プリセールスの経験は転職で伝わる?職務経歴書での書き方

プリセールス(営業に同行して技術面を説明し、提案や検証を担う役割)としての経験は、転職市場でどう評価されるかが分かりにくい仕事です。技術者としての手を動かした量では測れず、商談に同行した回数だけでは職務経歴書に残りません。何を書けば市場価値として伝わるかを、先に整理しておく必要があります。
DX推進人材が『大幅に不足』と回答した企業は50.1%で、技術と商談の橋渡し役への需要は途切れていません*1。プリセールスとして積んだ経験も、書き方を変えれば同じ市場価値の土台になります。
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監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事のポイント
- DX推進人材が『大幅に不足』と回答した企業は50.1%です。技術と商談の間に立つ経験の需要は、なお高い水準にあります*1。
- 転職入職者のうち、賃金が『増加』した割合は40.5%です。プリセールスの経験も、書き方次第でこの割合に入るかどうかが変わります*3。
- 一般労働者の賃金は55〜59歳で396.2千円とピークを迎えます。経験を職務経歴書に残せるかどうかが、キャリアの後半まで効いてきます*2。
1. プリセールス経験は、回数でなく成果に変わります。
プリセールスとして積んだ経験は、要件を聞き出して形にした経験・検証環境を組んで見せた経験・無理な要望に線を引いた経験として、職務経歴書に残せます。IPAの調査では、DX推進人材が『大幅に不足』と回答した企業は50.1%でした*1。技術と商談の間に立つ役割への需要は、なお高い水準にあります。厚生労働省の調査では、転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%でした*3。プリセールスの経験も、書き方次第でこの割合の中に入るかどうかが変わります。
同行した回数だけを書いても、採用担当者には伝わりません。回数は成果ではなく、行動の頻度でしかないためです。職務経歴書に残すべきは、その場で何を聞き出し、何を形にしたかという中身です。
要件を聞き出して提案書や見積もりに落とし込んだ経験、検証環境を組んで動くものを見せた経験、無理な要望に対して実現できる範囲を示して線を引いた経験は、いずれも技術力と交渉力の両方を証明する材料になります。
職務経歴書に書く際は、担当した商談の規模や業界ではなく、何を聞き出し、何を検証し、どこで線を引いたかという行動の中身を軸に構成すると、伝わりやすくなります。
経験を成果として言語化する考え方は、職種が違っても共通しています。書き方に悩む場合は、他の職種の職務経歴書の直し方も参考になります。
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2. 経験は、段階を追って積み上がっていきます。
この役割の経験は、任される範囲が段階的に広がっていく形で積み上がります。
最初は商談に同行し、技術的な質問にその場で答える役割から始まります。この段階では、まだ経験として言語化できる中身は多くありません。
半年から1年ほど経つと、要件を聞き出して提案書や見積もりに反映する場面を任されるようになります。技術と商談の両方に関わる経験が、ここで具体的な形を持ち始めます。
1年から2年が経過すると、検証環境を自分で組み、動くものを商談の場で見せる経験を積みます。2年を超えたあたりからは、無理な要望に対して実現できる範囲を示し、線を引く判断も任されるようになります。
段階が進む速さは、任される商談の複雑さや、検証環境の規模によって変わります。同じ年数を経ていても、経験の厚みには差が出ます。
3. 求人票では、別の名称で募集されています。
プリセールスという名称そのままで募集される求人だけを探すと、対象となる求人を見落とします。同じ役割が『セールスエンジニア』『ソリューションエンジニア』『提案エンジニア』といった名称で募集されている場合があります。
求人票の職務内容に、『提案活動の技術支援』『デモンストレーション』『検証環境の構築』『要件のヒアリング』といった言葉が並んでいれば、プリセールスに近い役割を指している可能性があります。
名称だけで判断すると候補から外れてしまう求人があるため、職務内容の記載を確認したうえで、これまでの経験がどの言葉に対応するかを照らし合わせる作業が必要です。
英語表記の求人票では、『Sales Engineer』『Solutions Engineer』『Pre-Sales Engineer』といった名称が使われる場合があります。日本語の求人票と同じ内容を指していることがあるため、英語の名称もあわせて確認しておくと選択肢が広がります。
求人票の呼称だけで判断せず、募集の背景にある業務内容を読み込む姿勢が、書類選考の前段階で候補を絞り込む助けになります。呼称が違っても、担当する業務が近ければ、これまでの経験は同じように活かせます。
呼称の違いに気づかないまま検索を続けると、応募できる求人の母数そのものが狭くなります。名称のバリエーションを事前に把握しておくことが、選考の入り口を広げる準備になります。
4. 経験は、要素ごとに書き分けられます。
プリセールスとして積んだ経験を、要素ごとに分けて職務経歴書にどう書けるかを整理します。
【表1】経験の要素と職務経歴書での書き方
| 経験の要素 | 現場で起きること | 職務経歴書での書き方 |
|---|---|---|
| 要件を聞き出す | 顧客の要望を技術的な条件に落とし込む | 『要件定義を主導し、提案書に反映』のように成果で書く |
| 検証環境を組む | 動くものを用意して商談で見せる | 『検証環境を構築し、実機デモを実施』と具体的に書く |
| 要望に線を引く | 実現できる範囲と条件を示す | 『実現可能な範囲を提示し、合意形成を主導』と書く |
