやすくなります。選考の回数は企業によって異なるため、目安として捉えてください。
Q2. 現職の給与明細はどこまで見せる必要があるか
A. 提示までは必要ありません。基本給と手当の比率など、内訳の一部を口頭で伝えるだけでも、希望する年収の根拠として使えます。原本の提出を求められた場合は、なぜ必要なのかを確認してもかまいません。
Q3. 勤務地の条件は年収の話と同じタイミングで伝えてよいか
A. 別のタイミングでもかまいません。年収は選考の中盤から、勤務地や出社頻度は求人票に書かれた内容を確認したうえで、面接で個別に質問する形でも伝わります。両方を同じ面接で聞く必要はありません。
Q4. 条件を伝えたことで選考に不利にならないか不安な場合はどうするか
A. 事実と数字を使って伝えれば、不利にはなりにくくなります。感覚的な希望ではなく、実績や市場の水準といった根拠を添えることが、伝え方の土台になります。
Q5. 複数の企業の選考が同時に進んでいる場合そのことを伝えてよいか
A. 実際に進んでいるのであれば伝えてかまいません。他社の選考が進んでいることは、返答を急ぐ理由として使えます。選考状況や金額は、実際の内容のまま伝えます。
8. まとめ:条件交渉は段階ごとに根拠を変えます
この記事のまとめ
- 条件交渉は、内定後の一度きりの場面ではなく、選考が進む段階に合わせて少しずつ進めます。
- 転職で賃金が増加した人は40.5%です。この数字に近づくかどうかは、伝える時期と根拠の示し方で変わります*1。
- 年収の根拠には、現職の給与明細・数字にした実績・年代や勤務地に応じた市場の水準を使えます*2。
- 勤務地や出社頻度は年収と切り離し、幅を持たせて伝えることで、希望が通らなかったときも次の条件に切り替えやすくなります。
条件交渉は、一度にすべてを伝えようとするほどうまくいきません。選考の段階ごとに、年収・勤務地・出社頻度を分けて伝え、根拠となる数字を添えることが、納得できる転職につながります。伝えた条件が通らなかったときも、記録に残る形で確認しておけば、次の選考に切り替える判断がしやすくなります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「雇用動向調査(令和6年)結果の概況」(2025年公表)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
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