『同行した』とだけ書くと、面接官には内容が伝わりません。要件を聞き出す・検証環境を組む・要望に線を引くという3つの要素に分けると、何を担当したかが明確になります。
表の3つの要素は、いずれも技術力だけでなく、顧客とのやり取りを通じた判断力を示す材料になります。要素ごとに具体的な行動を書き添えることで、面接での質問にも答えやすくなります。
職務経歴書の書き方に迷う場合は、フルスタック化を進めたエンジニアの年収の伸ばし方も参考になります。技術の幅を成果として言語化する視点は、プリセールスの経験を書くときにも応用できます。
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5. 職務経歴書には、書き方で差が出ます。
回数だけを並べた職務経歴書と、経験を要素に分けて書いた職務経歴書を比べます。
回数だけを書いた職務経歴書では、頻度は伝わっても中身が伝わりません。面接官は、その回数の中で何をしたかを知りたいと考えています。
経験を要素に分けて書くと、要件を聞き出した内容・検証環境を組んだ技術・線を引いた判断のそれぞれが独立した実績として読み取れます。
書き方を変えるだけで、同じ経験からより多くの情報を伝えられます。技術と商談の間に立った経験は、要素に分けたときにはじめて職務経歴書としての価値を持ちます。
書き方を変えても、事実を誇張してはいけません。実際に担当した範囲を超えて成果を書くと、面接で深掘りされたときに説明できなくなります。
6. 経験の書き換え方を、4つの観点で整理します。
プリセールスとしての経験を職務経歴書に書き換えるときに、確認しておきたい4つの観点を整理します。
経験を書き換えるときの4つの観点
- 要件を聞き出した経験:顧客の要望をどのような技術的な条件に落とし込んだかを書きます。
- 検証環境を組んだ経験:何を使ってどのような環境を構築し、何を見せたかを書きます。
- 要望に線を引いた経験:実現できる範囲と条件を、どのように示して合意を得たかを書きます。
- 求人票の言葉への言い換え:これまでの経験を、応募先の求人票にある言葉に合わせて書き換えます。
4つの観点はどれも、『同行した』という言葉だけでは書けない内容です。実際に何を担当したかを、要素ごとに思い出しながら書き出す作業が必要になります。
求人票の言葉への言い換えは、最後に行います。応募先が『セールスエンジニア』を募集しているのか『ソリューションエンジニア』を募集しているのかによって、強調する部分が変わります。
選定理由や判断の根拠を語れるかどうかも、評価される点のひとつです。なぜその検証環境を選んだか、なぜその範囲で線を引いたかを説明できると、経験の厚みが伝わります。
技術選定の理由を語れる経験が評価される点は、他の職種でも共通しています。
4つの観点を書き出した後は、それぞれの経験に対応する求人票の言葉を横に並べてみると、応募先ごとの強調点が整理しやすくなります。
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7. よくある質問(Q&A)
Q1. プリセールスの経験は、エンジニアの転職市場でどう見られますか。
A. 技術と商談の両方に関わった経験として見られます。ただし、同行した回数ではなく、要件を聞き出した内容や検証環境を組んだ技術が伝わるかどうかで評価が変わります。
Q2. プリセールスから他のエンジニア職に転職することはできますか。
A. できます。検証環境を組んだ経験は、技術的な実装経験として評価される場合があります。ただし、実装量そのものを重視する求人では、経験の中身を具体的に示す必要があります。
Q3. 求人票に『プリセールス』という言葉がない場合、どう探せばよいですか。
A. 『セールスエンジニア』『ソリューションエンジニア』『提案エンジニア』といった名称や、職務内容の『提案活動の技術支援』『検証環境の構築』といった記載を確認します。
Q4. 職務経歴書には、どこまで具体的に書けばよいですか。
A. 何を聞き出し、何を組み、何に線を引いたかという内容まで書きます。『同行した』『対応した』で止めると、成果ではなく行動の記録にとどまります。
Q5. マネジメント職への転職でも、この経験は評価されますか。
A. 評価される場合があります。要望に線を引いた経験は、利害の異なる相手との調整力として伝わります。部下やチームを率いた経験がある場合は、その内容も別に書き添える必要があります。
8. まとめ:プリセールスの経験は、書き方が市場価値を決めます。
この記事の要点
- DX推進人材が『大幅に不足』と回答した企業は50.1%です。技術と商談の間に立つ経験の需要は、なお高い水準にあります*1。
- 一般労働者の賃金は55〜59歳で396.2千円とピークを迎えます。経験を職務経歴書に残せるかどうかが、キャリアの後半まで効いてきます*2。
- 転職入職者のうち賃金が『増加』した割合は40.5%です。プリセールスの経験も、書き方次第でこの割合に入るかどうかが変わります*3。
- 同行した回数だけでなく、要件を聞き出した経験・検証環境を組んだ経験・要望に線を引いた経験として書き残すことが、市場価値を伝える方法になります。
プリセールスとしての経験は、回数を数えるだけでは市場価値になりません。何を聞き出し、何を組み、どこに線を引いたかを、求人票の言葉に合わせて書き直すところから、次のキャリアが始まります。
※公開中の求人数は時期によって変わります。記事中の求人の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 IPA「DX動向2026」(2026年公表)
*2 厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月公表)
*3 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(2025年公表)
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